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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!

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「アルカルド様! お待ちください!!」
「ロズリー!!」


 ばんっと扉を開けると、ロズリーが思いっきり平手打ちを受けていた。リュネお兄様に。

 え、いたんですかと驚きの表情を浮かべるとリュネお兄様の指示でロズリーは二人の男に羽交い締めにされながら無理矢理跪かされていた。

 俺はそんな彼に駆け寄ろうとしてひょいっと抱えられてしまう。


「ルド、御飯は?」
「ロズリーの声がしたから……」
「……そうか」


 猊下はそういうだけで俺を部屋に戻すことはなかった。そのことに俺はほっとしつつも抱えられてしまっては身動きがとれないと猊下を見上げる。

 下ろして欲しいとじっと見つめるが彼は顔を上げてリュネお兄様とロズリーの方を見てしまった。

 仕方ない、このまま聞くしか無いか……。

 俺はそう思ってロズリーがどうなるのか見守る。


「君は、自分が何をしたのか分かっていないのかな?」
「な、な、何のことですか……? あの子供のこと?」
「倉庫の備品を盗ったね?」
「していません……っ!!」


 凄い。間髪入れずにそう否定するとは!堂々と目を見てまっすぐにそう言い切るロズリーに俺は思わず感心してしまう。これは慣れている。前世から数えればこういう場面に遭ったのは数多くあるはずだから、当然と言えば当然だ。


「僕は、そんなことはしません!! それに倉庫の整理をしていたのは僕だけではないのにどうして僕だけが……っ!!」
「そう? じゃあ、これは?」


 そういってリュネお兄様は、ぽいっと鞄を放り投げた。その鞄が開いて宝石の数々が溢れ出る。

 俺は頭を抱えた。

 隠し場所!!後どんだけ買った!!

 分かっていたことだが、ロズリーは自分が平民である自覚はあまりないようだ。前世の記憶で豪遊していたのだから、ますます今の地位に不満を募らせていたのだろう。だからって、こんな派手にやるか!?もっと上手に横領してくれよぉ!!

 流石にこれを見て、自分の給金で買ったとは言えないだろう。だから俺は素早く自分があげたといおうとしてロズリーと目が合った。

 安心しろ!今助けてあげるから!!


「そいつが! そいつが僕にプレゼントだってくれました!!」


 お前―!!!この場面で俺をそいつって言うなばかー!!!しかも指さして!何してんの!!

 彼の言葉に視線が俺に向くと、さっと猊下が体を反転させて俺をその視線から隠した。それから今までリュネお兄様しか話していなかったのに猊下が口を開いた。


「仮にそうだとしても、主人よりもきらびやかな宝石をこんなにたくさん持っているのはどうしてだ?」
「そんなことはありません……っ!!」


 だめだロズリー!今は否定するな!!

 それだと自分は俺よりもたくさんきらびやかな宝石を持っているわけではないということになる!その嘘は通じない!

 なぜなら、あの宝石箱を俺はロズリーに渡した後どこにいったか探していないからだ!!

 仮にロズリーの所にあったとして、押収されている。という事はつまり、中身を確認されているということだ!!

 このロズリーを見るに、隠し場所の期待は出来ない。つまり、その宝石箱はリュネお兄様達の手にあると考えて良い!


「それ……むぐっ!!」


 慌ててロズリーを擁護しようとして、猊下が俺の口を塞いだ。これじゃあロズリーをかばえない!そう思い口を動かそうとするが、「ルド」と猊下が俺を呼んだ。


「今大人が話しているから静かに」


 俺も大人だもん!!

 そう思ったが、猊下が俺の口から手を離す気はないようだ。それでも俺はこの危機的状況を回避しなければいけない。猊下には悪いが手を噛んででも……っ!!


「その子供がそんなことを言ったんですか!? 誤解です! 僕はきちんとその子供のために……っ!!」
「へー、この屑石を見ても同じ事が言えるの?」
「!」


 リュネお兄様の手の中にあの箱がある。丁寧に開けられており、ロズリーは驚きの表情を見せていた。何でだよ。魔法がある世界であんな鍵付きのものすぐに開けられるでしょ!?


「無理に開ければ中身が壊れる仕掛けだったみたいだけど、一回見れば同じ鍵を作れるし、壊れてもこんな粗悪品見ればすぐ分かるよ」


 リュネお兄様の才能が憎い!!見れば分かるってそんなの……。 

 そこでふと、俺は思い出した。あれ?リュネお兄様に出会う前にロズリーのポケットに鍵入れてなかったか、と。じゃあ、もしかしてあの会話も聞かれてた……という事はない?


「どいつもこいつも俺たちが何も知らないとでも思ってるの? アルカルドはこのラフィール公爵家の三男。お前らみたいな奴に侮られる存在じゃないんだよ!!」


 リュネお兄様が怒気を孕んだ声でそうロズリーに言った。ロズリーは顔を真っ青にして震えている。

 積んだああああああああっ!!!!

 もう初手から積んでたああああああああああっ!!違うのぉ!!それは仕方ないって言うかぁ!!俺は気にしてないというかぁ!!逆にそれを良いことに使っていたというかぁ!!


「連れて行け」


 リュネお兄様の指示でロズリーを拘束していた彼らは、彼を連れて行く。俺はそれを悲壮感たっぷりで見つめた。

 そんな!俺の屑!俺の屑がぁっ!!やめてー!!俺の屑を連れていかないでぇ!!!

 ロズリーが見えなくなり、俺はしょんぼりしてしまう。ああ、終わった。次は俺にどんな侍従がつくんだ……。こんなことがあったから監視が強くなってしまうし……。


「アル~。ごめんね! こんな形になっちゃって!」
「う、ううん、大丈夫……」
「そんな悲しまないで! アルは何も悪くないからね!!」
「うん……」


 言えない。口が裂けてもロズリーを庇いきれなくて後悔しているなんて言えない……っ!!

 普通はこう、虐げられて影口言われて落ち込むところなのにね。

 どうにか頷きながら、俺は猊下に抱えられて部屋に戻る。


「……ルド」
「うん」
「この世には、どうにもならない人間がいる」
「……うん?」
「それがあれだ。あれは、何度も窃盗横領を繰り返し、意地汚く生きている。きっとここを追い出されても生きていけるはずだ」
「うん、そうだといいな……」


 ロズリーの行く末なんて知っている。まさか追い出されるとは思わなかったが、最終的に皇室の使用人になるのは分かっているのだ。ただ、そう、俺が利用しても心が痛まない屑を都合良く使えなくなるのがとっても悲しいのだ。

 でも、これ以上落ち込むと猊下が困るよな。うん、頭を切り替えてとりあえず朝ご飯を食べよう!!

 後のことは後で考えよう!!
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