執着から始まる

一色ほのか

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 さて。
 まだ詰めなきゃいけないところもあるけど話し合いも何とか纏まり。
 久々にFOLにログインだ。
 
「も~!なんの連絡もないしリアルで何かあったんじゃないかって心配したんだよ~?!」
「あー、うん。ごめんなー」
 
 早速クルに詰め寄られた。他のメンバーにも。
 日曜の夜だから来るかもって待っていたらしい。
 とりあえずリアルで急な引っ越しをすることになってその対応と片付けに追われていた、と説明。
 間違ってはいないよ。前後はしてるけど。
 そこに至るまでのぐだぐだしてた時間の方が長いけど。
 そういうことなら仕方ないね、って、次は長期ログインできないようだったら一言でも連絡する、と約束して解散。
 それぞれ遊びに行ったりログアウトして、ギルドホームには私一人が残った。

 心配とか迷惑とかかけちゃったなぁ。今度何か埋め合わせ考えるかな?
 今日いないメンバーへの説明用に連絡板にクル達にした説明と同じことを書き込んで、それにプラスやりたいことないか書いておこう。
 
 ん、で。設定の見直しと変更と、例の件を公式に報告しないとね。
 色々ぼかして重要そうなとこだけ伝えられるように文章考えないと。
 ただ明日は月曜、平日だ。早めに終わらせて休まないと。…………色々と疲れてるのは間違いないし。
 ちなみに大輝さんはまだやることがあるから今日はログインしない、って言ってた。



「ぁぅっ」
 
 そうやってギルドホームの玄関ホールで作業をしていたら、クルがデスポーンしてきた。
 そしてそのままぺしょっと床に倒れ込む。
 
「…………何やってんのクル」
「んぇ、マスタぁ~……」
 
 なんか産まれたての小鹿みたいにぷるぷるした感じで起き上がり、へろへろとした足取りで寄ってきて膝に縋り付くみたいに抱き着いてきた。
 この状態は……稀にあるメンタルが死んでる時のクル。
 さっきの今で一体何が???
 
「何事?」
「うぅ……っ!遊んでくれる約束だったひとがドタキャン……っ!」
「ほぉ」
「しかたないから北の森に行ったら~!物凄い広範囲で召喚テロされてたの~!Sランク居たぁ!」
「あそこたまによくある頻度でテロられてるもんな」
 
 人の出入りが激しい場所だし。
 …………スキモノプレイヤーはそれなりに数居るらしい。
 
「リアルの憂さ晴らしだったのに……っ!散々だよ~!」
 
 わっ!と泣きついてくる。
 憂さ晴らしにしてはハードでは??と思いつつ好きにさせておく。作業がまだ終わっていないのだ。

 …………よし。とりあえず送信完了。
 
「良ければ話聞いてやろうか?そんな時間取れないけど」
「うぅっ……マスター大好き~!」
「はいはいリアル透けないようにな」
 
 抱き着いてきたクルの背中をぽんぽんと軽く叩く。
 いつも飄々としていて笑顔で毒づくクルがここまで落ち込んでるのは珍しいし。
 今回心配させちゃったしね。
 

「わたし、好きな人がいて」
 
 ぽつり、ぽつりとクルが話し出す。
 
「ずっとずっと好きで、学生の頃から。同じ会社に頑張って入って、アピも頑張って~……他の人よりはね、仲良くなれたの。でも……その人のね、身内の子が入社してきてからその子ばっかりお世話してて~……」
 
 まさかの恋愛話。
 いやだって憂さ晴らしの方法アレ触手なのに?え??
 あ、いや、うん、そこは触れないでおこう。うん。やばい藪蛇しそう。
 で、えっと。
 つまり好きな人の放っておかれて淋しいって話かな?
 
「一応しばらくは我慢しだんだよ~?でも、全然構ってくれなくなって、わたし、それで、そのぉ……」
「ん?どしたよ」
「…………ちょっとストーカーまがいのことというかぁ、その子にちょっと、イヤガラセを……えへ」
「おぉい!?それはアウトだろ!?」
 
 まさかのカミングアウトが出てきた。
 恋愛関係の淋しいとか可愛いものじゃなくて普通にやばそうな話だった?!
 軽く話してるし流石に犯罪になりそうなことはしてないだろうけど……
 
「わたしのイヤガラセなんてかわいいものだよ?未遂に終わったし~……でも、それがバレちゃってぇ……」
「いや、お前ね。未遂だからいいってもんじゃないぞ」
「ゔぅ……っ分かってるよぉ……。でね、それ以外にも色々やってたの調べられちゃって……今、その、ちょっと……構ってもらえるのは嬉しいけど手酷過ぎて~……」
 
 ん??
 
「レイプみたいなプレイも嫌いじゃないけど、ずっとそうだと苦しいし~、気持ち良くセックスしたいけどそんなこと言える立場でもないし~……」
 
 話の方向性変わってきたな???
 
「つまり?」
「前みたいに普通のセフレに戻るにはどうしたらいいと思う~?」
「突っ込みどころが多すぎるけど身内に手ぇ出した時点で不味いわな」
「やっぱり~……?」
 
 はふぅ、と溜め息を零すクル。

 予想以上にヤバイ話だった……。やらかしてるしやらかされてる……。
 相手の人とどういう関係になってるのか分からないけど、レイプみたいなプレイって。
 クル本人は飄々としてるけど不味いやつなのでは。なのに本人はセフレに戻りたいとか宣っている。
 戻りたい、だから元々そういう関係、なんだよね。
 で、今も……まあ、そういう関係に近い状態(ただし状況は悪い)、と。
 
 いやちょっと反応がしづらいにもほどがあるね???
 これは私が何か言ったところでどうにもならないやつでは?
 もし何か改善点があるとして……うぅん。
 
「とりあえず……クルさ、その嫌がらせした人に謝ったのか?」
「…………謝ってない」
 
 やっぱりか。
 そして悪かったって今の時点で思ってないよねその間の長さ。或いは開き直ってる。
 
「ならとりあえず謝っとけよ。詫びる気持ちがあるかないかでまた変わるだろ」
「そうかなぁ……」
「お前一応でも詫びてくる奴とだんまりして知らんぷりしてる奴、どっちなら多少なりと許せる?」
「……………………分かったぁ。明日、謝ってくる~……」
「そーしろ。ほら、仕事ならもう寝とけ?俺もそろそろ寝るし」
「うん~……。マスター、話、聞いてくれてありがとう~」
「おう」
 
 のろのろと身体を離し、へにょりと笑う。
 それに返事を返したところで、ばいばい、と手を振ってクルはログアウトしていった。
 
 …………なんか凄い濃い話を聞いたなぁ。
 全然違うけど似たような状況だったしちょっと他人事と思えない……。



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