影の女帝

シエル

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断罪の時①

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学院長と話し合い、夜会のマナー講習という名目で三年生のみのダンスパーティを開く事になった。

他の学年からも講習希望が出たそうだが、今回は断罪の場を作る事が目的の為、各学年別の日に企画からやって貰うという方向で話をまとめた。


案の定アーサンから情報を得て、ダリウスとアメリアたちはパーティで断罪をする事にしたらしく準備をしているようだった。

他学年にいる証人は、こっそりと潜り込ませる事にしたらしい。



「こうも思い通りに動いてくれると助かる反面、がっかりするな」



長年、自分の側近候補だった男をレイルはそう評価した。

いかなる時でも臨機応変さを求められる皇族の側近として、ダリウスは落第だろう。





⸺⸺⸺





パーティ当日、セドリックが贈ったドレスを身に着けたセリーナは言葉を失う程、美しかった。


セドリックの髪の色であるシルバー生地に、セリーナの本来の瞳の色である深いロイヤルブルーのレースで飾り付けた。

アクセサリーもセドリックの瞳の色に近い、グレーダイアモンドを使って特注した。


自分色に染まった姿に独占欲が強すぎるか?と思ったが皇女である事を公表すらなら、ちょうどいいだろうと一人で納得していた。


セリーナから唯一受けた希望は『本来の髪や瞳の色にも合うもの』だった。


皇女と公表するなら、ミルクティー色の髪とアメジストのような紫色の瞳だと皇帝陛下とも亡き皇后陛下とも色が違う為、信用して貰えないからだろう。



「セリーナ…キレイだ…」



俺の顔は真っ赤だろう。顔が熱い。


セリーナに手を差し出すといたずらっ子のような顔で笑い、手を乗せてくれた。



「ふふっ、ありがとう。これならどちらの色にも合って素敵だわ」


「気に入って貰えたなら良かった。さぁ、行こうか」



セリーナをエスコートし馬車へ乗り込んだ。


ついに、ダリウスとアメリアの運命の日が訪れた。

断罪の時まで刻一刻と近付いていた。



会場に入ると本物の夜会さながらに飾り付けられけていた。

壁際には近衛騎士が配置されているが、皇子であるレイルが参加している為、不自然さを感じている者はいなそうだった。


レイルが壇上に上がり開幕を宣言すると音楽が奏でられ始め、セリーナと二人でファーストダンスを踊り始めた。


セリーナとレイルが双子だと知る者はいない為、驚いている者たちが多かったが、婚約者のいないレイルは誰と踊っても誤解を招きかねない事からセドリックの婚約者であれば安心だからだろう、と予測したのか特に嫌な雰囲気にはならなかった。


二人のダンスが終わり、次はセドリックと踊り始めた事を確認すると、他の生徒たちも踊り始めた。



「セドリックはダンスがお上手ですのね」



普段のプライベートモードは封印し、今日は淑女モードの様だ。



「一応、高位貴族だからな。一通りの教育はちゃんと受けている」


「ふふっ、どなたかも高位貴族で教育も受けているはずですのにね…」



…ダリウスの事だろう。

そこへ入場口から、マルガレーテが一人で入場したのが見えた。


ダリウスはやはり婚約者をエスコートしなかったらしい。


一人下を向かずに凛として歩く姿は、さすが公爵令嬢である。

しかし周りからはマルガレーテを貶めるように、くすくすと笑う声が聞こえた。


その後、少し間が開いたが、ついにダリウスとアメリアが入場した。

共布であろう生地にお互いの色を入れた、明らかに揃いの衣装だった。


そのまま、挨拶に来た者たちと少し話すと会場の真ん中に移動し、ダリウスが声を上げた。



「マルガレーテ・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢!こちらへ来て貰えるだろうか!」


「…人を呼び付けないで自分が行きなさいよね~ほんと、図々しい男」



セリーナは扇子で口元を隠しながら、隠しきれなかった本音を小声で漏らしていた。



「ごきげんよう、カスティエール小公爵様。どういったご用件でしょう?」



ダリウスの前に来たマルガレーテは、美しいカーテシーを見せつけ問い掛けた。



「君はここにいるアメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢に嫌がらせをしていたね?」


「身に覚えがございませんわ」


「しかし、君がやった証拠や証人が揃っている!逃げ場はないぞ!」
 


ダリウスがマルガレーテをキツく睨み付けながら言い放ち、アメリアはそんなダリウスの腕の服を掴み、不安そうに瞳を潤ませながら見ている。



「そうおっしゃられましても、身に覚えがない罪を認めるわけには参りませんわ」


「そうやって逃げる気か…半年前、校舎裏へアメリアを呼び出し複数人で囲み脅迫、暴行をしたな」


「存じあげません」


「では、証言をして貰おう」



そう言うと、三人の令嬢が出てきた。

三人はどこか気まずそうに、マルガレーテから視線を反らしている。



「半年前、何があったか話してくれ」


「…その時はマルガレーテ様に言われてブライトン伯爵令嬢を校舎裏に呼び出しました……その、カスティエール小公爵様に近付かないよう忠告を…」


「それだけか?」


「あの…体を押して、倒しました…」



その瞬間、会場がざわめいた。

至るところからヒソヒソと、マルガレーテを非難するような言葉が聞こえてくる。



「忠告、というより注意ですわ。人の婚約者に無闇に近付き、ついて回るなど常識的にあり得ませんもの。体を押したのは私の指示ではなく、興奮した彼女たちの暴走ですわ」



淡々と答えたが、事実だと認めた。



「嫌がらせと呼ぶには少し弱いわね。だけど、実際の出来事と認めた事で会場の流れは良くないわ」



セリーナが扇子で口元を隠しながら、小声でダリウスに言った。


その後は、『わざと足をかけた』や『私物を隠した』など事実と嘘を織り交ぜ、その度に証言や証人で信憑性を示した。



「一つ一つは、大した嫌がらせではないかもしれない。しかし、格下の身分の者に対してこのような仕打ちをするなど、到底認められる事ではない!ここにダリウス・フォン・カスティエールが宣言する!マルガレーテ・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢!君との婚約を破棄する!」





この瞬間、ダリウスたちの運命が決まった。


 


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