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断罪の時③
しおりを挟む「…何で…何で、こんなことに…」
ダリウスは下を向きながら、床に拳を叩きつけていた。
(…哀れだな…)
アメリアが現れる前のダリウスを思い出した。
彼女に出会う前のダリウスは、高位貴族としての義務、レイルの側近としての責任感を確かに持っていた。
それを見失い、捨ててしまった結果だ。
セリーナはその様子を相変わらず感情の見えない瞳で見つめ、後ろにいた魔術師団総長へ合図を出した。
それを確認した魔術師団総長が動き出すと、ダリウスやアーサン、アメリアの周りを近衛騎士たちが囲んだ。
突如、騎士たちに囲まれたアーサンとアメリアは怯えと驚きを隠せなかった。
「な、何なんですか?!」
魔術師団総長が真っ直ぐアメリアのもとへ行き、左手を掴むと準備していた腕輪をはめた。
「きゃっ!何これ!?」
「それは魔力制御装置だ。君の魔法は危険な為、魔力を完全に使用出来ないようにする」
魔術師団総長の台詞を聞いているのか、聞こえていないのか、アメリアは必死に腕輪を外そうともがいている。
「無駄だぞ、それは私か皇族でなければ外すことは出来ない」
「何なんですか!?わたしが一体、何をしたって言うんですか!?」
アメリアはいつもの人の庇護欲をくすぐるような言動ではなく、興奮したまま大声でまくし立てた。
他の生徒たちはその様子に驚き、呆然としている者もいた。
レイルがセドリックの父である近衛騎士団長へ何か指示を出し、セドリックの父はそれに従う意を示した。
「この場に残っている生徒たちは、騎士の誘導に従い退出せよ!」
父が大声で指示を出すと、近衛騎士たちはアメリアたち以外の生徒を出入口まで誘導し始め、生徒たちもそれに大人しく従い退出した。
ギャラリーがいなくなったことを確認した後、セリーナは魔術師団総長を睨み付けているアメリアの傍へ近寄った。
「他の生徒たちが退出したので、私から説明いたしましょう」
「…一体、どういうことですか?わたしの魔法属性は水と光です!珍しいかもしれませんが、危険ではありません!」
「いいえ。魔法はどの属性も使い方次第では危険な物になりえましてよ。そんな基本的な事も理解していらっしゃらないのね」
口元に閉じたままの扇子の先を当て、呆れたように告げた後、顔をアメリアにぐいっと近付け、何も感情が見えないロイヤルブルーの瞳で真っ直ぐ見据える。
「教えて差し上げるわ。お前は光魔法で精神魔法…もっと具体的に言えば、魅了魔法を使っておりましたわ」
セリーナの言葉に、それまで項垂れていたダリウスは思わず顔を上げ、アーサンと共に驚愕の表情を浮かべた。
「せ、精神魔法?魅了魔法?…何を…」
「気付いていなかったのかしら?でも、何かおかしいとは思っていたのでしょう?だって、最近は強めに魔力を使っていましたもの」
妖しげに笑うセリーナに怯え、カタカタと身体が震えていた。
「…どういうことだ?アメリア…君は、私たちに魅了魔法を使っていたのか?」
おもむろに立ち上がったダリウスは、困惑しながらも信じられない、いや、信じたくないかのように問い掛けた。
その様子をアーサンは苦々しげに見ている。
「…知らない…ウソよ…わたしはそんなもの使っていないわ!」
「それこそ、ウソですわね。私は全属性の魔法を使えますの。もちろん、特殊属性も込みで…ですから、私が察知出来ない魔力はそうはありませんのよ?」
アメリアはどこか焦燥感を滲ませながら、必死に否定をした。
しかし、全属性魔法を使えるセリーナを誤魔化すなど無理な話である。
「初めの頃は漏れ出すような…そう、気付かずに使っていたのかもしれませんわね。お前の周囲の異様さの理由が分かりませんでしたが、最近は光属性魔法の魔力を感じられるようになりましたの。お前も気付いたから発動していた魔法に、あえて魔力を更に乗せたのでしょう?」
確信をもった台詞に、とうとうアメリアの顔色が青ざめた。
「それでは、私たちはアメリア嬢の魅了魔法に操られていたのですか?」
今まで黙っていたアーサンが、怒気を含んだ声で問い掛けた。
「いいえ。言ったでしょう?彼女は、最初は気付かずに魔法を発動させていましたの。そうですわね…吐息程度の魔力量と言えば分かりやすいかしら?元々の好意に僅かに上乗せされる程度ですから、お前やカスティエール小公爵のように傾倒するほどにはなりませんわよ?」
呆れたような表情のどこかに軽蔑が含まれており、冷たい視線が突き刺さった。
「そういうことですので、カスティエール小公爵とアーサン・モンタギューの処分内容は変わりませんわ。アメリア・フォン・ブライトンは精神魔法の使用と隠匿の罪状で魔術師団預かりとします」
「ありがとうございます」
魔術師団総長が跪きながら、胸に手を当て感謝の意を伝えた。
「…魔術師団預かりって…どういう意味ですか?」
どんどん重なり合う罪状と処罰内容に真っ青な顔色は戻らず、体もカタカタと震えたままだった。
「そのままの通りですわ。光属性魔法はその名の通り、珍しい特殊属性魔法ですので知られていないことが、まだまだたくさんありますの。ですから、今回のようなことが起きないように調べる必要がありますでしょう?」
どんな風に調べられるのか…ただ単に魔法を発動させて、それを眺めて終わるようなものではない事だけは分かった。
どんな事をされるか分からない恐怖がアメリアを襲い、そのまま気を失ってしまった。
「あら?もしもーし?気絶しちゃったわね…まぁ、いいでしょう。拘束する必要もなくなりましたし…魔術師団総長、お連れしてくださる?」
セリーナは一瞬きょとんとし、アメリアの頬を軽く叩いてみたが目を覚まさないことを確認し、にっこりと笑いながら魔術師団総長に任せた。
セドリックとレイルはその様子を冷めた目で見ていたが、ダリウスとアーサンはこれからのアメリアの事を想像すると複雑な気分になり、ぼーっとその状況を眺めていた。
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