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アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢
しおりを挟む⸺⸺⸺アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢
貴族子女は15歳から学院への入学が義務付けられているが彼女は16歳からの途中入学である。
アメリアはブライトン伯爵の庶子で愛人との間の子だった。
平民として暮らしていたのだが、正妻であるブライトン伯爵夫人が亡くなった為、二年前に愛人を後妻として迎え入れるにあたり、アメリアも貴族籍に入る事になったのだ。
前妻であるブライトン伯爵夫人との間に子どもがおらず、ブライトン伯爵自身が婿入りだった為、分家筋から男の子の養子を迎えていた。
帝国は女であろうと爵位を継ぐ事はできるが家門の血筋出ないものが継ぐ事は乗っ取りに当たる為、アメリアはブライトン伯爵家を継ぐ事はできない。
しかし、アメリアの庇護欲がそそられる容姿に惹かれる高位貴族に嫁げるのではないか?と娘可愛さで迎え入れたのだ。
それまでも父親からの援助で普通の平民よりは贅沢な生活をしており、それなりに教育も受けていたが本格的に貴族として生きていくのであれば全く足りていない状態だった。
それ故、貴族として最低限の礼儀作法や学力を身に着けさせる為に一年遅らせて途中入学となったのだ。
貴族としての礼儀作法や勉強は辛く大変だったが平民の時とは違い、綺麗なドレスや宝石類、そして華やかな貴族としての生活に高揚していた。
おまけにアメリアは水魔法と珍しい特殊属性である光魔法が使えた為に注目度も高かった。
入学後は伯爵家以上でそこそこ学力が高いAクラスへ在籍していたが真面目に勉強を続け、三年生になると最高ランクのSクラスへ入る事もできた。
礼儀作法は付け焼き刃の為、下位貴族と変わらないような状態であったが、気軽に話しかけてくれる高位貴族の人もいたのでまったく気にしていなかった。
たまに「婚約者でもない子息との距離感が近い」と苦言を言われる事もあったし、マルガレーテのように嫌がらせをしてくる人もいたけれど、誰かが庇ってくれた。
特にカスティエール公爵家嫡男であるダリウスは高位貴族なのに、よく声をかけてくれるし優しく接してくれる為、アメリアはすぐ恋に落ちた。
ダリウスにはマルガレーテという婚約者がいるのは知っているが、どうしても諦められないうえにダリウス自身がマルガレーテよりもアメリアが婚約者なら、と言ってくれるので、どんどん離れがたくなっていた。
貴族としての義務と責任をしっかり理解している者はアメリアとダリウスを見て目をひそめていたが、政略結婚で引き裂かれた恋人たちの恋物語に浸っている者たちはアメリアに好意的であった。
⸺⸺⸺
レイルとセドリックは放課後、ここ最近の学院内の状況とアメリアの報告書を読んでいた。
「なーんか、良くねーよなー」
いつもより粗雑な口調で言い捨てながら、レイルは読み終わった報告書をポイッと投げ捨てた。
その報告書を拾い、改めて読み直しながらセドリックも溜め息をつく。
学院は小さな社交界だ。
学院内の人間関係、生活、対応力、全てが帝国貴族として相応しいかを試されていると言ってもいい。
皇族・高位貴族から平民までいる学院だ。
たまに平民・下位貴族に誑かされ廃嫡・廃籍される皇族・高位貴族が出る事がある。
この報告書を見る限り、ダリウスはアメリアにしっかりハマっているんだろう。
アメリア自身、ダリウスに好意をもっているんだろうが、その他の子息達にも距離感が近い為、婚約している者の間でトラブルが増えていた。
「確かに問題だが、ブライトン伯爵令嬢に対して生徒会が注意しなければいけない、という理由が弱すぎる」
セドリックは溜め息を吐きながら、ソファーに深く腰をかけた。
アメリアは距離感が近い、と言っても物理的に距離が近いわけではない。
人はどうしても好意的な人間には心を開きやすい。
家同士などの政略で婚約した場合、どうしたってお互いが心を開くまでに時間がかかる事がある。
そんな中、婚約者の自分と交流する時よりもアメリアと交流している時のほうが楽しそうであれば婚約者としては、どうしたって気分は悪い。
その婚約者が問題であり、アメリアだけに問題がある、とは言い切れないのだった。
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