賢者様の恋指南ー勇者の恋を成就させます。ー

秋野 林檎 

文字の大きさ
8 / 16
第1章  キリアン

しおりを挟む
憐れむ爺さんから目をそらしたら、周りの景色が歪み形をなくし、いろんな色となって渦を巻くように俺の周りを覆ったと思ったら、またパン屋と果物屋の間の路地に俺達はいた。

「10年前に戻ったのはとりあえずわしの力を信じてもらうための予行練習!どうじゃ、これで信じたであろう。」

言葉が出てこなかった。そんな俺の肩にハッとしたように、両手をのせた爺さんは
「き、気を落とすではないぞ!淡い思い出の(ふぁーすときす)は事故じゃったが、これからじゃ!次じゃ!次こそ選択を変えれば未来が変わる!」

シワシワの腕に、ほんのちょっと盛り上がった力こぶをみせながら話している爺さんを、いやエルフの賢者をぼんやりを見ながら、俺の口から出てきた言葉は予想もしない言葉だった。

「…どうして……。」

「それはわしが賢者だから、それも超できる賢者だからじゃ「いや!あいつが、オリビアが10年前に俺に、初めて会ったのに《どうして?》って言ったんだ。」

爺さんの声に被さる様に発した俺の声に、爺さんは頷きながら
「お主…何か思い出したんじゃな。」

「あぁ、10年前のあの日、あいつは俺を見て《どうして?》って言ったんだ。あれはどういう意味だったんだろう…。」

爺さんはしばらく考え込んでいたが、ニヤリと笑うと
「やはり、次に行かねばならんようじゃな。腕がなるぞ!」

オリビアの言葉《どうして?》で、なぜだか爺さんはより目を輝かせた。

「爺さん…オリビアが言った《どうして?》の意味がわかったのか?」

「すべて、わかったわけではない。まだわからんことがある。」

「じゃぁ、分かったことだけ…「ダメじゃ!」」

「なんでだよ!ケチ!」

「オリビア嬢が10年経ってもお主に言わなかったのなら、わしが今ここで言うべきじゃないからじゃ。」


正論だ。ぐうの音も出ない。
10年前あいつが言った言葉を忘れていた自分も自分だけど…。でも俺の事を男として好きでなくても、あいつにとって一番の理解者だと思っていたのに。違っていたのかなぁ…。

「おいおいキリアンよ。前世と同じ失敗をするなよ。」

「えっ?」

「オリビア嬢が自分に隠していることがある。だから自分は信用されていなかったんだ。それほど自分の事を思ってくれていなかったんだ。な~んて考えるではないぞ。」

「爺さん…。」

「10年前のあの日、青白い顔で俯いていた幼い女子が、おまえを見て表情が変わった。あれは生を感じさせる顔じゃったぞ。だから《どうして?》と言った意味も必ず良い意味だったとわしは思っておる。なんじゃ、その不満そうな顔は…。とにかく次の分岐点に行き、オリビア嬢に騎士団長よりお主を選んでもらうようにして、今日の結婚式を阻止することが一番じゃろう。では行くぞ!」


爺さんの張り切った声と同時に、また周りの景色が歪み形をなくし、いろんな色となって渦を巻くように俺の周りを覆っていった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

【完結・コミカライズ進行中】もらい事故で婚約破棄されました

櫻野くるみ
恋愛
夜会で突如始まった婚約破棄宣言。 集まっていた人々が戸惑う中、伯爵令嬢のシャルロットは——現場にいなかった。 婚約破棄されているのが数少ない友人のエレナだと知らされ、会場へ急いで戻るシャルロット。 しかし、彼女がホールへ足を踏み入れると、そこで待っていたのは盛大な『もらい事故』だった……。 前世の記憶を持っている為、それまで大人しく生きてきた令嬢が、もらい事故で婚約破棄されたことですべてが馬鹿馬鹿しくなり、隠居覚悟でやり返したら幸せを掴んだお話です。 全5話で完結しました。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 小説家になろう様にも投稿しています。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

わたしたちの庭

犬飼ハルノ
恋愛
『夜明けになるまで絶対に寝室の扉を開けないで』  未来の義母が告げたのは奇妙な夜の掟だった。  父に売られる形でブルーノ伯爵子息の婚約者になったフィリスの物語。  ヒロインのフィリスが自らの力と周囲の人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、しばらくは暗く重い展開です。  タグを途中から追加します。   他サイトでも公開中。

【完結】番犬と呼ばれた私は、このたび硬派な公爵様に愛されることになりました。

恋愛
「私の妹リゼリアに勝てた殿方の元に嫁ぎますわ」 国一番の美女である姉の番犬として何年も剣を振り続けてきた伯爵令嬢リゼリア。金儲けや汚い思惑のために利用され続けた彼女だが、5年目となるその日両親からわざと負けるよう命じられる。 何故ならこの日相手をするのは、公爵という立場でありながら騎士としても活躍する男。玉の輿を目指す両親や姉はリゼリアの敗北に大喜びするが…… 「では約束通り、俺の元に来てもらおう。リゼリア嬢」 「…………へ、?」 一途な硬派騎士団長×愛され無自覚な男前ヒロイン ※ざまぁ必須。更新不定期。 誤字脱字にご注意ください。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

処理中です...