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少しずつ近付く
しおりを挟む昼食会の次の日、いつも通り昼食の為にレイルとホールへ向かった。
皇族であるレイルの食事は全て毒味が済んでから配膳される為、一緒に食事をするダリウスの分も準備されている。
「レイル、セドリック!」
いつものようにダリウスとアーサンがレイルたちの席にやってきた。
その後ろには料理を乗せたトレイを持つアメリアの姿も…
「あの、ダリウス様から誘われて…ご一緒してもよろしいですか?」
アメリアは視線を下げ、恥ずかしそうに頬を赤らめながら話すが、既に注文した料理を持ち、目の前までやってきた令嬢を断るなど周りへの印象を悪くするだけである。
「もちろん、どうぞ」
レイルが笑みを浮かべて承諾すると、既にカラトリーなどが準備されている席にダリウスとアーサンが座り、その隣にアメリアがトレイを置いて座った。
「ご一緒できて嬉しいです!皆さんはお食事が準備されるんですね!」
「レイルは皇族だからね。毒味が済んだものじゃないと口にできないんだ。私たちも同じ席で食べるから一緒に準備してもらってるんだ。」
ダリウスの言葉に、アメリアは瞳をキラキラ輝かせた後、少ししゅんとする。
「そうなんですね!すごいなぁ、何か、わたしだけ場違いみたいですね…」
「これから一緒に食べる事にしたらいいんじゃないか?レイル、いいだろう?」
ダリウスがレイルに同意を求めたが、そもそも、突然来たのだから提供方法が違うのは当然の話である。
アーサンは身分的に表立っては賛成だと口には出さないが、こちらを見る表情は雄弁に語っており、アメリアも戸惑いながら「そんな!申し訳ないです」と遠慮しているが、瞳には期待の色が染みている。
「うーん、私達と一緒に食べると他のご令嬢たちから、あまりいいように思われないんじゃないかな?」
「なら、書記として生徒会に入ったらどうかなー?アメリア嬢は成績も上位だし、マルガレーテ嬢だけじゃ手が回らない事もあるでしょー?それなら、アメリア嬢が一緒に食べたとしても生徒会のメンバーだからって言えると思うよー」
一人だけ、何の関係もない令嬢を皇族の傍に置くわけにはいかない。
万が一、婚約者のいないレイルやセドリックの候補者だと思われたら面倒な事になるだろう。
しかし、アーサンのいうような理由があれば話は別だ。
書記の仕事量は多く、マルガレーテだけでは大変なことがあるのは事実なのだ。
さすが、気難しい貴族たちと普段から渡り合っている大商会の息子なだけはあり、周りが納得しやすい理由付けを思い付くものである。
正当な理由付けである以上、強固に反対する事もできず、とりあえず試用期間を設け問題がなければ正式にメンバーになってもらうという事にした。
昼食も生徒会役員同士として交流を深める為にも!とダリウスたちが必死に説得する為、生徒会役員同士の交流の為なら、と仕方なく許可する羽目になった。
レイルとともに、さっさと食事を終えるとお互いに適当に理由をつけて、その場を後にするようにした。
先ほどのストレスから解放され、とにかく静かな場所に行きたかった。
(あまり、人がいないところがいいな。どこにするか…)
場所を頭の中で浮かべようとした瞬間にあの日の事が思い浮かぶ。
あの独特な空気感、そして彼女と初めて言葉を交わした僅かな時間が、ゆっくりと流れたかのような⸺⸺⸺
気づけば、自然に足は図書室に向かっていた。
⸺⸺⸺
図書室の扉を開き、あの日と同じように中に入ると、出会った場所の本棚の所へ真っ直ぐ向かったが、その姿はない。
(まぁ、そうだよな。)
ほんの少しだけ期待してしまった分、胸の棘がちくりと痛んだが、そんな都合のいい事があるわけがない、と言い聞かせ、人が近寄らなそうな場所を探す事にする。
学院の図書室は蔵書量がかなり多く、かなり広い。
うろうろと探し回っていると、持ち出し禁止の本や資料が保管してある別室の前に辿り着いた。
そこには図書室の中で唯一、ここにだけ大きな出窓がある。
窓台は人が二人くらい座れるほどの広さで、セドリックはその空間を目にすると時間が止まったかのような錯覚に陥った。
そこには柱に少し寄りかかり、窓台に座ながら本を読むセリーナの姿があった。
(いた…)
本を読んでいる為、アメジスト色の紫の瞳が見えないのは残念だが、日光を浴びたミルクティー色の髪は、いつもよりも輝いて見えた。
その光景に見惚れて動けずにいると、ふと顔を上げたセリーナが本からセドリックへ視線を移した。
「ごきげんよう。また、お会いしましたね。」
あの時と同じような笑顔で、同じような温度を感じさせない紫色の瞳で、あの時と同じような鈴の音のような声で言った。
「あぁ」
(うまい返し方が分からない…)
少し素っ気なく感じるような返事しかできず、少し落ち込む。
(せっかく、会えたんだ。何か、言わないと…)
「そこに、隣に座ってもいいだろうか?」
一生懸命ひねり出した言葉にセリーナは一瞬、きょとんとした表情を浮かべた後、にっこり笑って「ええ、どうぞ?」と答えた。
こんな言葉しか出てこない自分に少しがっかりしたが、拒否されなかった事にホッする。
少し距離をとり、ゆっくりと隣に座ると、セリーナは先ほどと同じように本を読み始めた。
セドリックは腕と足を組み、柱に寄りかかると、そっと目を閉じた。
お互いに何かを話すわけでもなく、時々セリーナのページをめくる音がするだけで静かな時間が流れる。
窓から入る日差しがぽかぽかと暖かいのと同時に、セドリックの胸も温かくなった気がした。
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