聖女候補生ロロット・カーデリアは地獄の盟主を飼い慣らす

蛮野晩

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第三章・聖女養成学園

地獄の盟主、聖女養成学園に行く2

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「お前が特待生のロロット・カーデリアか。慈悲の聖女クレディア様に直接御言葉をかけられたそうだな」
「はい」

 否定しない。事実だから。
 でもそれは講師にとってカチンとくるものだったらしい。

「聖女めんな!!」

 いきなり怒鳴られた。
 返事をしただけなのに聖女を舐めたことになるらしい。

「お前ごとき候補生がどうしてクレディア様に目を掛けられたのか知らんが、特待生ってだけで特別扱いを受けられると思うな! 俺からすれば特待生だろうが戦場では足手纏あしでまといの素人しろうとなんだよ! 調子に乗りやがって、死にてぇのか!!」
「…………」
「返事をしろ!!」
「はい」

 イライラする。最高にイライラする。
 同時に相手をするのもバカらしい低俗ていぞくさを感じる。これが第一線の実力派聖女とは笑わせる。
 講師は私に怒鳴れて満足したようで、背後に広がる廃墟はいきょの村を見た。

「全員注目! 今日はここで悪魔討伐訓練をする!!」

 悪魔討伐訓練。
 その言葉に私を抜いた候補生たちの間に緊張が走った。実戦だ。
 今、私たち候補生の目の前にあるのは廃墟の村。といってもヴェリタリアス教団が所有する模擬廃墟村だ。聖女候補生の育成のために教団が建設した訓練施設だった。

「この廃墟村施設に悪魔を配置した! 施設には下級悪魔多数と準中級悪魔三体が巣食っている。お前たちは制限時間内にここにいるすべての悪魔を討伐しろ! 討伐した数が多かった者を今日の訓練の成績優秀者とする!! なお、準中級悪魔を討伐した者は最優秀者として成績に反映させるぞ!!」

 講師はそこで言葉を切ると、整列する候補生たちを見て鼻で笑う。

「ああでも候補生ごときが準中級悪魔を相手にするのは無理があるかもしれんな。その時は無理せず下級のザコ狩りにいそしんでいなさい。特にめることはしないよ。君たちはまだ本物の戦場を知らない候補生だ」

 完全に馬鹿にしていた。
 ああイライラする。準中級悪魔三体を倒してスカッとしたい。
 でも候補生の中にはあからさまに安心した顔になった者もいた。
 準中級悪魔は中級以下だが、一人前の聖女でも討伐失敗で殺されることがあるレベルの悪魔なのだ。

「制限時間は今から一時間だ! 一時間以内にこの廃墟村施設の悪魔をすべて討伐してみせろ! 始め!!」

 号令と同時に聖女候補生たちが駆けだした。
 それぞれが祈りの詠唱で攻撃魔法陣を発動させる。
 私も施設に向かって歩きだそうとしたけど。

「待て、ロロット・カーデリア」
「なんでしょうか」
「クレディア様はどんな御方おかただったんだ? じかにお会いしたんだろ」
「……今その話し必要ですか?」
「必要だ。俺たち聖女は一般人を悪魔から守るために戦っている。そんな俺たちを統率する大聖女様や枢機卿様方のことを知りたいのは当然だろう!」
「訓練中なんですが」
「お前ほどの特待生だ。そんなに急がなくてもいいだろ」

 そう言って講師がニヤリと笑った。
 なにか企みを感じる嫌味な笑み。……ああなるほど、そういうこと。どうしても私を特待生の座から引きずり下ろしたいようだ。
 ため息がでた。私が特待生のまま学園を卒業したら間違いなくこの講師よりも出世する。出世することを約束された私が気に入らないのね。

「おい、村の悪魔が減ってるぞ。いいのか?」

 私の側にいたギルタレスが村を指差す。
 いいもなにもこの講師はそれが狙い。とことん私の足を引っ張りたいのだから。
 だから、講師に向かってにこりと笑いかける。嫌味なくらいにっこりと。

「そうですね。クレディア様にお呼ばれして枢機卿の執務室にお邪魔させていただきました。そこでおいしい紅茶とお菓子をご馳走になったんです。枢機卿との会話を無関係な一般聖女にお話しすることは出来ませんが、クレディア様は慈悲の聖女の名のとおりの方でした。でもちょっとおちゃめな一面もあったりして。あ、すみません。分かりませんよね、直接会ったことないようですから」

 最高に優しい口調で言い返してやった。
 隣でギルタレスが「は? あれが慈悲なら人間界に救いはねぇな」とか言ってて完全同意だけど、今は目の前の講師だ。

「っ、く、候補生の分際でっ……」

 講師が忌々いまいましげに舌打ちして、とても気分がいい。

「枢機卿についてですのでお話しできないこともありますが、教えられることなら教えてさしあげますよ?」
「もういい! さっさと訓練に戻れ!!」
「はい、では行ってきます」

 足止めしたのは自分だろ。
 内心言い返したいけど今は嫌味なほど優雅ゆうがに振る舞ってやる。その方がダメージを与えるからだ。
 こうして私はようやく廃墟村施設に足を踏み入れた。
 しかし下級悪魔はあらかた片付けられている。動物型や昆虫型の下級悪魔は候補生でも討伐できるものが多いので点数稼ぎになるのだ。

「あ、ロロットさんだ。今から参戦? 悪いね、この辺りはほとんど俺が片付けたから」
「そう」

 素っ気なく返して村の奥に向かっていく。
 名前も知らない男子生徒だった。この訓練に参加しているということは成績上位者なのだろうが、私より下ならわざわざ名前を覚える必要はない。
 村の入口周辺にすでに下級悪魔の影はない。奥へ行くとちらちら見かけるが、点数を稼ぎたい候補生たちが我先にと討伐している。
 ならば下級悪魔を狩ったところでなんの意味もない。

「ギルタレス」
「なんだ」
「あなたって他の悪魔からも見えてるの?」
「馬鹿か。下級悪魔や中級悪魔ていどが俺の姿を直に見れるわけねぇだろ。俺を誰だと思ってんだ」
「はいはい、じゃあ丁度いいからそのままでいて。あんたが姿を見せると討伐する悪魔がいなくなる」

 そう話しながら私は人気ひとけの少ない場所を見つけた。それは村の端にある二階建ての家屋だ。
 近づくとクラスメイトの女子が焦って声を掛けてくる。
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