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86エリザさん来襲
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かのデータ採取を終え家に戻ると、なにやら不穏な気配が家を包んでいた。
「何でこんな素晴らしい物を作って、私の所に持ってこないの!」
聞き覚えのある声だと思ったらそこに居たのは、やはり曾祖母・・・じゃなかったエリザさんだった。
どうやら中央区よりもさらに向こうから噂を聞いて買いに来ていた人が居たようで、その効能を井戸端会議で自慢したのだろう。回りまわってエルザさんの耳にも達したらしい、領軍に納めている物は傷薬としてしか使われないから、手荒れ軟膏のように使われる事は無いので、情報洩れすることが無いからそんな理由だろう。
「エリザさんいらっしゃい」
「エド。いらっしゃいじゃありません!こんな物を私に隠しているだなんて・・・」
「隠していた訳ではありません。ただ色々ありまして・・・」
「私の所に持ってくるよりも大事な事がありますか!」
そんな横暴・・・な人だったな。口調もおっとりモードでないし。外で待たせてしまっているお客さんの対応のため俺以外は席を外して貰った。
いくらエルザさんの接待のためとは言え、お客さんを待たすのはマズイ。また余計な何個目かの異名が付いてしまう。
「今日はこの軟膏のためだけに?」
「当たり前でしょ。話を聞いた時には驚いたわよ」
「西区までって言うとそこまでお客さん多くないと思うんですけど?」
「そう言う情報は一人いれば、後は広がるものなの。東区で軟膏を買ってきたって散々自慢するのだもの、どんなものかどう言う所で売っているのかって、そうしたら小さな子が作ったって言うじゃない、もうピーンときたわよ」
「恐れ入りました」
「ただ細かい話は良く分からなかったのだけど、聞かせてくれるかしら?」
軟膏の説明をしてエリザさんからはどう聞いたのかを聞かせてもらった。極端に間違った伝言ゲームにはなっていなかったが、一部蓋を開けて3日しか持たないなど、間違った部分も含まれていたので戻ったら修正して貰うよう頼んでおいた。
「魔力の訓練も進んでいるようだけど、まだ転移は出来そうに無いわね」
「一年くらいでそんな魔法が使えるなら、みんなもっと魔法を使っていると思いますよ」
「全く。仕方が無いわね3日に一度取りに来るようにするわ」
「え...」
「あなたが届けられるようになれば、取りに来なくてもいいのだけれど、それが出来ないのだから取りにこなければ使えないじゃない」
こうして転移魔法の明らかに間違った使い方が、軟膏のために行なわれようとしていた。
そんなにホイホイ使えるなら、わざわざ俺達が会いに来るのを待たなくても、転移で顔見に来れば良いのに。
エリザさんが帰って気が抜けた感じがあるのは、多分気のせいでは無いだろう。
魔石での魔力上昇はしていたが、魔風穴までは近頃行けていない、師匠に修行怠っていないかと聞かれて、目が左に流れるようなものだ。多分ギリギリ合格ラインではあったと思うけど、これからは時間を作って魔風穴まで足を運んだ方が良さそうだ。
「まさか転移魔法をこんな事に使うなんてな」
と、一人ごちながら作業に戻る。
顧客人数は毎日少しづつ伸びている中で、時間が取れるのか少し不安になってくるが、3日に一度来るエリザさんにダメ出しを貰わない程度には、修行にも力を入れなければならないとは5歳のスケジュールでは無い気がしてきた。
「お婆さまは帰ったの?」
「うん。3日に一度軟膏を買いにくるって」
「そ!、そう」
「忙しいのは見てるから、今度からは買ったら帰ると思うよ」
怒られないかビクビクな母なのだが、目に余る状況でなければ何も言われないだろう、家の事は祖母とメイリーンかドリューが日替わりでしているのだから、問題と言えるほどの事は起きないし、祖母がそんな状況を見逃す訳は無いので、母が怒られる事は起きないのだから心配しなくてもよいのだ。
作業に戻ろうと納屋に入った俺をヘンリーが呼び止めた。
「エドちょっと良いか?」
「どうしたの?」
「畑の香草なんだけど、こんな物が生えててな」
見せてきたのは見慣れない草だった。わざわざ持ってくるって事はただの雑草ではないのだろう。
それを受け取り匂いをかいで見ると懐かしい緑茶の香りがした。
「薄いけど悪く無い香りだろ?何かに使えるかと思ってまだ残してきてある。もし使えないなら抜けば良いから、試してみてくれよ」
「これはどのくらいある?」
「一株だけだったから、採ってきたそれ3本分くらいかな?」
「思いついた事があるから、どこかに移して増やすようにしてくれ。試してみるのは50株くらいになってからだな、少し量がないと使えそうに無い。増やせるか?」
「伸びてくれたら増やすのは簡単だ。地に這って根を伸ばすヤツだからドンドン増えると思う」
お茶の良し悪しなんて解からない、急須で淹れていた事すら少ないのだ。飲んでいたのはもっぱらペットボトルの安いヤツで、お茶っ葉など転生する前でも数年、こちらに来てからを足せば10数年触っていなかった。
こちらに来て日本を感じる事が出来るものに出会え、そんな過去の記憶でもお茶と分かった事はありがたかった。縁側に座ってお茶会が出来ると良いな。
「何でこんな素晴らしい物を作って、私の所に持ってこないの!」
聞き覚えのある声だと思ったらそこに居たのは、やはり曾祖母・・・じゃなかったエリザさんだった。
どうやら中央区よりもさらに向こうから噂を聞いて買いに来ていた人が居たようで、その効能を井戸端会議で自慢したのだろう。回りまわってエルザさんの耳にも達したらしい、領軍に納めている物は傷薬としてしか使われないから、手荒れ軟膏のように使われる事は無いので、情報洩れすることが無いからそんな理由だろう。
「エリザさんいらっしゃい」
「エド。いらっしゃいじゃありません!こんな物を私に隠しているだなんて・・・」
「隠していた訳ではありません。ただ色々ありまして・・・」
「私の所に持ってくるよりも大事な事がありますか!」
そんな横暴・・・な人だったな。口調もおっとりモードでないし。外で待たせてしまっているお客さんの対応のため俺以外は席を外して貰った。
いくらエルザさんの接待のためとは言え、お客さんを待たすのはマズイ。また余計な何個目かの異名が付いてしまう。
「今日はこの軟膏のためだけに?」
「当たり前でしょ。話を聞いた時には驚いたわよ」
「西区までって言うとそこまでお客さん多くないと思うんですけど?」
「そう言う情報は一人いれば、後は広がるものなの。東区で軟膏を買ってきたって散々自慢するのだもの、どんなものかどう言う所で売っているのかって、そうしたら小さな子が作ったって言うじゃない、もうピーンときたわよ」
「恐れ入りました」
「ただ細かい話は良く分からなかったのだけど、聞かせてくれるかしら?」
軟膏の説明をしてエリザさんからはどう聞いたのかを聞かせてもらった。極端に間違った伝言ゲームにはなっていなかったが、一部蓋を開けて3日しか持たないなど、間違った部分も含まれていたので戻ったら修正して貰うよう頼んでおいた。
「魔力の訓練も進んでいるようだけど、まだ転移は出来そうに無いわね」
「一年くらいでそんな魔法が使えるなら、みんなもっと魔法を使っていると思いますよ」
「全く。仕方が無いわね3日に一度取りに来るようにするわ」
「え...」
「あなたが届けられるようになれば、取りに来なくてもいいのだけれど、それが出来ないのだから取りにこなければ使えないじゃない」
こうして転移魔法の明らかに間違った使い方が、軟膏のために行なわれようとしていた。
そんなにホイホイ使えるなら、わざわざ俺達が会いに来るのを待たなくても、転移で顔見に来れば良いのに。
エリザさんが帰って気が抜けた感じがあるのは、多分気のせいでは無いだろう。
魔石での魔力上昇はしていたが、魔風穴までは近頃行けていない、師匠に修行怠っていないかと聞かれて、目が左に流れるようなものだ。多分ギリギリ合格ラインではあったと思うけど、これからは時間を作って魔風穴まで足を運んだ方が良さそうだ。
「まさか転移魔法をこんな事に使うなんてな」
と、一人ごちながら作業に戻る。
顧客人数は毎日少しづつ伸びている中で、時間が取れるのか少し不安になってくるが、3日に一度来るエリザさんにダメ出しを貰わない程度には、修行にも力を入れなければならないとは5歳のスケジュールでは無い気がしてきた。
「お婆さまは帰ったの?」
「うん。3日に一度軟膏を買いにくるって」
「そ!、そう」
「忙しいのは見てるから、今度からは買ったら帰ると思うよ」
怒られないかビクビクな母なのだが、目に余る状況でなければ何も言われないだろう、家の事は祖母とメイリーンかドリューが日替わりでしているのだから、問題と言えるほどの事は起きないし、祖母がそんな状況を見逃す訳は無いので、母が怒られる事は起きないのだから心配しなくてもよいのだ。
作業に戻ろうと納屋に入った俺をヘンリーが呼び止めた。
「エドちょっと良いか?」
「どうしたの?」
「畑の香草なんだけど、こんな物が生えててな」
見せてきたのは見慣れない草だった。わざわざ持ってくるって事はただの雑草ではないのだろう。
それを受け取り匂いをかいで見ると懐かしい緑茶の香りがした。
「薄いけど悪く無い香りだろ?何かに使えるかと思ってまだ残してきてある。もし使えないなら抜けば良いから、試してみてくれよ」
「これはどのくらいある?」
「一株だけだったから、採ってきたそれ3本分くらいかな?」
「思いついた事があるから、どこかに移して増やすようにしてくれ。試してみるのは50株くらいになってからだな、少し量がないと使えそうに無い。増やせるか?」
「伸びてくれたら増やすのは簡単だ。地に這って根を伸ばすヤツだからドンドン増えると思う」
お茶の良し悪しなんて解からない、急須で淹れていた事すら少ないのだ。飲んでいたのはもっぱらペットボトルの安いヤツで、お茶っ葉など転生する前でも数年、こちらに来てからを足せば10数年触っていなかった。
こちらに来て日本を感じる事が出来るものに出会え、そんな過去の記憶でもお茶と分かった事はありがたかった。縁側に座ってお茶会が出来ると良いな。
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