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騎士団見習い(R18)
しおりを挟む相変わらず、セリーナとの図書室での交流が続いている。
あの日、紫の瞳に映った嫌悪の色に関しては聞けなかった。
そんな日々を過ごしながら、セドリックは卒業後に入団予定の帝国騎士団で定期的に訓練や指導を受けていた。
以前から、侯爵邸の私設騎士団でも他の騎士達と共に訓練していた為、特に苦を感じることもなく参加できている。
剣術や体術はもちろん、高位貴族は基本的に魔力が多く、セドリックも例外ではなかった。
魔法属性も火と風で戦闘向きな事も幸運だった。
特に火属性の魔法適性が強く、発動と同時に一気に高温度にする事ができる為、セドリックの火や炎は青いのだ。
普段からレイルの傍にいる事も多く能力の高さから、恐らく卒業後は皇族の傍に配属されるのではないかと言われており、訓練であろうと気を抜く事は一切なかった。
⸺⸺⸺
「今日は街の巡回訓練をする」
その日の基礎訓練後に同じ見習い騎士が集められ、副団長が言うと、一部の者達は喜色を浮かべた。
セドリックは学院に通っている為、毎日騎士団で訓練をしているわけではないが、平民出身などの学院生ではない見習いたちは、毎日同じ訓練をしている為、飽きもあるのだろう。
(それが油断に繋がったりするんだがな…)
横目でその様子を見ながら、心の中でこっそりと溜め息をついた。
⸺⸺⸺
各班、正騎士一名と見習い騎士二名編成で巡回する。
自分たちが巡回する地区の指示をそれぞれ聞くと、セドリックの班は平民街を巡回する事に決まった。
セドリックの班の正騎士は平民らしく、かなりフレンドリーなタイプだった。
もう一人の見習いも平民だった為、親近感が湧いたのか楽しそうに話しながら歩いている。
そんな二人の後ろで、たまに話しかけられるのに答えながら辺りを見回しながら歩く。
「なー、お前って貴族なんだろ?普段、平民街とか来るのか?」
「いや、ほとんど来る事はない」
「まぁ、普通の貴族はそうだよな。騎士になると、こうやって巡回に出たりするから今は分からなくても、少しずつ店の名前や場所なんかも覚えておくようにするといい」
そんな正騎士のアドバイスを聞かながら巡回経路をすべて回り終え、詰所へ戻る事になった。
仕事を終えた者たちが、これから飲みに行こうと話す声が聞こえる中を歩き、何気なく細い路地を流し見した時だった。
見覚えのあるミルクティー色の髪の後ろ姿が見えた気がした。
思わず立ち止まり、急いで路地の中を確認するが誰もいない…
(…見間違いか?いや…)
「おーい、どうしたー?」
先を歩いていた2人が自分を呼ぶ声がする。
……どうする?……いや、答えは決まっている。
「すまない!急用を思い出した!先に戻っていてくれ!」
そう大声で言い放つと路地に入り走った。
汚くて、臭い、こんな場所に彼女がいるとは思えないが、でも見間違いとも思えない。
路地の中を走り回り、人気のない行き止まりで人影を捕えた。
声をかけようとした、その瞬間⸺⸺
ドサッと何かが崩れ落ちたのが見えた。
暗がりで人影しか見えず、その場で動けずにいると少しずつ、月明かりがその場を照らし色彩が戻ってきた。
(は?)
こちらに背を向けて立ち、ミルクティー色の長い髪が輝いている。
その足元には首から血を流す男の姿があった。
声を出す事もできず、目の前の事実に動けずにいると、ゆっくりと彼女が振り返った。
「何で…」
そこにいるのは、いつも図書室で一緒にいるセリーナだった。
恐らく首を掻き切った際に付いたであろう返り血が顔についている。
目の前にある現実が信じられない。
それでも、間違いなく彼女だ。
なのに、こちらを見ているその瞳の色は⸺⸺
あの夜、見た彼女と同じロイヤルブルー
こちらを見ていた温度のないその瞳を足元にある男の死体に移すと、指を一度だけパチンと鳴らした瞬間、セリーナの足元にある影が形を変え、黒が深くなると死体がその中に消えてしまった。
(な、闇魔法か!)
水・火・風・土・雷・植物の基本属性。
そして、アメリアがもつ光属性と闇属性の特殊属性だ。
しかも、それを無詠唱で発動させた。
男の死体が跡形もなく消えると、何事もなかったかのようにセリーナの視線がセドリックに戻ってきた。
無表情でセドリックを見るロイヤルブルーの瞳は、いつも通り温度を感じさせない。
それなのに、場の空気感が警鐘を鳴らす。
(動いたら、死ぬ…)
何故かは分からない。
でも、その勘は間違いない。
どのくらいの時間そうしていたかは分からないが、セリーナはセドリックを見つめながら、一歩ずつ、ゆっくりと近づいてきた。
自分の心臓の音が耳元で聞こえてくる。
目の前まで来た、と思ったらセリーナはセドリックの横を通り過ぎた。
しかし、すれ違うその瞬間⸺⸺
「ごきげんよう」
いつも聞いている鈴の音のような声が聞こえた。
さっきまで感じていた重い空気感が消えた。
無意識に息を止めていたのか、荒い呼吸を繰り返しながら必死に酸素を吸い込む。
そこでハッと正気に戻り、急いで振り返ったがそこにはもうセリーナの姿はなかった。
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