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処分〜ブライトン伯爵家①
しおりを挟むブライトン伯爵は凡庸な男である。
元々、子爵家の三男でしかなく学院の成績も抜きん出て優秀なわけではなかった。
しかし、ブライトン伯爵家前当主は凡庸だからこそ、おかしなことを企て、婿入り後も体の弱く跡を継ぐ事が難しい娘をないがしろにしたり、家を傾けるような事はないだろうと考え、嫡女である娘と婚約させたのだった。
その予想は見事に裏切られた。
ブライトン伯爵は学院生の際に出会った平民の娘と交際し、愛を深めていた。
今となっては、亡き伯爵夫人がその事に気付いていたのかは誰にも分からない。
事実は婿入り後もブライトン伯爵は愛人との関係を続け、子を作り囲っていたという事である。
前当主が亡くなり、ブライトン伯爵が代理として実務をこなしていたが伯爵夫人との間に子を授かる事はなかった。
その為に分家から優秀な令息を養子として受け入れたのだが、それから間もなく夫人は病死したのだ。
ブライトン伯爵位はそもそも亡き夫人の家系である為、婿である伯爵は義息子が爵位を継承出来るようになるまでの繋ぎである。
しかし、凡庸な為に考えが浅かった。
妻が亡くなり一年もしない間に愛人を後妻として迎える事にした。
平民と貴族が結婚する為には、貴族籍を捨て平民にならなければならない。
ずっと、貴族として生きてきた伯爵には今更、平民として生活するなど無理な話だった。
そこで知人のつてをたどり、何とか愛人を男爵家の養子とする事で後妻に、アメリアを伯爵家の養子として迎える事が出来たのだった。
しかし、それでも義息子が爵位を継承したら家族三人まとめて平民になる事に変わりはなかった。
すべての手続きが終わった後に義息子は伯爵の話を聞き、複雑そうな表情を浮かべたが、特に何も言うことはなかった。
そして、学院へ途中入学して二年ほど経った頃、娘に聞かされたのがカスティエール公爵家嫡男であるダリウスとの交際だった。
伯爵は娘かわいさもあったが、アメリアの見目の良さに惹かれた高位貴族へ嫁げたら、伯爵位を渡した後も生活に困る事はないだろうという打算もあったのだ。
アメリアがダリウスと懇意にしていると聞いたとき、娘の嬉しそうな姿と帝国内最高位である公爵令息を射止めた事を素直に喜んだのだ。
「…義父上」
「ん?どうしたんだ?」
「よろしいのですか?カスティエール小公爵様はローゼンベルク公爵令嬢と婚約されているはずです。それなのに、義姉上がその仲をかき回したとなれば、我が家はローゼンベルク公爵家を怒らせる事になり、社交界でも肩身が狭くなります」
「うむ…しかしながら、カスティエール公爵家もローゼンベルク公爵家と同じ公爵位だ。それに現当主は宰相閣下でもある。伯爵家でしかない我が家がカスティエール小公爵に望まれて拒否出来るものではない事くらい理解してもらえるだろう」
一瞬、義息子の考えに思うところはあったが、同格の公爵家同士である。
お互いに上手くやるだろう、という浅い考えで伯爵は話を流した。
その時の義息子の冷たい視線に気づく事もなく…
しかし、そんな伯爵の浅はかさが招いたツケを払う時が来た。
⸺⸺⸺
「ごきげんよう、ブライトン伯爵代理。私はヴァレンシュタイン女子爵、セリーナ・フォン・リヒテンシュタインよ」
「り、リヒテンシュタイン…?」
「はい、このお方はリヒテンシュタイン帝国第一皇女殿下であられます。ヴァレンシュタイン子爵位もお持ちなので、先ほどはそちらを名乗られました」
そう説明したのは婚約者であるセドリックである。
今日はドラッケンベルク小侯爵としてではなく、セリーナの護衛騎士として同行していた。
断罪劇の日、学院が終わってもアメリアがなかなか帰って来ず、伯爵夫妻は心配していた。
そんな時に近衛騎士が「学院で事件があり、その件の関係者の為、帝城に滞在している」という連絡を持って来た。
詳しく話を聞こうとしても騎士は「調査中の為、お答え出来かねる」と言うばかりで、どんな事件に巻き込まれたのかと気が気でなかった。
その翌日、昼を過ぎた頃に先触れもなく、突如として現れたのがセリーナ達と大勢の近衛騎士だった。
「そ、そうでしたか。第一皇女殿下にご挨拶申し上げます」
戸惑いつつも何とか挨拶だけする事が出来た。
「今日、先触れもなしに訪問した理由だけど…昨日、学院で事件が起きた事は聞いてるかしら?」
「!!!はい!!あの、アメリアは…娘はどうしておりますか?!」
セリーナが事件の事を口にした瞬間、伯爵は礼儀も忘れ、驚くべき速さで問いかけた。
扇子を広げたセリーナは目元より下を隠し、その様子を冷えた深いロイヤルブルーの瞳を細めて見ていた。
「…アメリア・フォン・ブライトン伯爵令嬢は現在、内乱罪など多数の罪で帝城の牢におります。食事などは与えており、特に体調面も問題ありません」
セリーナが口を開く気がない為、セドリックが代わりに答えた。
「な、内乱罪!?そんな!!ありえません!あの子は優しい子で、そんな大それた事など!!」
「いい加減になさいな。お前は今、誰の前にいるの?」
扇子をパチンと鳴らしながら閉じ、無表情のまま刺すような冷たい視線を向けながら口を開いた。
初めて感じたであろう支配者が放つ威圧感に、セドリック以外のその場にいた者は冷や汗が出るのを感じた。
⸺⸺⸺⸺
どうでもいい話ですが、本日は我が家の愛犬の誕生日です(4歳♂)
お天気はあいにく雨ですが、素敵なクリスマスをお過ごしください♡
🎄Merry Xmas!🎄
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