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7、下がれ続編攻略者め!お前は危険物だ!!
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桃が黒にチョーカーをつけながら何かを言っている。
「まあ、琥珀の着物着てればそこらの妖にはバレないだろうけど。言っとくけどお前の為じゃないから。勘違いしないでよね」
「はあ……」
「ほら琥珀行くよ」
なんだよ!そのツンデレ特有の言葉は何だよ!!もー!みんなして黒を好きになる!表面上は隠しているように見えて実は好きなんだろ!?このやろーっ!!
黒とつないでいる手とは逆の手を握られて引きずられる。俺は完全にふくれっ面だ。取り繕うことを忘れた。俺は不機嫌です!
「で?何しようとしてるの?」
「一先ず、黒が現れた場所を調べようと思って。後、数日有給貰いに」
「ふーん?てことは、何か心当たりでもあるわけ?話聞いたんだ」
「いや?」
「……は?」
話聞いたら君たちの好感度が上がるから聞いてないよ。なのにこの失態はどうして……?でもまだ、だ、大丈夫!だって今は序盤だもん!いくらでもやり直しは効く!!
「そんな非協力的な態度で琥珀に助けてもらおうっていうの?お前何様?琥珀に保護されてなければ九条さんのところに送るのに」
「えっ!?なんで!?ダメダメ!九条のところはだめ!!」
九条、それはこの都で唯一の娼館が集まる歓楽街を取り仕切る土蜘蛛の男だ。黒の髪に赤い瞳。一応中央では情報屋としての役割を担い、土蜘蛛の傘下には鼠や猫種族の妖もいる事が多い。因みに、桃もその傘下の一人だ。暗殺、間者ドンとお任せ☆というこれでも演技派な男である。怖い。ぼんやりしてたらいつの間にか背後にいるんだもん。ぷすっと刺されちゃうよ。
いや、今は桃のことは良い。九条だ。
九条は本当に何考えてるか分からない。良い付き合いをしているとは思うが、奴の機嫌を損ねたら最後何されるかまるで分らない怖さがある。典型的な悪い男である。
続編では攻略対象になったとはいえ、こいつはひどいもんだった。娼館の責任者ということもあり、まあ、選択肢ミスるとそういう店で働かされる。しかも、最底辺クラスの男娼の為死ななければ何をしてもいいなんて。さらにさらにそれがスチルだったため泣いて叫んで謝ったよね。文章だけでさらっと終わるかと思ってたから。
「分かってるよ」
「仮に俺が死んだとしても九条のところには行かせないで!お願い桃!!」
「その死に関わっていなければ考えてあげる」
「やだ!約束し……」
「随分嫌われたものだな」
ゆったりとした独特な雰囲気の喋り方をする男の声が割って入ってきた。げっという言葉は飲み込んで、黒を後ろに隠す。
「九条。今日来てたの君」
其方を見ると、件の男九条がそこにいた。九条は濃い緑と青色の狩衣で彼岸花の模様がついている。お付きの人はいつものお目付け役の紫色の髪と瞳の鳩羽だ。九条はふんぞり返って煙管をふかしているのに対し、鳩羽は漆で塗られた立派な灰皿が入ってる箱を持っていてぺこりと頭を下げ、いつもの人よさそうな笑顔を見せる。
「来ちゃ悪いか?」
「うん」
包み隠さずにそう言った俺にすうっと煙管の煙を吸い込んだ九条はその煙を俺の顔に吹きかけた。てめえ!
「いつも俺の顔にかけるのやめてくれません!?」
「ふん」
鼻を鳴らしてもう一度九条が煙管に口を近づけるので素早く取り上げて中の灰を鳩羽の持っている灰皿に捨てた。全く!
「というか!家でふかせよ!これ重いじゃん!鳩羽可哀想!!」
「これがこいつの仕事だ」
「パワハラだ!」
「あ?わけわからん言葉を使うな」
「平気ですよ。琥珀様」
九条と言い争っていたら鳩羽がそう言ってきた。いつも落ち着いていて大人しくて俺は心配だよ。九条はとんでもね~奴だから。
「鳩羽がそう言うなら……」
「ええ。ところで琥珀様、そちらの方は?」
鳩羽は人の姿を取っているが土蜘蛛である。人の目である二つの眼は一切動かず俺を向いているが、実際は黒を見ている。この視野の広さ、見習いたい。
「友達」
「……左様ですか。お友達なら仕方ありませんね」
鳩羽はぎょろっと目ん玉を左右別々に回転させる。黒はひっと思わず悲鳴を上げてしまったが、あれ、九条も出来るって言ったら笑うかな。これだよ?この九条がだよ?疲れたって言ってぎょろぎょろ目ん玉動かしたときは腹抱えて笑ったよ。えー?何その目ん玉面白―!触っていい?いいよね?って。目玉くりぬかれそうになったけどね。代償は大きかった。
あ、やば、思い出したら笑いが……ぶふっ!
「……おい」
「え?なに?……ふ、ふふ……っ」
「……」
「あぶねえ!目玉無くなるところだった!!」
ひゅっと目の前に九条の蜘蛛の糸が伸びてくりぬかれそうになった。妖術が間に合わなければ目が見えなくなっていたところだ。
「ちっ。帰るぞ」
「承知しました」
「ラッキー!またね九条、鳩羽~!」
何事もなく去ってくれた。良かった!絡んでたのも俺だけだし好感度もくそもないだろう。大体、続編の攻略者は軒並みルートに入るのが難しいからな。
そんな事を考えていたら不意に最後の続編で攻略対象に格上げした奴誰だっけと少し考えて映像がフラッシュバックした。
「それは下賤で脆弱な生き物だぞ!それに俺はお前たちを助けてやっただろう!なのに、なのに俺を―――」
「ひっ、ひぁ……っ!あ、あん……っ。こ、こよみさま、どうか、どうか俺を―――」
「なんで?どうして?俺はお前に酷いこと沢山したのに!それでも、それでも俺を―――」
新要素!最後の続編ではなんと彼が攻略対象に!?
殺すか、飼うか、愛するか。
主人公の選択次第で彼の行く末が決まる!
―――で?誰?
がくんっと急に体が重くなって膝をついた。
「琥珀!?」
「銀様!!」
体に力が入らず頭が痛い。耳鳴りがひどくて最初、俺を呼ぶ声がしてぷつっと意識が切れた。
「まあ、琥珀の着物着てればそこらの妖にはバレないだろうけど。言っとくけどお前の為じゃないから。勘違いしないでよね」
「はあ……」
「ほら琥珀行くよ」
なんだよ!そのツンデレ特有の言葉は何だよ!!もー!みんなして黒を好きになる!表面上は隠しているように見えて実は好きなんだろ!?このやろーっ!!
黒とつないでいる手とは逆の手を握られて引きずられる。俺は完全にふくれっ面だ。取り繕うことを忘れた。俺は不機嫌です!
「で?何しようとしてるの?」
「一先ず、黒が現れた場所を調べようと思って。後、数日有給貰いに」
「ふーん?てことは、何か心当たりでもあるわけ?話聞いたんだ」
「いや?」
「……は?」
話聞いたら君たちの好感度が上がるから聞いてないよ。なのにこの失態はどうして……?でもまだ、だ、大丈夫!だって今は序盤だもん!いくらでもやり直しは効く!!
「そんな非協力的な態度で琥珀に助けてもらおうっていうの?お前何様?琥珀に保護されてなければ九条さんのところに送るのに」
「えっ!?なんで!?ダメダメ!九条のところはだめ!!」
九条、それはこの都で唯一の娼館が集まる歓楽街を取り仕切る土蜘蛛の男だ。黒の髪に赤い瞳。一応中央では情報屋としての役割を担い、土蜘蛛の傘下には鼠や猫種族の妖もいる事が多い。因みに、桃もその傘下の一人だ。暗殺、間者ドンとお任せ☆というこれでも演技派な男である。怖い。ぼんやりしてたらいつの間にか背後にいるんだもん。ぷすっと刺されちゃうよ。
いや、今は桃のことは良い。九条だ。
九条は本当に何考えてるか分からない。良い付き合いをしているとは思うが、奴の機嫌を損ねたら最後何されるかまるで分らない怖さがある。典型的な悪い男である。
続編では攻略対象になったとはいえ、こいつはひどいもんだった。娼館の責任者ということもあり、まあ、選択肢ミスるとそういう店で働かされる。しかも、最底辺クラスの男娼の為死ななければ何をしてもいいなんて。さらにさらにそれがスチルだったため泣いて叫んで謝ったよね。文章だけでさらっと終わるかと思ってたから。
「分かってるよ」
「仮に俺が死んだとしても九条のところには行かせないで!お願い桃!!」
「その死に関わっていなければ考えてあげる」
「やだ!約束し……」
「随分嫌われたものだな」
ゆったりとした独特な雰囲気の喋り方をする男の声が割って入ってきた。げっという言葉は飲み込んで、黒を後ろに隠す。
「九条。今日来てたの君」
其方を見ると、件の男九条がそこにいた。九条は濃い緑と青色の狩衣で彼岸花の模様がついている。お付きの人はいつものお目付け役の紫色の髪と瞳の鳩羽だ。九条はふんぞり返って煙管をふかしているのに対し、鳩羽は漆で塗られた立派な灰皿が入ってる箱を持っていてぺこりと頭を下げ、いつもの人よさそうな笑顔を見せる。
「来ちゃ悪いか?」
「うん」
包み隠さずにそう言った俺にすうっと煙管の煙を吸い込んだ九条はその煙を俺の顔に吹きかけた。てめえ!
「いつも俺の顔にかけるのやめてくれません!?」
「ふん」
鼻を鳴らしてもう一度九条が煙管に口を近づけるので素早く取り上げて中の灰を鳩羽の持っている灰皿に捨てた。全く!
「というか!家でふかせよ!これ重いじゃん!鳩羽可哀想!!」
「これがこいつの仕事だ」
「パワハラだ!」
「あ?わけわからん言葉を使うな」
「平気ですよ。琥珀様」
九条と言い争っていたら鳩羽がそう言ってきた。いつも落ち着いていて大人しくて俺は心配だよ。九条はとんでもね~奴だから。
「鳩羽がそう言うなら……」
「ええ。ところで琥珀様、そちらの方は?」
鳩羽は人の姿を取っているが土蜘蛛である。人の目である二つの眼は一切動かず俺を向いているが、実際は黒を見ている。この視野の広さ、見習いたい。
「友達」
「……左様ですか。お友達なら仕方ありませんね」
鳩羽はぎょろっと目ん玉を左右別々に回転させる。黒はひっと思わず悲鳴を上げてしまったが、あれ、九条も出来るって言ったら笑うかな。これだよ?この九条がだよ?疲れたって言ってぎょろぎょろ目ん玉動かしたときは腹抱えて笑ったよ。えー?何その目ん玉面白―!触っていい?いいよね?って。目玉くりぬかれそうになったけどね。代償は大きかった。
あ、やば、思い出したら笑いが……ぶふっ!
「……おい」
「え?なに?……ふ、ふふ……っ」
「……」
「あぶねえ!目玉無くなるところだった!!」
ひゅっと目の前に九条の蜘蛛の糸が伸びてくりぬかれそうになった。妖術が間に合わなければ目が見えなくなっていたところだ。
「ちっ。帰るぞ」
「承知しました」
「ラッキー!またね九条、鳩羽~!」
何事もなく去ってくれた。良かった!絡んでたのも俺だけだし好感度もくそもないだろう。大体、続編の攻略者は軒並みルートに入るのが難しいからな。
そんな事を考えていたら不意に最後の続編で攻略対象に格上げした奴誰だっけと少し考えて映像がフラッシュバックした。
「それは下賤で脆弱な生き物だぞ!それに俺はお前たちを助けてやっただろう!なのに、なのに俺を―――」
「ひっ、ひぁ……っ!あ、あん……っ。こ、こよみさま、どうか、どうか俺を―――」
「なんで?どうして?俺はお前に酷いこと沢山したのに!それでも、それでも俺を―――」
新要素!最後の続編ではなんと彼が攻略対象に!?
殺すか、飼うか、愛するか。
主人公の選択次第で彼の行く末が決まる!
―――で?誰?
がくんっと急に体が重くなって膝をついた。
「琥珀!?」
「銀様!!」
体に力が入らず頭が痛い。耳鳴りがひどくて最初、俺を呼ぶ声がしてぷつっと意識が切れた。
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