【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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(刀傷だから狼の妖魔以外に何かがいたのは確実で……)



よって安全が確認されるまでは交易も規制して、妖魔狩りも特定の者以外は禁止にした。これ以上の犠牲者を出すわけにはいかないのだ。



(色々と処理があるから寝てる場合じゃないんだけど、俺が起きてるとくーちゃんが寝ないからなー)



真夜中まで起きて仕事をしていたら、あれ?ととねてないの?じゃあくーちゃんも寝ない。とでもいうように仕事部屋で一人で遊び始めるのだ。お部屋に連れて行ってもすぐに戻ってきてしまうし寝かせようとも数分で起きてしまう。今寝たでしょ?みたいな表情をするのだ。仮眠どころの話ではない。



静紀が来る前もかなり寝ない子供であったが、静紀が来たことによってよく寝るようになっていたし、最近はお昼寝もするようになっていた。

必要な栄養と休息をとれているのかだけが心配だったため、よく食べよく寝るようになった久遠に久臣も沙織も一安心していたのが記憶に新しい。



だから、せめて睡眠だけはとって欲しいため、久臣は寝るしかないのだ。

とはいえ、夢のお陰で起きてしまった。そしてお腹もすいた。



(何かご飯食べてこようかな……)



久臣はそう思って静かに隣で寝ている我が子を起こさないようにそーっと出る。

それから厨の方に向かおうとして声がした。



「しちゃ!」

「え?」

「しちゃいた!」



数日ぶりの第一声はお友達のお名前だった。久遠は元気よくそう言って布団から跳ね起きた後にぱたぱたと短い足を動かして部屋から出てしまう。



「くーちゃん!?」



それを久臣が追いかける。すぐに彼に追いつくがどこに行くのか分からず、かといって折角声を出してくれた久遠の機嫌を損ねるわけにもいかない。おろおろと手を久遠の上で彷徨わせながらついていくとそこは厨だった。



「しちゃ!」



厨に顔を出すが、そこには当然誰もいない。しんっと静まり返った暗い場所に久遠は動きを止めて首を傾げた。それからじとっと久臣を見上げる。久遠は、久臣が静紀を隠したのだと思い込んでそれについて責めているような表情をしていた。



「とと……」

「え!?違う違う!とと何もしてない!」



変な疑いをかけられた久臣が慌ててそう言うが久遠は依然として疑いの目を向けている。久臣に対してはかなり信用がない。その為久臣は久遠が納得してくれるように言葉を紡ぐ。



「しーちゃんはいないよ?夢でも見たんじゃないかな?」

「……」



久遠はむっと口を曲げたままであるが、一応納得したのかこくんと頷いた。聞き分けの良い我が子で良かったと久臣はそう思いながら久遠の頭を撫でる。



「どんな夢見たの?」



久臣が久遠にそう聞くと久遠は小さく答える。



「まんまう、しろいの……」

「丸くて白いの?」

「しちゃ、あ、て」

「あーんしてくれたの?良かったねぇ」



久臣はそこまで聞いてあれ?と先ほど自分も見た夢を思い出す。



(似たような夢俺もさっき見たような……)



美味しそうな白くて丸い何かをあーんされた覚えはある。そして、そのあーんをした相手が大きくなった静紀・・・・・・・・であることも知っている。



(いや、まさか)



いくらなんでもそれは早すぎる・・・・

久臣は久遠の語る夢について考え始めるが、次の瞬間すべての思考がぶっ飛んだ。



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