影の女帝

シエル

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図書室での交流

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あの日以来、昼食後にセドリックは図書室の別室前へ通うようになった。
 

セリーナはいつもそこの窓台に座りながら本を読んでいて、セドリックに気付くと挨拶とともに、にっこりと笑いかけてくれる。


二人で何をするわけでもなく、ただ一緒に本を読んだり、うっかりセドリックが寝てしまったり、と会話は多くなかった。


もしかしたら、セリーナにとってセドリックは空気のような存在なのかもしれない。

それでも、そのゆっくりと流れる時間が大切でホッとする時間だった。


そんな時間を過ごすようになると、たまに廊下などですれ違う時に、にっこり笑いかけてくれたり、挨拶をすると返してくれるようになった。

この頃には、お互い家名が長く呼びづらいとセドリックが言いくるめ、名前で呼び合うようになっており、更に距離が縮まっていた。





「はぁ」



いつも通りに図書室で窓台に座るセリーナの隣に座った後、セドリックは思わず溜め息をついてしまった。



「どうか、されましたか?」



いつもより疲れて見えるセドリックの様子が気になったのだろう。



「いや、ちょっと生徒会でな…」



 
⸺⸺⸺




あれから試用期間を経て、アメリアは正式に生徒会書記に任命された。


試用期間に問題を起こすと正式に任命されないという事を理解していたのか、マルガレーテとも大きなトラブルを起こす事もなく…というよりも、マルガレーテがほぼ必要以上に関わらずにいたおかげで正式に任命される事になった。


ただ、正式に書記としての仕事を始めると、ダリウスとの距離は今まで以上に近くなった。

アーサンとも距離が近かったが、最近ではレイルやセドリックにまで媚びてくる事も増えてきている。



「セドリック様!この書類なんですが…」


「ブライトン嬢、申し訳ないが君に名を呼ぶ許可は出していない。家名で呼んで貰えるだろうか?」


「え、でも、マルガレーテ様もお名前でお呼びしているので…やっぱり、わたしは認められていないんですか?」



何度注意しても直すことなく、何かにつけマルガレーテと自分を比較し、すぐに涙を浮かべる。


……心の底からうんざりしていた。



「マルガレーテは、幼い頃からレイルやダリウスと一緒に交流をしていた為に名前で呼び合っている。それに君は距離感が近すぎて周囲に誤解を与えかねない為、名前呼びは許可できない」



はっきりと理由まで説明するのは何度目か……


まだ、レイルの事だけは「レイル殿下」と呼んでいる事だけは、マシというレベルである。


こんな風に注意をしていると、たいていダリウスが来て「別にいいだろう?」と話を流す。

最近では、なぜかマルガレーテが何かを吹き込んでいるせいじゃないか?と被害妄想まで入ってきている。



そして、今日の昼食の時だった。


生徒会室で昼食会を開き、話し合いをしている時の事。

行事に必要な書類をマルガレーテに共有せずに、アメリアが勝手に処理をしていた事が発覚したのだ。
 


「ブライトン伯爵令嬢、こういう大事な書類を共有せずに勝手に処理されては困りますわ。変更点を先生方とお話をしている時に指摘されて困りましたのよ?」


「そんな……わたしはただ、マルガレーテ様がお忙しそうだったので、わたしの方で処理をしただけで…」

 

いつも通り、アメリアがピンクブラウンの瞳をうるうるさせ、何故か隣に座るダリウスの袖を握りながら体を寄せている。



「マルガレーテ、せっかくアメリア嬢が君を気遣ってやった事なんだ。確認は取れたんだから、そんなに怒る事ではないだろう!」



マルガレーテを睨みながらダリウスは冷たく吐き捨てた。



「今回は先生とお話して気付く事ができましたが、気付かないままでしたら不備が出て、当日に困った事になったかもしれませんのよ?注意して当然の事ではありませんか?」



睨みつけるダリウスの視線など無視して淡々と言えば、アメリアは更にビクッと体を震わせダリウスにすがりついた。

ダリウスがそれを見た後にテーブルを叩き、大きな音を立てながら立ち上がるとマルガレーテの方を向き、口を開こうとした。



「そこまで!ダリウス、いい加減にするんだ。マルガレーテは間違った事は言っていないよ。ブライトン嬢、故意ではなくても君がやった事はミスなんだ。それを謝罪もせずに言い訳をするのは、会長として見過ごせないね」



口調は表向き用ではあるが、珍しく笑顔ではない。


その表情にダリウスも、さすがにまずいと思ったのかしぶしぶ席に座り、アメリアも罰が悪そうに「申し訳ありませんでした…」と、か細い声でマルガレーテに謝罪をした。





⸺⸺⸺





思い出しながら、そんな話を軽くセリーナに話した。



「何と言いますか…大変そうですわね…」



何と言っていいのか分からないのだろう。

困ったように言葉を選びながらセリーナは言った。



「私から見たら、なのですが…ブライトン伯爵令嬢もですが、正直カスティエール小公爵様も何がしたいのかが分かりませんわ」


「ダリウスも?」



セリーナは開いていた本をパタンと閉じ、少し遠くを見ながら話した。



「学院内で、ブライトン伯爵令嬢とカスティエール小公爵様の仲を知らない方はほぼおりませんわ。中にはローゼンベルク公爵令嬢が、二つの仲を裂いてるかのようにお話されている方もいらっしゃいますし…」


二人の仲が認知されている事は把握していたが、まさかマルガレーテが悪役にされているとは知らず、セドリックは驚きを隠せなかった。



「カスティエール小公爵様とローゼンベルク公爵令嬢が婚約している以上、どんなに良くみようと現状ではカスティエール小公爵が不貞…とまでは言えないのかもしれませんが、蔑ろにしているのは事実です。そんなにブライトン伯爵令嬢がお好きなのであれば、婚約を解消なさればよろしいのに、それもしないのは不誠実かと思いますわ」


 
そう語ったセリーナは眉間に少し皺を寄せ、アメジスト色の紫の瞳に珍しく少し嫌悪の色が見えた気がした。




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