冷遇された斎王の姉ですが、じつは天界の天妃でした~天妃を取り戻せたが、今まで裏切ってきたせいで愛してるを信じてもらえない。どうすればいい?~

蛮野晩

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地上は私の第二の故郷。慣れていますから

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 地上、きょうみやこ

 地上の京の都は御所ごしょを中心にして造られた都です。
 御所の周りには貴族が暮らす寝殿造しんでんづくりの屋敷が整然と建ち並んでいました。その一角に都でも稀代の陰陽師と名高い黒緋の屋敷があります。

 そこが私たちが地上で暮らしている寝殿造りの屋敷でした。
 そう、地上では私たちが天上の天帝や天妃であることを秘密にして陰陽師ということにしているのです。

 そしてさっそく黒緋は陰陽師として御所へおもむくことになりました。
 みかどや貴族の要望でもありますが、それ以上に情報収集が目的です。御所の役所には各地からあらゆる情報が集まってくるので情報収集にはうってつけの場所なのです。その情報は噂話から公式文書まで多岐にわたりますが、今は少しでも各地で大発生しているイナゴの情報を集めなければいけませんでした。

「黒緋様、いってらっしゃいませ」

 私は正門まで黒緋を見送りです。
 手を繋いでいる紫紺にも促しました。

「紫紺、あなたもご挨拶してください」
「わかった。ちちうえ、いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる。鶯の言うことをよく聞くんだぞ?」
「うん、できる」
「いい子だ」

 黒緋はそう言って紫紺の頭を撫でると、次は私が抱っこしている青藍を見ます。
 青藍は「ちゅちゅちゅっ」と指吸いをして見送りです。

「あうあ~。ちゅちゅちゅっ」
「行ってくる。お前もいい子でいろ。泣きすぎるなよ?」
「あい」

 青藍も上手にお返事できました。
 きっと今日もたくさん泣くでしょうがいいのです。元気な証拠です。

「あとは頼んだぞ」

 黒緋が牛車ぎっしゃに乗り込みました。
 御所へ向かう牛車を見送ると、私は紫紺と青藍と一緒に屋敷に戻ります。

 今日は予定がたくさんつまっていました。
 久しぶりに地上の屋敷に来たので朝から炊事と掃除です。黒緋は式神にさせればいいと言いますが、自分でできることは少しでも自分でしたかったのです。
 天上では私の身の回りの世話は女官がしてくれるので、地上でくらい自分のことは自分でしたいのです。天妃の記憶が戻るまではずっと下働きをしていたので、体を動かしていなければなんだか落ち着かなくて。

「さあ、紫紺と青藍も手伝ってください。昼までにお掃除を終わらせてしまいましょう」
「うん、オレがんばれる! いっぱいきれいにするぞ!」

 紫紺が元気に返事をすると、抱っこしている青藍も「あいっ」と楽しそうに手を上げてくれます。
 こうして私たちの地上での生活が始まるのでした。




 昼過ぎ。
 私は外出する支度を整えると奥の間を覗きました。
 そこでは紫紺が手習てならいをし、青藍がスヤスヤお昼寝しています。

「青藍は眠ってしまったんですね」
「うん、さっきねた。ははうえ、どっかいくのか?」
「はい、夕餉ゆうげの買い物に行ってきます。あなた達も一緒にと思ったんですが青藍は眠ってしまったんですね」
「それなら、おこす?」
「ふふふ、それは可哀想ですよ。こんなに気持ちよさそうに眠っています」

 青藍はとっても気持ちよさそうに眠っていました。「ぷー、ぷー」とかわいらしい寝言。時々「ちゅちゅちゅっ」と指を吸って、小さな口からはよだれが垂れています。ぐっすりですね。

「紫紺、お留守番をお願いできますか? 青藍を見ててあげてください」
「えー、オレもいきたいのに」
「また連れていってあげます。今夜はあなたの好きなものを作ってあげますから」
「……わかった。それならがまんする」
「いい子ですね」

 いい子いい子と紫紺の頭を撫でてあげました。
 私は式神に紫紺と青藍の見守りを命じ、一人で都のいちへと行くのでした。




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