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第1話 彼女が出来た
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「と、時田雪和くん! 私と付き合ってください!」
――俺は今、夢を見ているんだろうか?
まだ若干の冷たさを残す風が肌を撫でる、三月の上旬。今日俺は、中学校を卒業する。
そんな旅立ちの日に、俺は校舎裏で一人の女の子と密会していた。
同学年で、この中学始まって以来の才女とまで謳われる女の子、宮本咲良。
容姿端麗で誰にでも優しく、天使やら聖母やら女神やらと、様々な異名で呼ばれる彼女が、今俺の前で顔を真っ赤にして手を差し出してきている。
これは何だろう……やっぱり夢なのだろうか? あの宮本さんが俺に告白? ハハハ、またまた御冗談を。
試しに自分の頬を抓ってみる。
うん、痛い。間違いなく痛い。
……え、マジ?
これは何だ。何かのドッキリか? この手を握ったら物陰に隠れている誰かが出てくるとか、そんな古典的かつ使い古されたいじめか? だとしたら俺に対しては効果的だから是非ともやめていただきたい。
……いや、現実逃避はよそう。あの宮本さんが、こんないじめに加担するはずがない。
つまり……本気⁉
「……あの、時田くん……?」
「うぇい!?」
「……お返事、聞かせてくれないかな……?」
もう返事!?
「えっと……その……」
垂れ目でおっとりとした目が緊張に揺れている。
だが俺を真っ直ぐ見上げる群青色の目は、本当に吸い込まれそうなほど美しい。
つややかな黒髪が風に揺れ、透き通るように白い肌は羞恥で赤らんでいた。
「……駄目、かな……?」
「駄目じゃない!」
っ……しまった、反射的に反応してしまった……もっと慎重に判断したかったんだが……ええい、なるようになれだ!
「……み、宮本咲良さん!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「……俺もずっと君が好きだった! 俺からもお願いします! 俺と付き合ってください!」
右手を出して、お辞儀の角度は90度。
今の俺から、宮本さんの顔は見えない。
でも、叫び声にもならないような音が聞こえ、俺の手を小さな手が包み込んだ。
「よ、よ、よっ、よろしくお願いしまふ! ……ぁぅ……」
……噛んだ……かわええ。
顔を上げると、宮本さんは目に涙を溜めて口をもにゅもにゅさせていた。何その表情、俺を尊死させる気か?
「……ゃ……」
や?
「……やったーーーーーーーーーー!!!!」
「うおっ!?」
俺の手を握ったままぴょんぴょん跳ねる宮本さん。そのせいで揺れる不自然に発達した胸のせいで目のやり場に困るんだが……。
なるべく見ないように目を逸らしていると、宮本さんの背後から二つの影が飛び出してきた。
「咲良っち、おめっとー!」
「咲良ちんやったね!」
「うんっ。二人に相談して、勇気出してよかったよ!」
……え、待って。この二人……。
「羽瀬紅葉さんに、峰夏海さん……?」
赤髪褐色肌が特徴的な羽瀬さんと、金髪ゆるふわヘアーが特徴的な峰さん。
どちらも宮本さんとは正反対の、いわゆるギャルだ。この二人と宮本さんが仲いいなんて聞いたこともないけど……。
「あ、紹介するね。実は二人とも小学生の頃からの幼馴染で、今日のことは二人に相談してたの」
「時田っち、ちっすちっす~」
「時田ちん、よろよろ~」
「はは……よ、よろしく」
正直、俺はこの二人のことが苦手だったりする。ノリというか、性格上の歯車が噛み合わないような感じがするのだ。
……ん? よろしく?
「よろしくって、どういう……」
「ああ、ウチら高校も同じだからさ」
「そうなの!?」
俺の進んだ学校は、進学校とは言えないがそれなりに偏差値の高い高校だ。
そこに普段勉強してない二人が入学するなんて……人は見かけによらないんだな。
「あー、今時田ちんあーしらのこと馬鹿にした~?」
「し、してないよ」
「これでもあーし、学年トップ10に入れるくらい頭いいんだよ?」
「マジで!?」
峰さん、そんなギャルギャルしい見た目なのに……!
「因みにウチは毎回ビリ! 咲良っちに手伝ってもらってギリギリ受かった!」
「……羽瀬さんは見た目通りで安心したよ」
「どういう意味だ!?」
そのまんまの意味です。
「むぅ……時田くんっ。私ともおしゃべりしましょうよ……!」
「ぁ……ご、ごめん、宮本さん」
ぁぁ、むくれる宮本さんかわええ……。
「あ……そうだ、今日ちょっと家の方で用事があるんだ……」
「……そう言えば、私も今日お母さんに大事な話があるって言われてた……せっかく付き合えたのに、一緒にいれないなんて……」
「まあまあ。高校も一緒なんだし……そ、それに彼氏彼女なんだから、さ」
「そ、そうだねっ……!」
顔を真っ赤にして頬を緩ませる宮本さん。それを見て、自分でも分かるくらい俺も頬が緩んでいる。
あああああ~~~……俺、本当に宮本さんと付き合うことになったんだ……!
「おーおー、初々しいな二人とも」
「ヒューヒュー!」
「ふ、二人ともやめてよもうっ」
とか言いながら俺の手を離さない宮本さん。
この温もりが、現実だと教えてくれる。
ああ……俺は今、幸せの絶頂にいる……。
――俺は今、夢を見ているんだろうか?
まだ若干の冷たさを残す風が肌を撫でる、三月の上旬。今日俺は、中学校を卒業する。
そんな旅立ちの日に、俺は校舎裏で一人の女の子と密会していた。
同学年で、この中学始まって以来の才女とまで謳われる女の子、宮本咲良。
容姿端麗で誰にでも優しく、天使やら聖母やら女神やらと、様々な異名で呼ばれる彼女が、今俺の前で顔を真っ赤にして手を差し出してきている。
これは何だろう……やっぱり夢なのだろうか? あの宮本さんが俺に告白? ハハハ、またまた御冗談を。
試しに自分の頬を抓ってみる。
うん、痛い。間違いなく痛い。
……え、マジ?
これは何だ。何かのドッキリか? この手を握ったら物陰に隠れている誰かが出てくるとか、そんな古典的かつ使い古されたいじめか? だとしたら俺に対しては効果的だから是非ともやめていただきたい。
……いや、現実逃避はよそう。あの宮本さんが、こんないじめに加担するはずがない。
つまり……本気⁉
「……あの、時田くん……?」
「うぇい!?」
「……お返事、聞かせてくれないかな……?」
もう返事!?
「えっと……その……」
垂れ目でおっとりとした目が緊張に揺れている。
だが俺を真っ直ぐ見上げる群青色の目は、本当に吸い込まれそうなほど美しい。
つややかな黒髪が風に揺れ、透き通るように白い肌は羞恥で赤らんでいた。
「……駄目、かな……?」
「駄目じゃない!」
っ……しまった、反射的に反応してしまった……もっと慎重に判断したかったんだが……ええい、なるようになれだ!
「……み、宮本咲良さん!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「……俺もずっと君が好きだった! 俺からもお願いします! 俺と付き合ってください!」
右手を出して、お辞儀の角度は90度。
今の俺から、宮本さんの顔は見えない。
でも、叫び声にもならないような音が聞こえ、俺の手を小さな手が包み込んだ。
「よ、よ、よっ、よろしくお願いしまふ! ……ぁぅ……」
……噛んだ……かわええ。
顔を上げると、宮本さんは目に涙を溜めて口をもにゅもにゅさせていた。何その表情、俺を尊死させる気か?
「……ゃ……」
や?
「……やったーーーーーーーーーー!!!!」
「うおっ!?」
俺の手を握ったままぴょんぴょん跳ねる宮本さん。そのせいで揺れる不自然に発達した胸のせいで目のやり場に困るんだが……。
なるべく見ないように目を逸らしていると、宮本さんの背後から二つの影が飛び出してきた。
「咲良っち、おめっとー!」
「咲良ちんやったね!」
「うんっ。二人に相談して、勇気出してよかったよ!」
……え、待って。この二人……。
「羽瀬紅葉さんに、峰夏海さん……?」
赤髪褐色肌が特徴的な羽瀬さんと、金髪ゆるふわヘアーが特徴的な峰さん。
どちらも宮本さんとは正反対の、いわゆるギャルだ。この二人と宮本さんが仲いいなんて聞いたこともないけど……。
「あ、紹介するね。実は二人とも小学生の頃からの幼馴染で、今日のことは二人に相談してたの」
「時田っち、ちっすちっす~」
「時田ちん、よろよろ~」
「はは……よ、よろしく」
正直、俺はこの二人のことが苦手だったりする。ノリというか、性格上の歯車が噛み合わないような感じがするのだ。
……ん? よろしく?
「よろしくって、どういう……」
「ああ、ウチら高校も同じだからさ」
「そうなの!?」
俺の進んだ学校は、進学校とは言えないがそれなりに偏差値の高い高校だ。
そこに普段勉強してない二人が入学するなんて……人は見かけによらないんだな。
「あー、今時田ちんあーしらのこと馬鹿にした~?」
「し、してないよ」
「これでもあーし、学年トップ10に入れるくらい頭いいんだよ?」
「マジで!?」
峰さん、そんなギャルギャルしい見た目なのに……!
「因みにウチは毎回ビリ! 咲良っちに手伝ってもらってギリギリ受かった!」
「……羽瀬さんは見た目通りで安心したよ」
「どういう意味だ!?」
そのまんまの意味です。
「むぅ……時田くんっ。私ともおしゃべりしましょうよ……!」
「ぁ……ご、ごめん、宮本さん」
ぁぁ、むくれる宮本さんかわええ……。
「あ……そうだ、今日ちょっと家の方で用事があるんだ……」
「……そう言えば、私も今日お母さんに大事な話があるって言われてた……せっかく付き合えたのに、一緒にいれないなんて……」
「まあまあ。高校も一緒なんだし……そ、それに彼氏彼女なんだから、さ」
「そ、そうだねっ……!」
顔を真っ赤にして頬を緩ませる宮本さん。それを見て、自分でも分かるくらい俺も頬が緩んでいる。
あああああ~~~……俺、本当に宮本さんと付き合うことになったんだ……!
「おーおー、初々しいな二人とも」
「ヒューヒュー!」
「ふ、二人ともやめてよもうっ」
とか言いながら俺の手を離さない宮本さん。
この温もりが、現実だと教えてくれる。
ああ……俺は今、幸せの絶頂にいる……。
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