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アメジストの瞳の彼女
しおりを挟むあの日から図書室で出会った彼女が気になっていた。
授業や昼休みに移動する時、放課後に帰る為に移動する時…
人の群れの中にいるであろう彼女の姿を無意識探している。
「なぁ、お前最近おかしくね?」
放課後の生徒会室でセドリックの態度に違和感を覚えていたレイルについに突っ込まれてしまった。
今日は生徒会の仕事がある為、メンバーが全員揃っている。
一瞬、誤魔化そうかと思ったが、最近の自分の様子がおかしい自覚があったうえにうまい言い訳も思いつかず、しぶしぶ彼女の事を話す事にした、と言っても簡単にだが。
「ふーん、ミルクティー色の髪に紫色の瞳の令嬢ねー」
レイルはあまり興味がなさそうに呟くと、マルガレーテが彼女に心をあたりがあると言った。
「たぶん、セリーナ・フォン・ヴァレンシュタイン女子爵じゃないかしら?確か、前ヴァレンシュタイン子爵ご夫婦はもうお亡くなりになっていて遠縁であるセリーナ様が爵位を継承されたと聞きましたわ」
「ヴァレンシュタイン女子爵…」
聞けば、Aクラスに在籍はしていて、Sクラスではないものの優秀な人物らしい。
明るく身分に関わらず、丁寧に接しているそうで特に反感をもっている人もいないのではないかとの事。
領地運営や財政状況もいいのに婚約者がいない為、婿入り先がなく平民落ちになる次男以下の令息にとってはよだれものの好物件である。
その為、狙っている令息が多いそうだが権力などに興味がないようで高位貴族からの婚約の申し入れも平気で断りを入れるそうだ。
一般的に言えば、自分よりも高位貴族から強制されれば逆らう事ができない場合が多いが断れるだけの力はあるという事だ。
「令嬢に塩対応の銀氷の騎士様にも春がきたかな?」
「でも、もう爵位継承しているって事は次期侯爵のセドリックと結婚するのは難しいんじゃない?」
ダリウスはニヤニヤしながらおもしろそうに揶揄ってきたが、アーサンの台詞に少し和らいでいた胸の痛みが再び、ちくんとした。
余計な事を言うなとばかりにダリウスがすかさず、アーサンに肘で小突いたのが見える。
(…別に、そういうのじゃないだろう?)
今まで恋愛経験はなく、これが恋だという確信はない。
ただ、あの瞳が気になるだけ。
色は違うが、あの夜の彼女のような瞳に⸺⸺
⸺⸺⸺⸺
正体が分かり、Aクラスを意識すると彼女を見つけられるようになった。
綺麗で整っている容姿ではあるが、学院の中でもクラスの中にいても決して目立つ存在ではない。
他の令嬢と笑顔で話す姿
クラスで明るく活動している時の姿
けれど、よく見ると分かる。
あの紫色の瞳に温度がない事を…
誰も気付いていない。
彼女の感情を動かすものはあるのだろうか?
彼女の瞳に映る人は存在するのだろうか?
彼女を見る度にそんな事を考えながら
その場を後にした。
⸺⸺⸺⸺
最近、よく視線を感じる。
気付かれないように視線の主を確認する。
⸺⸺セドリック・フォン・ドラッケンベルグ侯爵令息
あの子からも「何か、気になっているようだ」と聞いている。
騎士を目指しているだけあって勘が鋭いのかしら?
まぁ、いいけど。
わたしの邪魔にならければ。
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