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一部をどうにかしたところで擦り寄ってくる奴は減らない。
だから今日もこうして、図書館に身を潜めていた。
広いし入り組んでいて隠れるのに最適だから。
他意があったわけじゃない。
――――――それを聞いたのは完全に偶然。
俺がすぐそこに居ることに気付かずそいつらが話し出しただけ。
いつもなら見つからないようにその場を離れるんだけど、そのうちの一人が見覚えのあるクソ面倒なやつだったから話を盗み聞きした。
内容としては想像通りというか、よくある話。誰かを人気のない所に連れ込んでどうこうする、ってやつ。
またいつものか、って放っておこうと思った。
だけど。
その誰かっていうのがどうも、あの子のことみたいだったから。
…………探して、声を掛ける前に意外な相手に連れて行かれたけど。
教師だから問題ないだろうけど、簡単についていくのはどうかと思う。
何か一気に気が削がれてどうでもよくなった。
俺がいちいち教えてやる理由なくない?何があっても自己責任、相手を見定められなかった自業自得だろ。
そう考えてたら、戻ってきたところに遭遇した。
タイミングが良過ぎて少しイラッとしたからわざと驚かしてやったら、人馴れのしない野良猫みたいな反応をされた。
警戒する様子も猫っぽいな。あの、毛がぶわってなって低い声で唸ってる感じ。
それが面白くて笑ったら機嫌を損ねたみたいでぷりぷりした様子で離れていくから、後ろから追いかけた。
さてどう切り出すか。となったところで、そいつらが寄ってきた。
そいつらは俺を気にした様子で早口で伝言とやらを告げ、さっさと撤退していった。
馬鹿なんだろうか。
いや、あいつらがどうなろうとどうでもいいけど。
多分どうにかなるんだろう。上がアレだし。
流石にこうなるとどういう状況かあの子も理解したらしく困惑した様子で話しかけてきた。
まあその通りなんだけど俺自身は殆んど何もしてないんだよな。タイミングがすこぶる良かっただけで。
だから惚けてその場から離れた。
――――――時間を確認したらあいつらを目撃してから1時間以上経っていた。
何やってんだ、と思った。
柄にないことをしたという自覚もある。
用無しだと自分で判断し、もう関わる気もなかった子を助けるような真似。
理由ならいくつか思い付く。
情報の礼とか、恩を売っておけば使えるかもしれないとか、あの養護教諭とどういう関係か気になったとか、あいつらの後ろに居る奴が気に入らない、とか。
俺の考えとしては、なんらおかしくない。
だけどそれらは全て探して見つけた理由。まるで言い訳をしているみたいだ。
あの子に関わる為の、自分を納得させるための言い訳。
意味が分からない。
どうして俺が、あの子に関わらなきゃいけない?
何も出来なそうな、頭脳しか使えなさそうな子に。
正直顔だってちゃんと覚えていない。
不快だ。
なんなんだ、この意味の分からない感覚は。
もやもやして苛々する。
…………気は進まないけど誰か適当に掴まえて発散させるか。
その後はダンジョンに潜って30階層より下の攻略の準備をしよう。
あの子は危険だのなんだの言っていたけどどうせ過大解釈か心配のし過ぎだろう。
「――――……くそ」
思考の流れから、あの時のことを思い出す。
俺の力量を知らない癖に、無理だと決めつけて止めようとしていたあの子。
ただ、それは侮っている訳ではなく……単に死んでほしくないという純粋な心配のようだった。
名前も顔も知らない、あっちからすれば無理に付き合わされている、上級生だから逆らえないだけの、他人。
それなのに。
幼い頃から疎まれ死を望まれて。
学園に来てからは打算ばかりの関係で利用し利用されるだけ。
何の見返りも求めず俺を心配してくれるような相手は、誰一人としていなかった。
誰だってそうだったから、そんなものだと思っていた。
だからそんなのは、初めてだったんだ。
ああそうか、だから、こんなにも。
でもきっと、あの子は何も考えていない。
ただ単にあの子からしたら無謀な行為に見える行動を止めたかっただけで、相手が誰であってもそうしただろう。
俺に限った話では、ない。
「…………チッ」
苛つく。
ただ少し琴線に触れただけなのに。
自分から手を伸ばす?俺が?
自分以外全て切り捨てると、血の繋がった連中と縁を切った日に決めたはずなのに。
だから今日もこうして、図書館に身を潜めていた。
広いし入り組んでいて隠れるのに最適だから。
他意があったわけじゃない。
――――――それを聞いたのは完全に偶然。
俺がすぐそこに居ることに気付かずそいつらが話し出しただけ。
いつもなら見つからないようにその場を離れるんだけど、そのうちの一人が見覚えのあるクソ面倒なやつだったから話を盗み聞きした。
内容としては想像通りというか、よくある話。誰かを人気のない所に連れ込んでどうこうする、ってやつ。
またいつものか、って放っておこうと思った。
だけど。
その誰かっていうのがどうも、あの子のことみたいだったから。
…………探して、声を掛ける前に意外な相手に連れて行かれたけど。
教師だから問題ないだろうけど、簡単についていくのはどうかと思う。
何か一気に気が削がれてどうでもよくなった。
俺がいちいち教えてやる理由なくない?何があっても自己責任、相手を見定められなかった自業自得だろ。
そう考えてたら、戻ってきたところに遭遇した。
タイミングが良過ぎて少しイラッとしたからわざと驚かしてやったら、人馴れのしない野良猫みたいな反応をされた。
警戒する様子も猫っぽいな。あの、毛がぶわってなって低い声で唸ってる感じ。
それが面白くて笑ったら機嫌を損ねたみたいでぷりぷりした様子で離れていくから、後ろから追いかけた。
さてどう切り出すか。となったところで、そいつらが寄ってきた。
そいつらは俺を気にした様子で早口で伝言とやらを告げ、さっさと撤退していった。
馬鹿なんだろうか。
いや、あいつらがどうなろうとどうでもいいけど。
多分どうにかなるんだろう。上がアレだし。
流石にこうなるとどういう状況かあの子も理解したらしく困惑した様子で話しかけてきた。
まあその通りなんだけど俺自身は殆んど何もしてないんだよな。タイミングがすこぶる良かっただけで。
だから惚けてその場から離れた。
――――――時間を確認したらあいつらを目撃してから1時間以上経っていた。
何やってんだ、と思った。
柄にないことをしたという自覚もある。
用無しだと自分で判断し、もう関わる気もなかった子を助けるような真似。
理由ならいくつか思い付く。
情報の礼とか、恩を売っておけば使えるかもしれないとか、あの養護教諭とどういう関係か気になったとか、あいつらの後ろに居る奴が気に入らない、とか。
俺の考えとしては、なんらおかしくない。
だけどそれらは全て探して見つけた理由。まるで言い訳をしているみたいだ。
あの子に関わる為の、自分を納得させるための言い訳。
意味が分からない。
どうして俺が、あの子に関わらなきゃいけない?
何も出来なそうな、頭脳しか使えなさそうな子に。
正直顔だってちゃんと覚えていない。
不快だ。
なんなんだ、この意味の分からない感覚は。
もやもやして苛々する。
…………気は進まないけど誰か適当に掴まえて発散させるか。
その後はダンジョンに潜って30階層より下の攻略の準備をしよう。
あの子は危険だのなんだの言っていたけどどうせ過大解釈か心配のし過ぎだろう。
「――――……くそ」
思考の流れから、あの時のことを思い出す。
俺の力量を知らない癖に、無理だと決めつけて止めようとしていたあの子。
ただ、それは侮っている訳ではなく……単に死んでほしくないという純粋な心配のようだった。
名前も顔も知らない、あっちからすれば無理に付き合わされている、上級生だから逆らえないだけの、他人。
それなのに。
幼い頃から疎まれ死を望まれて。
学園に来てからは打算ばかりの関係で利用し利用されるだけ。
何の見返りも求めず俺を心配してくれるような相手は、誰一人としていなかった。
誰だってそうだったから、そんなものだと思っていた。
だからそんなのは、初めてだったんだ。
ああそうか、だから、こんなにも。
でもきっと、あの子は何も考えていない。
ただ単にあの子からしたら無謀な行為に見える行動を止めたかっただけで、相手が誰であってもそうしただろう。
俺に限った話では、ない。
「…………チッ」
苛つく。
ただ少し琴線に触れただけなのに。
自分から手を伸ばす?俺が?
自分以外全て切り捨てると、血の繋がった連中と縁を切った日に決めたはずなのに。
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