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第1章 キリアン
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爺さんの想像の世界の話だけれど、小さい頃に読んだ勇者の話よりも感動して、なんだか目頭が熱くなってしまった。
でも、そう、でもだ。
前世の俺の恋を叶えてやることができなかったから、現世で叶えてやるって話を(わぁ、そうなんだ。ラッキー)って……話を合わせられるか!!今俺の心は傷ついてんだ!!抉るなよ…。
この場限りだと思って話を合わせようと思っていたが…ないない。
ここははっきりと言わないと(悪いな、爺さん。俺は信じられないよ。)と言って、この場から去るんだ。
爺さんが勇者一行の賢者だったとか、俺がその勇者の生まれ変わりという話を(わぁ、そうなんだ。)って話を合わせてもいいさ。それくらい良い話だったし、爺さんの心の支えを無残に壊すことは…ちょっと辛いけど、でも…。
サヨナラだ、爺さん!
「ところでお主の惚れた女子とはどんな風にして知り合ったんじゃ?」
心の中ではすでに爺さんにサヨナラをしていたのに、前世で勇者との約束を現世で成就します!という眼力の強さに押され、思わず言ってしまった。
「お、幼馴染…」
「オオッ!恋に疎いわしとて知っているぞ、ベタなパターンってやつじゃな。」
「い、いや…ベタとか…それより、俺はもう…。」
下を向き、モソモソと話す俺に、気に留めることなく、爺さんは満面の笑みで!
「それは僥倖じゃ!分岐点がいっぱいじゃ。」
分岐点。爺さんが勇者マーベリックの話の時に分岐点に戻るって…。それは確か…。
「なぁ、俺にはいまひとつわからないんだけど。爺さんは…自分なら、自分と一緒なら分岐点に戻って、もう一度やり直すチャンスを作ることができるって言っていたけど、それはどういう意味だ?」
「その意味通り、戻るのじゃよ。過去に、選択を選びそこなったその時点に。」
そりゃ、戻れるなら戻って、やり直したいことは山ほどあるさ。だけど…。「そんなことできやしない。」
思わず声に出した俺は口を押えたが、爺さんは気にすることもなくニンマリ笑うと
「まぁ、信じられんのもわかる。だが、なにか損をするわけでもないし、騙されたと思って、試してみても良いのではないか?」
確かにそうだ。酒場で同年代の男や、綺麗なお姉さんに慰められるのも、この爺さんに慰められるも変わりはないさ。なにより…話をしたら、心の整理ができるのかもな。
爺さんを見たら、爺さんは好奇心丸出しで話をすすめろと満面に怪しげな笑みを浮かべ俺を見ている。
…話をしたら、心の整理ができるのかもな。
俺は諦めたように力のない笑みを浮かべた、ところが爺さんは眉を顰め、小さく息を吐くと
「…なるほどな。」
「えっ?なにがなるほどなんだよ?!俺はまだ何にも言ってないぞ。」
すべて理解していると言うように、爺さんは俺の肩をポンと叩くと
「幼かった頃から相手にされておらんかったんじゃな。だから分岐点になるような出来事もなかったから、話すことがないということじゃろう。」
「えっ?ぶ、分岐点は山ほどあるし!!」
「じゃぁ、あのパターンじゃな。」
「…あのパターン?ってなんだよ。」
「あのパターンじゃ、ほれ、あれじゃ。ほかの男子と同じように扱われているのに、自分だけは他の男子と違う、なぜなら俺を見る目が違う、俺に話すときは声が柔らかい、だから俺は愛されていると勘違いするあれじゃ。」
小さなため息をつくと、哀れな奴と言う視線を向けてきた爺さんに、俺は唾を飛ばしながら言った。
「そんなんじゃないし!だ、だって初めて会ったあの時、あいつは俺に、キ、キ、キスをしたんだぞ。だから俺に…。俺に…!」
衝撃の話だったのに、爺さんは一層憐れむように言った。
「お主が惚れておる女子は当時乳飲み子だったのか?」
「違う!!俺の二つ下の8歳だった!!」
…なんか、悲しい。
ファーストキスの甘酸っぱい思い出を否定されて、それにムキになって大声で叫ぶ俺って。
項垂れる俺の手に、アイスでべたべたの爺さんの右手が重なった、そのべたべたな手に眉を顰め、顔を上げれば得意げな顔の爺さんが左手を大きく空中で回した、つむじ風が吹いたかと思ったら、その左手に爺さんの背丈ほどの杖が握られていた。
「…どこから…そんな長い杖が…?」
「言ったであろう、わしは勇者と共に魔王を倒した賢者だと、さぁ、もっと詳しい話を聞かせよ。」
爺さんの左手に突然現れた長い杖に目を見張っていると、爺さんは声を立てて笑い、俺はゴクリと息を呑んだ。
でも、そう、でもだ。
前世の俺の恋を叶えてやることができなかったから、現世で叶えてやるって話を(わぁ、そうなんだ。ラッキー)って……話を合わせられるか!!今俺の心は傷ついてんだ!!抉るなよ…。
この場限りだと思って話を合わせようと思っていたが…ないない。
ここははっきりと言わないと(悪いな、爺さん。俺は信じられないよ。)と言って、この場から去るんだ。
爺さんが勇者一行の賢者だったとか、俺がその勇者の生まれ変わりという話を(わぁ、そうなんだ。)って話を合わせてもいいさ。それくらい良い話だったし、爺さんの心の支えを無残に壊すことは…ちょっと辛いけど、でも…。
サヨナラだ、爺さん!
「ところでお主の惚れた女子とはどんな風にして知り合ったんじゃ?」
心の中ではすでに爺さんにサヨナラをしていたのに、前世で勇者との約束を現世で成就します!という眼力の強さに押され、思わず言ってしまった。
「お、幼馴染…」
「オオッ!恋に疎いわしとて知っているぞ、ベタなパターンってやつじゃな。」
「い、いや…ベタとか…それより、俺はもう…。」
下を向き、モソモソと話す俺に、気に留めることなく、爺さんは満面の笑みで!
「それは僥倖じゃ!分岐点がいっぱいじゃ。」
分岐点。爺さんが勇者マーベリックの話の時に分岐点に戻るって…。それは確か…。
「なぁ、俺にはいまひとつわからないんだけど。爺さんは…自分なら、自分と一緒なら分岐点に戻って、もう一度やり直すチャンスを作ることができるって言っていたけど、それはどういう意味だ?」
「その意味通り、戻るのじゃよ。過去に、選択を選びそこなったその時点に。」
そりゃ、戻れるなら戻って、やり直したいことは山ほどあるさ。だけど…。「そんなことできやしない。」
思わず声に出した俺は口を押えたが、爺さんは気にすることもなくニンマリ笑うと
「まぁ、信じられんのもわかる。だが、なにか損をするわけでもないし、騙されたと思って、試してみても良いのではないか?」
確かにそうだ。酒場で同年代の男や、綺麗なお姉さんに慰められるのも、この爺さんに慰められるも変わりはないさ。なにより…話をしたら、心の整理ができるのかもな。
爺さんを見たら、爺さんは好奇心丸出しで話をすすめろと満面に怪しげな笑みを浮かべ俺を見ている。
…話をしたら、心の整理ができるのかもな。
俺は諦めたように力のない笑みを浮かべた、ところが爺さんは眉を顰め、小さく息を吐くと
「…なるほどな。」
「えっ?なにがなるほどなんだよ?!俺はまだ何にも言ってないぞ。」
すべて理解していると言うように、爺さんは俺の肩をポンと叩くと
「幼かった頃から相手にされておらんかったんじゃな。だから分岐点になるような出来事もなかったから、話すことがないということじゃろう。」
「えっ?ぶ、分岐点は山ほどあるし!!」
「じゃぁ、あのパターンじゃな。」
「…あのパターン?ってなんだよ。」
「あのパターンじゃ、ほれ、あれじゃ。ほかの男子と同じように扱われているのに、自分だけは他の男子と違う、なぜなら俺を見る目が違う、俺に話すときは声が柔らかい、だから俺は愛されていると勘違いするあれじゃ。」
小さなため息をつくと、哀れな奴と言う視線を向けてきた爺さんに、俺は唾を飛ばしながら言った。
「そんなんじゃないし!だ、だって初めて会ったあの時、あいつは俺に、キ、キ、キスをしたんだぞ。だから俺に…。俺に…!」
衝撃の話だったのに、爺さんは一層憐れむように言った。
「お主が惚れておる女子は当時乳飲み子だったのか?」
「違う!!俺の二つ下の8歳だった!!」
…なんか、悲しい。
ファーストキスの甘酸っぱい思い出を否定されて、それにムキになって大声で叫ぶ俺って。
項垂れる俺の手に、アイスでべたべたの爺さんの右手が重なった、そのべたべたな手に眉を顰め、顔を上げれば得意げな顔の爺さんが左手を大きく空中で回した、つむじ風が吹いたかと思ったら、その左手に爺さんの背丈ほどの杖が握られていた。
「…どこから…そんな長い杖が…?」
「言ったであろう、わしは勇者と共に魔王を倒した賢者だと、さぁ、もっと詳しい話を聞かせよ。」
爺さんの左手に突然現れた長い杖に目を見張っていると、爺さんは声を立てて笑い、俺はゴクリと息を呑んだ。
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