24 / 77
第五章:旧街道の鬼火
24:弾き語りの女 1
しおりを挟む
「ひっ!」となって目覚めると、夜叉が小さな手でがくがくと葛葉の肩を揺さぶっている。
「葛葉! 飯だって、飯!」
夜叉の嬉々とした声で、夢から現実に頭がきりかわる。葛葉が身を起こすと、夜叉はすぐに用意されたらしい握り飯を両手につかんで頬ばりはじめた。
以前のカステラと同じで、握り飯も二人に振るまうには度をすぎた数である。
寝起きで呆然とする葛葉に、すでにいくつかを腹におさめた夜叉が握り飯をさしだした。
「はい!」
手にのせられた握り飯は、まだあたたかい。
葛葉はぼんやりしている場合ではないと、夜叉にならってかぶりつく。
腹が減っては戦ができぬと言わんばかりに、さっさと腹を満たして身支度を整えた。意気込んで部屋をでようとすると、くいっと袴の裾が何かにひっかかる。
「わ!」
突然のことで、葛葉はばたっと前のめりに倒れこんだ。
夜叉が袴の裾をつかんでいる。
「もう! 夜叉!」
したたかに身を打ちつけて痛い。不平をとなえて彼を睨むと、握り飯をほおばったままもごもごと何かを言っている。
「ん? なに?」
ほおばったものをごくりと飲みこんで、夜叉が「食べたらここで待て、だって」という。
「ここで待て? 待機しろということ?」
「知らない。可畏がそう伝えてくれって」
「え!? 御門様が? 戻ってきていたの?」
「うん」
なんでもないことのようにうなずいて、夜叉はふたたび握り飯にかぶりつく。
(御門様が戻ってきても、ぐっすり眠っていたなんて!)
待機を命じられたのなら従うしかないが、葛葉はその場を走りまわりたい衝動に駆られていた。
疲れていないと大きな口をたたいていただけに、恥ずかしい。
ひとしきり自分の失態について心の中で悶えてから、葛葉は意識を逸らそうと別のことをかんがえる。
(そういえば、あの夢)
目覚めるまで見ていた、なつかしい夢。
あのあとのことも覚えている。覚えているというか、思いだしたのだ。
ちょうど祖母が戻ってきて、声に向かって歩きはじめた葛葉の手をとった。
祖母が追いはらうと、彼らはどこかへ退散した。
ススキ野原を超えてくることはできない何か。
悪いものではないが、野原の外に葛葉をさそうので、かまってはいけないと祖母が教えてくれた。
彼らは逢う魔が時になると、ススキ野原の果てによく現れた。いつも「こっちにおいで」と誘ってくれる。
葛葉が野原をでることがなければ、声にこたえることに問題はなかった。心細いときは、彼らと話をすることもあったのだ。
集落の友だちと遊ぶのと何も変わらない。葛葉にとっては当たり前の日常だった。だから、今まで忘れていたのだろうか。
(まだ何か、忘れていることがある?)
穏やかな日々だった。まだ祖母から数珠を授けられる前の光景である。自分はどうして人の目を見てはいけないと思いはじめたのだろう。
自分が関わると不幸になる。漠然とした意識。
可畏と出会ってそれを否定されるまで、心に根付いた危機感が枯れることはなかった。
(でも、あまり覚えていない)
具体的なできごとに紐づいていないのだ。きっと嫌な思いでの連続なのだろう。葛葉にとってその日々があまりにも当たり前だったから、印象に残らなくなったのだろうか。
幼少時の些細な記憶が失われていくように。
彼らのことを忘れていたのと同じように。
忘れているのだろうか。
人が異形になると思いこんだ奇怪な光景と、祖母に泣きついていた自分、そして火災。
自分にとって印象的な光景は、それだけだったのだろうか。
(あの頃、じっとわたしを見てくる子がいたような)
葛葉が幼少期の記憶をだどっていると、足音とともに御簾ごしに人の気配があった。
「夜叉、彼女は起きたか?」
可畏の声を聞いて、葛葉は反射的にぴしっと居住まいをただした。夜叉よりも先に答える。
「御門様、巡回、お疲れ様です!」
「葛葉か、入るぞ」
「はい」
かかげられた御簾を持ちあげるようにして可畏が姿をみせた。
和洋折衷なつくりの隊服と軍帽。独特の意匠に、これまでの功績をたたえるように鮮やかな徽章が並んでいた。葛葉は彼が雲の上の人だということを改めて心にきざむ。
可畏は、握り飯をすべて平らげてお茶をすすっている夜叉を一瞥してから、葛葉を見た。
「飯は食ったのか?」
「はい! いただきました!」
「では、一緒にでられるか?」
「はい。でも、御門様は休んでおられないのではありませんか? それに、まだ何も召し上がっていないのでは?」
「私のことは心配しなくてもいい。食事も済ませた」
「はい」
彼の颯爽としたふるまいから疲れは感じられない。葛葉が案じるような余地はなさそうだった。
「いくぞ」
「はい」
可畏の後ろをついて屋敷をでながら、夜叉も一緒についてくるのかと背後をみる。
視界に賑やかな気配はなく、一緒にやってくる感じはしない。留守番だろうか。
「どうした?」
「あの、夜叉はどうしたのかと」
「必要ないので、またきえてもらった」
「え!?」
言われてみれば、これまでも夜叉はいつのまにかいなくなっていた。どうやら可畏の一存で出たり消えたりしているようだ。
「隊服でも着せて一緒に巡回すると思っていたのか?」
「そういうわけではありませんが」
「私がそばにいる時は必要ない。一緒にいてもやかましいだけだ」
容赦のない感想である。またでてくる時は彼の火で炙られるのだろうか。可畏のような強力な異能者と出会ったのが運の尽きである。葛葉はすこしだけ夜叉に同情したくなる。
通りにでると、葛葉の想像よりもずっと人の流れがあった。
街並みは明るく、よく晴れた空からの陽光があたたかい。暑くも寒くもない、心地の良い気候だった。
喧騒に身をつつまれ、日没前や深夜とは異なった賑わいがある。葛葉が到着したころ、すでに戸締りをしていた店が、今は華やかな軒先をみせていた。美味しそうな匂いもあちこちから漂ってくる。
たしかに夜叉が一緒では任務にならないだろう。
「鬼火や異形の噂があるのに、日中は活気がありますね」
「人の流れが変わったといっても、都市へつづく街道だからな」
「今日はどちらへ」
「巡回を続けながら、町屋の外れで話を聞いてまわる。何か気づいたことがあったら報告してくれ」
「了解しました」
大通りは華やかな店が軒を連ねているが、歩き続けるとすこしずつ店舗がまばらになる。裏通りの長屋では住人の素朴な生活がかんじられた。
おいでよ おいで 街道を
おいでよ おいで 灯りのもとへ
迷子になってはいけないよ
どこからか三味線の音色とともに歌声がきこえてくる。
「御門様、唄が」
「ああ、聞こえる。行ってみよう」
「葛葉! 飯だって、飯!」
夜叉の嬉々とした声で、夢から現実に頭がきりかわる。葛葉が身を起こすと、夜叉はすぐに用意されたらしい握り飯を両手につかんで頬ばりはじめた。
以前のカステラと同じで、握り飯も二人に振るまうには度をすぎた数である。
寝起きで呆然とする葛葉に、すでにいくつかを腹におさめた夜叉が握り飯をさしだした。
「はい!」
手にのせられた握り飯は、まだあたたかい。
葛葉はぼんやりしている場合ではないと、夜叉にならってかぶりつく。
腹が減っては戦ができぬと言わんばかりに、さっさと腹を満たして身支度を整えた。意気込んで部屋をでようとすると、くいっと袴の裾が何かにひっかかる。
「わ!」
突然のことで、葛葉はばたっと前のめりに倒れこんだ。
夜叉が袴の裾をつかんでいる。
「もう! 夜叉!」
したたかに身を打ちつけて痛い。不平をとなえて彼を睨むと、握り飯をほおばったままもごもごと何かを言っている。
「ん? なに?」
ほおばったものをごくりと飲みこんで、夜叉が「食べたらここで待て、だって」という。
「ここで待て? 待機しろということ?」
「知らない。可畏がそう伝えてくれって」
「え!? 御門様が? 戻ってきていたの?」
「うん」
なんでもないことのようにうなずいて、夜叉はふたたび握り飯にかぶりつく。
(御門様が戻ってきても、ぐっすり眠っていたなんて!)
待機を命じられたのなら従うしかないが、葛葉はその場を走りまわりたい衝動に駆られていた。
疲れていないと大きな口をたたいていただけに、恥ずかしい。
ひとしきり自分の失態について心の中で悶えてから、葛葉は意識を逸らそうと別のことをかんがえる。
(そういえば、あの夢)
目覚めるまで見ていた、なつかしい夢。
あのあとのことも覚えている。覚えているというか、思いだしたのだ。
ちょうど祖母が戻ってきて、声に向かって歩きはじめた葛葉の手をとった。
祖母が追いはらうと、彼らはどこかへ退散した。
ススキ野原を超えてくることはできない何か。
悪いものではないが、野原の外に葛葉をさそうので、かまってはいけないと祖母が教えてくれた。
彼らは逢う魔が時になると、ススキ野原の果てによく現れた。いつも「こっちにおいで」と誘ってくれる。
葛葉が野原をでることがなければ、声にこたえることに問題はなかった。心細いときは、彼らと話をすることもあったのだ。
集落の友だちと遊ぶのと何も変わらない。葛葉にとっては当たり前の日常だった。だから、今まで忘れていたのだろうか。
(まだ何か、忘れていることがある?)
穏やかな日々だった。まだ祖母から数珠を授けられる前の光景である。自分はどうして人の目を見てはいけないと思いはじめたのだろう。
自分が関わると不幸になる。漠然とした意識。
可畏と出会ってそれを否定されるまで、心に根付いた危機感が枯れることはなかった。
(でも、あまり覚えていない)
具体的なできごとに紐づいていないのだ。きっと嫌な思いでの連続なのだろう。葛葉にとってその日々があまりにも当たり前だったから、印象に残らなくなったのだろうか。
幼少時の些細な記憶が失われていくように。
彼らのことを忘れていたのと同じように。
忘れているのだろうか。
人が異形になると思いこんだ奇怪な光景と、祖母に泣きついていた自分、そして火災。
自分にとって印象的な光景は、それだけだったのだろうか。
(あの頃、じっとわたしを見てくる子がいたような)
葛葉が幼少期の記憶をだどっていると、足音とともに御簾ごしに人の気配があった。
「夜叉、彼女は起きたか?」
可畏の声を聞いて、葛葉は反射的にぴしっと居住まいをただした。夜叉よりも先に答える。
「御門様、巡回、お疲れ様です!」
「葛葉か、入るぞ」
「はい」
かかげられた御簾を持ちあげるようにして可畏が姿をみせた。
和洋折衷なつくりの隊服と軍帽。独特の意匠に、これまでの功績をたたえるように鮮やかな徽章が並んでいた。葛葉は彼が雲の上の人だということを改めて心にきざむ。
可畏は、握り飯をすべて平らげてお茶をすすっている夜叉を一瞥してから、葛葉を見た。
「飯は食ったのか?」
「はい! いただきました!」
「では、一緒にでられるか?」
「はい。でも、御門様は休んでおられないのではありませんか? それに、まだ何も召し上がっていないのでは?」
「私のことは心配しなくてもいい。食事も済ませた」
「はい」
彼の颯爽としたふるまいから疲れは感じられない。葛葉が案じるような余地はなさそうだった。
「いくぞ」
「はい」
可畏の後ろをついて屋敷をでながら、夜叉も一緒についてくるのかと背後をみる。
視界に賑やかな気配はなく、一緒にやってくる感じはしない。留守番だろうか。
「どうした?」
「あの、夜叉はどうしたのかと」
「必要ないので、またきえてもらった」
「え!?」
言われてみれば、これまでも夜叉はいつのまにかいなくなっていた。どうやら可畏の一存で出たり消えたりしているようだ。
「隊服でも着せて一緒に巡回すると思っていたのか?」
「そういうわけではありませんが」
「私がそばにいる時は必要ない。一緒にいてもやかましいだけだ」
容赦のない感想である。またでてくる時は彼の火で炙られるのだろうか。可畏のような強力な異能者と出会ったのが運の尽きである。葛葉はすこしだけ夜叉に同情したくなる。
通りにでると、葛葉の想像よりもずっと人の流れがあった。
街並みは明るく、よく晴れた空からの陽光があたたかい。暑くも寒くもない、心地の良い気候だった。
喧騒に身をつつまれ、日没前や深夜とは異なった賑わいがある。葛葉が到着したころ、すでに戸締りをしていた店が、今は華やかな軒先をみせていた。美味しそうな匂いもあちこちから漂ってくる。
たしかに夜叉が一緒では任務にならないだろう。
「鬼火や異形の噂があるのに、日中は活気がありますね」
「人の流れが変わったといっても、都市へつづく街道だからな」
「今日はどちらへ」
「巡回を続けながら、町屋の外れで話を聞いてまわる。何か気づいたことがあったら報告してくれ」
「了解しました」
大通りは華やかな店が軒を連ねているが、歩き続けるとすこしずつ店舗がまばらになる。裏通りの長屋では住人の素朴な生活がかんじられた。
おいでよ おいで 街道を
おいでよ おいで 灯りのもとへ
迷子になってはいけないよ
どこからか三味線の音色とともに歌声がきこえてくる。
「御門様、唄が」
「ああ、聞こえる。行ってみよう」
11
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の偽花妃 国を追われた巫女見習いは宦官になる
gari@七柚カリン
キャラ文芸
旧題:国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く
☆4月上旬に書籍発売です。たくさんの応援をありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。
そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。
心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。
峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。
仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―
くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。
「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」
「それは……しょうがありません」
だって私は――
「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」
相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。
「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」
この身で願ってもかまわないの?
呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる
2025.12.6
盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる