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アメリアの特殊属性
しおりを挟むヴァレンシュタイン子爵家、当主執務室にはセリーナとセドリックの他に、レイルも集まっていた。
「実は、最近アメリアが特殊魔法を使っていることが分かったのよね~」
「「は?」」
何でもない事のように話すセリーナの言葉に、それまでソファーの背もたれに完全に預けていた体を思わず起こし、レイルと同時にまぬけな声が漏れた。
「ん~前からね、あんなに多くの人を傾倒させる異常性は気になっていたのよ?あの程度の令嬢なんてたくさんいるじゃない?世間知らずのお坊ちゃん、お嬢さんだから今まで周りにいなかったタイプが珍しいのかしら?と思っていたんだけど…最近、アメリアから特殊魔法の魔力を感じるようになったのよ」
「…アメリアは確か、水属性の他に特殊属性の光属性をもっていたよな?」
セドリックはレイルに確認するかのように問い掛けた。
特殊属性はその特殊性の為、扱える人が少なく、実際どのような能力なのかがはっきりと知られていないうえに、その魔力を感じ取れる者が少ないのだ。
「そうだ、セリーナも光魔法の属性があるから分かったんだろうが…光属性は治癒魔法や浄化魔法とかだけじゃないのか?」
「主な魔法はそうね、だけど…一部かなり特殊な魔法があるわ。精神魔法の一つである魅了魔法よ」
「「!!!!」」
精神を操る精神魔法は禁術である。
過去に皇帝を操り、国内外を思い通りにした者がいたからだ。
それ故、精神魔法が使える者は国に届けなければならないが、はっきりとした属性が分かっていなかった為、取りこぼされている状況もあるのだろう。
「精神魔法は光属性だけじゃなくて闇属性、やりようによっては植物属性や水属性でもできなくはないわね」
(恐らく、そのような魔法の使用方法は帝国魔術師団も気付いていないのではだろうか?)
「それはヴァレンシュタイン家だから知っているのか?」
セドリックの質問に目を丸くし、おもしろそうにセリーナは笑った。
「ふふっ、そうよ。さすがね。ヴァレンシュタイン家の当主教育に過去の記録と共に使用方法も残っているのよ。恐らく魔術師団に記録は残っていないでしょうね。臣下である魔術師団に共有してしまったら愚か者が現れるかもしれないから」
同じ臣下でも、ヴァレンシュタイン家は皇族の中でも選ばれた者しか継承できない為、皇帝からの信頼度が違う。
それ故、残った記録なのだろう。
「だがそのせいで今回のような事が起きても、魔術師団が気付けなかったら対処が遅れるじゃねーか。それは悪手だろ」
ソファーの背もたれに完全に体を預け、頭の後ろで手を組んでいるレイルが呆れたように漏らした。
「そうね、だから今回は魔術師団総長にも動いて貰うわ」
「アメリアが魅了魔法を使用しているなら…ダリウスたちは操られているだけなのか?」
幼い頃からレイルの側近候補として共にいたセドリックは、ダリウスへの情が残っていた。
「いいえ。魅了魔法と言っても、かなり弱いわ。それこそ私が気付かないくらいね。僅かな好意があれば、それが少し強くなる程度ね…まぁ、最近は魔力が感じられるほど強くなってはいるけどね」
あくまでも人として好意があれば、そこに少しだけ上乗せされる程度…傾倒する程までにはならない。
傾倒している者の中でも異性は完全に恋愛感情を持ち、同性で信者のようになっている者は恋愛小説の登場人物に向けるかのような強い好意を持っていたのだろう…
「光属性の魅了魔法は元々、治癒魔法や解毒魔法の際に強い警戒心のせいで治療に支障をきたさないよう術者に好意的にする為に使うものなの。学院には光属性の魔法を使える者はいないし、記録もないから誰も指導できないわ。恐らく、無意識に使っているんじゃないかしら?」
特殊属性でもしっかりと魔力を出力していれば、恐らくレイルやセドリックにも気付けるはずだ。
特にレイルはセリーナが特殊属性持ちなのだから、セドリックよりも気付く可能性は高い。
それなのに無意識だろうと、こちらが気付かない程度の魔力量でこれだけの影響を与えるなど、ちゃんと使いこなし緻密に魔力出力を操ることができたとしたら…
そう考えたら、セドリックは背筋が寒くなった。
「アメリアが魅了魔法を使えるなら、これまではダリウスと共に貴族籍を廃籍のうえで放逐…と考えていたが、そういうわけにはいかないな…どうするんだ?」
レイルは顎に手を当て考えながら、セリーナに問い掛けた。
「…そうね~…ヴァレンシュタイン家で引き取って研究に使ってもいいんだけど、きっと魔術師団総長も欲しがるわよね~」
魔術師団は魔法オタクが多い。
間違いなく欲しがるだろう…
「まぁ、私の監視下で魔術師団に研究させるのがベストかしら?そういうわけで、ダリウスたちが断罪する際には近衛騎士団だけじゃなく、魔術師団も派遣して貰うわ」
断罪の日は間違いなく捕縛される生徒が多い為、近衛騎士を置くことが決定されていたが、アメリアの事で魔術師団も置くことが決定された。
「当日、その場を仕切るのはセリーナだろ?皇女だと明かすのか?」
そこはセドリックも気になっていた。
ただの、一貴族当主が仕切るのは不自然だった。
「そうね、ヴァレンシュタイン家が影の皇帝であることは秘密のまま、皇女だということは明かすわ。どうせ、そろそろ表に出なきゃいけないでしょう?」
本来であれば、16歳にデビュタントを迎えるがセリーナはデビュタントをしていない。
間もなく最高学年である四年生になる。
さすがに皇女が、帝国皇族や貴族が必ず卒業しないといけない学院に通っていないことや、デビュタントをしていないのは外聞が悪い。
そろそろ皇女だと明かす時期としては、ちょうどいいだろう。
「うーん、それならダリウスたちが断罪しやすい場を作ってやろうか。どうせ信者たちや他の生徒に証言をさせる為、衆人の前でやるつもりだろうからな」
わざわざ目立つ場で断罪するなど愚かとしか思えないが、そうでもしないとマルガレーテに瑕疵をつけられない…
それなら、こちらが管理しやすいように場を作った方が早い。
ダリウスとアメリアの運命の日が決まった。
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