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伊坂さんが学園を発ってから5日経った。
今まで1日に3回は必ず顔を合わせていたからなんとなく違和感を覚えるけど、それ以外にはこれといった変化はない。
…………あくまでも、変化は。
「おはようございます」
「おや、おはようございます」
図書館で顔を合わせると挨拶を交わしたり軽く話したりする間柄の人が、伊坂さんが置いていったリストに載っていた場合はどうすれば??
いや、今まで通りの対応をするしかないんだけど。
近付くなと言われたとはいえ、何をもってそう言っているのかはっきりと分からない以上、不自然にならないように関係を維持した方がいい。ただし、今以上に親しくならないように。
言いたいことは多分そういうことだ。
まあ僕自身、あれに載っていた人物と親しくしたいとは到底思えないんだけど。
それくらい、あのリストの内容は酷かったんだ。
――――――リストの内容、なんだけど。
言ってしまえば『その人物』のプロフィールに過ぎないんだけど、その、なんというか。
伊坂さんの能力が情報・解析系に偏っていることは知っているけど、これは、なんというかあまりにも、そう。詳し過ぎた。
一人に対し3~6ページに纏められているんだけど、まず1ページ目は顔写真、名前、所属クラス、生年月日、現住所などの生徒手帳にも乗っている情報。それに加えて血液型や身長・体重、好き・嫌いな食べ物や教科なんかの校内で少し調べれば分かるようなこと。ごく普通のプロフィール情報と言える。
問題はその後の、2ページ目から。
その人物を取り巻く人間関係(家族含む)とその事情、初等部1年生からの成績、判明しているスキルや予測される身体能力の傾向、使用武器やバトルスタイルなどといった明らかに一個人が知っているには問題がありそうな個人情報の塊だった。
正直に言って戦慄した。これを僕が所持していることがバレたら消されるんじゃないかと割と本気で恐ろしくなった。
なので普段は僕以外に手出しができないところに厳重に封印というか押し込んである。内容が衝撃的過ぎてそうそう忘れそうにないし。
…………そう、衝撃だったんだ。
『記憶』で見知った人達の現在の状況に、あまりの違いに愕然とするしかなかった。
勿論殆ど変わらない人もいた。だけど違う人はどこまでも違っていて、苦労した、などという軽い言葉で終わらせるにはあまりにも酷過ぎる経歴の人も複数いて。
既に知ってしまった以上どうしようもないけど、出来るなら知りたくはなかった。胸に重石が乗ったような。これ以上リストの内容を読みたくないと思うほどのもやもやとした感覚。
でもちゃんと見て察して自衛しろと伊坂さんが言っていたから、気を取り直して次のページを読んで。
読みだしてからの全てが綺麗に吹き飛んだ。
いや、本当に。だってとにかく酷かった。覚えた同情が一瞬で失せるレベルで。
同情よりも嫌悪や軽蔑が勝った、とも言える。
後半のページの内容は、学園内での恋愛関連の遍歴だった。
ぶっちゃけると最初に読んだ人があまりにも酷過ぎて、それ以降の人達はほぼそこらの情報は読んでいない。気を付けなければならない相手さえ知っていれば、近付かなければいいだけなのだから。なにせ精神負担が酷過ぎる。
多分そういう逃げの手段をとったことを後々怒られそうだが、ちょっと、あれは酷過ぎてこれ以上頭に入れたくなかったんだ。
――――――だってリストに載っていたのが6割くらい『記憶』で見知った人達だったから。
元々『記憶』で見知った人達とは関わらないように立ち回っていた。
だから、これからもそうすればいいだけ。
これ以上『記憶』を今に上書きされたくない。
まあ既に関わりがある人達のものだけは我慢して読んだけど。流石に知ってないとまずそうだから。
幸いにして交流して知った情報とほぼ変わらなかった。だからこその『今まで通り』という対応だ。
あの人並みに酷かったら少しずつフェードアウトする方向で動いただろう。
彼らがまともで、本当に良かった。
今まで1日に3回は必ず顔を合わせていたからなんとなく違和感を覚えるけど、それ以外にはこれといった変化はない。
…………あくまでも、変化は。
「おはようございます」
「おや、おはようございます」
図書館で顔を合わせると挨拶を交わしたり軽く話したりする間柄の人が、伊坂さんが置いていったリストに載っていた場合はどうすれば??
いや、今まで通りの対応をするしかないんだけど。
近付くなと言われたとはいえ、何をもってそう言っているのかはっきりと分からない以上、不自然にならないように関係を維持した方がいい。ただし、今以上に親しくならないように。
言いたいことは多分そういうことだ。
まあ僕自身、あれに載っていた人物と親しくしたいとは到底思えないんだけど。
それくらい、あのリストの内容は酷かったんだ。
――――――リストの内容、なんだけど。
言ってしまえば『その人物』のプロフィールに過ぎないんだけど、その、なんというか。
伊坂さんの能力が情報・解析系に偏っていることは知っているけど、これは、なんというかあまりにも、そう。詳し過ぎた。
一人に対し3~6ページに纏められているんだけど、まず1ページ目は顔写真、名前、所属クラス、生年月日、現住所などの生徒手帳にも乗っている情報。それに加えて血液型や身長・体重、好き・嫌いな食べ物や教科なんかの校内で少し調べれば分かるようなこと。ごく普通のプロフィール情報と言える。
問題はその後の、2ページ目から。
その人物を取り巻く人間関係(家族含む)とその事情、初等部1年生からの成績、判明しているスキルや予測される身体能力の傾向、使用武器やバトルスタイルなどといった明らかに一個人が知っているには問題がありそうな個人情報の塊だった。
正直に言って戦慄した。これを僕が所持していることがバレたら消されるんじゃないかと割と本気で恐ろしくなった。
なので普段は僕以外に手出しができないところに厳重に封印というか押し込んである。内容が衝撃的過ぎてそうそう忘れそうにないし。
…………そう、衝撃だったんだ。
『記憶』で見知った人達の現在の状況に、あまりの違いに愕然とするしかなかった。
勿論殆ど変わらない人もいた。だけど違う人はどこまでも違っていて、苦労した、などという軽い言葉で終わらせるにはあまりにも酷過ぎる経歴の人も複数いて。
既に知ってしまった以上どうしようもないけど、出来るなら知りたくはなかった。胸に重石が乗ったような。これ以上リストの内容を読みたくないと思うほどのもやもやとした感覚。
でもちゃんと見て察して自衛しろと伊坂さんが言っていたから、気を取り直して次のページを読んで。
読みだしてからの全てが綺麗に吹き飛んだ。
いや、本当に。だってとにかく酷かった。覚えた同情が一瞬で失せるレベルで。
同情よりも嫌悪や軽蔑が勝った、とも言える。
後半のページの内容は、学園内での恋愛関連の遍歴だった。
ぶっちゃけると最初に読んだ人があまりにも酷過ぎて、それ以降の人達はほぼそこらの情報は読んでいない。気を付けなければならない相手さえ知っていれば、近付かなければいいだけなのだから。なにせ精神負担が酷過ぎる。
多分そういう逃げの手段をとったことを後々怒られそうだが、ちょっと、あれは酷過ぎてこれ以上頭に入れたくなかったんだ。
――――――だってリストに載っていたのが6割くらい『記憶』で見知った人達だったから。
元々『記憶』で見知った人達とは関わらないように立ち回っていた。
だから、これからもそうすればいいだけ。
これ以上『記憶』を今に上書きされたくない。
まあ既に関わりがある人達のものだけは我慢して読んだけど。流石に知ってないとまずそうだから。
幸いにして交流して知った情報とほぼ変わらなかった。だからこその『今まで通り』という対応だ。
あの人並みに酷かったら少しずつフェードアウトする方向で動いただろう。
彼らがまともで、本当に良かった。
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