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断罪の時②
しおりを挟むダリウスが声を張り上げて『婚約破棄』を告げた事を確認した瞬間、セリーナはパチンと扇子を閉じた。
「そこまでですわ」
セリーナは声を上げ、セドリックの腕に手をかけながら、ダリウスたちの方へ向かう。
「カスティエール小公爵、ブライトン伯爵令嬢…茶番劇は終わりまして?」
「何だと?…」
ダリウスは腕にアメリアをぶら下げながら、セリーナを睨み付けた。
「そうでしょう?何だかんだと理由を付けておりましたが、嫌がらせと言ってもローゼンベルク公爵令嬢がした事は所詮、注意の域を出ておりませんわ。ただ単に貴方方の不貞を正当化したいだけでしょう?」
「なっ!不貞などしていない!」
「ふふっ、そんな腕に婚約者以外の令嬢をぶら下げて言う台詞ではありませんわね」
「面白いことをおっしゃるのね」と指摘され、急いでダリウスたちは距離を取った。
「ダリウス、お前たちが不誠実な関係であることは学院で知らない者はいない。そんなことも気付かなかったか?」
真っ直ぐ見て告げるとキョロキョロと周りを確認し、自分たちの支持者以外が怪訝そうな顔をしている事に気付いたようだった。
「先程、おっしゃった嫌がらせのうち、悪質な物に関しては、こちらでローゼンベルク公爵令嬢の仕業ではない事や、虚偽である事は確認済みですわ」
「お前が脅迫紛いの事をして、強制的に証言をさせた事もな」
セリーナと二人で徐々に追い詰めていくと、ダリウスたちだけではなく、証言をした者たちの顔も青くなっていった。
「貴方たちは己の欲望の為に、ローゼンベルク公爵令嬢に濡れ衣を着せ、瑕疵を付け、婚約破棄へ持ち込もうとしていた事は分かっておりましたの。どうやら貴方たちは、帝国貴族としての義務や責任の重さを忘れてしまったようですわね」
それまで、にっこりと笑いながら話していたセリーナは、そう言うと一気に表情を消した。
「そのような帝国貴族など必要ありませんわ。よって、ダリウス・フォン・カスティエール、ならびにアメリア・フォン・ブライトンの二人の貴族籍を剥奪する」
「はっ!そんな事できるわけがない!それが出来るのは皇帝陛下のみだ!お前にそんな権利はない!」
「ありますわよ?今回の事は、皇帝陛下にも勅命を出して頂いておりますもの」
手に持っていた勅命の書面を差し出すと、それまで馬鹿にしたような顔でニヤニヤしていたダリウスは急いで奪い取り、読むと顔色がどんどん青ざめていき体が震えていた。
「な、何で…?何で、たかが子爵風情が、陛下からの勅命の書面を貰えるんだ!?」
「あら?爵位が叙爵されるのは、貴族だけとは決まっていませんでしょう?」
くすくすと笑いながら、認識魔法を解いていく。
その瞬間ミルクティー色の髪が漆黒に変わり、アメジストのような紫色の瞳は深いロイヤルブルーの色へ変わった。
「そ、その髪の色と瞳の色は…」
高位貴族であるダリウスは気付いたようだが、数年前まで平民だったアメリアは亡き皇后の姿を見た事がなく、ピンとこなかったようだ。
「自己紹介がまだでしたわね。リヒテンシュタイン帝国・第一皇女・セリーナ・フォン・リヒテンシュタインですわ」
そう名乗ると美しいカーテシーを披露した。
病弱で誰も見た事のない幻の皇女…
その圧倒的な存在感に誰もが目を奪われた。
「私の双子の姉だ。セリーナは12歳でヴァレンシュタイン子爵位を叙爵された為、今まで病弱とし皇女として表には出ていなかったのだ」
レイルがセリーナの隣にやって来ると、会場にいるすべての者に聞こえるように声を上げた。
「お分かり頂けたかしら?学院は小さな社交界ですわ。この小さな箱の中で、帝国貴族として相応しいかを試される場という事は各家の当主から説明は受けているはず…模範となるべき公爵子息や伯爵令嬢がこの有様とは、嘆かわしいですわね」
「そ、そんな!セリーナ様!違うんです!私たちはただ「何度言えば分かるのかしら?お前に名を呼ぶ許可は与えてなくてよ。敬称も正しく使いなさいと伝えたはずよ?」」
瞳を潤ませながら、必死に言い訳の言葉を紡ごうとしたが、セリーナに遮られたうえに冷たい視線を向けられ、アメリアの体は恐怖で固まり顔色も青ざめた。
「言っとくが、カスティエール公爵には既に通告済みで承諾を得ている。それと同時に、ローゼンベルク公爵令嬢との婚約もダリウスが有責で破棄済みだ。つまり、お前が婚約破棄を叫ぶ前に婚約は破棄されていたんだ」
レイルが淡々と告げると、もはや自分の体を支えきれなかったのかダリウスは崩れ落ち、両手を床についた。
「ブライトン伯爵家にはあえて通告しておりませんわ。貴女はあまりにも学院の風紀を乱し、貴族としての権利のみ享受し、義務も責任も何も考えていない…これはブライトン伯爵家の教育不足ですわ。その為、その責任を取って男爵位まで降爵とします」
家族の中でアメリアだけ貴族ではなくなるという事は理解したが、男爵位に降爵される事の意味まで理解していないのだろう…
そもそも、ブライトン伯爵家は亡き伯爵夫人の血筋の家門であり、古くからある由緒正しい家である。
それが、まったく関係のない愛人の娘が家門を潰しかけた事になる。
かなり重い罰となるだろう…
「そうそう、アーサン・モンタギュー。貴方の家にも既に通告済みよ。処分は貴方とのお父様にお任せしたけど…覚悟しておきなさいな」
「なっ!何故、私が!?」
「ふふっ、私の目が節穴だとでも?貴方がカスティエール小公爵たちに手を貸していた事など、把握済みでしてよ?」
その台詞を聞いた瞬間、アーサンの顔色がみるみる青ざめた。
「あ、そうそう。他にも各家の当主に警告されたにも関わらず、証言をされた方、証拠を作った方なども各家に通告しておりますわ。処分はお任せしましたが…覚悟なさいませね?」
にこにこと笑いながら周囲を見回しセリーナが言い放つと、身に覚えがある者たちも顔色を青ざめさせ悲鳴をあげたり、言い訳を叫ぶ者たちが続出した。
「静かにしろ!!すべて己が考え、やった事の結果だ!潔く受け入れろ!それとも勅命に逆らう気か?」
レイルがよく通る声で、言い放ち睨み付けると、先程までざわついていた者たちは口をつぐみ、視線を下に落としている姿が複数人見えた。
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