4 / 39
アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢
しおりを挟む⸺⸺⸺アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢
貴族子女は15歳から学院への入学が義務付けられているが彼女は16歳からの途中入学である。
アメリアはブライトン伯爵の庶子で愛人との間の子だった。
平民として暮らしていたのだが、正妻であるブライトン伯爵夫人が亡くなった為、二年前に愛人を後妻として迎え入れるにあたり、アメリアも貴族籍に入る事になったのだ。
前妻であるブライトン伯爵夫人との間に子どもがおらず、ブライトン伯爵自身が婿入りだった為、分家筋から男の子の養子を迎えていた。
帝国は女であろうと爵位を継ぐ事はできるが家門の血筋出ないものが継ぐ事は乗っ取りに当たる為、アメリアはブライトン伯爵家を継ぐ事はできない。
しかし、アメリアの庇護欲がそそられる容姿に惹かれる高位貴族に嫁げるのではないか?と娘可愛さで迎え入れたのだ。
それまでも父親からの援助で普通の平民よりは贅沢な生活をしており、それなりに教育も受けていたが本格的に貴族として生きていくのであれば全く足りていない状態だった。
それ故、貴族として最低限の礼儀作法や学力を身に着けさせる為に一年遅らせて途中入学となったのだ。
貴族としての礼儀作法や勉強は辛く大変だったが平民の時とは違い、綺麗なドレスや宝石類、そして華やかな貴族としての生活に高揚していた。
おまけにアメリアは水魔法と珍しい特殊属性である光魔法が使えた為に注目度も高かった。
入学後は伯爵家以上でそこそこ学力が高いAクラスへ在籍していたが真面目に勉強を続け、三年生になると最高ランクのSクラスへ入る事もできた。
礼儀作法は付け焼き刃の為、下位貴族と変わらないような状態であったが、気軽に話しかけてくれる高位貴族の人もいたのでまったく気にしていなかった。
たまに「婚約者でもない子息との距離感が近い」と苦言を言われる事もあったし、マルガレーテのように嫌がらせをしてくる人もいたけれど、誰かが庇ってくれた。
特にカスティエール公爵家嫡男であるダリウスは高位貴族なのに、よく声をかけてくれるし優しく接してくれる為、アメリアはすぐ恋に落ちた。
ダリウスにはマルガレーテという婚約者がいるのは知っているが、どうしても諦められないうえにダリウス自身がマルガレーテよりもアメリアが婚約者なら、と言ってくれるので、どんどん離れがたくなっていた。
貴族としての義務と責任をしっかり理解している者はアメリアとダリウスを見て目をひそめていたが、政略結婚で引き裂かれた恋人たちの恋物語に浸っている者たちはアメリアに好意的であった。
⸺⸺⸺
レイルとセドリックは放課後、ここ最近の学院内の状況とアメリアの報告書を読んでいた。
「なーんか、良くねーよなー」
いつもより粗雑な口調で言い捨てながら、レイルは読み終わった報告書をポイッと投げ捨てた。
その報告書を拾い、改めて読み直しながらセドリックも溜め息をつく。
学院は小さな社交界だ。
学院内の人間関係、生活、対応力、全てが帝国貴族として相応しいかを試されていると言ってもいい。
皇族・高位貴族から平民までいる学院だ。
たまに平民・下位貴族に誑かされ廃嫡・廃籍される皇族・高位貴族が出る事がある。
この報告書を見る限り、ダリウスはアメリアにしっかりハマっているんだろう。
アメリア自身、ダリウスに好意をもっているんだろうが、その他の子息達にも距離感が近い為、婚約している者の間でトラブルが増えていた。
「確かに問題だが、ブライトン伯爵令嬢に対して生徒会が注意しなければいけない、という理由が弱すぎる」
セドリックは溜め息を吐きながら、ソファーに深く腰をかけた。
アメリアは距離感が近い、と言っても物理的に距離が近いわけではない。
人はどうしても好意的な人間には心を開きやすい。
家同士などの政略で婚約した場合、どうしたってお互いが心を開くまでに時間がかかる事がある。
そんな中、婚約者の自分と交流する時よりもアメリアと交流している時のほうが楽しそうであれば婚約者としては、どうしたって気分は悪い。
その婚約者が問題であり、アメリアだけに問題がある、とは言い切れないのだった。
149
あなたにおすすめの小説
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる