乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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(こぼれ話)オランジェ

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 ○暁の破壊神はどうしてた?

「………………頭を上げろ」

 暁の破壊神ことオランジェ・パーリントンは、レアムの最後の戦力を何とか制圧していた。その後、総督府跡地にてレアム解放軍というかレジスタンスというか、とにかくそういった一団の長がオランジェに向かって頭を下げる状況に眉をしかめていた。

「では、ここは我々に預からせて頂けるので?」

「既にここにグレイスが居ないことは分かっている。さりとて放っておくわけにもいかぬ。後ろから攻撃されるのは愉快な気持ちにはならんからな」

 逃げられないように固定されたレアム首相のスキル『逆境』は、自身の置かれた状況が不味ければ不味い程、麾下の兵の能力を上昇させる効果があった。オランジェに比肩する強さをもつメアラの凶行、あいや危険性は身をもって知っていたため、『逆境』のスキルはかつてないレベルで機能していた。そんな『逆境』の影響下にあった兵達をほぼ壊滅させて、オランジェはレアム制圧を成し遂げていた。しかし本人も相当に消耗していて、見るからに倒れそうであるのだが、それでも尚、現状持ちうる戦力では抗しきれないと、レジスタンスのリーダーであるサザンにそう判断させる威圧感を持っていた。

「ここに追加の兵が送られなくなったのは我等の働きによるものです。それをもって、どうか信じて頂きたい」

「……そこで気を失っている男の首を差し出すというのであれば考えよう」

 オランジェが首相の首を要求すると、サザンは表情を曇らせる。

「こいつには……責任を取らさねばなりません。踊らされたとはいえ、若者達は巻き込まれただけなのです。彼等をできるだけ救うためにも、どうか……」

「ならん。こちらの学生も随分と迷惑を掛けられている。一度や二度殺す位では腹の虫が収まらん。そ奴の首で手を打つのは最大限の……まて、何だ?」

『ザッ~……遠いから……瞭には……あ、繋がった! パーリントン夫人! グレイス様の奪還及び開放確認できましたっ! でも問題……きまし……族……ザッ~ザ――(プツンッ)』

「……っ! ……そうか、良くやったなお前達。……運が良かったな。うちの生徒達が仲間を助けたそうだ」

「おお……っ! ……で、彼の処分はどうなります?」

「人質が救出されいて良かったな。もし傷一つでも負わされていたならもう一暴れしている所だ」

「「「「「(ゾワッッ!)」」」」」

「しかし今は気分が良い故、その男の事は任せるとしよう。……逃がすなよ?」

「(ビクッ!? コクコク)……それで、貴女はどうされるので?」

「私は急ぎ戻らねばならん。何か良からぬ予感がしているから、な」

 そう言ってふらりとたたらを踏むオランジェを、サザンが慌てて支えに入る。

「大丈夫ですか!?」

「……流石に最後の方はきつかったからな。まさか半分本気のメアラクラスにまで強化されるとは思わなかった」

「その方がどれ程の方かは分かりませんが、辺り一帯の建物が吹っ飛んでいる状況を見れば強さの度合いも分かるというもの……」

 首相の括りつけられていた高台から放物線状に綺麗に残っているものの、あとは綺麗に吹き飛んでいて辺り一帯は爆心地の様な様相になっている。

「もし良ければ我々が貴女を送りましょう」

「………………信用しろと?」

「そこは信じて頂くより他はありませんね。しかしかなりふらつかれていらっしゃいますが、その様な状態で遠くの戦場まで走って戻られるのですか?」

「………………もし裏切れば皆殺しだ。出来ぬと思うなよ?」

 オランジェの、全く嘘の介在し得ない殺気塗れの言葉に、サザンの部下達は震え上がった。しかし、当のサザンはにこやかに、

「きっとできるでしょうね。ええ、きっと。なので同席する私の命を賭けましょう」

 とあっさり返したのだった。サザンを信じることにしたオランジェは、馬車にて城砦まで送られる事となる。道中は意識を失うように眠りについていたのだが、戦場まで後一歩という所で飛び起きる。

「!? 止まれ。魔族の気配がする……っ!」

「なっ!? 全隊に命令! 全隊止まれ!!」

「はっ! 全隊、止まれぇぇえっっ!!」

 サザンが御者に命令すると、またたく間に隊に号令が渡っていく。

「それにしても魔族とは……。千年もの間、発見の報告すらなかった存在ですよね? 本当なのですか?」

「ああ。残念な事に、アレは我々には国民性なのか馴染みがある嫌な感覚なのだ。その脅威度にしてもとんでもないのが1つ……、遠くから同じ様なのが更に2つ近付いてきている。……お前達はここで帰れ」

「何を言ってるんです! 魔族が居るのなら我々にとっても……人類にとっても一大事ではないですか! どうにかしなければならないでしょう!?」

「私やメアラがいくら強くともな……人間の限界を少しばかり超えた位では、魔族のトップクラスの相手などできんのだ」

「!? ……そ、それほどなのですか?」

「魔王程では無いにしても、アレは相手が悪すぎる。……つい先程、私に近い実力のメアラが人相手には使ってはならないレベルの本気で戦って……それでも負けた。今の疲弊しきった私ではもっと相手にならん。ここまで送り届けてくれたお前達には感謝している。が、私が出るにしても無駄に巻き込むのは本意ではない」

「……どうにかできるんでしょうか?」

「分からん。どうにかするための4大家であり、勇者であったのだが……。ここまで私が戻って来ても、軍を統括するベティからの反応が無いというのは……まずいかも知れんな」

「………………」

「座して待つより他はない」

「……できる事もなく、ただじっと体力を温存し、回復に努めるのみ、ですか。なら最後まで付き合いますよ」

「……何?」

「ただ待つというのも暇でしょう? 世界の命運がどうなるかを共に見届けましょう」

「……ふっ、また酔狂な事だな」

 こうして暁の破壊神オランジェとレアムの救世主サザンは、魔王リッキーによって無理矢理幕引きがなされ、ベティからその顛末が伝えられるまでの間、ぽつぽつと色々な事を話してるだけで終わってしまうという、なんとも平和な話で終わったのであった。会話内容は趣味だとか気になる事とか……って、お見合いか? ちなみに解散となったその時、

「お、オランジェ嬢!」

「……嬢、等と付けられて呼ばれる歳ではないぞ」

「……あー、えーっと……お付き合いしてる方とかは……?」

 サザンの部隊が遠巻きに飛び退った! あんた何言ってんの!? と。黙っていれば豪華な見た目の美女であるが、彼等はオランジェがどれ程恐ろしいかを嫌という程知っている。そのオランジェは最初目を丸くしていたが、やがてじろりと周りへ睨みを利かすと、彼等は震え上がった!

「……私は既に結婚している。ベティの連絡でパーリントン夫人と呼ばれていただろう? あいや、アレはレアムの者には聞こえないものだったか……」

「………………ぬがああああっっ!! 畜生! また人妻かっっ!! 趣味も合うのに!! 何で良いなぁと思った女性は何時も何時も……」

 なぁんてことがあったりした。この時のオランジェの様子は誰も知らないが、少しばかり口角が上がっていたりする。更にこの話は、パーリントン伯爵の耳にも届いていたりする。普段物静かな伯爵に妙なヤキモチを焼かせるのに十分なお話だったとかなんとか。……勿論オランジェが多少誇張してわざと耳に入れたのであるが。そう言えばあの時の将校は……みたいな感じで。

「たまにはそういう刺激も良いだろう」

 ……割と夫婦仲はアツアツだったらしい。
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