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波乱へと
あずみ、パン屋へ行く
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そしてあずみはいろいろ解放された喜びと、おいしいパンへの期待に胸を膨らませ病院から飛び出てバス停に向かった。だが、相変わらず、世間知らずにバスを乗るというハードルは高く、一つの乗り場に山ほど来るバスのどれに乗っていいのか、一見してわかるはずもない。
だが、おいしいパンに向かってまっしぐらのあずみは、「スイマセン、このバスは大学の傍のおいしいパンのお店に止まりますか。」
とバス停でバスを待つ人にも、バスの運転手にも聞いて回った。
パンのことで頭がいっぱいで恥ずかしいとか、体裁をかまうような感情は一切なかった。
怪訝そうに見たり、無視したりする中で、一人の中年の女性が同じ方向だからと言われて、あずみは喜んでついて行った。
そして、何とか無事そのおいしいパン屋の前にたどり着いた。
「おいしいパンのカピパラパン・・・」
あずみはゆっくりと店の扉を開ると、店の中からぶわっとおいしそうなパンの香りが飛び出してきた。
鶴屋の言う通り店の中はパンを選ぶ人と、おいしそうなぱんがいっぱいであずみの心は一気に弾んだ。
「いらっしゃいませ。」
店の奥のカウンダ―から声が聞こえた。カウンターはレジを待つ人が綺麗に列を作っていた。どこからどう見ても、今が一番忙しい時間帯なのに、あずみはカウンターに回り込み声をかけてくれた女性に、
「あの・・・あなたが店長さんですか?」
とにじり寄った。
「いえ、違います。店長は工房に・・・」
女の人がちらりと奥へ視線を移すと、あずみはササッとその視線の先へと向かった。
「あの・・・店長さん・・・」
店長は工房で一人、パンを焼くことに忙しくあずみになど構っている余裕はなく、あずみが入り口でぽつんと立っていたとしても当然無視だ。
だが、相手の都合などお構いなしのあずみは、店長が違う作業にうつったスキに、カマから出したばかりの、たった今焼き上がったばかりの熱々のパンを手に取り、ふうふうしながらほおばった。
「おいしい・・・今まで食べた中で一番おいしい!」
「おい!何してんだ!」
「何って・・・あ、僕、如月あずみです。今日からココでバイトします。」
「はぁ?じゃなくて、そんな恰好でここへ入ってくるなって言ってんの。」
「言ってんのって・・・それは初めて聞きました。」
「そんなの常識だろ!入り口に関係者以外立ち入り禁止って書いてあるだろ!第一、そんな恰好で入ってきたら不潔だろ!」
「いえ、このお洋服は鈴木さんがちゃんとお洗濯をして、アイロンまでかけてくれたので不潔ではありませんよ。あ~でも、夕べ、鶴屋さんがお風呂を洗ってくれなくてお風呂に入っていないから、そう言った意味では不潔かもですね。」
「もういい・・・」
「それに、今日からバイトするのでもう関係者です。」
「わかったから・・・」
「このパンは本当においしいですね。もう一個食べてもいいですか?」
「ダメに決まっているだろ。とにかく、この部屋から出てってくれ!」
調理室からつまみ出されたあずみは、焼き立てのホカホカのパンが名残惜しくて、しばらく扉の小さなガラス窓にこびりついていた。
だが、おいしいパンに向かってまっしぐらのあずみは、「スイマセン、このバスは大学の傍のおいしいパンのお店に止まりますか。」
とバス停でバスを待つ人にも、バスの運転手にも聞いて回った。
パンのことで頭がいっぱいで恥ずかしいとか、体裁をかまうような感情は一切なかった。
怪訝そうに見たり、無視したりする中で、一人の中年の女性が同じ方向だからと言われて、あずみは喜んでついて行った。
そして、何とか無事そのおいしいパン屋の前にたどり着いた。
「おいしいパンのカピパラパン・・・」
あずみはゆっくりと店の扉を開ると、店の中からぶわっとおいしそうなパンの香りが飛び出してきた。
鶴屋の言う通り店の中はパンを選ぶ人と、おいしそうなぱんがいっぱいであずみの心は一気に弾んだ。
「いらっしゃいませ。」
店の奥のカウンダ―から声が聞こえた。カウンターはレジを待つ人が綺麗に列を作っていた。どこからどう見ても、今が一番忙しい時間帯なのに、あずみはカウンターに回り込み声をかけてくれた女性に、
「あの・・・あなたが店長さんですか?」
とにじり寄った。
「いえ、違います。店長は工房に・・・」
女の人がちらりと奥へ視線を移すと、あずみはササッとその視線の先へと向かった。
「あの・・・店長さん・・・」
店長は工房で一人、パンを焼くことに忙しくあずみになど構っている余裕はなく、あずみが入り口でぽつんと立っていたとしても当然無視だ。
だが、相手の都合などお構いなしのあずみは、店長が違う作業にうつったスキに、カマから出したばかりの、たった今焼き上がったばかりの熱々のパンを手に取り、ふうふうしながらほおばった。
「おいしい・・・今まで食べた中で一番おいしい!」
「おい!何してんだ!」
「何って・・・あ、僕、如月あずみです。今日からココでバイトします。」
「はぁ?じゃなくて、そんな恰好でここへ入ってくるなって言ってんの。」
「言ってんのって・・・それは初めて聞きました。」
「そんなの常識だろ!入り口に関係者以外立ち入り禁止って書いてあるだろ!第一、そんな恰好で入ってきたら不潔だろ!」
「いえ、このお洋服は鈴木さんがちゃんとお洗濯をして、アイロンまでかけてくれたので不潔ではありませんよ。あ~でも、夕べ、鶴屋さんがお風呂を洗ってくれなくてお風呂に入っていないから、そう言った意味では不潔かもですね。」
「もういい・・・」
「それに、今日からバイトするのでもう関係者です。」
「わかったから・・・」
「このパンは本当においしいですね。もう一個食べてもいいですか?」
「ダメに決まっているだろ。とにかく、この部屋から出てってくれ!」
調理室からつまみ出されたあずみは、焼き立てのホカホカのパンが名残惜しくて、しばらく扉の小さなガラス窓にこびりついていた。
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みんなの感想(2件)
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ダルダルのスエットが似合う、
性格に難ありな美少年がお好きな方に
お勧めの作品です☆
↑
と、一応、作品の感想を書いてから・・・
えぇっ、入退院!?
;▽;)汗
お身体、壊されちゃった?
大丈夫ですか?
ちょっと
がんばりすぎちゃったのかなぁ。
ハードワークでしたものね。
エブさんはあったけぇさんが
集っているから、いつ復活しても
お久しぶり~となると思いますが
エブ疲れって言葉もあるくらいだから
今はこっちで正解かもしれませんよ。
ある種、横のつながりが生じにくい
アルポリさんでユルユルと
自分のペースで
リカバリーするのがいいのかも。
ワタシも2019年前半戦の
複数アカウントによる心ない
ペコメやらコメントやらの連打で
エブさんでは投稿する気力が
でなくて、
今は少数の方の作品を
読むくらいになりました。
(ちなみに、ぽんたさんの作品は
こちらで拝読してます)
今後の創作活動の地盤を
アルポリさんに移すために、
可ユラを引っ越し中です。
印象では、アルポリさんのBLって
新着も更新も終了も目立つ一覧画面が
ないのか、
そんなに反応があるわけでもないので
(もちろん、キリ番星効果もないわけで)
でも、
1ページ1000文字内程度にして
ちょくちょく更新したほうが
より埋もれないでいいかもしれません。
いずれにせよ、身体の調子があっての
人生&創作活動ですから
本当にご自愛なさって
大好きなイラストを描いたり
ゆったりとご回復なさって
下さいね。
合い言葉は、
ほどほどにいこー!!ですよ~
・ω・)ノシ
お大事になさってね
とみとみ~ お元気~?
・ω・)ノシ
あずみ君、新シリーズ。
ゆったりと更新される予定ですね?
楽しみです☆
とみとみの代表作
羊チキンもこちらに転載すればいいのに・・
おひさしぶりです。(・・。)ゞ
本当にゆるゆるとしか書けないのですが・・・
突然連載しなくなってスイマセン
あれからストレスと疲労で入退院を繰り返して
そうこうするうちにエブリに戻りずらくなって・・・
いまに至ります。
放置長すぎて、もうどうしていいやらです(- -;*)ゞ