聖女候補生ロロット・カーデリアは地獄の盟主を飼い慣らす

蛮野晩

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第三章・聖女養成学園

地獄の盟主、聖女養成学園に行く3

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「待って、それ以上近づかないほうがいいよ!」
「どうして」
「さっき五人くらい入っていったんだけど、まだ誰も出て来てないの。きっとここに準中級がいるんだと思う」
「そう、教えてくれてありがとう」

 やはり人気ひとけがないのは理由があった。
 準中級の一体はここにいる。

「ど、どこ行くの! 私の話し聞いてた!? 準中級がいるんだってば!」
「だから行くんでしょ? 今、訓練中なんだけど」

 当然のように言うと廃墟の家屋に向かって歩く。
 傾いた戸を開けると、屋内は薄暗くシンッと静まり返っていた。
 わざわざ廃墟を作っただけあって壊れた家具にはうっすらほこりが積もっている。
 一階の部屋をひとつひとつ確認して二階に上がろうとすると。

「あ、ロロットさんっ。ロロットさん……!」

 階段の影から小声で呼ばれた。
 見ると階段下には五人の学生の影。どうやら先に侵入して帰ってこなくなったとかいう学生だ。

「なにしてんの?」

 不審に思って聞くと五人は慌てて私を引っ張り込んだ。
 ここには男子生徒が三人、女子生徒が二人いた。
 強引なそれは不快極まりないけど、五人は焦った様子できょろきょろする。

「シーッ、ロロットさん静かにっ」
「二階に準中級悪魔がいるのっ。気付かれるでしょ?」
「気付かれたらどうするのよ!」
「は? その悪魔を討伐するんじゃないの?」

 意味が分からない。
 いぶかしむ私に五人は苦笑して顔を見合わせた。

「だから作戦立ててるんじゃない。一人じゃ無理でも五人なら準中級にも対抗できるはずっ。まず三人で悪魔を誘導して追い込んで、そこを隠れていた二人がいっきに攻撃魔法を畳みかけて討伐する。どう? コレットさんも参加する?」
「コレットさんが仲間になってくれれば心強いよ」
「ええ……」

 ……誘われてしまった。
 側にいるギルタレスがニヤニヤしながら私を見ている。私がこういうの苦手なのを分かっているのだ。
 ため息をつく。もちろん断るつもりだ。
 でも断ろうとした時、ギシリッ、ギシリッ……。
 二階の廊下を誰かが歩く音がした。
 候補生たちが息を飲む。そう、悪魔だ。
 悪魔が移動する足音に五人の候補生たちは緊張感を高める。

「……行こう。今しかないっ」
「こっちは五人もいるんだから大丈夫っ」

 五人は励まし合うと作戦行動を開始する。
 二人の候補生が隠れながら二階に行った。悪魔の追い込み地点に先回りして身を潜めるのだ。その間、残りの三人が悪魔に攻撃を仕掛けて追い込んでいく。
 戦闘が始まってしまった。
 ギルタレスが二階を見上げながら言う。

先越さきこされたな。いいのか?」
「いいもなにも、チームの作戦中に押し入ってもね……」

 そう答えながら階段を上がっていく。
 すると二階の廊下の奥に準中級悪魔が追い込まれていた。
 悪魔は五人の候補生に囲まれて集中攻撃を受けている。

「行け! 押しまくれ!」
「俺たちだって討伐できるんだってとこをみせてやれ!!」
「頑張って! あともうちょっとっ、あともうちょっとだよ!!」

 五人はダメージを受けながらも必死に応戦していた。
 チームで連携しながら声を掛け合い、まさに白熱した戦いというやつだ。
 こうして五人の候補生は準中級悪魔を追い込み、苦戦しながらも浄化の炎で跡形もなく消滅させた。

「や、やったー! 私たちが討伐したのよ!!」
「準中級に勝った! 勝ったぞ!!」
「俺たち候補生でもここまで出来るってことだ!」
「よしっ、これで俺たちが上位に食い込んだはずだ!」

 五人がおおはしゃぎで喜んでいる。
 一人の男子生徒が私に気付くと嬉しそうに駆け寄ってきた。

「ロロットさん見てた!? 俺たちもやったぜ! いっつもロロットさんばっかりだったけど、俺たちだって力を合わせれば準中級を討伐できるんだ!」
「ああ、そうだ! それにこれからもっと強くなるぜ! 今より強くなったらロロットさんみたいに一人でも討伐できるようになる!」

 候補生たちがキラキラした顔で言った。
 悪魔討伐成功に昂揚して肩を組んだりハイタッチしたり、はっきりいって……暑苦しい。
 なんとなく目を据わらせてしまう私に、ギルタレスは「お前こういうのも嫌いだろ」とニヤニヤしながら言った。私が困っているととても楽しそうな顔をするのだ、この悪魔は。
 こうして準中級が無事に討伐されたが、その時。

「キャーーー!!」
「準中級が出た! 応援を急いでっ、早く!!」
「準中級二体を確認! 応援を急げ、みんなで取り囲め!!」

 外から悲鳴が聞こえてきた。
 どうやら準中級悪魔二体が出現したようだ。
 村全体がにわかに騒がしくなって、ここにいる候補生五人も興奮したように意気込む。

「行こうぜ! さっきみたいに連携すれば絶対討伐できるって!」
「そうそう、準中級なら俺たちでも討伐できるって分かっただろ!?」

 先ほどの討伐成功に候補生たちが強気になっている。
 討伐前は恐怖に青褪あおざめていた顔も今はキラキラして自信に溢れていた。

「早く行こうぜ、出遅れる!」
「このチャンス逃してたまるかよ!」
「ロロットさんも急いだほうがいいよ! 早くしないと討伐終わっちゃうから!」

 そう言うと五人は高揚こうようしたまま外に飛び出していった。
 準中級悪魔はあと二体。この二体を討伐すればさっきの五人は討伐訓練優秀者となり、学園の成績上位者の中でもさらに上位へとおどり出ることができるだろう。
 今まで逃げ回っていた他の候補生もその勢いに触発されて準中級悪魔に立ち向かいだすかもしれない。
 ……それは困る。獲物が減る。
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