3 / 5
3、猫まみれの刑で反省してくださぁい
しおりを挟む
王都の繁華な通りに面した猫カフェの店舗は、猫のシルエットが施された看板が特徴的だ。
「おや、いらっしゃいませ。初来店のお客さんなんて久しぶりですよ」
猫カフェの店員さんは三角帽子をかぶっていて、見るからに魔法使い風の格好のお兄さんだ。胸のあたりに名札をつけていて、「エミル」と書いてある。
「猫カフェとは、なんですか? 私、猫が好きなので気になってお邪魔してみたんです」
おずおずと問えば、エミルさんはお店について教えてくれた。
「このお店は特殊な結界を張っていて、魔力量とか猫好きとか善良さとか、いろんな条件をクリアした人にしか見付けられないんだ」
猫カフェというのは、遠い国からやってきた商人がこの国に持ち込んだ特殊な店らしい。
店内にはたくさんの猫がいて、なんとお客さんは猫を愛でることができるという。
私がお店を見つけることができたのは、魔眼のおかげみたい。魔眼があってよかった!
「わーーっ、猫がいっぱい!」
木のぬくもりを感じる内装のカフェ内には、自由に歩き回る猫たちがいる。
「みゃー」
「にゃ~ん」
茶トラの猫は、柱にすりすりと体の側面をこすりつけている。
真っ白のふわふわの猫がその横で後ろ脚で立ち上がってお客さんの猫じゃらしを捕まえようとして、コテンッと後ろに倒れて「かわいいー!」と言われている。
ソックス模様の猫が黒猫に「ふしゃーっ!」と威嚇して、黒猫が逃げていく。
三毛猫はハチワレ猫と一緒になって、ソックス模様の猫の周囲をうろうろ。
「なんて癒し空間なの……!」
私は猫用の丸い寝床で丸くなって寝ている灰色の猫の隣にそーっと座ってみた。
灰色の猫は「うにゃ?」と薄く眼を開けてこっちを見たけど、すぐ興味を失ったみたいに目を閉じてしまった。
「そこにいてもいいよ。じゃあおやすみ」って許してもらえたみたい!
すやーすやーと眠る無防備な小さな命に、どきどきする。
触っちゃだめかな? 寝てるのを起こしちゃうから、だめよね?
意見をきこうとエミルさんの方を見たとき、壁に「お店のお手伝い募集」という張り紙があることに気付いた。
こんなお店で働いてみたい。猫たちのお世話をしてみたい――衝動が湧きあがって、私は声をあげた。
「エミルさん。私、ここで働きたいです!」
「おお。募集中ですよ。では採用! 明日から」
「えっ、そんな二つ返事でいいんですか」
「お店を見つけられる時点で、変な人ではないとわかっていますので。そちらこそ、良家のお嬢様のご様子ですがお家の人に反対されませんか?」
「いろいろあって、両親は私に今やさしいので。大丈夫だと思います……」
あっさりとお手伝いになれて、私は狐につままれたような気分だ。
と、そんな私の耳に、さらさらと紙とペンが擦れる音が聞こえた。
「いいぞ~、ぐっとくる。いいね、いいね。そのまま……アッ、動かないで。頼む。今、いい感じだったんだよ」
えっ、やだ。なんか変な男の人がいる。スケッチブックに絵を描いてる?
でも、「お店を見つけられる時点で、変な人ではない」はずよね?
エミルさんを見ると、肩をすくめられる。
「ここは秘密のお店といいますか、さる高貴な方のサロンみたいな場所なんですよね。その方は変な人ではありますが、身元はしっかりしてますし、悪い人ではありませんよ」
――変な人ではあるけど、悪い人ではないらしい!
「おや、いらっしゃいませ。初来店のお客さんなんて久しぶりですよ」
猫カフェの店員さんは三角帽子をかぶっていて、見るからに魔法使い風の格好のお兄さんだ。胸のあたりに名札をつけていて、「エミル」と書いてある。
「猫カフェとは、なんですか? 私、猫が好きなので気になってお邪魔してみたんです」
おずおずと問えば、エミルさんはお店について教えてくれた。
「このお店は特殊な結界を張っていて、魔力量とか猫好きとか善良さとか、いろんな条件をクリアした人にしか見付けられないんだ」
猫カフェというのは、遠い国からやってきた商人がこの国に持ち込んだ特殊な店らしい。
店内にはたくさんの猫がいて、なんとお客さんは猫を愛でることができるという。
私がお店を見つけることができたのは、魔眼のおかげみたい。魔眼があってよかった!
「わーーっ、猫がいっぱい!」
木のぬくもりを感じる内装のカフェ内には、自由に歩き回る猫たちがいる。
「みゃー」
「にゃ~ん」
茶トラの猫は、柱にすりすりと体の側面をこすりつけている。
真っ白のふわふわの猫がその横で後ろ脚で立ち上がってお客さんの猫じゃらしを捕まえようとして、コテンッと後ろに倒れて「かわいいー!」と言われている。
ソックス模様の猫が黒猫に「ふしゃーっ!」と威嚇して、黒猫が逃げていく。
三毛猫はハチワレ猫と一緒になって、ソックス模様の猫の周囲をうろうろ。
「なんて癒し空間なの……!」
私は猫用の丸い寝床で丸くなって寝ている灰色の猫の隣にそーっと座ってみた。
灰色の猫は「うにゃ?」と薄く眼を開けてこっちを見たけど、すぐ興味を失ったみたいに目を閉じてしまった。
「そこにいてもいいよ。じゃあおやすみ」って許してもらえたみたい!
すやーすやーと眠る無防備な小さな命に、どきどきする。
触っちゃだめかな? 寝てるのを起こしちゃうから、だめよね?
意見をきこうとエミルさんの方を見たとき、壁に「お店のお手伝い募集」という張り紙があることに気付いた。
こんなお店で働いてみたい。猫たちのお世話をしてみたい――衝動が湧きあがって、私は声をあげた。
「エミルさん。私、ここで働きたいです!」
「おお。募集中ですよ。では採用! 明日から」
「えっ、そんな二つ返事でいいんですか」
「お店を見つけられる時点で、変な人ではないとわかっていますので。そちらこそ、良家のお嬢様のご様子ですがお家の人に反対されませんか?」
「いろいろあって、両親は私に今やさしいので。大丈夫だと思います……」
あっさりとお手伝いになれて、私は狐につままれたような気分だ。
と、そんな私の耳に、さらさらと紙とペンが擦れる音が聞こえた。
「いいぞ~、ぐっとくる。いいね、いいね。そのまま……アッ、動かないで。頼む。今、いい感じだったんだよ」
えっ、やだ。なんか変な男の人がいる。スケッチブックに絵を描いてる?
でも、「お店を見つけられる時点で、変な人ではない」はずよね?
エミルさんを見ると、肩をすくめられる。
「ここは秘密のお店といいますか、さる高貴な方のサロンみたいな場所なんですよね。その方は変な人ではありますが、身元はしっかりしてますし、悪い人ではありませんよ」
――変な人ではあるけど、悪い人ではないらしい!
22
あなたにおすすめの小説
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
私の夫は妹の元婚約者
彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。
そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。
けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。
「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」
挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。
最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。
それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。
まるで何もなかったかのように。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。
和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」
同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。
幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。
外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。
しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。
人間、似た物同士が夫婦になるという。
その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。
ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。
そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。
一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。
他の投稿サイトにも掲載しています。
殿下は私を追放して男爵家の庶子をお妃にするそうです……正気で言ってます?
重田いの
恋愛
ベアトリーチェは男爵庶子と結婚したいトンマーゾ殿下に婚約破棄されるが、当然、そんな暴挙を貴族社会が許すわけないのだった。
気軽に読める短編です。
流産描写があるので気をつけてください。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる