影の女帝

シエル

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勧誘と問題

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事情は聞けるだけ聞く事ができたと思う。



「話は分かった。ただ、こんな話を俺にしていいのか?」



堅苦しい言葉遣いを止めてから、一人称も「俺」になった。


今、聞いた話は皇族や極一部しか知らない極秘の内容だろう。

そんな話をしてくれたという事は少しは信用してくれていると考えていいのだろうか?



「そうね、この話は皇族の極秘な話ね。だから、これは提案なんだけど……セドリックは卒業後は帝国騎士団に入団して近衛になる予定なのよね?なら、皇女付きにならない?」


「は?」



確かに帝国騎士団に入団予定なのは間違いなく、近衛に配属されるかは分からないが、それでも皇族の傍に配属されるだろうとは思っていた。
 
それこそ、レイル付きの護衛騎士とかに選任されるかと。



「最初はレイちゃんの護衛に専任される予定だったんだけど…ほら、夜会の日とか昨夜もそうだけど何回か姿を見られているし、わたしの事情も知っちゃったでしょう?この場合、わたしの選択肢としてはか…どちらかなの」



セリーナは、にっこりと笑いながら軽く言葉を口にしているが、という言葉は冗談ではなく本気なのが伝わる。

笑っているがロシアンブルーの瞳が、これ以外の選択肢はないと、いつも以上に冷えた色で教えてくれるのだ。


ちらっとレイルの方を見れば、こちらをジッと見ている。

揶揄う色もない、かと言って殺気も感じない…

ただ、セリーナが示した選択肢に対して、どう返答するのか?と淡々とその結果を受け入れるような……感情が見えなかった。



「…分かった。セリーナ付きの護衛騎士になる」



死にたくないから。もちろん、その気持ちがないわけではない。

それよりも、セリーナの傍にいたい。傍にいられる。


その気持ちの方が強かった。



「良かった!わたしね、専属の執事はいるんだけれど護衛はいなくて、いい加減に一人くらい付けろって宰相に言われてたの!」



セリーナが求めているのは自分をではなく、が必要なのだ、という事が伝わる。



それでもいい。

少しでも側にいられて、セリーナにとって1番の味方でいられたら…


セリーナの盾となり、例え命を散らそうとも悔いはない。



そう、心に誓う⸺⸺⸺





⸺⸺⸺⸺




セドリックがそんな誓いを噛み締めていると、それまで黙っていたレイルが立ち上がり、ソファにいるセリーナの隣に移動してきた。



「さて、セドリックの配属先が決まったところで、今後を話し合おう」


「今後?」


「そう、最近のわたしの仕事はアメリア・フォン・ブライトンの件よ」




学院は皇族から下位貴族、そして少数ではあるが平民も通う言わば、小さな社交界であり、帝国である。


教育としては身分の垣根は設けていないが、確実に爵位による上下はあり、貴族としての義務と権利はなくならない。


学院内の事は、成人前の事だと許されているものと考えている者が多いかもしれないが、実際は皇族や高位貴族、そして貴族としての責務をしっかりと理解している下位貴族の保護者・帝城勤務の者たちの観察の場でもあるのだ。



帝国皇族・貴族が愚かでは困る。

己が貴族であるという矜持があれば、その責任や義務を忘れるはずがない。


しかし、中には羽目を外したり義務を忘れ、権利のみを主張する者が出てくる。


それをするのにちょうどいいのが、この貴族学院なのだ。



「アメリア・フォン・ブライトンが編入してきて、彼女が元となり婚約解消となったのが、既に数件出てるの。おまけにダリウス・フォン・カスティエールとの不誠実な関係……本当に汚らわしい」

 

セリーナは嫌悪感を隠そうともせず顔を歪ませながら、そう吐き捨てた。



「あれは最近では生徒会にも入り込み、それと同時に俺やセドリックにも絡もうとするだろ?高位貴族や大商会のアーサンなんかにも近付くのを見ると他国の諜報員か?とも思ったわけなんだが…」



レイルはそこで、ちらっとセリーナに視線を移したが、それに気付いたセリーナは首を横に振りレイルの続きを話した。



「夜会の主催者だった伯爵家はアメリアの祖母が関係してるから探っていたの。彼女の祖母は、ただの平民のメイドとして働いていただけで、自分と同じ平民と結婚してアメリアの母を産み、その母は働いていた酒場で偶然ブライトン伯爵と出会い、アメリアが産まれた。かなり細かく調査したけど白ね」



(つまり、ブライトン孃のあの言動はすべて彼女の本質であるという事か……)
 


それが分かり、ダリウスとアーサンの言動を思い出すと…頭が痛くなり溜め息が出る。


ダリウスにはマルガレーテという婚約者がいる。


婚約とは家と家との契約であり、更に貴族・平民関係なく守らなくてはならない最も身近な契約と言える。


もちろん、愛人をもつ貴族なども少なくないが、それは結婚して正妻との間に子を成した後、というのが暗黙の了解である。


それすらも守れない者を信頼できないと判断されても当然の話なのだ。





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