14 / 39
勧誘と問題
しおりを挟む事情は聞けるだけ聞く事ができたと思う。
「話は分かった。ただ、こんな話を俺にしていいのか?」
堅苦しい言葉遣いを止めてから、一人称も「俺」になった。
今、聞いた話は皇族や極一部しか知らない極秘の内容だろう。
そんな話をしてくれたという事は少しは信用してくれていると考えていいのだろうか?
「そうね、この話は皇族の極秘な話ね。だから、これは提案なんだけど……セドリックは卒業後は帝国騎士団に入団して近衛になる予定なのよね?なら、皇女付きにならない?」
「は?」
確かに帝国騎士団に入団予定なのは間違いなく、近衛に配属されるかは分からないが、それでも皇族の傍に配属されるだろうとは思っていた。
それこそ、レイル付きの護衛騎士とかに選任されるかと。
「最初はレイちゃんの護衛に専任される予定だったんだけど…ほら、夜会の日とか昨夜もそうだけど何回か姿を見られているし、わたしの事情も知っちゃったでしょう?この場合、わたしの選択肢としては消しちゃうか傍に置くか…どちらかなの」
セリーナは、にっこりと笑いながら軽く言葉を口にしているが、消すという言葉は冗談ではなく本気なのが伝わる。
笑っているがロシアンブルーの瞳が、これ以外の選択肢はないと、いつも以上に冷えた色で教えてくれるのだ。
ちらっとレイルの方を見れば、こちらをジッと見ている。
揶揄う色もない、かと言って殺気も感じない…
ただ、セリーナが示した選択肢に対して、どう返答するのか?と淡々とその結果を受け入れるような……感情が見えなかった。
「…分かった。セリーナ付きの護衛騎士になる」
死にたくないから。もちろん、その気持ちがないわけではない。
それよりも、セリーナの傍にいたい。傍にいられる。
その気持ちの方が強かった。
「良かった!わたしね、専属の執事はいるんだけれど護衛はいなくて、いい加減に一人くらい付けろって宰相に言われてたの!」
セリーナが求めているのは自分を護衛してくれる者ではなく、護衛という存在が必要なのだ、という事が伝わる。
それでもいい。
少しでも側にいられて、セリーナにとって1番の味方でいられたら…
セリーナの盾となり、例え命を散らそうとも悔いはない。
そう、心に誓う⸺⸺⸺
⸺⸺⸺⸺
セドリックがそんな誓いを噛み締めていると、それまで黙っていたレイルが立ち上がり、ソファにいるセリーナの隣に移動してきた。
「さて、セドリックの配属先が決まったところで、今後を話し合おう」
「今後?」
「そう、最近のわたしの仕事はアメリア・フォン・ブライトンの件よ」
学院は皇族から下位貴族、そして少数ではあるが平民も通う言わば、小さな社交界であり、帝国である。
教育としては身分の垣根は設けていないが、確実に爵位による上下はあり、貴族としての義務と権利はなくならない。
学院内の事は、成人前の事だと許されているものと考えている者が多いかもしれないが、実際は皇族や高位貴族、そして貴族としての責務をしっかりと理解している下位貴族の保護者・帝城勤務の者たちの観察の場でもあるのだ。
帝国皇族・貴族が愚かでは困る。
己が貴族であるという矜持があれば、その責任や義務を忘れるはずがない。
しかし、中には羽目を外したり義務を忘れ、権利のみを主張する者が出てくる。
それを駆除するのにちょうどいいのが、この貴族学院なのだ。
「アメリア・フォン・ブライトンが編入してきて、彼女が元となり婚約解消となったのが、既に数件出てるの。おまけにダリウス・フォン・カスティエールとの不誠実な関係……本当に汚らわしい」
セリーナは嫌悪感を隠そうともせず顔を歪ませながら、そう吐き捨てた。
「あれは最近では生徒会にも入り込み、それと同時に俺やセドリックにも絡もうとするだろ?高位貴族や大商会のアーサンなんかにも近付くのを見ると他国の諜報員か?とも思ったわけなんだが…」
レイルはそこで、ちらっとセリーナに視線を移したが、それに気付いたセリーナは首を横に振りレイルの続きを話した。
「夜会の主催者だった伯爵家はアメリアの祖母が関係してるから探っていたの。彼女の祖母は、ただの平民のメイドとして働いていただけで、自分と同じ平民と結婚してアメリアの母を産み、その母は働いていた酒場で偶然ブライトン伯爵と出会い、アメリアが産まれた。かなり細かく調査したけど白ね」
(つまり、ブライトン孃のあの言動はすべて彼女の本質であるという事か……)
それが分かり、ダリウスとアーサンの言動を思い出すと…頭が痛くなり溜め息が出る。
ダリウスにはマルガレーテという婚約者がいる。
婚約とは家と家との契約であり、更に貴族・平民関係なく守らなくてはならない最も身近な契約と言える。
もちろん、愛人をもつ貴族なども少なくないが、それは結婚して正妻との間に子を成した後、というのが暗黙の了解である。
それすらも守れない者を信頼できないと判断されても当然の話なのだ。
242
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~
スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。
しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。
「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」
泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。
数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。
「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
私より幼馴染を選んだ婚約者に別れを告げたら謝罪に来ましたが、契約を守れない貴族とは取引しませんので
藤原遊
恋愛
祖父が創立した大商会で、跡継ぎとして働いている私。
けれど婚約者は、私より幼馴染を選びました。
それなら構いません。
婚約という契約を守れない相手と、これ以上関係を続けるつもりはありませんから。
祖父の商会は隣国と新たな取引を始めることになりました。
――その途端、なぜか元婚約者が謝罪に来るようになりましたが、もう遅いです。
婚約破棄されたので、もう私が支えるのはやめます
ふわふわ
恋愛
王太子アルヴィスの婚約者として、誰よりも完璧であることを求められてきた侯爵令嬢エレノア。
けれど卒業舞踏会の夜、彼女は突然、王太子から婚約破棄を告げられる。
隣に立っていたのは、可憐で愛らしい義妹ミレイユ。
「真実の愛」を掲げる二人に悪女として断じられたエレノアは、すべてを失った――はずだった。
しかし、王宮はなぜか急に回らなくなり、王太子と義妹は少しずつ綻びを見せ始める。
そんな中、エレノアの手腕にいち早く気づいていた冷徹公爵レオンハルトが、彼女へ手を差し伸べる。
「もう、あちらを支える必要はない」
王太子のためでも、侯爵家のためでもなく。
今度こそ自分の意思で立つために、エレノアは公爵家で新たな一歩を踏み出す。
一方、彼女を失って初めて、その価値の大きさを思い知る王太子と、奪ったはずの場所で何も支えられない義妹。
静かに、けれど確実に始まる立場逆転――。
これは、ずっと「選ばれる側」だった令嬢が、もう誰かのために自分を削るのをやめて、幸せも未来も自分で選び取る物語。
婚約者を妹にあげました
あんど もあ
ファンタジー
私の妹ポーリィは、私の持っている物を何でも欲しがってはすぐに飽きて捨ててしまう。そんなポーリィが次に欲しがったのは、私の婚約者ユージン。
「ポーリィ。人間は、飽きても捨てるわけにはいかないのよ」
「今度は飽きないわ!」
「私はポーリィを一生愛すると誓う!」
「ユージン様がそのお覚悟でしたらいいのですが……」
ポーリィとユージンは婚約するのだが……。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる