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木下さんはお友達です・・・あくまでも。
如月家で
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「遅かったね。」
「ごめんなさい。ようやく到着いたしました。」
「こちらは。」
「送っていただいた・・・・・」
「木下です。木下将也。あずみ君がバスの乗り方が分からないみたいで・・・」
「そうでした。それで送っていただいたんでした。しかも、坂の下から僕をおんぶしてここまで送ってくださいました。しかも・・・」
「君、ありがとう。疲れただろ。さ、入って。ご飯を食べながら話そう。」
如月は、あずみを話を遮るように木下をエスコートし屋敷に招き入れた。
木下も、前から興味があった家に入れてもらえてとても興奮していた。
「この家、前から中を見てみたいと思っていたんです。僕、大学で建築を学んでいるので見せていただいて、とても感激です。」
「そう、古い家だけど、こんなところでよかったらいつでも遊びに来なさい。」
「お兄様は若い男の子が好きだから気お付けてね。書斎には入らないほうがいいわ。」
「あずみ。余計な事を言うのはやめようね。木下君が驚いてしまうよ。」
「そうでした。今の発言は忘れてください。
あ、それと・・・大切な事。鈴木さんを見ましたね。
知りませんよ・・・僕は・・・ちゃんとお家に2本足で帰れるといいですけど・・・」
「え・・・」
「あずみ、だめだよ。君の冗談は伝わりにくい。
鈴木さんは見た目は魔女のようだが、とても料理が得意で親切で優しい、ごく普通の人だから安心してください。あなたが食べているそれも、決して毒なんか入っていません。」
木下は箸をぽろっと落とし、それを鈴木はすかさず“さっ”と拾い、新しい箸を木下の手に渡した。
「あ・・・どうも・・・」
「そういえばお兄様、僕、バス代を持っていなくて木下さんにお借りしたままです。」
「では返さなければ。おいくらですか?」
「そんな・・・バス代なんて結構ですよ。こうしてご飯をご馳走になっていますし。」
「木下さんはなんでも物知りなんですよ。バスの乗り方や降り方もここまでくる間のおいしいケーキ屋さんまで教えていただきました。」
「そうか。それはすまなかったね・・・
あずみ、よかったね。だいぶおりこうさんになったね。」
「はい。」
あずみも変わっているが、お兄さんもずいぶん変わった人だなとは思った。だが、話をしているうちに少しずつこの風変わりな感覚にも慣れてきたし、料理はおいしいし、この家もなかなかに居心地がよくて楽しくなっていた。
「それで・・・あずみ君。とても目が悪いと思うんです。多分、ほとんど見えていないと思いますよ。」
「本当かね。」
「はい、今でもあずみ君の周りだけとても散らかっているのは、あずみ君がはっきり見えていないせいだと思います。明日、お医者さんへ行って、できればすぐ眼鏡屋さんに行って眼鏡を作ったほうがいいと思います。」
「困ったな・・・明日は私も休めないし・・・鈴木さんはお休みだし・・・」
「よかったら僕がついて行きますよ。僕も明日は眼医者へ行く日なんです。」
「そこまでしていただいては・・・」
「またおんぶですか?」
「いや・・・明日は車で来るよ。」
「ありがとう。助かるよ。」
「僕、木下さんとお友達になりました。」
「本当か。」
「はい。お友達になってくれるとおっしゃいました。」
「それは・・・ありがとう・・・」
如月は立ち上がり、木下の隣に座ると手を握り涙ぐんで言った。
「君はあずみのお友達第一号だ。本当にありがとう。」
「そんな大げさな・・・」
「あずみはどうしようもなく意地悪なところもあるが、根は優しい、いい子なんだ。
ただ、その優しさの表現が多少人とはずれているが・・・
とにかくありがとう。君の心の広さに感謝するよ。ワインを開けよう。今日はお祝いしたい気分なんだ。」
「はあ・・・」
「大丈夫。帰りは鈴木さんが送って行ってくれるから。」
木下は、家の中をもっと見せてもらいたかったのだが、如月がワインを開けて、ガンガン飲まされ、どうやって戻ったかわからないが、とりあえず朝、自分の家の自分のベッドにいた。
なんだか、すごく変な夢を見たような気分だった。
「ごめんなさい。ようやく到着いたしました。」
「こちらは。」
「送っていただいた・・・・・」
「木下です。木下将也。あずみ君がバスの乗り方が分からないみたいで・・・」
「そうでした。それで送っていただいたんでした。しかも、坂の下から僕をおんぶしてここまで送ってくださいました。しかも・・・」
「君、ありがとう。疲れただろ。さ、入って。ご飯を食べながら話そう。」
如月は、あずみを話を遮るように木下をエスコートし屋敷に招き入れた。
木下も、前から興味があった家に入れてもらえてとても興奮していた。
「この家、前から中を見てみたいと思っていたんです。僕、大学で建築を学んでいるので見せていただいて、とても感激です。」
「そう、古い家だけど、こんなところでよかったらいつでも遊びに来なさい。」
「お兄様は若い男の子が好きだから気お付けてね。書斎には入らないほうがいいわ。」
「あずみ。余計な事を言うのはやめようね。木下君が驚いてしまうよ。」
「そうでした。今の発言は忘れてください。
あ、それと・・・大切な事。鈴木さんを見ましたね。
知りませんよ・・・僕は・・・ちゃんとお家に2本足で帰れるといいですけど・・・」
「え・・・」
「あずみ、だめだよ。君の冗談は伝わりにくい。
鈴木さんは見た目は魔女のようだが、とても料理が得意で親切で優しい、ごく普通の人だから安心してください。あなたが食べているそれも、決して毒なんか入っていません。」
木下は箸をぽろっと落とし、それを鈴木はすかさず“さっ”と拾い、新しい箸を木下の手に渡した。
「あ・・・どうも・・・」
「そういえばお兄様、僕、バス代を持っていなくて木下さんにお借りしたままです。」
「では返さなければ。おいくらですか?」
「そんな・・・バス代なんて結構ですよ。こうしてご飯をご馳走になっていますし。」
「木下さんはなんでも物知りなんですよ。バスの乗り方や降り方もここまでくる間のおいしいケーキ屋さんまで教えていただきました。」
「そうか。それはすまなかったね・・・
あずみ、よかったね。だいぶおりこうさんになったね。」
「はい。」
あずみも変わっているが、お兄さんもずいぶん変わった人だなとは思った。だが、話をしているうちに少しずつこの風変わりな感覚にも慣れてきたし、料理はおいしいし、この家もなかなかに居心地がよくて楽しくなっていた。
「それで・・・あずみ君。とても目が悪いと思うんです。多分、ほとんど見えていないと思いますよ。」
「本当かね。」
「はい、今でもあずみ君の周りだけとても散らかっているのは、あずみ君がはっきり見えていないせいだと思います。明日、お医者さんへ行って、できればすぐ眼鏡屋さんに行って眼鏡を作ったほうがいいと思います。」
「困ったな・・・明日は私も休めないし・・・鈴木さんはお休みだし・・・」
「よかったら僕がついて行きますよ。僕も明日は眼医者へ行く日なんです。」
「そこまでしていただいては・・・」
「またおんぶですか?」
「いや・・・明日は車で来るよ。」
「ありがとう。助かるよ。」
「僕、木下さんとお友達になりました。」
「本当か。」
「はい。お友達になってくれるとおっしゃいました。」
「それは・・・ありがとう・・・」
如月は立ち上がり、木下の隣に座ると手を握り涙ぐんで言った。
「君はあずみのお友達第一号だ。本当にありがとう。」
「そんな大げさな・・・」
「あずみはどうしようもなく意地悪なところもあるが、根は優しい、いい子なんだ。
ただ、その優しさの表現が多少人とはずれているが・・・
とにかくありがとう。君の心の広さに感謝するよ。ワインを開けよう。今日はお祝いしたい気分なんだ。」
「はあ・・・」
「大丈夫。帰りは鈴木さんが送って行ってくれるから。」
木下は、家の中をもっと見せてもらいたかったのだが、如月がワインを開けて、ガンガン飲まされ、どうやって戻ったかわからないが、とりあえず朝、自分の家の自分のベッドにいた。
なんだか、すごく変な夢を見たような気分だった。
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