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私は同じ道を選ばない。
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意識が戻ったのは、あの出来事から2日目の夜。
今思えばそれは、この時しかなかったと思えるような時間だった。
きっと神様が、私に覚悟を決めさせるために用意された時間だったのだろう……突然私は目覚めた。
気が付くと、薄暗い部屋の中を青白い光が部屋を包んでいた。
その光の方向に眼をやると誰か立っている。
ここが黄泉の世界だろうか?
じゃぁ…あの光の中に立つ人は…私を迎えに来てくださった方だろうか?
その方に聞こうとしたが、言葉が出てこない。思わず手を伸ばしてその方を呼ぼうとして…私はクスリと笑った。
なぜなら、動かした右手が脱臼していたはずだったのに、動いたからだ。
動く…。
動くけれど…痛みがある。
もう死んでいるのなら痛いはずはないと思っていたけど…痛い。
死んでも痛いって…それはないよ。死んだら痛みはとって欲しいです、神様。
そう思ったら、また笑えた。
シーンとした部屋と…青白い光が入り込む部屋。
寂しいな。
死ぬことは怖くなかったけど…寂しい。
また、青白い光を背にして立っていた人へと視線を移すと、その人がコツコツとブーツの音を立てて、ゆっくり近づいて来る。
えっ?
近づいて来るその人を見つめていたら…手に人の温もりを感じた。
ドキンと胸が鳴り、視線を移すと、私の左手が小さな手に包み込まれている。
(ミランダ姫…?!)
その小さな手の温もりに心が震え、ミランダ姫を見つめていると、青白い光の中から現れた人が、眠っているミランダ姫の横に座り…言われた。
「気が付いたか…?」
声が出なかった。そんな私に気がついたその人は私の頬に触れ
「無理をしなくていい。」
「…ルシ…ア…ン殿下?」
私は…
私は…生きている?!
それとも、これって…幻?
戸惑った私の顔を微笑みながら、ルシアン王子は
「お帰り…ロザリー。待っていた。」
心臓が大きく鳴った。
私は生きているんだ。戻ってこれたんだ。
その言葉が…左手に感じる温もりが…
ここが黄泉の国じゃないことを…幻じゃないことを…教えてくれる。
涙がポロポロと零れてゆく。
ぁ…あ…まだだ。まだ…安心できない。まだ戦いが続いているのなら、生きている事を喜ぶのはまだだ。
あの後、どうなったのかお聞きしなくては…
今の私ではおふたりを守れない。こんな体では守れないから…!
「ァ…ァ、アデ…リーナ様は…」
青褪め震える声で尋ねた私に、ルシアン殿下は安心するように、柔らかい笑みを浮かべながら
「アデリーナはお前の力で浄化された。」
ほっとした。
でも同時に私の腕の中から、キラキラと光る金色の粒となって、天へと上ってゆく姿が眼に浮かび…胸が痛んだ。
アデリーナ様の恋心は、間違っていたと思う。
でも…そう、でもだ。すべてを簡単に否定するのは、あまりにも悲しすぎる。
そして、もうひとりの方も…同じだ。あの方の恋も…だ。
「ロー…ラン…王…は…」
私の問いに、なぜだか笑みを浮かべられたルシアン王子は
「姿を消された。いや旅立たれたというべきか…。だが、ミランダに悪魔との契約を破棄する方法を見つけるから、いつかここに戻ってくるようにと約束させられてな。」
それは…どういう意味なのだろう?
ローラン王の野望は…潰えた…ということなのだろうか?
私の心の声が聞こえたかのように、ルシアン王子はポツリと言われた。
「ロザリーはローラン王の野望はまだ叶っていない以上、また、このようなことが起きるのではと思っているのだろうが、俺はローラン王の願いは…叶ったと思うのだ。」
願い…?
ルシアン王子が私の手に重なった小さな手の持ち主、ミランダ姫へと視線を向けられたことで、私の胸が大きな音をたてた。
それはまさか…
前世の一部を見た私は…ミランダ姫がスミラ様の生まれ変わりと言うことが、ぼんやりしていた頭に浮かんだ。
ありえるかもしれない。
ローラン王の動きは不自然なことが多々あった。
小さな国をわずか20年足らずで、大国にしたお方にしては…緩すぎる計画だと思っていた。
もし私がローラン王なら…一気に事を進める。
それはまず、人の心が色として見える陛下やミランダ姫を……手にかけるということだ。
…計画通りに事を運べば、あとは簡単だ。
亡くなった兵士の体に魂を繋ぎとめ、国として攻め込めば、勝利は黙っていても転がり込んでくる。
それはルシアン王子がどんなに剣の腕があっても、数万の兵をひとりでは払えないからだ。
だが…ローラン王は…。
私でも簡単に考えられることをされなかった。
なにかを確かめるように…。
なにかを求めるように…じっと見ていらした。
やはり傍観者のように思えたのは、間違いなかったのかもしれない。
ローラン王はミランダ姫の中にスミラ様がいらっしゃる事に、気が付いておいでだったんだ、どの時点で気がつかれたのかはわからないが、ミランダ姫に会う前に、なにかを確かめるように、アデリーナ様を動かされ…そして答えらしきものを見つけられたのかもしれない。
そして…ミランダ姫にお会いされことで、はっきりと見えたのだ。
答えがはっきりと…。
「ロザリー。俺は…ローラン王は恋がなんであるのか知りたかったのかもしれないと思う。」
ルシアン王子の言葉に、ハッとした。
大きく眼を見開いていたのだろうか、ルシアン王子はクスリを笑うと
「眼が零れ落ちそうだな。」
私の頬を触れながら…
「そしてローラン王は見つけたのだと思う。」
思っていたことをまさかルシアン王子が、仰るとは思わなくて、驚いてしまったが…やはりルシアン王子もそう思われたんだ。
掴みどころがないと思っていたあの王の心の中には、狂おしいほどの思いが溢れていたのだ…妹を愛してしまったどうにもならない思いが…。
どうにもならない思い…か…同じだ。
私はルシアン王子を見つめた。
おそらく…私の思いもどうにもならないだろう。
今回の事で、ルシアン王子の婚姻はなくなったが、だからと言って、私の思いが叶うとは思えない。なぜなら男と偽ってきたことが、どう…他の貴族に判断されるかだ。例え、ルシアン王子やミランダ姫の口利きがあっても、貴族との間に溝を作ってでも、思いを遂げることは…望んでいない。ううん、望んではいけない。そうすれば国は纏まらない。
いや、自体はもっと…厳しいかもしれない。
死人がブラチフォード国を危機に落としいれたことは、他国にも知れ渡ったことだろ。
その風評を払拭するためには、やはり強大な国を味方に付けたい…となると、政略結婚だ。
結局は…ルシアン王子のお相手が変わる。だけかもしれない。
ルシアン王子の指先が、私の唇に触れ、思わず吐息が漏れた。
「ロザリー、俺も…ローラン王のように恋を知らなかった。心のどこかで恋を知ることは、国のためにはならないと思っていた。」
「ルシ…アン…殿下…。」
ルシアン王子は微笑まれた。
綺麗な微笑みに、私は囚われたように、ただルシアン王子を見つめると
「お前を愛している。」
ルシアン王子の指先が、今度は私の髪を梳いながら、涙が溢れている目尻を拭うと
「すべてを片付けるまで…待っててくれ。」
きっと無理だ。でも…
私はルシアン王子の首に縋るように、片腕を伸ばし黒髪に触れ……頷いた。
ルシアン王子の唇がそっと重なり、唇の上で…もう一度言われた。
「ロザリー、愛してる。」
今なら、わかる。
悪魔に魂を売ってでも、愛する人を追いかけた…アデリーナ様の気持ちが…ローラン王の気持ちが…
こんなに好き人が眼の前から消えたら…追いかけたいと思う気持ちがわかる。
でも…
アデリーナ様やローラン王の気持ちはわかるが、私はきっと同じ道は選ばない。
なぜなら、私はルシアン王子の騎士だから、なによりも…騎士としてこの方を守り、この方が大事に思っているこの国を、ミランダ姫を守ることが一番だと思うから。
この気持ちはどんな状況であっても変わらない。この方の為に剣を握る気持ちは変わらない。
それは…結ばれることがなくてもだ。
「…ロザリー」
名前を呼ばれ、眼を開くと…青白く輝く月の光が部屋一杯に広がって、そこは…別世界だった。
そんな中、ルシアン王子は額を私の額に合わせ、夢を…未来を誓い合うように
「必ず待っていろ。お前を必ず貰い受ける。だから侯爵令嬢のロザリーに戻って、勝手に他の男のものになるなよ。」
息ができなった。
夢のようなことだから、息が出来なかった。
でも国は…国の事を思うと…熱く震えた心が、今度は絶望で震えた。
無理だ。
国が乱れるのは間違いない。そうなったら、ミランダ姫が…、ルシアン王子が…苦しい立場になられる。
なによりおふたりの幸せを願っているのに…そうなってしまったら私は…私自身が許せない。
だけど今だけは…。
今だけは、ただこの方を愛している侯爵令嬢ロザリーでいたい。
だから私は怯える顔を隠すために、ルシアン王子の首に腕を回し、必死に心の中で言った、愚かな思いに囚われないように
アデリーナ様やローラン王の気持ちはわかるが、私はきっと同じ道は選ばない。
そう、選ばない…と。
今思えばそれは、この時しかなかったと思えるような時間だった。
きっと神様が、私に覚悟を決めさせるために用意された時間だったのだろう……突然私は目覚めた。
気が付くと、薄暗い部屋の中を青白い光が部屋を包んでいた。
その光の方向に眼をやると誰か立っている。
ここが黄泉の世界だろうか?
じゃぁ…あの光の中に立つ人は…私を迎えに来てくださった方だろうか?
その方に聞こうとしたが、言葉が出てこない。思わず手を伸ばしてその方を呼ぼうとして…私はクスリと笑った。
なぜなら、動かした右手が脱臼していたはずだったのに、動いたからだ。
動く…。
動くけれど…痛みがある。
もう死んでいるのなら痛いはずはないと思っていたけど…痛い。
死んでも痛いって…それはないよ。死んだら痛みはとって欲しいです、神様。
そう思ったら、また笑えた。
シーンとした部屋と…青白い光が入り込む部屋。
寂しいな。
死ぬことは怖くなかったけど…寂しい。
また、青白い光を背にして立っていた人へと視線を移すと、その人がコツコツとブーツの音を立てて、ゆっくり近づいて来る。
えっ?
近づいて来るその人を見つめていたら…手に人の温もりを感じた。
ドキンと胸が鳴り、視線を移すと、私の左手が小さな手に包み込まれている。
(ミランダ姫…?!)
その小さな手の温もりに心が震え、ミランダ姫を見つめていると、青白い光の中から現れた人が、眠っているミランダ姫の横に座り…言われた。
「気が付いたか…?」
声が出なかった。そんな私に気がついたその人は私の頬に触れ
「無理をしなくていい。」
「…ルシ…ア…ン殿下?」
私は…
私は…生きている?!
それとも、これって…幻?
戸惑った私の顔を微笑みながら、ルシアン王子は
「お帰り…ロザリー。待っていた。」
心臓が大きく鳴った。
私は生きているんだ。戻ってこれたんだ。
その言葉が…左手に感じる温もりが…
ここが黄泉の国じゃないことを…幻じゃないことを…教えてくれる。
涙がポロポロと零れてゆく。
ぁ…あ…まだだ。まだ…安心できない。まだ戦いが続いているのなら、生きている事を喜ぶのはまだだ。
あの後、どうなったのかお聞きしなくては…
今の私ではおふたりを守れない。こんな体では守れないから…!
「ァ…ァ、アデ…リーナ様は…」
青褪め震える声で尋ねた私に、ルシアン殿下は安心するように、柔らかい笑みを浮かべながら
「アデリーナはお前の力で浄化された。」
ほっとした。
でも同時に私の腕の中から、キラキラと光る金色の粒となって、天へと上ってゆく姿が眼に浮かび…胸が痛んだ。
アデリーナ様の恋心は、間違っていたと思う。
でも…そう、でもだ。すべてを簡単に否定するのは、あまりにも悲しすぎる。
そして、もうひとりの方も…同じだ。あの方の恋も…だ。
「ロー…ラン…王…は…」
私の問いに、なぜだか笑みを浮かべられたルシアン王子は
「姿を消された。いや旅立たれたというべきか…。だが、ミランダに悪魔との契約を破棄する方法を見つけるから、いつかここに戻ってくるようにと約束させられてな。」
それは…どういう意味なのだろう?
ローラン王の野望は…潰えた…ということなのだろうか?
私の心の声が聞こえたかのように、ルシアン王子はポツリと言われた。
「ロザリーはローラン王の野望はまだ叶っていない以上、また、このようなことが起きるのではと思っているのだろうが、俺はローラン王の願いは…叶ったと思うのだ。」
願い…?
ルシアン王子が私の手に重なった小さな手の持ち主、ミランダ姫へと視線を向けられたことで、私の胸が大きな音をたてた。
それはまさか…
前世の一部を見た私は…ミランダ姫がスミラ様の生まれ変わりと言うことが、ぼんやりしていた頭に浮かんだ。
ありえるかもしれない。
ローラン王の動きは不自然なことが多々あった。
小さな国をわずか20年足らずで、大国にしたお方にしては…緩すぎる計画だと思っていた。
もし私がローラン王なら…一気に事を進める。
それはまず、人の心が色として見える陛下やミランダ姫を……手にかけるということだ。
…計画通りに事を運べば、あとは簡単だ。
亡くなった兵士の体に魂を繋ぎとめ、国として攻め込めば、勝利は黙っていても転がり込んでくる。
それはルシアン王子がどんなに剣の腕があっても、数万の兵をひとりでは払えないからだ。
だが…ローラン王は…。
私でも簡単に考えられることをされなかった。
なにかを確かめるように…。
なにかを求めるように…じっと見ていらした。
やはり傍観者のように思えたのは、間違いなかったのかもしれない。
ローラン王はミランダ姫の中にスミラ様がいらっしゃる事に、気が付いておいでだったんだ、どの時点で気がつかれたのかはわからないが、ミランダ姫に会う前に、なにかを確かめるように、アデリーナ様を動かされ…そして答えらしきものを見つけられたのかもしれない。
そして…ミランダ姫にお会いされことで、はっきりと見えたのだ。
答えがはっきりと…。
「ロザリー。俺は…ローラン王は恋がなんであるのか知りたかったのかもしれないと思う。」
ルシアン王子の言葉に、ハッとした。
大きく眼を見開いていたのだろうか、ルシアン王子はクスリを笑うと
「眼が零れ落ちそうだな。」
私の頬を触れながら…
「そしてローラン王は見つけたのだと思う。」
思っていたことをまさかルシアン王子が、仰るとは思わなくて、驚いてしまったが…やはりルシアン王子もそう思われたんだ。
掴みどころがないと思っていたあの王の心の中には、狂おしいほどの思いが溢れていたのだ…妹を愛してしまったどうにもならない思いが…。
どうにもならない思い…か…同じだ。
私はルシアン王子を見つめた。
おそらく…私の思いもどうにもならないだろう。
今回の事で、ルシアン王子の婚姻はなくなったが、だからと言って、私の思いが叶うとは思えない。なぜなら男と偽ってきたことが、どう…他の貴族に判断されるかだ。例え、ルシアン王子やミランダ姫の口利きがあっても、貴族との間に溝を作ってでも、思いを遂げることは…望んでいない。ううん、望んではいけない。そうすれば国は纏まらない。
いや、自体はもっと…厳しいかもしれない。
死人がブラチフォード国を危機に落としいれたことは、他国にも知れ渡ったことだろ。
その風評を払拭するためには、やはり強大な国を味方に付けたい…となると、政略結婚だ。
結局は…ルシアン王子のお相手が変わる。だけかもしれない。
ルシアン王子の指先が、私の唇に触れ、思わず吐息が漏れた。
「ロザリー、俺も…ローラン王のように恋を知らなかった。心のどこかで恋を知ることは、国のためにはならないと思っていた。」
「ルシ…アン…殿下…。」
ルシアン王子は微笑まれた。
綺麗な微笑みに、私は囚われたように、ただルシアン王子を見つめると
「お前を愛している。」
ルシアン王子の指先が、今度は私の髪を梳いながら、涙が溢れている目尻を拭うと
「すべてを片付けるまで…待っててくれ。」
きっと無理だ。でも…
私はルシアン王子の首に縋るように、片腕を伸ばし黒髪に触れ……頷いた。
ルシアン王子の唇がそっと重なり、唇の上で…もう一度言われた。
「ロザリー、愛してる。」
今なら、わかる。
悪魔に魂を売ってでも、愛する人を追いかけた…アデリーナ様の気持ちが…ローラン王の気持ちが…
こんなに好き人が眼の前から消えたら…追いかけたいと思う気持ちがわかる。
でも…
アデリーナ様やローラン王の気持ちはわかるが、私はきっと同じ道は選ばない。
なぜなら、私はルシアン王子の騎士だから、なによりも…騎士としてこの方を守り、この方が大事に思っているこの国を、ミランダ姫を守ることが一番だと思うから。
この気持ちはどんな状況であっても変わらない。この方の為に剣を握る気持ちは変わらない。
それは…結ばれることがなくてもだ。
「…ロザリー」
名前を呼ばれ、眼を開くと…青白く輝く月の光が部屋一杯に広がって、そこは…別世界だった。
そんな中、ルシアン王子は額を私の額に合わせ、夢を…未来を誓い合うように
「必ず待っていろ。お前を必ず貰い受ける。だから侯爵令嬢のロザリーに戻って、勝手に他の男のものになるなよ。」
息ができなった。
夢のようなことだから、息が出来なかった。
でも国は…国の事を思うと…熱く震えた心が、今度は絶望で震えた。
無理だ。
国が乱れるのは間違いない。そうなったら、ミランダ姫が…、ルシアン王子が…苦しい立場になられる。
なによりおふたりの幸せを願っているのに…そうなってしまったら私は…私自身が許せない。
だけど今だけは…。
今だけは、ただこの方を愛している侯爵令嬢ロザリーでいたい。
だから私は怯える顔を隠すために、ルシアン王子の首に腕を回し、必死に心の中で言った、愚かな思いに囚われないように
アデリーナ様やローラン王の気持ちはわかるが、私はきっと同じ道は選ばない。
そう、選ばない…と。
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