5 / 17
あなたは私に不思議なことを聞くのですね
しおりを挟む
「あなたはよく一人で地上に行くじゃないですか」
「今はそんなに行ってないだろ」
黒緋が少し言い訳じみた口調で言いました。
彼らしからぬ焦った様子に首を傾げてしまいます。
たしかに黒緋は以前より地上へ行く頻度が減りました。
私が遠ざけられていた頃はよく地上に遊びに行っていたのです。私が出迎えると機嫌を損ねてしまうこともありました。
でも四凶を倒して地上から天上に帰ってきてからは、黒緋は地上よりも後宮にいる私のところへ来てくれます。地上へ行かなくなったわけではありませんが、「顔を見に来た」と私がいる後宮へ会いに来てくれるのです。
「そうですけど。……黒緋様?」
うかがうように黒緋の顔を見つめました。
すると目が合った黒緋が少し苦い顔になってしまいます。……なにか余計なことを言ってしまったでしょうか。
内心心配してしまいましたが、黒緋もうかがうように私を見ました。そして。
「……嫌だったか? その、俺が地上に一人で行くのは」
「え、いきなりどうしました?」
「聞きたい。どうだったんだ」
「えっと……」
困りました。急にそんなことを聞かれても困ります。
黒緋は嫌だったのかと聞きますが、正直なところ他の妻室のところに行かれるよりはよかったです。
でもそんなことは言いたくありませんでした。嫉妬深い女だと思われて、面倒な女だと疎まれてしまうかもしれません。あげく、以前のように後宮に新たな妻を迎えられるのは絶対に嫌でした。
だから黒緋が好みそうな返事を考え、そっと笑いかけました。
「その時の私は地上に興味がなかったので、黒緋様が一人で地上へ行ってしまうことを不思議に思っていました。でも、あなたが地上の人間を深く愛していることは分かっていたので嫌ではありませんでしたよ。地上のことを語るあなたの笑顔を愛していますから」
嘘ではありません。これもほんとう。
ただ他の妻室のところに行ってしまうのが嫌だったと、それは言わないだけ。
「今は私も地上が大好きですけどね」
「そうか」
「はい」
冗談めかした私に黒緋が安心した顔になりました。
その様子に私も内心安堵します。正解だったようですね。また遠ざけられてしまうのは絶対嫌ですから。
「黒緋様、どうか私も地上に行かせてください。地上が飢饉になってしまうかもしれないのに放っておけません」
そう言って抱っこしていた青藍を横に置くと、床に両手をついて深々と頭を下げました。
「黒緋様、どうかよろしくお願いします」
私は改めてお願いします。
そんな私を黒緋は黙って見ていましたが、少しして長い息をつきました。
「顔を上げろ」
「いいえ、どうしても許可をいただきたく」
駄目です。許可をいただけるまで頭をあげるつもりはありません。
頑なな私に黒緋が苦笑しました。
「許可というが、お前に願われれば許すしかないだろ。思案したところで意味はない」
「え、それじゃあ……」
ハッとして顔を上げました。
すると目が合って、ああ頬が熱くなる。
だって黒緋は思いがけないほど優しい目で私を見ていたのです。
そんな目で見られると甘い誤解をしてしまいそうになって、慌てて首を横に振りました。黒緋は天帝です。いくら私が天妃でも調子に乗ってはいけません。
私は気を取り直して黒緋を見つめました。
「では、行ってもいいんですね!?」
「ただし俺も一緒だ。それなら許可する」
「え、あなたと一緒に!?」
「嫌か?」
「とんでもない! 嬉しいです!」
信じられない申し出に胸が高まりました。
またあなたと地上にいけるなんて、こんなに嬉しいことはありません。
「ちちうえ、ははうえ、オレもいきたい! オレもいっしょにいく!」
紫紺が「ハイッ、ハイッ」と手を上げて訴えてきます。
それを見ていた青藍も「あいっ、あいっ」と手を上げる。もちろん意味は分かっていませんが、紫紺の真似をしているのですね。
「もちろんです。紫紺と青藍も一緒に行きましょう。黒緋様、いいですよね?」
「ああ、最初からそのつもりだ」
黒緋の嬉しい返事に紫紺はやったー! とおおはしゃぎ。
「せいらん、ちじょうにおでかけだ!」
「あう?」
「お・で・か・け! やったーだ!」
そう言って紫紺が青藍にバンザイの恰好をさせています。
青藍は訳が分からないながらも楽しい気持ちになって、「あいあいあ~」と両腕をあげていました。
こうして私たちは地上へ行けることになったのでした。
「今はそんなに行ってないだろ」
黒緋が少し言い訳じみた口調で言いました。
彼らしからぬ焦った様子に首を傾げてしまいます。
たしかに黒緋は以前より地上へ行く頻度が減りました。
私が遠ざけられていた頃はよく地上に遊びに行っていたのです。私が出迎えると機嫌を損ねてしまうこともありました。
でも四凶を倒して地上から天上に帰ってきてからは、黒緋は地上よりも後宮にいる私のところへ来てくれます。地上へ行かなくなったわけではありませんが、「顔を見に来た」と私がいる後宮へ会いに来てくれるのです。
「そうですけど。……黒緋様?」
うかがうように黒緋の顔を見つめました。
すると目が合った黒緋が少し苦い顔になってしまいます。……なにか余計なことを言ってしまったでしょうか。
内心心配してしまいましたが、黒緋もうかがうように私を見ました。そして。
「……嫌だったか? その、俺が地上に一人で行くのは」
「え、いきなりどうしました?」
「聞きたい。どうだったんだ」
「えっと……」
困りました。急にそんなことを聞かれても困ります。
黒緋は嫌だったのかと聞きますが、正直なところ他の妻室のところに行かれるよりはよかったです。
でもそんなことは言いたくありませんでした。嫉妬深い女だと思われて、面倒な女だと疎まれてしまうかもしれません。あげく、以前のように後宮に新たな妻を迎えられるのは絶対に嫌でした。
だから黒緋が好みそうな返事を考え、そっと笑いかけました。
「その時の私は地上に興味がなかったので、黒緋様が一人で地上へ行ってしまうことを不思議に思っていました。でも、あなたが地上の人間を深く愛していることは分かっていたので嫌ではありませんでしたよ。地上のことを語るあなたの笑顔を愛していますから」
嘘ではありません。これもほんとう。
ただ他の妻室のところに行ってしまうのが嫌だったと、それは言わないだけ。
「今は私も地上が大好きですけどね」
「そうか」
「はい」
冗談めかした私に黒緋が安心した顔になりました。
その様子に私も内心安堵します。正解だったようですね。また遠ざけられてしまうのは絶対嫌ですから。
「黒緋様、どうか私も地上に行かせてください。地上が飢饉になってしまうかもしれないのに放っておけません」
そう言って抱っこしていた青藍を横に置くと、床に両手をついて深々と頭を下げました。
「黒緋様、どうかよろしくお願いします」
私は改めてお願いします。
そんな私を黒緋は黙って見ていましたが、少しして長い息をつきました。
「顔を上げろ」
「いいえ、どうしても許可をいただきたく」
駄目です。許可をいただけるまで頭をあげるつもりはありません。
頑なな私に黒緋が苦笑しました。
「許可というが、お前に願われれば許すしかないだろ。思案したところで意味はない」
「え、それじゃあ……」
ハッとして顔を上げました。
すると目が合って、ああ頬が熱くなる。
だって黒緋は思いがけないほど優しい目で私を見ていたのです。
そんな目で見られると甘い誤解をしてしまいそうになって、慌てて首を横に振りました。黒緋は天帝です。いくら私が天妃でも調子に乗ってはいけません。
私は気を取り直して黒緋を見つめました。
「では、行ってもいいんですね!?」
「ただし俺も一緒だ。それなら許可する」
「え、あなたと一緒に!?」
「嫌か?」
「とんでもない! 嬉しいです!」
信じられない申し出に胸が高まりました。
またあなたと地上にいけるなんて、こんなに嬉しいことはありません。
「ちちうえ、ははうえ、オレもいきたい! オレもいっしょにいく!」
紫紺が「ハイッ、ハイッ」と手を上げて訴えてきます。
それを見ていた青藍も「あいっ、あいっ」と手を上げる。もちろん意味は分かっていませんが、紫紺の真似をしているのですね。
「もちろんです。紫紺と青藍も一緒に行きましょう。黒緋様、いいですよね?」
「ああ、最初からそのつもりだ」
黒緋の嬉しい返事に紫紺はやったー! とおおはしゃぎ。
「せいらん、ちじょうにおでかけだ!」
「あう?」
「お・で・か・け! やったーだ!」
そう言って紫紺が青藍にバンザイの恰好をさせています。
青藍は訳が分からないながらも楽しい気持ちになって、「あいあいあ~」と両腕をあげていました。
こうして私たちは地上へ行けることになったのでした。
0
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる