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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目⑰
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もう百年ほど使われていていない城内の地下牢に、いつものように聞こえるポトンという水音に交じって、コツンコツンという足音が、暗く寒い地下に響いていた。
「ここは寒いな。」
バウマンの口から、白い息と一緒に出た声に、ヒューゴはクスリと笑い
「そんなにお寒いですか?でも…」
そう言って、ヒューゴは薄いドレスで横たわるロザリーを見ると、またクスリと笑い
「公爵様や私より、薄いドレス一枚のロザリー様のほうがお寒いかと思いますが。」
「そうか?暗示に操られているロザリー様は、寒ささえ感じてはおられまい。」
ロザリーを様付けで呼びながら、嘲笑うふたりの声は、だんだんと大きくなっていった。
「しかし、ヒューゴ。暗示に掛かっておるロザリーをまたどうしてここに?手籠めにでもするつもりなのか?」
そう言いながらバウマンが、意識のないロザリーの姿態を舐めるように見る姿に、ヒューゴは眉を顰め
「…確かに美しい女ではありますが、ルシアンの手垢がついたお古でございますよ。」
口元を歪め吐き捨てるような物言いに、バウマンはフンと鼻で笑い
「ルシアンが惚れた女に興味があったのだが…そんなに、お古と強調されてはやる気が失せた。」
そうは言ったものの、まだ惜しいと思っているのだろうか、ロザリーの膝まで、まくれたドレスから視線を外せないバウマンに、ヒューゴは呆れたようにため息をつくと、バウマンはニヤリと笑い
「どうした?ヒューゴ。私があの先々代ローラン王の子だと、改めて思い呆れているのか?」
「…いえ」
ヒューゴの様子にバウマンは大声で笑うと
「大事の前にこの女をどうこうする気はない。しかし…その大事の前におまえは、なぜロザリーをここに来るように暗示をかけていたのは何故だ?暗示がうまくいっていなかったのか?」
悔しそうに顔を歪めたヒューゴは
「この女が暗示にかかりにくかったので、今一度確かめておきたかったのです。最後の最後で、ルシアンを殺す手を止められては元も子もないので…。御足労をお掛けして申し訳ありません。」
「だが、2回目のスイッチはちゃんと入ったようではないか。もう心配はないのだろう。」
「はい。この地下牢を知る者はルシアンの側近らにはおりません。その地下牢に迷わずひとりでロザリーが来たのは、何よりの証拠。」
「でもどうするのだ。」
そう言って、バウマンはロザリーの側に座ると、ロザリーの金色の髪に触れ
「怪しまれずに、どうやってロザリーを戻す。場合によってはこちらの計画にも支障がでるぞ。」
ヒューゴはにっこり笑うと
「ロザリー様は近衛師団の者に、無事発見されたという事に…。」
「ではロザリーを発見する奴も暗示に…?」
「はい。」
「やはり、暗示とやらは魔法だ。」
「殿下、暗示は学問でございます。」
「クッッッ…。そうであったな。」
ヒューゴはバウマンに笑みを浮かべ
「団員が今頃、ルシアンに報告しているでしょうから、そろそろここを出ましょうか。」
「そうだな…。」
だが、名残惜し気にまだロザリーに触れているバウマンに、苦虫を嚙み潰したような顔で見ていたヒューゴだったが、急にその顔が変わり、ゆっくりとバウマンの横に座ると、ロザリーの右手を手に取った。
「おまえも惜しくなったか?」と笑ったバウマンだったが、ヒューゴの呆けたような表情に眉を顰め
「どうした?」
「…この女…かなりの剣の使い手のようです。」
「…剣の使い手?!おいおい、わかっているか?ロザリーは女だぞ?!」
「この手の平を見てください。」
バウマンはヒューゴに差し出されたロザリーの手を見て、驚いたようにヒューゴを見た。
ヒューゴは満面の笑顔で
「どうやら殿下は、最強の剣を手に入れられましたね。」
「ルシアンを殺害後はロザリーを始末するつもりでしたが、このまま…殿下の剣として、この美貌と剣の腕で各国の王を暗殺することも可能ですね。あぁ、そうなれば殿下がこの大陸一の王になることも夢ではない。」
ヒューゴはそう言うとロザリーの手を愛おしそうに握った。
「ここは寒いな。」
バウマンの口から、白い息と一緒に出た声に、ヒューゴはクスリと笑い
「そんなにお寒いですか?でも…」
そう言って、ヒューゴは薄いドレスで横たわるロザリーを見ると、またクスリと笑い
「公爵様や私より、薄いドレス一枚のロザリー様のほうがお寒いかと思いますが。」
「そうか?暗示に操られているロザリー様は、寒ささえ感じてはおられまい。」
ロザリーを様付けで呼びながら、嘲笑うふたりの声は、だんだんと大きくなっていった。
「しかし、ヒューゴ。暗示に掛かっておるロザリーをまたどうしてここに?手籠めにでもするつもりなのか?」
そう言いながらバウマンが、意識のないロザリーの姿態を舐めるように見る姿に、ヒューゴは眉を顰め
「…確かに美しい女ではありますが、ルシアンの手垢がついたお古でございますよ。」
口元を歪め吐き捨てるような物言いに、バウマンはフンと鼻で笑い
「ルシアンが惚れた女に興味があったのだが…そんなに、お古と強調されてはやる気が失せた。」
そうは言ったものの、まだ惜しいと思っているのだろうか、ロザリーの膝まで、まくれたドレスから視線を外せないバウマンに、ヒューゴは呆れたようにため息をつくと、バウマンはニヤリと笑い
「どうした?ヒューゴ。私があの先々代ローラン王の子だと、改めて思い呆れているのか?」
「…いえ」
ヒューゴの様子にバウマンは大声で笑うと
「大事の前にこの女をどうこうする気はない。しかし…その大事の前におまえは、なぜロザリーをここに来るように暗示をかけていたのは何故だ?暗示がうまくいっていなかったのか?」
悔しそうに顔を歪めたヒューゴは
「この女が暗示にかかりにくかったので、今一度確かめておきたかったのです。最後の最後で、ルシアンを殺す手を止められては元も子もないので…。御足労をお掛けして申し訳ありません。」
「だが、2回目のスイッチはちゃんと入ったようではないか。もう心配はないのだろう。」
「はい。この地下牢を知る者はルシアンの側近らにはおりません。その地下牢に迷わずひとりでロザリーが来たのは、何よりの証拠。」
「でもどうするのだ。」
そう言って、バウマンはロザリーの側に座ると、ロザリーの金色の髪に触れ
「怪しまれずに、どうやってロザリーを戻す。場合によってはこちらの計画にも支障がでるぞ。」
ヒューゴはにっこり笑うと
「ロザリー様は近衛師団の者に、無事発見されたという事に…。」
「ではロザリーを発見する奴も暗示に…?」
「はい。」
「やはり、暗示とやらは魔法だ。」
「殿下、暗示は学問でございます。」
「クッッッ…。そうであったな。」
ヒューゴはバウマンに笑みを浮かべ
「団員が今頃、ルシアンに報告しているでしょうから、そろそろここを出ましょうか。」
「そうだな…。」
だが、名残惜し気にまだロザリーに触れているバウマンに、苦虫を嚙み潰したような顔で見ていたヒューゴだったが、急にその顔が変わり、ゆっくりとバウマンの横に座ると、ロザリーの右手を手に取った。
「おまえも惜しくなったか?」と笑ったバウマンだったが、ヒューゴの呆けたような表情に眉を顰め
「どうした?」
「…この女…かなりの剣の使い手のようです。」
「…剣の使い手?!おいおい、わかっているか?ロザリーは女だぞ?!」
「この手の平を見てください。」
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ヒューゴは満面の笑顔で
「どうやら殿下は、最強の剣を手に入れられましたね。」
「ルシアンを殺害後はロザリーを始末するつもりでしたが、このまま…殿下の剣として、この美貌と剣の腕で各国の王を暗殺することも可能ですね。あぁ、そうなれば殿下がこの大陸一の王になることも夢ではない。」
ヒューゴはそう言うとロザリーの手を愛おしそうに握った。
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