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「しちゃ、いまーかー!!」
「はいはい、いるよー。今日も一人で来たのー?」
「ん! どじょ!」
「わー。ありがとう~!」
玄関先で声が聞こえた。
俺は慌ててそちらに走っていくと今日も一人でそこにいた久遠がいる。
久遠は出迎えた紫さんに何か風呂敷を渡した。多分お菓子。別にいらないのに~っと紫さんと叢雲さんはそういうが、そういうわけにはいかないと晴臣さんや久臣さんが頑なにそこは譲らない。
毎日、朝からやってくる久遠は今日も俺の姿を見つけるとパッと顔を明るくさせててててっと走ってくる。
「しちゃぁ!!」
「おはよう、くーちゃん」
「はよぉ!!」
さて、今俺がこうやって久遠と仲良く過ごせているのは数日前のこと。
つまりは、福禄の騒動からである。非人道的な法術を使用し、ほとんどの使用人はその術で動いていた死体だったという。当主様が首謀者として死刑。それによって、現当主は梓さんのお父様に代わり、次期当主も梓さんに代わった。これには梓さんが一番抗議して、今まで頑張ってきた駆を差し置いて自分がなるわけにはいかないと主張した。しかし、当の本人、駆君は当主になりたくなかったから正直ホッとしているけど、梓さんがやりたくないならやると言ったのだ。そんなことは言ってないと梓さんは次期当主として今、猛勉強中らしい。それを駆君が手伝ってあげているそうだ。
ということで、福禄の騒動はどうにか終息したのである。
で、俺たちは久臣さんと一緒に都に帰ってきたのだが、そこで久遠と再会する。
迎えてくれたのは晴臣さんで、腕には眠っている久遠がいたのだが、「え!? しーちゃん!?」という晴臣さんの驚きの声にばっと体を起こしてこちらを見た。晴臣さんに下ろされて、ててて~っと駆け寄ってきた久遠を拒むことが出来なかった。
あんな別れ方したのにまだ覚えてくれていることや、会ったら絶対にそっぽ向かれて無視されるものだと思っていたから、そんな風に抱き着いてくる彼を拒絶するのは無理だった。
―――と、ぎゅっと抱きつかれたらすぐに視界が全く変わった。
「え……」
「しちゃ! あーて!!」
「え、え?」
いつの間にか目の前には襖があって久遠がこれを開けろという。俺は呆けながらも、開けて開けてと久遠がぐいぐい裾を引っ張るので俺は彼の要望に応えるためにそれを開けたいが、まずは草履を脱ぐ。
久遠の草履も脱がせて、外に置く。でかい庭があって久遠の家だろうと予想できる。多分今は久遠の部屋だろう。
「しちゃ、はーく!」
ぐいぐい引っ張られて襖を早く開けろと促す。俺は襖を開けて中を確認する。上には箱が入っており、中を確認すると色んな玩具が入っていた。玩具を取って欲しかったのだろうかと思っていたら、久遠は下段のところから何かを引っ張り出そうとしている。
「あ、それ出したいの?」
「ん~!」
「ちょっと待っててね」
久遠が引っ張り出そうとしているそれを俺が中から出す。大きな箱だ。この中に何か玩具が入っているのだろうか?
「開けていい?」
「うん!」
こくんと頷いた久遠を見て錠付きの箱のふたを開ける。中には座布団と布団が入っていた。寝具入れのようだ。
「しちゃ、かくえんぼ!」
「え?」
「しちゃ、かくえう!」
「? この中に入ればいいの?」
「うん! しー、ね?」
「分かった」
鬼は久臣さんとか晴臣さんかなと思いながら俺はその箱の中に入って蓋を被せる。意外なことに中は明るい。というか、透けて外が見える。内側に法術がかけられているのだろうか。息苦しさも感じないし、見た目よりなんか広い?
そんな事を考えながらとりあえず静かに待つことにする。
「う? ん?」
久遠の戸惑いの声が聞こえた。箱の前で少し背伸びをして何かをしている。手伝ってあげた方がいいだろうかと思ったが、かくれんぼらしいから待っていた方がいいかもしれない。
じっとそこで待っていると「若君?」と聞いたことのある声がした。
「! つまちゃ!」
燕さんのようだ。
彼がこちらに歩いてきて、足が見えている。そういえば、さっきの矢を撃ってくれたの燕さんなんだよな。あとでお礼を言わないと。
「こえ! こえ!!!」
「え? ああ、錠をかければいいんですか?」
「ん!」
え?
がちゃんっと音がした。いや、いやまさか、かくれんぼにそこまで本気を出すことはないだろう。多分。俺の気のせいで……。そっと蓋をおしてみる。がちゃっと音がしてそれ以上開かない。
あ、あれ? 閉じ込められた……?
「……? 今蓋動きませんでした?」
「? くちゃみてない!」
「なら……気のせいですかね! 箱戻しますか?」
「う!」
燕さん!!!! ちょ、ちょっとまって!! 待って!?
箱が動くのを感じるが、揺れは全く感じない。なんて快適な箱の中。
「はいはい、いるよー。今日も一人で来たのー?」
「ん! どじょ!」
「わー。ありがとう~!」
玄関先で声が聞こえた。
俺は慌ててそちらに走っていくと今日も一人でそこにいた久遠がいる。
久遠は出迎えた紫さんに何か風呂敷を渡した。多分お菓子。別にいらないのに~っと紫さんと叢雲さんはそういうが、そういうわけにはいかないと晴臣さんや久臣さんが頑なにそこは譲らない。
毎日、朝からやってくる久遠は今日も俺の姿を見つけるとパッと顔を明るくさせててててっと走ってくる。
「しちゃぁ!!」
「おはよう、くーちゃん」
「はよぉ!!」
さて、今俺がこうやって久遠と仲良く過ごせているのは数日前のこと。
つまりは、福禄の騒動からである。非人道的な法術を使用し、ほとんどの使用人はその術で動いていた死体だったという。当主様が首謀者として死刑。それによって、現当主は梓さんのお父様に代わり、次期当主も梓さんに代わった。これには梓さんが一番抗議して、今まで頑張ってきた駆を差し置いて自分がなるわけにはいかないと主張した。しかし、当の本人、駆君は当主になりたくなかったから正直ホッとしているけど、梓さんがやりたくないならやると言ったのだ。そんなことは言ってないと梓さんは次期当主として今、猛勉強中らしい。それを駆君が手伝ってあげているそうだ。
ということで、福禄の騒動はどうにか終息したのである。
で、俺たちは久臣さんと一緒に都に帰ってきたのだが、そこで久遠と再会する。
迎えてくれたのは晴臣さんで、腕には眠っている久遠がいたのだが、「え!? しーちゃん!?」という晴臣さんの驚きの声にばっと体を起こしてこちらを見た。晴臣さんに下ろされて、ててて~っと駆け寄ってきた久遠を拒むことが出来なかった。
あんな別れ方したのにまだ覚えてくれていることや、会ったら絶対にそっぽ向かれて無視されるものだと思っていたから、そんな風に抱き着いてくる彼を拒絶するのは無理だった。
―――と、ぎゅっと抱きつかれたらすぐに視界が全く変わった。
「え……」
「しちゃ! あーて!!」
「え、え?」
いつの間にか目の前には襖があって久遠がこれを開けろという。俺は呆けながらも、開けて開けてと久遠がぐいぐい裾を引っ張るので俺は彼の要望に応えるためにそれを開けたいが、まずは草履を脱ぐ。
久遠の草履も脱がせて、外に置く。でかい庭があって久遠の家だろうと予想できる。多分今は久遠の部屋だろう。
「しちゃ、はーく!」
ぐいぐい引っ張られて襖を早く開けろと促す。俺は襖を開けて中を確認する。上には箱が入っており、中を確認すると色んな玩具が入っていた。玩具を取って欲しかったのだろうかと思っていたら、久遠は下段のところから何かを引っ張り出そうとしている。
「あ、それ出したいの?」
「ん~!」
「ちょっと待っててね」
久遠が引っ張り出そうとしているそれを俺が中から出す。大きな箱だ。この中に何か玩具が入っているのだろうか?
「開けていい?」
「うん!」
こくんと頷いた久遠を見て錠付きの箱のふたを開ける。中には座布団と布団が入っていた。寝具入れのようだ。
「しちゃ、かくえんぼ!」
「え?」
「しちゃ、かくえう!」
「? この中に入ればいいの?」
「うん! しー、ね?」
「分かった」
鬼は久臣さんとか晴臣さんかなと思いながら俺はその箱の中に入って蓋を被せる。意外なことに中は明るい。というか、透けて外が見える。内側に法術がかけられているのだろうか。息苦しさも感じないし、見た目よりなんか広い?
そんな事を考えながらとりあえず静かに待つことにする。
「う? ん?」
久遠の戸惑いの声が聞こえた。箱の前で少し背伸びをして何かをしている。手伝ってあげた方がいいだろうかと思ったが、かくれんぼらしいから待っていた方がいいかもしれない。
じっとそこで待っていると「若君?」と聞いたことのある声がした。
「! つまちゃ!」
燕さんのようだ。
彼がこちらに歩いてきて、足が見えている。そういえば、さっきの矢を撃ってくれたの燕さんなんだよな。あとでお礼を言わないと。
「こえ! こえ!!!」
「え? ああ、錠をかければいいんですか?」
「ん!」
え?
がちゃんっと音がした。いや、いやまさか、かくれんぼにそこまで本気を出すことはないだろう。多分。俺の気のせいで……。そっと蓋をおしてみる。がちゃっと音がしてそれ以上開かない。
あ、あれ? 閉じ込められた……?
「……? 今蓋動きませんでした?」
「? くちゃみてない!」
「なら……気のせいですかね! 箱戻しますか?」
「う!」
燕さん!!!! ちょ、ちょっとまって!! 待って!?
箱が動くのを感じるが、揺れは全く感じない。なんて快適な箱の中。
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