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第三章・聖女養成学園
地獄の盟主、聖女養成学園に行く
しおりを挟む翌日の朝。
ヴェリタリアス教団聖女養成学園の校門を潜ると、私を出迎えたのは生徒たちの興味津々な歓声だった。
「ロロットさん、おはようございます!」
「おはようございます。ロロットさん、先日の悪魔討伐の話しは聞きました!」
「クレディア様にお言葉をかけられるなんてすごいです!」
「やっぱり特待生って特別なのね」
私に直接話しかけてくることはないけど遠巻きに歓声があがっている。
先日の悪魔討伐に上級悪魔が出現して聖女モーリスが第三療養施設送りになり、もう一人の助手だった聖女候補生ナタリーが自主退学したことが知られているのだ。それだけで生還したのが奇跡のような悪魔討伐だったと察することができる。でも今回はそれだけじゃない、枢機卿の慈悲の聖女クレディア・シーウェルに個人的に呼び出されたことも大きな理由だ。
しかし私は辟易してしまう。騒がしいのはあまり好きじゃない。
そう、好きじゃない。好きじゃないというのに。
「おい、昨日のグラタンとチーズスパゲッティとかいうの。なにかが足りないんだよな~。どう思う」
「……どう思うとか言われても、どうもこうもないわよ。グラタンはグラタン。スパゲッティはスパゲッティ。それ以下でも以上でもないでしょ」
「ちげーよバカ。違ったんだよ、なにかが違ったんだよ。グラタンは全体的にうまかった。でもチーズスパゲッティはチーズが絡んだ時とそうでない時にはっきりした違いがあった。そんなことも分かんねぇのか」
「……分かんないわよ」
分かってたまるかって気持ちでいっぱいだ。
ギルタレスは昨日からこうしてなにやらぶつぶつ考え込んでいた。
それというのも服従の首輪でひと悶着した後、私は騒ぐギルタレスを無視してレポート作成に取りかかった。しかし小腹が空いたので寮にあるカフェでデリバリーを注文したのだ。
これは特待生特権だった。特待生は学園と寮にあるすべてのカフェのメニューをデリバリーすることができるのだ。
私が注文したのはグラタン。ついでにギルタレスが注文したのはチーズスパゲッティ。ギルタレスの分まで注文したのは黙らせるため。クレディアへの恨み言がうるさすぎていい加減レポートの邪魔になっていたのだ。
ちょっとした子供騙しの注文だったけど、それが驚くべきことに効果があった。
注文用伝書鳩で注文してから少しして部屋に料理が運ばれ、ギルタレスは初めてチーズスパゲッティを食したのだ。
あれほど首輪のことで騒いでいたのに、チーズスパゲッティを食べてからギルタレスはぶつぶつ呟いてはなにやら考え込んでしまうようになった。
あまりに真剣なので私のグラタンをあげると、ひと口食べて「なにかが違う……。いやだが」とまたぶつぶつ。
どうやらなんらかの衝撃を受けたらしく、昨日からずっと考え込んでいるのだ。
よく知らないけど、とりあえず静かになったならどうでもいい。人間の私に悪魔は理解できない。
こうして教室に入ると講義が始まる。
講義の内容は私にとって退屈なものだ。実技も座学も養成学園入学前にすべて習得していた。
「……こんなつまんねぇ話しがなんの役に立つんだ?」
私の頭上から声がした。もちろんギルタレス。
ギルタレスは宙に浮いてごろごろしていた。もちろん誰にも見えていない。教壇の講師も存在すら気付いていない。
ギルタレスはごろごろしながらも相変わらず「あれはいったい……。いやしかし……」などとぶつぶつ言っていた。
座学が終わり、次は実技訓練の時間になる。
今日は学園外での討伐訓練だった。
「整列!!」
実技講師の男の号令に聖女候補生たちが整列する。もちろんこの実技講師の男も現役聖女だ。実技専門の外部講師で普段は第一線で活躍する実力派聖女らしい。だが。
「ここにいるのは学園の成績上位者らしいが、俺はお前たちを特別扱いするつもりはない!! お前らは所詮ぬるい学園でイキがってるだけの候補生、聖女なめてんじゃねぇぞ!!」
荒っぽくてうるさい男だった。
実力派聖女だという男が候補生相手に得意気に語りだす。
「俺はお前らとは違って常に前線で戦い、一人で中級悪魔を討伐したこともある! 上級悪魔は逃がしこそしたが瀕死まで追い込んでやったもんだ! あの時はさすがの俺もヒヤリとしたぜ」
最高に最悪だ。うるさいだけでなく嫌味なのだから始末に負えない。
ここに整列したのは私を含めて総勢三十名。ここにいる三十名は学園でも成績上位者ばかりで、卒業したら高位聖女の道が約束されているといっても過言ではない。
そんな私たちにどうしても嫌味を言いたい聖女はいるものだ。あのやたらと私に絡んできた聖女モーリスもその一人だったのだろう。
「ロロット・カーデリア! 前へ出ろ!」
「はい」
名指しされて一歩前へ。
視線を前に向けたまま背筋を伸ばし続ける。内心では最高にイラついてるけど億尾にも出さない。
講師が私の前までくると不躾な視線でじろじろ見てくる。
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