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2、そういえば、俺の周りに続編攻略キャラ沢山いるわ
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黒と手を繋いで歩いていく。桃と赤は俺たちの後ろについてきていていた。御館様の断りなく掻っ攫おうとしてるので見つからないように、黒の人消しの為に俺の羽織を被せる。赤がすんごい音立てて歯ぎしりしたけど、どうしたんだい君。
「俺が手を引くから目をつぶってて」
「は……あ、うん」
「まあ、君に何かしてきた奴はこてんぱにするから。赤が」
「お任せください琥珀様!琥珀様を不愉快にさせる輩は全員我が手で再起不能にしてやります!!」
「だ、そうです。だから安心して?」
ぎゅっとこよみ君、黒の手を引いて俺は自分の屋敷に向かう。途中、役員の妖とすれ違い、人間が入り込んだという話をしてくれた。大丈夫だと思いますが気を付けてください。貴方は狙われてますからと言われた。
昔、人が住む区画に行ってそこで退治されかけている妖を助けるためにド派手に妖姿を現してから希少価値のある銀狐の妖として瓦版にででんと宣伝されている。残念なことに俺は狐なので化かすのは大得意。今でも人間に化けてそっちで買い食いしてる。
まあ、俺のことはどうでいいのだ。レアものって珍しいってだけなのだから。それに時代は流れてもう知っている者などいないだろうし。
ありがとうっとお礼を言ってその場を離れ、御館様の根城である中央から出る。
「桃、赤、見送りはもういいよ?」
「そう?じゃあ僕は行くね。人間嫌いだし」
「琥珀様の護衛も御館様から命を受けていますのでついていきます」
「あー、了解」
まあ、流石に監視付きは仕方ないな。そのまま狐種族の住む区画に行き、俺の家である屋敷が見えてきた。
俺の屋敷はここ妖の住む都で唯一の洋館だ。というのも、人の都に行った時、こういう家が流行っていたのだ。前世風に言うと明治あたりの和洋折衷って感じの暮らしである。今ではあちらは妖退治をするものを陰陽師ではなく、警察内に妖魔課という部署がたてられそれらに所属するものすべてを妖魔退治専門家としている。要は警察官になったのだ。とはいえ、陰陽師の血筋が途絶えたわけではない。その中には陰陽師の血筋の隊員がおり、式という陰陽師特有の術が扱える。俺らが扱う妖術と似たようなものだ。中には妖か人か見分けがつく式を使う者がいるので要注意である。
「洋館……?」
「そうそう。うちんちはベッドもあるよ~。あ、君は畳で布団派?和式も作ってるからそこでもいいよ。本当はもっと小さくしたかったんだけどおじさ……御館様の先代が張り切って大きくしたから部屋は腐るほどあるんだ。赤も泊まっていくでしょ?」
「へっ!?いえ!私はここで失礼させていただきます!!それでは!!」
とめる間もなく、赤は頭を下げてダッシュで出て行った。あれ?君監視じゃないの……?
戸惑いながらも、黒と一緒に中に入る。扉を開けると、使用人が頭を下げて俺たちを出迎えていた。
「お帰りなさいませ、銀様」
俺には琥珀という御館様の仮名があるが、以前には父と母がつけてくれた銀という仮名もある。今ではその名前を呼ぶのはこの屋敷で働いている者と父と母だけである。
「ただいま~。この子は俺の友人の黒。これからしばらく住むからよろしく。あ、黒、聞きそびれたけどベッド派?布団派?」
「え?あ、ベッド……」
「オッケーじゃあ俺の部屋の隣この子の部屋にしといて。で、父さんは?それか母さん」
「旦那様は執務室にいらっしゃいます」
「ありがとう。んじゃ黒行こうか」
手を繋いだままなのでそのまま引っ張って執務室に向かう。こよみ君はきょろきょろと周りを珍しそうに見ている。分かるよ。君の時代からすればこの洋館ってお金持ちの家だもんね。それか歴史的遺物的な。
そんな事を思いながら執務室についたので扉をノックする。すると、中からどうぞっと声がした。父さんの声だ。
「父さんただいま~」
「銀ちゃんお帰り~」
そうそう、この銀という仮名は金色の毛並みの父と同じく金色で毛先が白い母に生まれた俺が突然変異のように銀色の毛並みの狐が生まれ、速攻で決まったようだ。銀狐は約1万年前に誕生し、希少性が高く、ある日行方不明になった後人の市場で銀色の毛皮が売られていたのを発見されたそうだ。
父と母はその伝承を聞いて真っ青になって生まれた時からずーっと俺に過保護すぎる。だから大体の事は罷り通るのがいいところではあるが。
俺が人を拾ったのはこれが初めてではない。今までに何度かあったのだ。今回のように中央にぽっと出てきたわけではなく、人の都と妖の都を隔てる川でおぼれているのを拾ったのだ。そもそも一応互いの都は異世界として明確に区別されている。都、川、門をくぐり各々の異界に行ける。ただ、人がその門をくぐってここに来ることはできない。
じゃあなんで俺が人を拾ったかというと、あっちの世界でいう神隠しに遭ってしまったものたちがその境界である川に召喚されてしまうのだ。気づいたらいきなり川の中!ていう状態らしく、皆溺れかけて発見される。渡り、門まで送ってくれる船乗りのことだが、と俺でそう言う人達の保護をしていた。
逆に妖がその川に落っこちて人の都に行ってしまうというケースもある。気づいたら知らない場所。帰り方も分からず彷徨っている者も少なくない。俺たちは不老であるので老いない俺たちを妖だと言いふらし、陰陽師に殺されて材料にされるなどもよくある話。抵抗の末人を殺すことはあるだろう。中には悪意を持って人を害する者もいるだろうが、大体は人から害されて抵抗したというものが多い。俺が人の都に行くのは妖の保護の為でもある。
そういう経緯から俺達のような妖のほとんどは人を嫌っている者が多い。しかし、父と母はそうでもないらしく俺が初めて人を連れて来た時も快く迎えてくれて歓迎してくれた。俺が仕事行っている間に人の都に帰してくれるし。元気かなー。いや、ほとんど寿命で死んでるけど。
そんな事を考えながらぎゅうっと俺に抱き着いて尻尾までも俺の体に巻き付ける父さんに俺は毛並みの間から顔をどうにか出してこういった。
「あのさー、俺の家で人を保護していーい?」
「あー、中央に現れたっていう?うんうん勿論いいよ。後ろの子かな?初めまして、銀ちゃんのパパです。黄金と呼ばれてるけど銀パパでもいいからね。君は何と呼べばいいのかな?」
「あ、え、っと黒、です」
「うん、よろしくね。部屋は……」
「俺の部屋の隣」
「そっかそっか。じゃあ、銀ちゃん。ちゃんと案内するんだよ?」
「はーい」
「名残惜しいけど、パパは仕事あるから。後はよろしくね」
「畏まりました旦那様」
「はいはーい!お任せください旦那様!」
音もなく、いつの間にか黒の背後に小さい頃からの世話係の双子がいた。
種族は狐。茶色の尻尾と耳、緑色の瞳。茶色のくせ毛で無表情の織部とにこにこ笑顔の若葉である。時々入れ替わっているのを知っているが、織部が若葉みたいににこにこ陽気でいるのを気づかれたら恥ずかしいだろうと思って気づかないふりをしている。今日はそんなことがないようで気づかないふりしないで済むね。
因みにこの二人は続編で追加された攻略者である。ただ、続編の攻略者たちは全員特殊で攻略が難しいことで有名だ。その上、もともとPCソフトで過激18禁BLソフトとして売り出していたのにもかかわらず、続編はもっとすれすれを責める過激ぶりに○○ルートヤバイ、や予想してたけど予想できなかった過激ぶりがやばい。スチルそれ入れるの!?ありがとうございます!!などなどもっとファンを増やした。それにより続編はもう一つ発売されFDも続々発売される人気ぶり。これの良いところは新たなキャラを出すのではなく、売れたらこのキャラも攻略対象に格上げする!というスタンスのようで、つまり、最初からいる誰かが続編で攻略者となるのだ。
確かこの双子と人の都での妖魔課に所属している男二人が最初の続編で、次は九条……あ、俺の友人と渡り、あと、えー、誰だったかな?まあそんな感じで増えていった。にもかかわらず売れ行きは右肩上がりで漫画化小説化、アニメ化、映画化などなど革命的にメディア露出をしていった人気ゲームだ。
「じゃあ行きましょう!銀様……と、黒、さん?でいいのかな?」
「はい。お世話になります」
「よろしくー!俺は若葉、こっちは織部だよ~」
俺がそんな事を考えている内に若葉がそう言って無表情の織部の方を抱く。織部はちらっと黒を見た後にすっと視線を逸らして俺に近づき手を取った。
織部。ほぼ喋らないとはいえそれは黒に対して印象が悪いよ!
俺がフォローをする前に、慣れているのか若葉がこう言った。
「いやーごめんねー!織部は口下手だから。別に不機嫌とかそういうわけじゃないよ?」
「そうそう、普段からあんまり喋んないから。織部、俺はいいから黒の……」
「俺がしまーす!だから織部、銀様をよろしく。それじゃあ旦那様、失礼しまーす!」
そう言って若葉は黒の手を握って引っ張る。織部も俺の手を引きながらぺこりと頭を下げて執務室を後にした。俺は父に手を振りつつついていき、そういえばっと黒に声をかける。
「ねーねー、黒は何が好きなの?」
「え?」
ゲーム設定で知ってるけど一応聞いておく。
確かふわふわ卵のオムライスだ。因みに俺はチーズが好きでよくグラタンやピザなどのチーズ料理を作ってもらっている。というか教えた。俺んちの料理人天才だから。
黒は迷いながらも予想通り「オムライスが好き」っという。
「オムライス!半熟でとろとろの?」
「うん。琥珀さんも?」
「うん大好き!チーズが俺好きでね?オムライスにかけたり、中に挟んだりするの好き~!あ、あと呼び捨てでいいよ?俺も黒って呼ぶから、ね?ね?」
「え、で、でも……」
ちらっと黒は若葉や織部を見た。黙って動向を見守っているが先ほどから視線が刺さるのだろう。特に織部の。
「えー?だめぇ?」
「銀様が宜しいのであれば俺は何も言いませーん」
「はい。銀様が宜しいのであれば、俺も文句ありません」
「だって!いいでしょ?」
「う……ん……」
無理やり頷かせたけどこれで仲良し!距離を詰めるのは大事だからね!
そして、俺の部屋の隣の部屋で止まる。
「ここが黒さんの部屋だよ」
「俺の部屋は隣だから遠慮なく遊びに来てね!あとは若葉に任せて俺はちょっと用を済ませてくるよ。またね黒。若葉よろしくね」
「お供します」
「はいはーい。お任せあれ~」
そう言って若葉はたちと別れた。俺はそのまま厨房に直行する。ここはまだ洋食は一般化されていないので皆オムライスなんて分かんない。なので、俺が作る!
ここは安全でいい場所だってことを認知してもらおう。
織部は何も言わずについてきている。厨房の中を覗くと数名の料理人と料理長がいる。この子たちも狐だが俺と同じように尻尾と耳は仕舞っている。理由は簡単邪魔だからだそうだ。
そんな厨房の長である料理長の名は竈。赤と黒が混じった髪を後ろでくくり、右目に傷がついている男だ。忙しそうにしているので食材だけ貰って部屋で作ろうかと思案しつつ、近くにいる副料理長の黒髪、金目の男、炭に声をかけようとすると「銀様」っと渋い声で呼ばれた。
「あ……」
「つまみ食いには早い時間ですけど、どうしました?」
いつの間にか竈がいた。俺はうっと声をあげて気まずそうに視線を逸らす。
「い、いや~、その、オムライス作りたくて」
「おむらいす?」
「うん、黒が好きみたいで今日の夕飯それにしたいの!でも、もう夕飯作っちゃってたら……」
「いえ。まだスープしか作っていません。どんなものですか?」
竈がそう言うと、今までせわしなく働いていた者たちがさーっと机を綺麗にしてスープ番以外彼の後ろに控えている。竈に聞かれ、俺はオムライスの作り方を教える。頭の中では完璧なのに口頭だと大変だ。伝わってるかな?そんな事を思っていたが、竈はすぐにそれを作った。奴は天才だ。グラタンも俺のフィーリングで作ってくれた。
ささーっと片手間に竈は作り、前世で見たようなオムライスが目の前に置かれた。チキンライスの上の卵にすーっと切れ目を入れて広げると中から半熟の部分が露になる。その上にケチャップ(これもフィーリングでいったら次の日に作ってくれた竈特製)をのっけて完成だ。
「どうぞ。こんな感じですか?」
「うん!いただきまーす!」
スプーンを竈から受け取ってオムライスにスプーンを入れる。とろっとろの卵とチキンライス、ケチャップを乗せて口の中に入れる。
んー!
「美味し~!竈って天才だよね!」
「いいえ。銀様の教え方が素晴らしいからですよ」
「えー?そうかなぁ?」
竈ってば、お世辞が上手~。
もぐもぐと食べながら、これにチーズ入れたら美味しいだろうなっと想像する。アツアツのご飯と卵の間にチーズを挟んでとろっとするのもいいし、上にのっけるのもいい。チーズ万歳。チーズ最高!
「確かに。それは美味しそうですね」
「ん?竈なんか思いついたの?」
「……ええ、はい。ところで、銀様、それ以上食べると夕飯が食べられ無くなりますよ」
「でも、残しちゃうのは……」
「織部が食べますので。では夕飯はおむらいす、で良いですか?」
すっと織部が隣からばくばくと残りのオムライスを全て食べた。俺は毎回俺のあまりの食べさせて悪いなっと思いながら竈の言葉にうなずいた。
「うん!あのね、黒には一番美味しいの作ってね!」
「畏まりました」
「夕飯楽しみにしてるー!」
そう言って厨房から出る。
これで黒の胃袋をがっちりつかむぜ!
そんで明日は御館様のところにいってフラグを立てて貰うぜ!
……えー、シナリオどういう風に進んでたっけ?まあ、どうにかなるか!主人公力で!!
「俺が手を引くから目をつぶってて」
「は……あ、うん」
「まあ、君に何かしてきた奴はこてんぱにするから。赤が」
「お任せください琥珀様!琥珀様を不愉快にさせる輩は全員我が手で再起不能にしてやります!!」
「だ、そうです。だから安心して?」
ぎゅっとこよみ君、黒の手を引いて俺は自分の屋敷に向かう。途中、役員の妖とすれ違い、人間が入り込んだという話をしてくれた。大丈夫だと思いますが気を付けてください。貴方は狙われてますからと言われた。
昔、人が住む区画に行ってそこで退治されかけている妖を助けるためにド派手に妖姿を現してから希少価値のある銀狐の妖として瓦版にででんと宣伝されている。残念なことに俺は狐なので化かすのは大得意。今でも人間に化けてそっちで買い食いしてる。
まあ、俺のことはどうでいいのだ。レアものって珍しいってだけなのだから。それに時代は流れてもう知っている者などいないだろうし。
ありがとうっとお礼を言ってその場を離れ、御館様の根城である中央から出る。
「桃、赤、見送りはもういいよ?」
「そう?じゃあ僕は行くね。人間嫌いだし」
「琥珀様の護衛も御館様から命を受けていますのでついていきます」
「あー、了解」
まあ、流石に監視付きは仕方ないな。そのまま狐種族の住む区画に行き、俺の家である屋敷が見えてきた。
俺の屋敷はここ妖の住む都で唯一の洋館だ。というのも、人の都に行った時、こういう家が流行っていたのだ。前世風に言うと明治あたりの和洋折衷って感じの暮らしである。今ではあちらは妖退治をするものを陰陽師ではなく、警察内に妖魔課という部署がたてられそれらに所属するものすべてを妖魔退治専門家としている。要は警察官になったのだ。とはいえ、陰陽師の血筋が途絶えたわけではない。その中には陰陽師の血筋の隊員がおり、式という陰陽師特有の術が扱える。俺らが扱う妖術と似たようなものだ。中には妖か人か見分けがつく式を使う者がいるので要注意である。
「洋館……?」
「そうそう。うちんちはベッドもあるよ~。あ、君は畳で布団派?和式も作ってるからそこでもいいよ。本当はもっと小さくしたかったんだけどおじさ……御館様の先代が張り切って大きくしたから部屋は腐るほどあるんだ。赤も泊まっていくでしょ?」
「へっ!?いえ!私はここで失礼させていただきます!!それでは!!」
とめる間もなく、赤は頭を下げてダッシュで出て行った。あれ?君監視じゃないの……?
戸惑いながらも、黒と一緒に中に入る。扉を開けると、使用人が頭を下げて俺たちを出迎えていた。
「お帰りなさいませ、銀様」
俺には琥珀という御館様の仮名があるが、以前には父と母がつけてくれた銀という仮名もある。今ではその名前を呼ぶのはこの屋敷で働いている者と父と母だけである。
「ただいま~。この子は俺の友人の黒。これからしばらく住むからよろしく。あ、黒、聞きそびれたけどベッド派?布団派?」
「え?あ、ベッド……」
「オッケーじゃあ俺の部屋の隣この子の部屋にしといて。で、父さんは?それか母さん」
「旦那様は執務室にいらっしゃいます」
「ありがとう。んじゃ黒行こうか」
手を繋いだままなのでそのまま引っ張って執務室に向かう。こよみ君はきょろきょろと周りを珍しそうに見ている。分かるよ。君の時代からすればこの洋館ってお金持ちの家だもんね。それか歴史的遺物的な。
そんな事を思いながら執務室についたので扉をノックする。すると、中からどうぞっと声がした。父さんの声だ。
「父さんただいま~」
「銀ちゃんお帰り~」
そうそう、この銀という仮名は金色の毛並みの父と同じく金色で毛先が白い母に生まれた俺が突然変異のように銀色の毛並みの狐が生まれ、速攻で決まったようだ。銀狐は約1万年前に誕生し、希少性が高く、ある日行方不明になった後人の市場で銀色の毛皮が売られていたのを発見されたそうだ。
父と母はその伝承を聞いて真っ青になって生まれた時からずーっと俺に過保護すぎる。だから大体の事は罷り通るのがいいところではあるが。
俺が人を拾ったのはこれが初めてではない。今までに何度かあったのだ。今回のように中央にぽっと出てきたわけではなく、人の都と妖の都を隔てる川でおぼれているのを拾ったのだ。そもそも一応互いの都は異世界として明確に区別されている。都、川、門をくぐり各々の異界に行ける。ただ、人がその門をくぐってここに来ることはできない。
じゃあなんで俺が人を拾ったかというと、あっちの世界でいう神隠しに遭ってしまったものたちがその境界である川に召喚されてしまうのだ。気づいたらいきなり川の中!ていう状態らしく、皆溺れかけて発見される。渡り、門まで送ってくれる船乗りのことだが、と俺でそう言う人達の保護をしていた。
逆に妖がその川に落っこちて人の都に行ってしまうというケースもある。気づいたら知らない場所。帰り方も分からず彷徨っている者も少なくない。俺たちは不老であるので老いない俺たちを妖だと言いふらし、陰陽師に殺されて材料にされるなどもよくある話。抵抗の末人を殺すことはあるだろう。中には悪意を持って人を害する者もいるだろうが、大体は人から害されて抵抗したというものが多い。俺が人の都に行くのは妖の保護の為でもある。
そういう経緯から俺達のような妖のほとんどは人を嫌っている者が多い。しかし、父と母はそうでもないらしく俺が初めて人を連れて来た時も快く迎えてくれて歓迎してくれた。俺が仕事行っている間に人の都に帰してくれるし。元気かなー。いや、ほとんど寿命で死んでるけど。
そんな事を考えながらぎゅうっと俺に抱き着いて尻尾までも俺の体に巻き付ける父さんに俺は毛並みの間から顔をどうにか出してこういった。
「あのさー、俺の家で人を保護していーい?」
「あー、中央に現れたっていう?うんうん勿論いいよ。後ろの子かな?初めまして、銀ちゃんのパパです。黄金と呼ばれてるけど銀パパでもいいからね。君は何と呼べばいいのかな?」
「あ、え、っと黒、です」
「うん、よろしくね。部屋は……」
「俺の部屋の隣」
「そっかそっか。じゃあ、銀ちゃん。ちゃんと案内するんだよ?」
「はーい」
「名残惜しいけど、パパは仕事あるから。後はよろしくね」
「畏まりました旦那様」
「はいはーい!お任せください旦那様!」
音もなく、いつの間にか黒の背後に小さい頃からの世話係の双子がいた。
種族は狐。茶色の尻尾と耳、緑色の瞳。茶色のくせ毛で無表情の織部とにこにこ笑顔の若葉である。時々入れ替わっているのを知っているが、織部が若葉みたいににこにこ陽気でいるのを気づかれたら恥ずかしいだろうと思って気づかないふりをしている。今日はそんなことがないようで気づかないふりしないで済むね。
因みにこの二人は続編で追加された攻略者である。ただ、続編の攻略者たちは全員特殊で攻略が難しいことで有名だ。その上、もともとPCソフトで過激18禁BLソフトとして売り出していたのにもかかわらず、続編はもっとすれすれを責める過激ぶりに○○ルートヤバイ、や予想してたけど予想できなかった過激ぶりがやばい。スチルそれ入れるの!?ありがとうございます!!などなどもっとファンを増やした。それにより続編はもう一つ発売されFDも続々発売される人気ぶり。これの良いところは新たなキャラを出すのではなく、売れたらこのキャラも攻略対象に格上げする!というスタンスのようで、つまり、最初からいる誰かが続編で攻略者となるのだ。
確かこの双子と人の都での妖魔課に所属している男二人が最初の続編で、次は九条……あ、俺の友人と渡り、あと、えー、誰だったかな?まあそんな感じで増えていった。にもかかわらず売れ行きは右肩上がりで漫画化小説化、アニメ化、映画化などなど革命的にメディア露出をしていった人気ゲームだ。
「じゃあ行きましょう!銀様……と、黒、さん?でいいのかな?」
「はい。お世話になります」
「よろしくー!俺は若葉、こっちは織部だよ~」
俺がそんな事を考えている内に若葉がそう言って無表情の織部の方を抱く。織部はちらっと黒を見た後にすっと視線を逸らして俺に近づき手を取った。
織部。ほぼ喋らないとはいえそれは黒に対して印象が悪いよ!
俺がフォローをする前に、慣れているのか若葉がこう言った。
「いやーごめんねー!織部は口下手だから。別に不機嫌とかそういうわけじゃないよ?」
「そうそう、普段からあんまり喋んないから。織部、俺はいいから黒の……」
「俺がしまーす!だから織部、銀様をよろしく。それじゃあ旦那様、失礼しまーす!」
そう言って若葉は黒の手を握って引っ張る。織部も俺の手を引きながらぺこりと頭を下げて執務室を後にした。俺は父に手を振りつつついていき、そういえばっと黒に声をかける。
「ねーねー、黒は何が好きなの?」
「え?」
ゲーム設定で知ってるけど一応聞いておく。
確かふわふわ卵のオムライスだ。因みに俺はチーズが好きでよくグラタンやピザなどのチーズ料理を作ってもらっている。というか教えた。俺んちの料理人天才だから。
黒は迷いながらも予想通り「オムライスが好き」っという。
「オムライス!半熟でとろとろの?」
「うん。琥珀さんも?」
「うん大好き!チーズが俺好きでね?オムライスにかけたり、中に挟んだりするの好き~!あ、あと呼び捨てでいいよ?俺も黒って呼ぶから、ね?ね?」
「え、で、でも……」
ちらっと黒は若葉や織部を見た。黙って動向を見守っているが先ほどから視線が刺さるのだろう。特に織部の。
「えー?だめぇ?」
「銀様が宜しいのであれば俺は何も言いませーん」
「はい。銀様が宜しいのであれば、俺も文句ありません」
「だって!いいでしょ?」
「う……ん……」
無理やり頷かせたけどこれで仲良し!距離を詰めるのは大事だからね!
そして、俺の部屋の隣の部屋で止まる。
「ここが黒さんの部屋だよ」
「俺の部屋は隣だから遠慮なく遊びに来てね!あとは若葉に任せて俺はちょっと用を済ませてくるよ。またね黒。若葉よろしくね」
「お供します」
「はいはーい。お任せあれ~」
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「あ……」
「つまみ食いには早い時間ですけど、どうしました?」
いつの間にか竈がいた。俺はうっと声をあげて気まずそうに視線を逸らす。
「い、いや~、その、オムライス作りたくて」
「おむらいす?」
「うん、黒が好きみたいで今日の夕飯それにしたいの!でも、もう夕飯作っちゃってたら……」
「いえ。まだスープしか作っていません。どんなものですか?」
竈がそう言うと、今までせわしなく働いていた者たちがさーっと机を綺麗にしてスープ番以外彼の後ろに控えている。竈に聞かれ、俺はオムライスの作り方を教える。頭の中では完璧なのに口頭だと大変だ。伝わってるかな?そんな事を思っていたが、竈はすぐにそれを作った。奴は天才だ。グラタンも俺のフィーリングで作ってくれた。
ささーっと片手間に竈は作り、前世で見たようなオムライスが目の前に置かれた。チキンライスの上の卵にすーっと切れ目を入れて広げると中から半熟の部分が露になる。その上にケチャップ(これもフィーリングでいったら次の日に作ってくれた竈特製)をのっけて完成だ。
「どうぞ。こんな感じですか?」
「うん!いただきまーす!」
スプーンを竈から受け取ってオムライスにスプーンを入れる。とろっとろの卵とチキンライス、ケチャップを乗せて口の中に入れる。
んー!
「美味し~!竈って天才だよね!」
「いいえ。銀様の教え方が素晴らしいからですよ」
「えー?そうかなぁ?」
竈ってば、お世辞が上手~。
もぐもぐと食べながら、これにチーズ入れたら美味しいだろうなっと想像する。アツアツのご飯と卵の間にチーズを挟んでとろっとするのもいいし、上にのっけるのもいい。チーズ万歳。チーズ最高!
「確かに。それは美味しそうですね」
「ん?竈なんか思いついたの?」
「……ええ、はい。ところで、銀様、それ以上食べると夕飯が食べられ無くなりますよ」
「でも、残しちゃうのは……」
「織部が食べますので。では夕飯はおむらいす、で良いですか?」
すっと織部が隣からばくばくと残りのオムライスを全て食べた。俺は毎回俺のあまりの食べさせて悪いなっと思いながら竈の言葉にうなずいた。
「うん!あのね、黒には一番美味しいの作ってね!」
「畏まりました」
「夕飯楽しみにしてるー!」
そう言って厨房から出る。
これで黒の胃袋をがっちりつかむぜ!
そんで明日は御館様のところにいってフラグを立てて貰うぜ!
……えー、シナリオどういう風に進んでたっけ?まあ、どうにかなるか!主人公力で!!
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そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
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