影の女帝

シエル

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処分〜カスティエール公爵家

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「ダリウス、もう、分かっているだろう」

 
王城の貴族牢にいた私に元に、父上と皇女殿下…いや、ヴァレンシュタイン女子爵閣下とセドリックがやって来た。



「…はい、すべては私の不徳の致すところです」

 

一人で静かに座っているソファーの向かい側に、父上たちが座っている。


マルガレーテと夫婦になることは、ことで、それはことなんだと思っていた。

昔の私は、それを良いとも悪いとも思っておらず、それを変えたいとも変えようとも思っていなかった。


それが、だと思っていたから…


アメリアに出会ってからのことを思い返すと、それはまるで眩しい出来事だったかのように、鮮明に頭に浮かぶ。


マルガレーテや社交界で出会う貴族令嬢たちとは違い、決まったレールの上を歩かず、あの華奢な背中に羽根が生えたら、そのままどこかへ飛んで行ってしまうのではないか?と思えるように可憐で、それでいて同時に庇護欲をくすぐるような儚さがあった、と思っていた。


しかし、それは私の独りよがりなに過ぎなかった。


アメリアに傾倒していた者たちは皆、そんなアメリアに惹かれ、好意を抱いていると思っていた。


でも、違ったのだ。


私を含め、好意があったのは間違いではないのだろう。

ただ、それは他の人にも抱く程度の好意に過ぎなかった。


最初は気づいていなかったとしても、アメリアの光属性の魅了魔法によって、その好意が増幅されていた。


最終的には、その力を確実に認識し、魔力を強めた。


そんな、狡さがアメリアはあったのだ。

アメリアのそういう部分に、本当に私は気づいていなかったのだろうか?



「カスティエール小公爵、いえ、もう廃籍されるのだから、ダリウスさんとお呼びしようかしら」



鈴の音のような声で、ヴァレンシュタイン女子爵は問いかけてきた。


「貴方は一体、何がしたかったの?」と。



「何がしたかった…アメリアとずっと共にいたかったのです。ですが、それがだと分かっておりました…だから、変えたかったのです。すべてを」


?なぜ?」


「なぜ?それは、私がカスティエール公爵家の次期当主だったからです。マルガレーテとの結婚は政略的なもので、でした」


「だから?それが分かっていながら、マルガレーテ嬢との婚約を破棄し、アメリアさんをカスティエール公爵夫人にしようとなさったの?何のために?ブライトン伯爵家と縁を繋いで、一体カスティエール公爵家にどんな?」


不思議そうに問いかけてきているが、その瞳には感情の色はない。


ヴァレンシュタイン女子爵の瞳を見つめていると、そのロイヤルブルーの深さに囚われそうな気がして、思わず目を反らしてしまう。



「貴方が取れる道はありませんでしたわ。一つ目は貴族籍を捨て、平民となりアメリアさんと添い遂げる道、二つ目はローゼンベルク公爵家を皇帝派へ引き込まずとも、派閥に利益になるような付加価値をアメリアさんやブライトン伯爵家へ付け、円満に婚約を解消する道…」


 
ヴァレンシュタイン女子爵は指を一本ずつ増やしながら、私が取るべきだった選択肢を挙げた。



「…なのに、貴方が選んだのは、最もありえなくて、最もでしたわ」

 

そう言い放ったときの顔には表情はなく、あの無機質な瞳を細め、その視線が突き刺さる。



「お前がしたのは、ただの婚約破棄ではない。自分のわがままを通すために無実の者に罪を着せ、何の関係もない生徒たちへの教唆、虚偽証言、証拠捏造、脅迫行為…あげればキリがない。こんな愚かなのが息子だと思うと情けなくて仕方ない」



そう言うと、父上は頭が痛むのか片手でこめかみの辺りを擦っている。

父上があげた罪状だけでも、もはやただで済むことがないことくらい分かった。



「…大変、申し訳、ございませんでした…」

 

声もかすれ、うまく出すことが出来ない。


セドリックは何も言わないが、そんな私を苦い顔をしながら見ている。


幼い頃から共に過ごし、遊び、学び、ケンカをした。

そして、それはこれからも続いていくのだろうと信じていた。

しかし、それもアメリアとの恋を優先したことで、すべて失った。



「皇帝陛下の名のもとに、カスティエール公爵家にローゼンベルク公爵家への慰謝料の支払いを命ずると共に、ダリウス・フォン・カスティエールの貴族籍を剥奪する。また、隷属魔法と断種措置を施したうえで、身柄を国境騎士団預かりとし、国境の治安維持に務めよ」

 

隷属魔法は魅了魔法とで、魔法を施した者の命令に逆らうことができなくなる。


本来であれば、処刑されてもおかしくない。

ある意味、温情を与えられたと言えるだろう。


しかし、国境は他国との小競り合いだけではなく、魔物もよく出る地域でもある。


命の危険があることから見ても、許されたわけではないことが分かった。



「…ご温情を、賜り、ありがとう、ございます…」



次の日、人になったダリウスは国境へ送られて行った。




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