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第一章・強欲の王ギルタレス

聖女たるもの清く正しく美しく2

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「司祭様、大変です! 教会で片付けをしていた修道女が突然消えてしまいました!」
「なんだとっ。どういうことだ!」
「五人で礼拝堂の片付けをしていたんですが、なんの音もなく一人が消えて、次に悲鳴が聞こえたと思ったら二人目もいなくなっていて、私たちは急いで外に逃げたんですが外に出ると二人しかいませんでしたっ……」

 修道女が血の気の引いた顔で説明した。
 教会で三人の行方不明者が発生した。もし悪魔の仕業なら、若い修道女たちが標的になっていることから色欲の王の眷属だと考えられる。しかし先ほど悪魔は討伐したばかりだ。浄化の炎で復活も阻止しているので、色欲の眷属が生き残っていたとは考えにくい……。

「ロロット、どういうつもりよ!!」

 バターンッ!!
 突然モーリスが怒鳴り込んできた。
 しかも胸ぐらを掴まれて凄まれる。

「悪魔の肉片を浄化しとけって言ったでしょ!? どうしてくれるのよ!!」
「どうするもなにも、教会には別の悪魔が潜んでいたってことですよ。そんなことより離してください」
「候補生のくせに舐めた口を」
「離してください」

 冷ややかに繰り返した。
 至近距離で見据えると、モーリスは舌打ちして胸ぐらを突き放す。

「責任とりなさいよね」
「なんの責任ですか。聖女サマなのに教会にもう一体いたのを気付かなかった御自分の責任ですか?」
「ッ、うるさいうるさい!! 司祭、これはどういうこと? 依頼では悪魔は一体だったはずよ!?」

 モーリスが今度は司祭に怒鳴りつけた。
 司祭は縮こまって何度も頭を下げる。

「申し訳ありません! たしかに私どもが確認した時は一体だけだったのですがっ……」
「この役立たず! まあいいわっ。これは追加依頼ということにさせてもらうから!」

 それは寄付金の追加という意味だ。
 もちろんそれは村の財政を圧迫するものだが聖女には関係ない。
 そもそも選択肢は最初からあってないようなものだ。財政圧迫は村人を苦しませるが、悪魔によって殺されるよりマシなのである。

「……分かりました。近隣の村からもかき集めます……」
「人聞きの悪いことを言わないで、私が命令したみたいじゃない。寄付は自発的に行われるものでしょ?」
「その通りです……」

 司祭の返答にモーリスは満足気に頷いた。

「素晴らしい奉仕です。司祭に神の御加護がありますように」

 モーリスは祝福を与えるように祈ると、私とナタリーを振り返って命令する。

「行くわよ。ロロット、次は私に逆らうんじゃないわよ」
「報酬次第です」

 淡々と答えた。これ以外の答えはない。
 モーリスは舌打ちすると次はナタリーを見た。

「ナタリー、今度足手纏あしでまといになったら学園に報告させてもらうから。あんた聖女向いてないわよ」
「す、すみません……」

 ナタリーは泣きそうな顔で縮こまった。
 先ほども思いつめた顔をしていたが、さらに追い詰められたよう。
 だからといって私がすることはない。聖女になるもならないも自分で決めることだ。
 こうして私たちは悪魔が出現した教会に向かったのだった。





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