【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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前の話10

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結界が壊れた。



皆が結界を張りなおすと言っていたのに、一体どうして!?

まさか、やっぱり法術もない俺が七宝になったから結界にほころびが出来ていたのか!

どおんっと近くで地響きが聞こえ、グラグラと地震が起きる。



「清香さん!哲君!外に!」

「うわあああん!」

「お、お役人さんっ!」



がしゃんがしゃんっと棚の上のものが落ちて、頼りない家の支柱が今にも折れそうだ。俺は哲君を抱えて清香さんの肩を支えながら外に出た。他の人達も訓練通りいったん外に出て崩壊に巻き込まれない場所で座っている。



「俺は逃げ遅れた人がいないか確認してきます。ここにいてください!」

「は、はい……てっちゃん、お役人さんがいるから大丈夫よ。ほらよしよし」



清香さんは真っ青な顔でそう言いながら泣いている哲君を宥める。俺は大太刀を背に背負いながら走り出す。



「お役人さん!!」

「お怪我は!?今皆さん中央に集まっています。そこまで歩けますか!?」

「俺達は大丈夫です!このじいちゃんもつれていきますので違う場所に!」

「ありがとうございます!お気をつけて!」



あまりにも大きな地震に外に出たはいいがそれ以上歩けない人々を抱えて中央の場所に連れていく。

訓練の時に火の始末は言っていたので今のところ火事は起きていないが遠くの方で赤い火が見える。木造建築ばかりなのですぐに火が燃え移っていた。

消火を手伝おうとそちらに足を向けるとこかーんかーんと鐘が鳴った。



1,2,3回。



妖魔襲来の警告音である。

結界が壊れた事を奴らは分かったようだ。



きゅええええあああっ!と言葉にできない異質な音と共にどどどっとまたしても地が揺れる。

大きな山がそこにはあった。足は8本、目は6つでツノが生えているその生き物。形状は蜘蛛のようだが、きちちちちっと不気味な音を立てて牙を鳴らしている。



その生き物は大きくて鋭い足を持ち上げて俺に襲いかかってきた。



「お役人さん!!」



叫び声が聞こえた気がした。



しかし、彼らが心配することは無い。

痛みに鳴き声をあげ、仰け反ったのはその妖魔の方だから。今しがた俺を貫こうとした足は縦に引き裂かれ、自分の身長の半分はあるだろう大太刀を薙ぎ払うようにもう一度振るうと前足2本が跳ね飛んだ。すぐに、それは再生を始めたがそれよりも先に俺がある場所に刃を通すと思った通り何かが壊れて妖魔は霧散した。



彼らの死骸は残ることなく消えるので、死んだふりをして不意を突かれるということはない。

聞くところによると、法術で倒した場合は残るらしく目に見えて証拠が残る。だから、俺がいくら妖魔を倒してもやったとは認められない。



まあ、別に妖魔を倒したからと言って偉いわけではないのでそこまで悲観することでもないし、帝はきっと俺の能力を分かっているから……。



はっとして慌てて頭を振った。



そこでどうして帝が出てくると思考を切り替えて目の前の妖魔に集中する。

もう一匹、今度は四足歩行の獣の妖魔が襲い掛かるがそのまま縦に分断する。



ここまで来るのが早い。何か対策されたか。



仕掛けたものは通った妖魔に電撃を与えるという単純なものだ。低級であれば一瞬にして消し炭になる代物だが、どうやらそれよりも位の高い妖魔が近くにいたようだ。



「後ろは俺が守ります!みなさん早く皇宮に!帝が必ず守ってくださいます!」

「わ、分かった!動けるやつは動けない奴を助けながら行くぞ!」



集落で頼りにされている男がそう言うと、率先して彼らが動き出す。

ここまでこれたあの妖魔は俺が日頃仕掛けた罠を受けながらここまできた可能性が高い。

再生力もあれよりも早かったらこうは簡単にいかなかった。彼らがここに来る前に処理しなければ。

俺はそう思って走り出そうとして「お役人さん!!」っと腕を掴まれた。



「! 清香さんここは危ないです早く……」

「これを渡したらすぐに避難します。これを、お役人さんに渡したくて」



そう言って清香さんは俺の手に法術のかかった勾玉を渡した。



「これ、葵、いえ弟が持たせてくれたんです。何かあった時に守ってくれる物だって」

「そんな貴重なものもらえません!」

「違うわ、預けるの。絶対に返しにくるのよ、お役人さん。私待ってるから」

「清香さん……」



そう言って清香さんは俺にそれを押し付けて踵を返した。そしてすぐに走っていき彼らと一緒に避難を始める。俺は突っ返すことが出来ずに掌に残ったそれを見た後にぎゅっと握って無くさないように懐に仕舞う。



そして俺は妖魔のところに向かう。今一番妖魔から彼らを守れるのは俺しかいない。この異常事態、霊峰院の法術師が来てくれるはずだ。



それまでは、必ず俺がこの都を人々を守る。



***
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