入れ替わりの少年と王子様

紫鶴

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王子様の人形部屋

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「アラン~」
「なんです、殿下?」
「この子のお洋服作って」
「いいですよ」


義足のメンテナンスの為膝から下のない脚をぶらぶらとさせてベッドに座っていた少年は、王子様にそう言われ人形のお洋服セットとした箱をベッドの下から取り出しました。その彼に王子様は少年によく似た人形を渡します。渡された人形に少年はん?っと首を傾げます。


「この前もこんな人形作ってませんでした?」
「ん?んー……そうだったかな?」
「え?あー、んん?」


その微妙な反応の王子様にじいと少年はその人形を見つめます。見てみると似ていないかも?


「俺の気のせいみたいです。男の子ですか?」
「うん、そう!」
「分かりました」


少年はそう思うことにしました。それからその箱から布を選び、縫っていきます。その針子姿の少年を横目で見ながら上機嫌に王子様は銀の義足をメンテナンスします。

その様子を見た少年はそんなにこの人形が気に入っているのか、としげしげとそれを見つめます。青色の瞳に白い髪。少年と同じ容姿である。木材で作った人形だが、丁寧にやすり掛けされているので手触りがいい。流石王子様の作った人形だと思いながらアランはするすると洋服を仕立てていきます。人形に作る洋服も増えてきてそれ専用のクローゼットも王子さまは作りました。また、他にも小物は増えいつしかお人形専用の部屋が隣の部屋に併設されることになりました。廊下に出なくても入れるようにこの部屋にその部屋に続く扉も付けられ、少年はこれだから金持ちはっと思いました。

ただ、少年はそんなに人形があったかな?っと思いつつ、その部屋には一度も入ったことがありません。まあ、少年自身も特にそんな欲求はありませんし、そこまでプライベートを共有するつもりもありません。ですので、少年はその部屋の実態をまるで知りません。


「殿下、出来ました」
「わー!ありがとう!」


ぎゅーっと王子様は受け取った人形を大事そうに抱きしめて、あっと時計を見た。


「そろそろ寝る時間だよ!」
「え?ああ、すみません。ベッド占領していて。どうぞ殿下」


少年はそう言って腕だけでベッドから出ようとすると王子さまはフルフルと首を振り、少年に布団をかけます。


「寝るのはアランだよ!」
「は?」
「はい、ねんね!」


ぽんぽんっと布団をかぶせた少年に王子様はそう言いました。何言ってんだこいつは、と少年が呆けた声を出します。


「い、いやいや殿下?俺は殿下の護衛ですよ?寝るわけ……」
「大丈夫!ここは王宮だから!」
「何言ってるんですか!10年前に自室まで入られたことをお忘れでっ!?」
「大丈夫大丈夫!」


そう言って香をたき始めた王子さま。少年はその香りにだんだんと眠気に誘われます。寝てはいけない、そう思いながらもいつの間にか少年の瞼は閉じられ寝入ってしまいました。

王子様はくすりと小さく笑いました。それからちゅっと少年の額にキスを落とし少年が先ほど作ってくれた服を着せた人形を持ちながら王子さまは扉に向かいます。その扉を開けるとそこは部屋でした。

真ん中に天蓋付きのベッドが置かれています。棚のついたベッドサイドテーブルが置かれています。また、それとは別に両開きの折り畳み扉のあるクローゼットらしきところがありました。王子さまはその両開きの折り畳み扉を開いてうっとりとその中に入っているものを見る。

そこには今しがた王子様が持っている人形と同じような特徴のそれがテーブルの上に鎮座していました。とはいえ、人形のサイズが違いました。また、髪も人形によってはバラバラです。そして何より―――。


「あ、これも足取らないと」


ばきっと音を立てて王子さまは持っていた人形の両足をもぎ取りました。それを暖炉の中に放り投げ、それは炎の中で消えてしまいます。それを一瞥するでもなく、同じく脚のない人形を少しずらし、空間を開けました。


「ふ、ふふ……」


すると思わずと言ったように王子様が笑いながら、そのあいた場所に持っている人形を置きます。それからそっと引き出しを引こうとしてこんこんっとノック音がしました。ぎらっと王子さまは瞳をぎらつかせてちっと舌打ちをしました。ばんっと乱暴にその扉を閉めつつ廊下に続く方の扉に近づきます。


「誰ですか?」
「俺だよ」


ちっともう一度王子さまは舌打ちをしました。この扉の前にいるのが一番目の王子様であることが分かったからです。

王子様は特にその男が嫌いでした。なぜならば―――。


「今日も俺の弟がごめんね、アラン。父上たちにも言ってるんだけど……」


王子様は、いえ、少年の顔の王子様は仕方なく部屋に一番目の王子様を入れました。すると彼は申し訳なさそうな顔で王子様にそう言います。それからそっと王子様の肩に触れてきました。


「いえ、大丈夫です殿下。私はまったく気にしていません」
「アランには辛い思いをさせてるね。君が望んでくれればいつでも俺付きの侍従にしてあげられるのに……」


ぴくっと笑顔を張り付けていた王子さまは一瞬頬をひきつらせつつ、やんわりとその肩の手から逃れます。

そう、王子様がなぜこの男を大嫌いなのか。同情、少年に優しくしているふりをしてその実、少年の力を欲している欲にまみれた男であるからでした。

毎晩この時間にこの少年の部屋だと勘違いしているこの部屋に赴いてはべたべたと触り、図々しくもくだらない話をしていく。少年はあれでいて興味のないものにはとことんドライであるので少年であればさっさと部屋から追い出したでしょう。それが例え一国の王子であろうとも。しかし王子さまはそんなことはしません。

何故ならこの機会は最高のチャンスです。王宮内の情報を知るための。

とはいえ、一番目の殿下も一刻を担う者であるため下手な情報は流しません。彼にとっての。しかし王子さまはそれ以上に切れものでした。一番目の王子様には大したことがないものが王子様にとっては宝のような情報です。べらべらとその情報を吐く一番目の王子さまは王子様にとって滑稽以外の何者でもありません。

元々、社交的で優しい兄だと他からは言われていますが、王子様が人形に固執するようになったのもこの兄弟のせいでした。

一番下の王子様にこの兄弟たちは悪口をよく言っていました。それも誰もいないところで。悪口だけではなく直接危害を加えられたこともあります。

まあ、別に王子様にとって、それらはどうでもいいのです。ですがその男が自分の嫁に手を出すとは話が別です。

徹底的に潰してやる。

王子様はにこにこと少年のふりをしながら笑顔で今日も情報を引き出します。

そんな事も知らずに一番目の王子さまは呑気にも少しずつ少年と仲良くなっていると勘違いをしているのでした。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ナポ
2019.10.21 ナポ

話の書き方が不思議な感じですごい引き込まれました!語彙力なくてすみません( _ _)

2019.10.21 紫鶴

感想ありがとうございますー!
童話風?絵本風?にしたくてこんな書きた方をしてましたー!

解除

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