異世界修行の旅

甲斐源氏

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異世界転生

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「旦那様!奥様!ユリウス様がお目覚めになりました!」

タッタッタッタッタッ


 目が覚めると僕はベッドで寝ていた。目の前では金髪の男女が僕を心配そうにのぞき込んでいる。その脇にはメイドらしき少女がいた。


「ユリウス!気が付いたか!私のことはわかるか?」

「ユーリちゃん!大丈夫?どこも痛くない?」


 僕は記憶が混在している状態だ。前世の神山翔太としての記憶、奈落の底で修行した記憶、そしてユリウスとしての記憶だ。頭が割れるほど痛い。


「痛たた~。」

「大丈夫か?」

「はい。父上。大丈夫です。」


 すると母が急に泣き始めた。


「雷に打たれたから助からないと思ったのよ。もう、ユーリちゃんたら心配ばかりさせるんだから!」

「ごめんなさい。母上。」


 どうやら僕は、ボルトン王国のスチュワート辺境伯の長男に転生したようだ。父の名前はアントニー=スチュワート、母はマリア=スチュワートだ。現在12歳の僕は、庭で遊んでいるときに雷に打たれたらしい。


「母上。起きていいですか?」

「いいけど。大丈夫なの?」

「はい。もう何ともありませんから。」

「ユリウス!そなたはこのスチュワート家のたった一人の子どもなんだ!もう少し自分の立場をわきまえて行動しなさい!」

「はい。ごめんなさい。父上。」


 ベッドから降りて歩こうとしたが思うように歩けない。自分の意識と身体がかみ合っていないのだ。


「大丈夫?ユーリちゃん。ふらついているわよ。」

「大丈夫です。母上。」

「そう。でも良かったわ。もう少しずれていれば雷が直撃するとこだったのよ。」

「そうだな。ユリウスは運がいい。雷が直撃していたら間違いなく命を落としただろう。少し先の木に落ちてくれたおかげでほとんど火傷もしなかったのだからな。」


 2人の話を聞いて、僕は自分の容姿が気になった。前世の僕と同じなら相当太っているはずだ。姿見の前まで行って自分の姿を見ると、そこには金髪で青い目をした美少年がいた。


「これが僕?」

「どうしたんだ?ユリウス。」

「いいえ。何でもありません。火傷が残っていないかと心配だったんです。」

「それなら大丈夫よ。ヘルマン先生が全身を確認してくれたから。」

「そうですか。」


 こうして父と母の優しさに触れて、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。おそらく前世で引きこもり生活をしていた時も、父親と母親は僕のことを真剣に心配してくれていたのだろう。


“僕がこの世界に転生したのは修行のためなんだ。今度こそちゃんと生きるんだ。そういえば神様は力をそのままにしてくれるって言ってたよな~。どの程度なんだろう?どうにか確かめる方法はないかな~。”

 
 窓から外を見てみると、訓練場のような場所で兵士達が訓練していた。兵士達の動きをじっくり見てみると、その動きが物凄く遅く感じた。


「父上!僕、兵士の人達の訓練に参加してみたいです。」


 僕の突然の言葉に父上も母上も驚いたようだ。二人が顔を見合っている。


「そうだな。ユリウスも学園に入学する年だからな。なら騎士隊長のジョニーに言っておこう。」

「ありがとうございます。」

「ちょっと、あなた!ユーリちゃんは雷に打たれたばかりなのよ!無理に決まってるじゃない!」

「確かにそうだな。ユリウス。しばらく休んでそれからでどうだ?」

「わかりました。」

 
 その日の夕食は柔らかい肉の入ったスープとパンだ。病み上がりの僕のことを考えて作ってくれたようだ。そして7日が過ぎ、いよいよ訓練に参加する日が来た。


「ジョニー隊長。今日から訓練に参加させていただきます。よろしくお願いします。」

「わかりました。ユリウス様。ですが、我々の訓練は相当厳しいですよ。大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です。」


 列に並んでいる兵士達が何か言っている。


「あんな子どもを参加させて大丈夫なのか?」

「辺境伯様のご子息なんだろ?」

「ああ、そうらしいぜ!」

「ケガさせないようにしないとな。」

「大丈夫さ。1日で音を上げるだろうからな。」

「ちげぇねぇ。」


 そしていよいよ訓練が始まった。最初は体力づくりのランニングからだ。闘技場の中を50周走る。30周目に入ると息が切れ始める者達がいた。40周目になるとかなりスピードが落ち、最後の50周目を走りきるとみんな地面に倒れ込んだ。


「ゼーゼーゼー どういうことだ?ユリウス様は平然としているぞ!」

「うそだろ?ハーハーハー」


 みんなが不思議そうに僕を見ている。


“神様が言った通り、やっぱり奈落で身に着けた力はそのままなんだ~。でもこれじゃあ訓練にならないよ~。”


 物足りない僕はさらに走り始めた。兵士達は呆れた様子でその光景を見ている。


「おい!ユリウス様がまた走り始めたぞ!」

「おいおい!なんという体力だ!信じられん!」


 みんなの息が整ったのを確認して、ジョニー隊長が次の指示を出した。


「次は腹筋と腕立て伏せだ!始め!」


 僕は休む暇もなく、そのまま腹筋と腕立てを始めた。腕立て100回に腹筋100回がノルマだ。どの兵士達も汗びっしょりになっている。でも、物足りない僕は2セットこなした。すると、兵士達の中からまた声が聞こえてくる。


「おいおい!化け物なのか!」

「滅多なことを言うな!辺境伯様のご子息なんだぞ!」

「だってよ~!12歳であの体力ってありえないだろ?」

「多分、今までも相当鍛えていたんだろうさ。」


 窓の外から不思議そうに父が見ている。


「あなた、どうかしたの?」

「ああ、ちょっとユリウスを見ていたんだ。彼は本当に私達のユリウスなのか?」

「何を言ってるのよ。ユーリちゃんはユーリちゃんよ。」

「そうだな。」


 それから今度は剣の素振りだ。


ブン ブン ブン ブン


 僕が剣を振ると風を切る音が聞こえてくる。ジョニー隊長が言ってきた。


「凄いですな。ユリウス様。どこかで剣の訓練をしたことがあるんですか?」


 僕のユリウスとしての記憶の中に剣の訓練をした記憶はない。


「いいえ。ありませんよ。」


 するとジョニー隊長が少し怒ったように言ってきた。


「ユリウス様。ご冗談はおやめください!持久走も筋トレもユリウス様の体力は異常です。それにユリウス様の剣の振りも尋常ではありませんよ。どこかで相当鍛えていたとしか思えません!」


 さすがに困ってしまった。神様が本当に能力をそのままに転生させてくれたのかを確認したかっただけなのだ。


「ジョニー隊長。僕は神に誓って嘘は言っていません。本当に訓練したことはないんです。」


 僕の迫力に隊長も少し慌てたようだ。


「わかりました。ではそれだけの剣の振りができるのですから、対戦形式で訓練しましょう。」

「いいですよ。お願いします。」


 ジョニーは辺境伯の騎士隊長だ。それなりに強い。それに比べて僕は奈落にいた時より身体は小さいし力もない。今の僕の力がどこまで通用するのか試してみたかった。


「では、副隊長のセルバ。お前が審判をしろ!」

「はっ!」


 僕の身長は150センチほどだ。それに対してジョニー隊長の身長は180センチほどある。体格的にはかなり不利だ。だが、僕は奈落で大きな巨人とも戦ってきた。


「二人とも準備はいいですね?」

「はい。」

「おお。」

「では始め!」


 ジョニー隊長が剣を上段に構えて僕に突っ込んでくる。まるで黒狼だ。


タッタッタッタッ サッ

「でやー!」


 僕はそれを横に避けながら足をめがけて剣を振った。だが、簡単に剣で防がれた。


カッキン


 そしてジョニー隊長が素早く反転して、今度は逆袈裟で斬りかかってきた。


「でぃえー!」


 僕は大きくジャンプしてそれをよけた。すると、ジョニー隊長が声をかけてきた。


「その動き、相当訓練したものの動きです!やはりユリウス様はどこかで・・・」

「本能です!体が勝手に反応しているだけです!」

「まさか、そんなことが!あり得ません。」

「おしゃべりは終わりです。今度は行きますよ。ジョニー隊長。」


 僕はフェイントを入れながら素早く動いてジョニー隊長の横に回った。


バシッ


 さすがはジョニー隊長だ。体勢を崩しながら僕の剣を受け止めた。


「そこまで!」


 副隊長のセルバが試合を止めた。模擬戦を見ていた兵士達は茫然としていた。


「すげー!隊長と互角だぜ!」

「隊長はAランクのキングベアを一人で倒したんだろ?」

「ああ、そうだ。」

「その隊長と互角なんてありえねぇ。」


 僕はジョニー隊長の前まで行って頭を下げた。


「ありがとうございました。」


 ジョニー隊長は僕を疑念の目で見ていたが、、それを無視するしかできなかった。正直、僕は全力ではなくかなり手加減したのだ。もしかしたらジョニー隊長はそのことに気づいたのだろうか。


“これじゃあ、僕の訓練にはならないな。”


 訓練が終わった後、父上と母上がジョニー隊長と話をしているようだった。


「ジョニー。ユリウスはどうだった?」

「はい。彼の動きはとても素人とは思えません。どこかで訓練させていたんですか?」

「いいや。ユリウスは剣すら持ったことがないはずだ。」

「信じられません。ユリウス様も同じことをおっしゃっていましたが、彼はこの私よりも強いと思います。」


 母上は大喜びだったが父上は違っていた。


「どういうことだ?」

「最後の模擬戦ですが、彼は本気ではありませんでした。」

「やはりそうか。」

「はい。他の兵士の手前、私に勝つのを遠慮していたんだと思います。」

「なるほどな。」

「ユリウス様は本能だと。身体が勝手に動くのだといっていましたが、もしそれが本当なら伝説の勇者ではないかと思われます。」

「わかった。このことは秘密にしてくれ。」

「畏まりました。」
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