無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴

文字の大きさ
23 / 34
本編

サイン

しおりを挟む
そうして彼らを見送って馬車が見えなくなると、ウィルは盛大にため息をついた。



「くそ、仕方ないこととはいえあれに貸しを作るとは……」



ウィルがぼそりとそう呟いて、再びはあっとため息をつく。何やら彼も苦労しているということは分かった。



そして解散!となるだろうかと思ったが思い出した。



そうだ、侍従君にお金借りたままだった。外出の時に奢ると言われたといえそこまで仲良くない人に奢らせるのは気が引ける。というか、後でヴィが管理している俺の給金から払えばいいやとか思ってたし。

そう思って俺は解散して離れる前に「侍従君!」っと声をかけて腕を引っ張った。侍従君は声をかけられるとは思わなかったようで驚きの表情で俺を見る。



「え?な、なんですか……?」

「それが……」



――と、すごくすごーく背筋が凍るような鋭い視線を感じた。ぶるっと身を震わせると何故かキャンベルホープが俺を睨みつけている。



え?なに、こわ。



俺はそう思いながらも声が大きかったか?と侍従君に顔を近づける。



「……っ!!」

「あのね、この前の―――」

「ちょぉーっと、失礼するわ」

「!?」



突然、俺と侍従君の間にキャンベルホープが割って入ってきた。



はー?っと突然の意味の分からない行動に思わず彼を睨みつけるがんんっと彼は咳払いをしてから俺を見下す。いや、ヒール付きの靴だからそうなるんだけど、威圧感が凄い。



「この子に何の用?」

「え?なんで貴方に通さないといけないんですか?」



俺が思わずそう言うとキャンベルホープはふっと笑みを浮かべてそれから侍従君の肩を抱く。侍従君はびくりと体を震わせて不安げにキャンベルホープを見上げていた。



「この子は私の婚約者だからよ」

「リドル!!」

「はあ……え?」



キャンベルホープがそう言った。思わず侍従君を見ると侍従君は顔を真っ赤にしてあわあわとしながら彼を呼び捨て。どうやら本当らしいが、他のみんな知ってたの?俺知らんかった。そう思って周りを見るが周りは興味なさそうにしている。これは知っているかどうかは微妙だ。



「あの、婚約者だからってなんで……」

「貴方は信用ならないのよ!私の婚約者を虐めないでくれる?」

「ちょっとリドル!!」

「ええー……」



俺苛めてないのに失礼な人だなぁ。そう思いながらまあ、聞かれて困ることでもないし、言ってしまおう。



「この前町で二人っきりになった時に奢って貰ったのでそのお金を帰そうかと……っ!?」

「はあ!?二人きりですって!!何よそれ聞いてない!!ルナ!どういう事よ!ここ数日全然会えなくて寂しかったのにこんなちんちくりんとデートですって!?ありえない!あり得ないわ!!」

「リ、リドル落ち着いて!接待だから!!」



キャンベルホープがそう言って侍従君に近寄るので侍従君はどうにか宥める。俺はこの状況どうすればいいのかと思っているとキャンベルホープが突然俺の方を見て睨みつける。



「要らないわ!!」

「え」

「接待だもの!仕事だもの!だから要らないわ!!」

「あ、そうですか」

「ええ!」



キャンベルホープがギラギラとした目で見るのですすすっと視線を逸らして俺はそう言った。

そして、会話がひと段落するとウィルがパンっと手を叩いた。皆ウィルに注目すると彼がこう話しだす。



「さて、漂流者がいなくなったので明日からは通常業務に戻るように。今日はもう帰って休んでね」



そう言って解散となった。



速攻家に帰ろうと思ったのだが、ヴィがアルフレッドに呼ばれ俺は騎士団近くにあるお洒落なカフェでヴィを待つ。また、レインも明日の仕事の確認をするようで早々に別れた。



一先ず飲み物とプリンを頼んでそれが来るのを待つ。すると、店員さんが小さなバスケットに入った花を持って何故かこちらに歩いてくる。視線がばっちり合ったので多分俺だ。



「恐れ入ります。お客様のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」

「ベルクラリーサです」

「ありがとうございます。他のお客様からこちらを贈ってほしいと言われて参りました。此方に受領したというサインを頂けますか?」

「え?俺に?誰からですか?」

「ええっと、こちらのカードの方からで……」



そう言われて店員さんから貰った二つ折りのカードを開けるとそこにはランディール王国の家紋がついていた。思わずぎょっとして偽物じゃないかと少しこすったら金箔が付いた。確か、玉璽には金箔が入っているのが主流だと聞いた。



ひえっと思わず悲鳴を上げて慌てて店員に渡された紙の束を手に取る。三枚ほど綴ってあるものだ。どの紙も真っ白で店員さんに「分かりやすい様に真ん中に大きく書いてください」と言われその通りに書いた。それからその紙束を持って店員さんはバスケットを机に置いた後に礼をして去っていった。



俺はなんでこんなものが贈られたのかと思いながらバスケットの中身を見るとそこにはヒマワリが入っていた。



ひまわりって何だっけ花言葉。今度ヴィに―――。



「ん……?」



ふと視線を感じて其方を見るが、誰もいなかった。気のせいだったのだろう。そう思って再びプレゼントについて考える。



あ、分かった。もしかしたら漂流者を守ってくれてありがとうって言うお礼なのかもしれない。うん、それだったら納得だ。律儀な国だったなぁ。



とりあえず頼んだのが来たのでバスケットを机から向かいの椅子に置いた。

で、プリン食べ終えてまったりお茶飲んでたらヴィが帰ってきた。俺を見た後にバスケット、正確には中身のヒマワリを見て笑顔だった顔が無表情になる。え、どうしたの?



「これ、誰から?」

「あ、これ」



そう言ってカードを渡してそれを見た後にばっと俺の腕を掴んだ。



「他には!?何もされなかった!?」

「え?え?うん、何も……、あ、サインしたよ?」

「はあ!?」

「え?え?じゅ、受領したっていうサインが欲しいって……言われて……」



ヴィが焦ったような表情で俺を見つめる。な、何かまずい事でもしたのだろうか。でも確かに三枚も書くのっておかしかったかもしれない。今更ながら……。



「ベルちゃん、それどんな紙だったか覚えてる?」

「紙、というか紙束で三枚つづりで真ん中に大きくサインしてって言われたよ?」

「……ああ、成程サインが欲しかったわけか。あー、焦った。まだ婚姻届け出してないからそっちに書かれてたらまずいことになってた……」

「ヴィ?」



ヴィが何やらぶつぶつ言いだしてよく聞こえないが俺が呼びかけたらにっこりと笑顔を見せる。



「ベルちゃん。今度そういう事が起きたら僕の名前を書いてね?」

「え?でも……」

「婚約者は、皆そうなんだよ?」

「そう、なの?」



ヴィが言うならそうなんだろう。ならば今度はヴィの名前書けばいいんだな?うん分かった、今度サインくださいって言ったらヴィって書くわ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...