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一体何がどーなった!?
そりゃー確かにあばばばばばーとかみょみょーんとか言い出す奴がいるんじゃねーかとは思ったぜ?
だがホントにやれだなんて俺はひと言も言ってねーんだからな!
んで視界は一面真っ白、音もしねーしどーゆー状況なのか全く分からん。
実はすぐ隣に何かいたりとかもあるのかもしれんけど、こーなる前のドタバタ、まずアレが何なのかが分からん。
何かのチカラが働いてドラゴンさんが急におかしくなったのは分かったが、何で受付さんをグシャリと潰さにゃならんのだ?
ドラゴンさんが何か言いかけてたが何て言ってた?
その前から二人とも発言内容が怪しくなってたがそっからなのか?
それか長ネギ買って来いからのここに住まねーか発言の奴らと話したとこ、その後俺らだけで漫才やってる間のどっかですでに片足突っ込んでたとか?
うがー、分からん!
寝る!
………って寝れるかっつーの! うがー!
つーか俺は今どーゆー状態なんだ?
何かフワフワしてて身体の自由は全く無えって感覚な訳だが……
「あーあー、マイテスマイテス、生麦生米生タマゴぉー」
……声はそのまんまか。
てことはナマ首は継続かぁ。
視界は真っ白だけどコレ地面に転がってんのかね……ゆーて床面とか地面の境界線も見えねーんだよな。
顔面の感覚もねーし。
どーなってんだよマジで。
身動きも取れねーし呼びかけたって誰もいねえ。
自分の声は聞こえるから耳は大丈夫だよな?
もしかすっと誰かいんのかもしれねーが真っ白しか見えねーんじゃなあ。
……ここってドコなんだろ。
正直んなコトとりとめもなく考えてたって何もなんねーのはわかっちゃいるんだがなー。
あーあ、することがねーってのもたいがいキツイわー。
こーなりゃいっちょ、ちったあ考察っぽいマネゴトでもしてみっか?
まず受付のねーちゃんだな。
グシャってゆーかバリバリバキバキってすげぇヤバそーな音がしてたけどその後フツーに……いやフツーじゃなかったけどしゃべり出したのには心底ビックリしたからな。
仮にアレがホンモノの人間だったらすぷらったなやべー絵面になってたとこだったぜ……間違いなく人形とかいうヤツだったよな。
んでその受付にしか見えねー人らがいてその人らと会話の仲介をしてもらってただろ。
その一方でドラゴンさんは俺らっつーか受付とは見えてるマップ? が違ってたってとこがポイントか。
受付からしたら崖があってこれ以上進めねーと思ってた場所が、ドラゴンさんから見たらフツーに町ん中を歩いてるだけだった、と……
結論、俺もろとも受付のねーちゃんを抱えてもらってそのまんま前進してもらったんだよな。
受付のねーちゃんが行ける筈のねー場所に行って誰かとフツーに話してたって異常事態を処理するための措置をとったってカンジか。
……誰が? 何のために?
受付自身を直接何とかするんじゃなくてドラゴンさんにやらせたのは何でだ?
……うーむ。
一周まわってやっぱり分からんわー。
* ◇ ◇ ◇
………
…
……うーむ。
ヒマだぜ。
いくら考えたって何も出来ねーし。
つーか一周どころか何周もしちまったけど結局分からんモンは分からんてコトが分かっただけだしなー。
あ、そーだ。
アレをまだ試してなかった。
「タァミナァール……オゥプンヌッ!」
……何も起きねーな。
いや、誰もいねーしすべっても別に恥ずかしくはねーんだぜ。
お手本に合わせただけなんだからな。
てか別にエセ欧米人風に言わんでもえーのかね。
ものは試しだ。
「ターミナルオープン」
……出たよ。
……今までのアレは何だったんだよ。
つーか日本語丸出しの発音でOKなとこにゃイマイチ納得行かねーが、つまりはそーゆーコトなんだろーな。
知らんけど。
まあ別にコレで何か出来る訳じゃねーし、こーやって眺めてるだけなんだけど。
しかしこーやって呼び出せんのにカンジンの操作はキーボードとか頭おかしーよなー。
それか音声入力とか出来んのかね。
「PF24!」
「イコールディー! ブランクティー!」
………
…
結局キーボード操作のみって仕様なのかよ。
あー、アホらしくなって来た。
やめだやめ!
……そーいやコレ、今までどーやって閉じてたんだっけか?
えーと。
「ターミナルクローズ!」
……テキトーにやってもダメかー。鉄板だと思ったんだがなぁ。
あ、そーだ。コイツが出るってコトはアレをやったらなにか起きるかもしれねーな。
いや、どーせ何も起きねーんだろーけど。
てなワケで……
「スイッチ!」
………
…
ハイ、何も起きませーん。
身動き取れねえ、視界は全部真っ白、コレどー考えても幽閉だよなー。
それにしてもメシもトイレも必要ねーなんて画期的じゃね?
今ってアタマしかねーし、もしかして場所もアタマ一個分しか必要なかったりしてなー。
実は今まで会ったヤツらも全員首から上しか無かったりして。
破壊不能オブジェクトなんてモンも現実にある訳がねーもんなー。
そっかー。上下左右全部ナマ首がズラリと並んでんのかー。
……何か怖ぇ考えになっちまったぜ。
人間ヒマになるとロクなコト考えねーってゆーけどホントそーだわー。
っていっても俺ってホントに人間なんだべか?
人間じゃなかったら何なんだって話なワケだがまあ還暦のおっさんてトコは譲れねーよな、知らんけど。
つーかこれ以上考察なんてしてても意味ねーし、ホントにもーやることもねーし、どーすっかなあ。
……ん?
そーいやいつの間にかダム端の画面が消えてんな。
一定時間操作がねーと自動的に切断されるヤツか?
分からんわー。
まあ良いや。どーせヒマだしもーいっぺんやってみっか。
「ターミナルオープン」
……アレ?
「ターミナァル、オゥプンヌ!」
……アレアレぇ?
今度は出ねえ?
良し、暇つぶしのネタが出来たぜ……!
……じゃなくてぇ!
べ、別にイベントが発生してほしいだなんてコレっぽっちも思ってないんだからぁ。
* ◇ ◇ ◇
なんちてなんちてー。
……なーんてトボケてみても誰も聞いとらんか。
まあここに来て見っけた変化をマジメに考察してみるかね。
とはいえ、見た目の状況にゃ何も変わりはねーんだよなあ。
今までダム端のエミュっぽいナニカを出せたのって確か秘密基地っぽいトコだけだったんだよな。
つーことはそれに近い場所から元の場所に近いトコロに飛ばされたって考えられねーか?
もしかして何か良いカンジになって来てんのか?
こりゃーいよいよナマ首生活ともオサラバかもしれねーな!
生活なんてしとらんし時間も分かんねーけどな!
そもそもナマ首なんて状態があり得ねーんだけどな!
受付のねーちゃんも言ってたけどどっかから人形を操作してるって言ってたし、どーなってんのかは分からんけど俺のこの状況も同じなんじゃね?
……んでその仮定が当たってるとして——これまた仮定の話だけど——戻るとか戻らねーとか以前に俺はどっからこの光景を見てんだろーな?
あっちこっち飛ばされてたのは俺自身じゃなくてこの人形ってやつの方だけだったのか?
ここんとこ出くわした人らはみんなアッチ側にいたのか?
いながらにしてアッチコッチ行けるかもしれねーってことか。
ゆーて戻り方が分からねーんじゃなあ。
受付に聞いとくんだったなー。
うーむ。
まずはどーやってこの状態になったのか思い出してみっか……
えーと……結構さかのぽるな。
まず定食屋があったはずの場所に昭和風の屋敷があっただろ。
んでその奥に入ったら棺桶みてーな箱があって……結局ソイツは関係無かったんだっけか?
ああ、裏庭に出たらそこでいきなり穴の底みてーなトコに出たんだったか?
何かそんときもすんなり行かんかったよーな気もするけど、そっから何だかんだあって穴を掘ったらひっくり返った掘っ立て小屋が出て来たんだよな。
んでそこに入ったら横ったまになったまんまでどんどん落っこちて行った、と。
そーいやマシン室っぽいとこで変なバケモンみてーなのに襲われたんだっけか?
いや、その前に中庭で何かあったな……俺が急に現れたみてーな……
あー、あのしゃべる像(?)か。
考えてみたらアレも人形のとかゆーやつだったんじゃねーか?
あの像を通過して進んでったらマシン室があって、そこでくだんのバケモンに襲われた、か。
んで近場にあった棺桶(?)にぶち込まれて気が付いたら中庭の像になってたんだよな。
つーことは俺はいまだにその棺桶の中にいるってことになんのか。
んで棺桶から出たら少なくともナマ首状態からは解放される、この解釈で合ってんのか。
……誰がどーやって出してくれるっつーんだ?
誰かいたとしてどーやって声をかける?
それにだ。
少なくともあの場所じゃ俺をこんな目にあわせたバケモンが待ち構えてるってことも考える必要があるな。
って唯一の他人てそのバケモンしかいねーんじゃねーのか?
人語を解する様子ではあったけど話は通じなさそうだったが……
あのセンセーさんの双子の妹って話だったがなあ……
結局、自力でどーにかするしかねーのか。
どーにかする方法があればの話だけどな!
* ◇ ◇ ◇
ゆーて自力でどーにかするってったってどーにも出来ねーぞ。
フリダシに戻っちまったなーコレ。
やっぱし首だけって圧倒的に出来るコトが少ないわー。
考察タイムもえー加減飽きたしなー。
……はてな?
何か重要なコトを忘れてるよーな気が……
何か前にも似たよーなコトになったときがあったよーな……
しかも結構最近、つーかこーなる直前?
まあそんときゃ五体満足っつーかフツーにオッサンの姿だった訳だけど。
どのタイミングだったっけか?
あー、えーと……
アレか? イヤ、アレかもな……いやいや、違うか?
心当たりがあり過ぎてもはやどれだか分からんわ!
考えてみたらここに来るまで場面転換しまくりじゃなかったか?
何だか良く分からんが納豆云々言う奴……あ、そーいやそこで場面転換つーか突然真っ暗になったタイミングがあったな。
ありゃ何だったんだ?
ドラゴンさんの背中に乗って移動してたらそのドラゴンさんがいきなりパッといなくなって床面? にケツをしこたまぶつけたんだよな。
三千年かかりますがゲームをしますか、とかフザけたことを抜かしてたがソレがマジならソイツも俺も何なんだって話な訳だが。
ココで首だけの奴が何言ってんだってツッコミが欲しいんだけどなー。
セルフツッコミするしかねーのが悲しいぜ!
しかし真っ白ってのは今まで無かったよな……無かったよな?
どーせヒマだしちょいと思い出してみっか。
過去の記録がいきなり再生され始めて時間経過か何かでいきなり終わるパターン。
んで過去の記録っぽいのは変わらんけど妙に現実感があってそこに住んでる人らと話したりものに触ったりできるパターン。
時間経過なのかは分からんけどコレも不意に強制終了しちまうんだよな。
特徴的なのは破壊不能オブジェクトがあったりとか電気水道ガスの類が一切使えねーとか、VR臭い要素が満載だって点だな。
もひとつオマケに、他の参加者と見えてるマップが違うっぽいバグ? があるっぽいってのもこのケースの特徴だよな。
今いる場所がマップの外側だった、なんて可能性もあるよな。
あとは映像だけ、音だけのパターンか。
コイツは決まって一人称視点で誰の目線なのかよー分からんのが特徴っちゃ特徴だな。
コレも良いとこで突然プチッと終わっちまうんだよな。
じゃあ今の状況もおんなじ様にプチッと切れて終わりになるんかね?
これがマップの外側ってパターンなら十分にあり得るけど、そうじゃなかったら?
例えば……例えば何だ?
何も無くて真っ白……このシチュエーション、ホントに今までに無かったか?
* ◇ ◇ ◇
はてな……?
まあお約束のパターンとしてはあるよな。
トラックにひかれたと思ったら真っ白な部屋に立ってたとか。
でもそのパターンだったら目の前にカミサマがいる筈だよな?
じゃあカミサマはどこよ……っているはずのねーもんを探したってしょーがねーわなー。
『あ、あのー』
へいへい、誰が見てもアホらしーですよねー。
『すみませーん』
へ?
『しゅみましぇーん(泣)』
誰?
『誰って言われましてもおー(泣)』
えーと……いつからそこにいたワケ?
『分かりましぇーん(泣)』
で、誰?
『わ、ワカリマしぇーん(泣)』
何なん? コイツ。
『しゅ、しゅみましぇーん(泣)』
まあ良いや、ヒマを持て余してたとこだしちょーど良かったぜ。
『あ、あのー……あなたは神様なのですか?』
はい? 何言ってんだコイツ……ってまたそのパターンかい!
『ま、また?』
あー、こっちの話だから気にせんでえーよ。
『は、はあ』
取り敢えずコッチ側に来てもらって良い?
角度的に見えねーんだよね。
『……コッチ側、というのは?』
コッチってホラ、俺の目の前にだな……
『それならさっきからずっと目の前にいますけど?』
えっマジで!?
『あ、あの……意外とノリが良いんですね!?』
意外って何が意外?
何の第一印象? まさかとは思うが……
『だって、おすましして座ってる上品なお姫様って感じじゃないですか。
さっきから目も口も閉じたまんまですけど、どうやって話してるんですか?』
だー、やっぱりかー!
それ俺じゃねーから!
『え? じゃあどこに……っていうか今まで誰と話してたの?』
今さらかーい!
そんなんこっちが聞きてーわ!
つーかアンタはどっからどーやって来たんだよ。
『フツーはソチラが説明してくれるものなのでは?』
ソチラってドチラだよ!
『えーと……運営?』
だとよ! 運営仕事しろ!
『エッホントに!?』
ホントなワケあるかアホンダラめ!
『酷い! てゆーか運営じゃなかったら何なんですか』
だからさっきからこっちか聞きてーよって言ってんだろーがよォ!
ったく……コレじゃあラチがあかねーぜ!
いーか、俺は気が付いたらここにいたんだよ!
あとオメーの目の前に何があんのか知らねーけどな、俺の姿は何と人間のナマ首なんだぜぃ!
『えぇ!? お、オバケぇ!?』
どーだ、驚いただろォ、ぬははぬははのはァ!
……じゃなくてぇ!
アンタ直前まで自分がどこで何やってたか覚えてる?
『えぇ……答えないと呪い殺されちゃうのぉ!? もう死んでるけど!』
そこ詳しく!
『えーと……トラックにひかれて気が付いたらここにいましたっ!』
ズコー!!!
『な、何でェ!?』
あまりにもテンプレじゃねーか!
何でやねん! 運営仕事しろ!
『エッやっぱり運営が暗躍して!?』
言葉のアヤだっつーの!
『えぇ……じゃ、じゃあ神様は!?』
知るか!
『ええぇ……がっくし……』
ガックシって口に出して言う奴初めて見たわ!
あ。
『な、何ですか!?』
羽根飾り!
『は、はい、手に持ってます。目の前のお姫様? が』
よっしゃやったぜ!
『そ、それが何かのカギになると!?』
……あ。
今それあっても使いみちねーわ……
『ズコー!!!』
* ◇ ◇ ◇
落ち込んでるところ悪いんだけど、まわりの景色は見えてるか?
『景色? 神殿みたいなところにいるけど……ここって神界とかじゃないんですか?』
ほうほう……トラックからの神殿送り、と……
『どう考えても神様転生ですよね!』
知らんがな。
それよか神殿みたいなとこってことはアレだな。
『むむ!? アレとは!』
グイグイ来るなァオイ。
『そりゃアナタ様がワタクシにとってただひとつのよりどころでありますればぁ』
何じゃそりゃ訳分からん!
てか今いる場所がそーゆーことになってんのなら少なくとも上下左右今真っ白な謎空間じゃなさそーだな?
『真っ白? 逆に真っ暗ですけど?』
真っ暗? 神殿ぽいってことは上下左右真っ暗って訳じゃねーんだよな?
『はい? まあ地面ていうか床とお姫様と空? はありますけど』
床があるってことは室内?
つーことは空が真っ暗って訳じゃねーのか。
『いえ、空中にポツンと浮いてる浮島? みたいな感じの場所ですねー。
マジ天界っぽいっすよー』
浮島? 天界? じゃあ下界なんてあんの?
『いやーさすがに端っこに行くのはさすがにコワいですよー。
何か赤黒いモヤモヤがうごめいてますしー』
えー。
……あのよ、そこってもしかして地獄なんじゃね?
『やだなー、冗談もホドホドにしてくださいよー。
あの世なだけにーあのよーだなんてねー』
イヤそこでボケんでもえーから!
『エンマ大王様がいないので地獄じゃないですねー、お姫様? はいますけど』
オラオラ、悪リ子はいねがー。
『ソレなまはげですから』
お? なまはげ知ってるってことはまさかのジャパニーズか?
『今さら何を言ってるんですかぁ? だってさっきからワタシたち日本語でしゃべってるじゃないですかー』
あ、それ言っちゃう?
『はっ!? まさかの異世界不思議言語変換!?』
そうじゃね?
知らんけど。
『じゃあなまはげは!?』
そこ大事? てかまさかの秋田県民会館!?
『はい?』
おおっと、若者にゃ難易度が高過ぎるネタだったぜい!
『えーと……言うほど若くもないんですが』
とはいえアンタは五体満足でそこにいるんだろ?
それならその羽根飾りも何かに使えるかもしれねーな!
『いえその……今気付いたんですけどワタシ、ヒトダマみたいな姿になっちゃってるんですよねー。
さすがあの世ですねー』
ズコー!!!
マジでェ!?
やっぱソレどー考えても地獄だろ、絵ヅラ的によォ。
ゆーて俺なんぞいまだに真っ白な謎空間にいる訳なんだがな!
『でもワタシたちって何で会話が成立してるんですかね?
お互いに姿は見えないしいる場所も違うっぽいのに』
それな!
やっぱそこのお姫様が絡んでるん——
【ビビービビービビービビー】
へ?
『へ? 何?』
この音……リセットとかいうやつか?
今までにも何度かあったけど正体不明なんだよな。
『リセットって何ですか?』
いや、文字通り何も無くなることなんだけどさー。
『えぇ!? ワタシはどーなるんですか!?』
そんなん知るか! パーンてなるんじゃね?
『パーンて何ですかパーンて!』
パーンはパーンだよ。
『うわあああああいやだあああああじにだぐな゛い゛』
イヤ死んどるんやろ、神様転生なんじゃねーの?
『うわああああああああああん!』
「やかましーわ!」
『へ?』
「アレ?」
『あ、神様ぁ?』
何じゃそりゃ!?
* ◇ ◇ ◇
『かっかかかっかっ神様ァー!』
「なっなななっなっ何じゃそりゃあ!」
『何ですかその反応! 違和感MAX!』
「んなこと言われても困りまんがな!」
イヤ、マジ困るんだけど!
困るとか言える状況じゃねーのは分かってんだけど何でやねんコレ!
ナマ首卒業出来たのは嬉しーんだけどよ、また何でこのカッコなんだよ!
目の前に何かヒトダマみてーなのがいるし、流れ的に考えたらコレに収まんのってコイツなんじゃねーのか?
もしかして俺ってオジャマ虫だったんじゃね?
こーなったのは俺のせいじゃねーけどな!
『でもやっぱりアナタ様が神様だったんですよね!』
「イヤ違うから!」
『いーえ、違いません!』
「本人が言ってんだからえー加減認めろや!」
ダメだこれ話通じねー奴だ。
何つーかアノ町の住人みてーだな。
妙に現代日本文明に毒されてるっぽいのが特にな。
『もう何年何年もここでずーっと待ってたんですからね!』
「へ? 何年も?」
『そうですよ? 雨の日も風の日も……まあどっちも無かったんですけど!』
「何年もって……どん位だ?」
『さあ? 何しろ手も足も無くて正の字も書けないので』
「その割にゃあぽっと出みてーな反応だったな?」
『パっと現れたのは神様の方ですから!』
「パッと現れた?」
『はい、それまでホントに何も無くて地獄みたいな……あ』
「やっぱ地獄だと思ってたんじゃんか!」
『えー、そんな中現れたのがアナタ様だったんですよ、神様ぁ!』
「だから神サマじゃねーっつーの。何回言ったら分かんねん」
『そんなぁー、せっかくのカミサマ転生がぁー』
「だからあんたの思い込みだっつーの。何年も待ってたとかゆーハナシもウソっぱちだろ」
『やだなあ、言葉のアヤですよ』
「どんなアヤだよ!」
コイツ、ホントはタチの悪い悪霊か何かなんじゃねーのか?
「じゃあ聞くけど現世で何か功徳でも積んだ覚えはあんのか?」
『……あの、クドクって何ですか?』
「そっからかい!」
いや、神様転生だったら何でアンタが知らねーのってツッコミ入れるだろ常考。
『あの、そんなことよりも』
「何でぇコンチクショウ」
つーかさっきからずーっと気になってんだけど、せっかくナマ首生活からオサラバ出来たっつーのに小指一本動かせねーんだよな。
目も閉じたまんまだし口も動いてねーのに見えるししゃべれるっていうこの謎現象!
『転生特典はまだですか?』
「ねーよ! その前に転生なんてねーから!」
『ええっ!?』
メッチャツッコミ入れてーのに入れられねえ!
コレはコレでストレスフルだな!
それともいつかのときみてーにホンキで気張れば動けんのかね。
うりゃ、ふんぬらばー!
『……?』
いや待てよ。
転生云々て話、どっかで聞いたな?
何の時だっけ……?
まあいくら何でもねーよな、そんなラノベみてーな話。
『ねえ、ここって地獄じゃないですよね?』
「知るかっつってんだろ」
『じゃあいつここから出してくれるんですか?』
「悪いけどそれも知らんわ」
『だっていつもなら……』
「いつも?」
『あ』
タチの悪い悪霊説、意外と有力だったり?
* ◇ ◇ ◇
「“あ”って何だよ、“あ”って。説明しろよ、今“いつもなら”って言っただろ」
『はい?』
「しらばっくれんなよ、バッチリ聞こえてたからな」
『えぇと……いつも? いつもだと何かノリの軽い感じの神様がですね……何だっけ?』
「何だよ、覚えてねーってか」
『そ、そりゃー何十年に1回のイベントだし』
「へ?」
『お? 今度は立場が逆になりましたかねぇ、神様?』
「だから何べん言わせんだ、俺はそのいつもの神様じゃねーぞ」
『まあ確かにそうなんですけど、じゃあいつもの神様はどうしちゃったんですかね?』
「知らんわ、そんなん」
『ですよねー。という訳で状況的にアナタが神様としか思えないんですよねー』
「状況? それこそ知らんがな」
『言いましたよね、アナタ様がパッと現れたって』
「でも微動だにしてねーだろ、俺がその神様だって」
『はっ!? まさかタチの悪い悪霊が取り憑いたとか!?』
「ぐぬぬ……否定出来ねえ」
『悪霊なんだったら早いとこ退散していただけませんかねえ』
「出来るんだったらとっくにしとるわい」
『はあ、そうなんですか』
この像、思いっ切り踏ん張っても動かねーし、動いたところでこんな何もねー場所じゃ何も出来ねーけど。
そもそもの話、人形とかいう奴が何なのかも分かっとらんからなあ。
あの受付がどっからどーやって人形を動かしてたのか分からんけど、この何もねー空間も本来俺がいるどっかと繋がってて遠隔操作みてーな感じで感覚も繋がってたりするんかね。
つーか繋がっててほしーわー。
取り敢えずここは話し相手がこのヒトダマしかいねーしコイツとお話するしかねーか。
「そーゆーアンタはいつもどーやってこっから現世? に帰ってるんだよ」
『いつもですか? えーと……神様と何かしゃべってまた今度ー、みたいな感じになったと思ったら街の中に立ってた、的な?』
「サッパリ分からんわ!」
『いつもは流れるよーな流れ作業的なアレなんですよ?
分かる訳ないじゃないですか』
「事情は分かったがえーんかソレで」
『だって後がつかえたら大変じゃないですか、あの世的に!』
「ナルホド、じゃあ今は大変になってる真っ最中って訳だな」
『そうなんですよ! 多分ですけどあとがつかえてますよ! 大行列です!』
「そりゃ困ったな、多分な!」
つーかどこをどー見たら滞ってるよーに見えんねん!
『ほら、だから早く私の前世の行いを見て煮るなり焼くなりしてくださいよ』
「それエンマ大王の仕事だから!」
『お願ぇしますでゲスよスリスリ』
「ンなこと言われてもな……」
コイツどっちかっつーとコッチ側だよな。変な信仰心とか持ってねーし。
いやあの人らが変だっつってる訳じゃねーんだが文化の違いってヤツ?
とにかくそのテのギャップをあんま感じねーんだよな。
だから何だって話なんだけどアッチの連中って俺が何か言うとすぐ信じちまうっつーかそんなとこがあったからな。
ひるがえってこのヒトダマに叶えてつかわす、とか言ってもありがたみなんて1ミリたりとも感じねーんだろーなあ。
まあこーなったキッカケだしアレでもやってみっか。
「じゃあさ、ちっとばかし俺の頭の上に乗ってみてもらって良いか? 動けるんならだけど」
『へ? 頭? 良いですけど。
アレですか? 小動物的な癒しってゆーかそんなのをお求めとか』
おお、ひょろろぉーって感じでヒトダマ感あるなー。
『ハイ、来ましたよ』
「スイッチ」
「はい?」
『アレ? あーナルホド』
「え?」
『今からアンタが神サマだぜ、おめでとさん』
「えぇ!?」
俺と違ってしっかり目ぇ開けて動いてんのな。
やっぱ本来の持ち主ってコイツなんだろーな。
* ◇ ◇ ◇
「わっわわわっわっワタシはどうすれば良いでしょうか!?」
『どうすればって神サマになったんだから好きにすりゃえーだろ』
「えぇ!? もっもももっもっモノマネは!?」
『せんわボゲェ! つーかもうボゲんでえーわ!』
「ひぇぇ……」
この見た目、もしかしなくても定食屋(?)が言ってた女神様の像ってヤツだよな。
手元に羽根飾りがあるしまず間違いねーな。
ぶっちゃけ、残念系のお姫サマって感じだけどな!
『動けんだから何とでもなんだろ。こちとらナマ首からのヒトダマ? なんだぜぃ?』
「ヒトダマ……?」
『へ?
イヤ、ツッコミはすんなとは言ってねーけどそこ?』
「いえ、そうではなくてですね」
『じゃあ何やねん』
「アナタの今の姿が見えないんですが……」
『へ? じゃあ俺は今どこにいるんだ?』
「さあ? もとから見えてませんでしたからねー」
『あー、俺の方が一方的に見えてた感じだったんよなー、そーいえば。まあそうと分かりゃあ……どーすりゃえーんや』
「さあ?」
『んなコトゆーなよ、神サマだろ?』
「神サマじゃありませんよー」
『とりまそっから出れんだろ、まずは行動じゃね?』
「それじゃあ……」
『行ったれ行ったれー(適当)』
俺って今どこから話しかけてるんだ?
ヒトダマに体当たりしてもらったんだからここにいる筈なんだがなあ……?
ゴン!
「ぐげ」
『カエルか!』
「ガラスがあるならあるって先に言って下さいよぉ」
『さっきまで客観的に見てたヤツがゆーセリフじゃねーな!』
「てゆーかこれどーやって開けるんですか? 前後左右、上も全部覆われてるんですけど!」
『下にはねーのか。じゃあ穴を掘りゃ楽勝だな』
「他人ごとだと思って好き勝手言ってますね!」
『俺は至ってマジメなんだがな』
「誰が掘ると思っとるんや!」
『キャラが崩壊してんぞ? えーのか?』
「知らんわ!」
『自分のことだろーに!』
「と思ったら開閉レバーっぽいのがありました」
『急に戻んなや……じゃなくてそいつを反対方向に倒したらいーのか』
「多分そうなんですがひとつ問題が……」
『何だ?』
「外にあって手が届きません」
『いきなり詰んだ!』
「そこはアナタの超天然力でどうにかなりませんかねぇ」
『勝手に新しいチカラ創造してんじゃねーよ!』
うーむ……てゆーかヒトダマだったら通り抜けられんのか……
だったら……
「思いっ切りぶつかったら幽体離脱して出られるかもですね!」
『先に言われたあ!?』
「それ何も考えてない人が言うテンプレですね!」
『ちげーわ!』
つーか危機感ゼロかよ!
* ◇ ◇ ◇
「という訳で、せーの……」
『早速やるんかい!』
ゴン!
「ぐげ」
『カエルか!』
「また同じ展開? まさか時間が戻って!? うっ頭が……」
『戻ってねーから。あと頭がいてーのは思いっきしぶつけたからだろ』
「やっぱり勢いが足りないんですかねぇ。それか角度とかタイミング?」
『そうそう、もっとアゴを引いてワキを締めてだな……じゃなくてえ!』
「えっ? 早速試そうと思ってたのに」
『何でそんなに素直なんだよ』
「だって神様の言うことは聞いとかないといけないですよね?」
『またそれかい! えー加減しつけーわ!』
「まあそう言わず」
『そう言わずって何を期待してんだよ』
「だってさっきもホラ、指示された通りに体当たりしたらスポッて入ったじゃないですか」
あ、そーゆー感覚なのか。
俺的には入れ替わったカンジなんだけどなー。
『んなこと言っても俺って今ヒトダマですらねーんだからな?
同じことが出来たってさっきと同じだろ』
「そこはほら、超目ヂカラパワーでそこのレバーをクイッと」
『だから勝手に新しいチカラ創造すんなって』
「てー、だって」
『だってもヘチマもねーよ。やらない言い訳よりやる工夫だぜ』
「ブラックですね!」
『ドコがや! こんなやりとりばっかしてっからいつまでも出れねーんだろ。
タイムマネジメントが出来ねーヤツにありがちなパターンだぞ』
「ブラックだあー!」
『何かねーのか?
ホラ、羽根飾りとか持ってただろ。どこ行った?
それに武器みてーなのは?』
「あ、羽根飾り! 言われてみれば!
……アレ? 無い?」
そーなんだよ。ねーんだよ、手に持ってた羽根飾りが。
ワンチャン杖みてーなの持ってたりしねーんかね。
『その辺に落ちてねーか?』
「無いです! 無くしちゃったー!」
『そんなバナナ! 一歩も動いてねーだろ』
「えー、さっきまで手に持ってたと思ったのにー!」
『いっぺん立ち上がっただろ。ケツの下に敷いてたりしねーか?』
ゴン!
「あだっ! ダメです! 狭すぎて頭が下げれないです!」
『イヤ分かった、何もねーわ』
マジかー。
それにしてもいつから無くなってたんだべ?
初めは手に持ってたから立ち上がったときなんだろーなってのは分かるけど。
しかしコレ、ドコ目線なんだろーな。
マジで自分が今どーなってんのか分からんぞ。
「武器……武器は無いか……! これかッ!」
どっかで聞いたセリフだな!
ってホントに杖があった?
「やった!
どっからどーやって出したか分からんけど武器っぽいの出た!
メッチャ軽いけど!」
ん?
あー、ソレってあのまじかるステッキじゃん!
今さら何で塩ビの棒切れ?
「よっしゃあコレで殴るッ!」
『おい待て!』
「……折れちった」
コレ何なん? 一体。
『だから待てって言っただろーに』
「だってぇー」
『体当りしてダメなんだからそんなんで殴ったってダメに決まってんだろ』
「えー、じゃあ何でこんなモノがぁ?」
『知るか! 杖なんだからまじかる何ちゃらとか唱えながらニ、三べん振り回してみたら良かったんじゃね?』
「えぇ……そんなこと先に言ってくださいよぉー」
『だから待てって言っただろーに』
「だってぇー」
『だってもヘチマもねーって言っただろ! 言い訳すんな!』
「どうしようどうしよう」
『分かったから落ち着いてもーいっぺんやってみよーな?』
「はーい……」
さっきから思ってたけどメッチャ疲れるヤツだなコイツ。
* ◇ ◇ ◇
「それで何をするんでしたっけ?」
『まず杖を出せよ杖を』
「だって折れちゃってますよ」
『だってもヘチマもねぇって何べん言わせんだ、もーいっぺん出すんだよ』
コイツマジで言い訳ばっかだな!
「えーと……」
『ホラ、あのセリフだって』
「えーとえーと」
『だーっ、もーまどろっこしーなオイ!
“武器……武器は無いか……! これかッ!”だろ!』
「あ、出た」
『外側に出してどーすんだよ!』
「いや出したのあなたですから」
『自慢げにゆーなよ。いーからオメーもやってみろって』
「はいはい……“武器……武器は無いか……! これかッ!”
あー、出ましたね。で、何なんです? これ」
『何ってまじかるすてっきとしか言い様が無いが』
そーなんだよなー。
アレって結局VR……じゃねーか。ドラゴンさんが否定しただけだからホントにそーなのか分からんけど。
双眼鏡じゃねーけど何かのゴーグルを付けたときだけ見えてたってことは……?
うむ。分からん!
「“武器……武器は無いか……! これかッ!”……あ、また出ましたよ。
これ物理法則はどうなってるんですかね?」
『さあ? VRゲームの中だったりしてな』
「あー、それはありそうですねぇ。で、結局この棒きれで何をするんです?」
いるんだよなー、こーゆー奴。
こっちの旗色が悪くなった途端に態度デカくしやがってからに。
とはいえ前にコレを見たときも特に何もしねーでどーぞどーぞ的なアレだったからなー。
あ、そーいやコレのこと“ホントは儀仗杖だ”とか言ってたよな。
つーことは儀式用のアイテムであって武器じゃねーのか。
ドラゴンさんはオモチャじゃねーぞホンモノだぞとも言ってたよな。
ここにドラゴンさんがいたら何が見えてたんだろーな?
「えーと……まだいますか?」
あ、しばらく黙って考えごとしてたからいなくなったって思われた?
ヨシ、からかってやっか。
何か態度でけーしムカついてたんだよな!
「ちょ、ちょっと……マジでいない?」
慌ててるぜ、にひひ。
………
…
……ヒマだ!
くっそー、何か半端に黙ってると今度は話しづれーぜ。
ん? 何か怪しい踊りをおっ始めたぞ?
あ、またアタマぶつけやがった。
おもしれーからもーちっと見ててやっか。
………
…
「しくしく……」
うーむ。
何か見てていたたまれなくなって来たぜ。
客観的に見てかなりクズいよなあ、コレ。
まあ誰も見てねーから構わんけど。
いっちょここらで声かけてやっか。
『……』
アレ?
『……』
声が出ねえ?
腹(?)に力を入れてもーいっぺん……せーの。
『……』
どーやら声が出ねーって話じゃねーみてーだな。
「しくしく……」
* ◇ ◇ ◇
「うぅ……メソメソ」
しくしくメソメソうるせーなあ。
クッソぉ、そろそろブン殴りたくなって来たぞ。
アレ?
てゆーかそもそもどっからどーやって眺めてんだコレ。
これじゃ俺が神サマみてーじゃんかよー。
「神様仏様コックリ様ぁ哀れな子ヒツジをお救いくださいませぇ」
ンなコト言われてもなー。
ヨシ、叶えてつかわす!
具体的には……んー、どーすっかなー。
そーだ、もともと住んでた場所に送還してしんぜよう!
我は神サマなのじゃー。
なんちてなんちてー。
「ん?」
……ん?
「あ、あれ? ここどこ……って高い怖い何コレ!?」
アレ?
ここって……親父の会社の中庭……?
何でだ?
オイ、取り敢えずそっから降りてみろ……ってどーすりゃ伝わるんだコレ?
誰か来ねーかな?
イヤさっきまで何も無かったし状況が分からんぞ。
何でも良いから
「これ3m以上あるかな……降りれないよね?
ハシゴか何か無いかなあ」
ハシゴか。
……後ろの木にしがみついたら降りれねーか?
もーちっと……こう……
ガサガサ……
「ひっ!?」
な、何だ!? ……ってマジか。
木が自分でグニャっと動いとる……
「こ、ここから降りてってこと……?」
わっさわっさ……
「ひっ!?」
この反応は肯定ってことか?
つーか意思疎通できてる感じ?
モンスターツリーかよ。
「し、失礼しまぁす……」
おっと、意を決して降りることにしたか。
「わわっ……ああ、ありがとうございまぁす」
おお、スッと優しく降ろしたぞ。
何だかんだカッコはお姫様っぽいカンジだから気をつかってくれたんかね。
「えーと……木さん? 助けてくださりありがとうございます?」
そのまんまや! 何かクネクネしとるけどコレどーゆー反応だ?
てゆーか人間はおらんのか、人間は。
「あの、ここからどこに行ったら良いんでしょうか?」
何か違和感無く木に話しかけとる。馴染むの早えーな。
しかしここって見た目はそーだけどホントに親父の会社の中庭ってコトはねーよな?
いや、ここに至るまでに何回か遭遇してるけど全部ホンモノじゃなかったもんなー。
こっから一歩出たらどーなってることやら。
掘っ立て小屋、マシン室、連絡通路、それに詰所か。
あとは正門前の広場っつーか駐車場……そっから出たら町ん中な訳だけど、もしその通りの造りなら取り敢えず向かうべきは詰所方面かね。
なら連絡通路に出て左だな。
さわさわ……
「え? こっちに行けって? でその後はこっち?」
おろ? 通路方面に向かってさわさわし始めたぞ。
何か俺が伝えようとすると代弁してくれるカンジ?
マジで便利だな!
「ありがとうございます、行ってみますね」
「えーと……“武器……武器は無いか……! これかッ!”
ヨシ出た。……コレ使えるんかなー。ま、良いか。
じゃあ行って来まーす」
さわさわー……
……何つーかカッコだけ見ると魔法少女みてーだな。
杖は塩ビ製だけどな。
* ◇ ◇ ◇
………
…
……ヒマだ!
当たりめーか。つーか何回目だコレ。
えー加減マトモな状況に戻りてーぜ。
ぜーたくは言わんからフツーに還暦のおっさんに戻してくれりゃえーだけなんだがなあ。
欲を言やぁもとの町でもと通り暮らしてートコなんだがそもそも何でこんなコトになったんだか。
ゆーてここまでに会った奴らにも普段の生活があって帰る家なんかもあるんだよなー。
全くもってフシギ極まりねーよなー。
さわさわー……
おー、そういえばまだ話し相手(?)がいたぜ。
スマンスマン。
さわさわー。
イヤイヤそんなことねーって。この場合わりーのは俺だからよー。
さわさわー。
ん? 何だって?
さわさわー。
あん? 向こうの景色はどうだって?
向こうってドコだよ。
さわさわー。
へ? 外側? 何だそりゃ? 見えねーよ。
どーやって見にいけっちゅーねん。
さわさわー。
なぬ? さっきまで見えてただろって?
もしかして真っ暗か真っ白のどっちかの話してる?
さわさわー。
どっちかなんて見たことないから分からんて?
まあそーだよなー。
てか俺今どこにいるか分かんねーんだけど。
さわさわー。
はい? 答えはアナタの心の中にありますだあ?
何だよソレ怪しい宗教かよ怖えって!
さわさわー。
何をいまさら? どゆこと?
さわさわー。
へ? 俺が精霊神サマだって? 神様が宗教コワイだなんておかしい?
何じゃそりゃ?
つーかまた新しい概念が誕生したのかよ……
もっとワケが分からんわ。
さわさわー。
へ? 考えたのは俺だ?
何でぇ、またそのパターンかよ。
さわさわー。
またって何だって?
何だって言われてもなー。
何でみんなして俺を神サマ呼ばわりするんだかなー。
ちなみに精霊って要素はどっから湧いて出たんだ?
さわさわー。
みんな精霊だから精霊神だ?
みんなってどこにいるんだ?
さわさわー。
へ? この世のあらゆる場所?
ここもってコトか? 誰もいねーけど。
さわさわー。
あらゆる草木には精霊が宿ってる?
……えーと、ちなみに今さっき出てったお姫様は何だか分かるか?
さわさわー。
過去の遺構? セイコン?
過去の遺構ってまさか人類滅亡後の地球とかSFみてーなコト言い出すんじゃなかろーな。
さわさわー。
へ? あらかた合ってる? マジで!?
やっぱアレって人工物なのか!?
さわさわー。
大昔の人間が造った? もひとつマジで!?
それにこの建物だって人工物なんだろ?
ちゃんと手入れもされてるみてーだしどー見たって誰かいんじゃんかよ。
あのお姫様も出てった先で誰かに会ったり話したりしてんだろ?
さわさわー。
え? 分からんて? だって精霊的なヤツはいるんだろ?
ソイツらと会えば……
さわさわー。
……え? 会えないだろって?
さわさわー。
精霊だから? だって俺とコミュニケーション出来てんじゃんか。
精霊ってのは人間サマと何か違うんか?
さわさわー。
俺が話せんのは精霊神だからだって?
イヤだから俺にはそれが分からんのよ。
さわさわー。
あ? 高位の存在だから見えねーのは仕方ねーって?
何言ってんだコイツ?
さわさわー。
……何か延々と独りゴト言ってた気分だぜ。
結局話は分からんしここから動けんし何も解決してねーし最悪だわー。
……お、トボトボと帰って来たか。
塩ビ杖がねーな。何かあったか?
んで代わりに何か手に持ってるな?
さわさわー……
様子がおかしい? んなコト分かっとるわ。
「何なんです? ここ」
やさぐれとるなー。
ん? ……人間のナマ首? コイツがやったのか?
「こんなの初めてなんですけど」
初めてって……あー、今度はどーたら言ってたからひょっとしてループ系主人公的なアレなのか?
いや、マジで……って今さらビックリするモンでもねーか。
「聞いてますかー」
誰に話しかけてんの? コレ。
* ◇ ◇ ◇
「聞いてんのかっつってんだよオラァ!」
ドカッ!
ゆっさゆっさ……
オイオイ、またかよ!
コイツえー加減キャラ変し過ぎなんじゃね?
一体どーしたっつーんだ?
「何なんだよコレはよォ!」
ドカッ!
ガサッ……
今のはイテッ! って感じか?
怒ってんのは分かるけどそのナマ首をどーしたのかまず説明しろっつーの。
てかホンモノかよ!
血が乾いてるし若干ひからびてるからそれなりに時間は経ってる……か?
じゃあまたいつもみてーにどこかに飛ばされたってことなのか?
さっきまでの何もねー場所は一体何だったんだ?
「何で向こうの大部屋がゾンビ祭りになってんだよ!」
さわわー……
「そんなに引くなよ!」
そんなモンをズイと差し出されても困るってか。
まーそーだよな!
「早く説明しろよ! てか出来ねーか、あははははは」
くねくね……
コイツ、想定外のアクシデントにあってテンションがおかしくなっとるな。
そして木の反応も変だぜ! 釣られたんか!
しかし一個分かったぜ!
ビミョーな気分のときは句点が付かねーんだな、ナルホドな!
ナルホドな……何でンなコト分かったんだろ?
まあ良いや。
しかしどーすんだコレ。
三人とも直接話せねーし、それに多分俺がまだここにいんのもこのお姫様にゃ伝わっとらんだろーしな。
「あはははははははってぇー、こーゆーときは神の教えにならうべしィ!」
神の教え?
俺何か言ったっけか?
さわわー……
何か木の方をメッチャ見てるけど……って逆方向に走り出した?
スタンディングスタートのポーズを取ったぞ?
メッチャ運動神経悪そーな構えだぜ!
さ、さわわ……
今のは分かったぞ。「ま、まさか……」 だな!
まあここまで来たら次にやることはひとつしかねーよな!
あー、やっぱり木に向かって猛ダッシュし始めたぜ。
あーっ、危ねぇ! 逃げろー。なんちてなんちて。
「神の教えの幽体離脱ゥ!」
んなコト教えてねーよ!
「どりゃー、スイッチぃー!」
ソコでソレ言っちゃうんか!
ゴスッ。
「あへ」
わっさわっさ……
あー、ピヨっとるなーアレ。
木の方もか? 頭打ったか目が回ったか?
どっちもどこに付いてんのか分かんねーけど!
くねくね? くねくね……
ん? 何か様子が変だぞ? 打ちどころが悪かったんか?
まさかホントに入れ替わっちまったんか?
イヤ、木になってどーすんねんてのはあるけど!
お? 立ち上がったぞ? 大丈夫なんだろーな?
「……」
ゴクリ。
「さわさわー」
……ズコー!!!
『な゛な゛ん゛でずかァゴレ゛ェ』
へ?
「さわわ……」
えーと、今木の中の人って誰なんだべか?
さわさわー。
* ◇ ◇ ◇
『あ゛、あ゛、あ゛ーじゃべり゛に゛ぐ、い゛ー』
いやソコじゃねーだろ、驚けよ自分の境遇によ!
念願のナマ首デビューなんだぞオイ。
もっと喜べよ。
さわさわー。
えーと……コレどちら様?
「さわわ……」
いやせっかくお口があんのにさわわーしか言わんのもったいなくね?
てかお姫様の中の人がさっきまで木だった人(?)か?
じゃあ今木のカッコでクネクネしてんのは誰だ?
さわさわー。
へ?
アカン。何言ってんのか分からんよーになった。
てことは……
「さわわー……」
コッチが木っつーか草木の精霊とか言ってたヤツなんだろーけど、どっちも何言ってんのか分からんな。
ガワが変わったからか、ガワなだけに!
なんちてなんちてー。
……くっ、俺の渾身の一発ギャグに全員が無反応だと?
じゃなくてぇ!
「さわわぁ……」
むむ……この間の良さは通じてると見た!
言葉が理解出来てんのにしゃべれねーってどーゆーこった?
「さわさわ」
ナルホド! いや分かんねーけど!
「さわー!」
あ、今のは分かったぞ。“ズコー!”だな!
『な゛、な゛、な゛……』
そこ、マトモにしゃべれねーなら黙っとけ!
『な゛っ!?』
さわわ!?
「さわわ……」
しかしえー加減カオスだなー。
しかし唯一動ける奴がコミュれそーで助かったわー。
「さわさわー」
んー、取り敢えずそこに転がってるナマ首ゾンビ(元お姫様)の言うことを信じるとすれば向こうに大部屋があってゾンビ祭りになってると。
うむ、意味が分からん!
そもそも今の状況、突然降って湧いたもんじゃねーよな?
やっぱアレか?
アレがきっかけなのか?
「さわさわー」
イヤさわさわーじゃなくてさ、ちっとは身ぶりくらいやってみたら良いんじゃね?
「さわわ?」
だってよー、木の中の人(?)だったときはメッチャ表現力豊かだったじゃんかよー。
それに絵面的にちっとばかしなー。
直立不動の無表情で“さわわー”しか言わねーとかどこの宇宙人だよって話だ。
「さ、さ、さ……」
な、何だ?
急にゾンビ的な動きをし出したぞ?
あ、オイオイそりゃねーぞ!
『あ゛!』
「あ゛ーっ!?」
あーあ、首が180度後ろ向いちまったぜー。
やっぱ人形なんだなー、コレ。
とすると中の人が常識にとらわれなきゃ結構ムチャな動きとか出来んのか。
「ざわわー!」
お、何か知らんがヤル気出たカンジ?
……つーかヤな予感しかねえ!
ってトランスフォームし始めたぞオイ!
「ざわぁ!!」
『え゛ーっま゛じでェ゛!?』
えーと……何とも言えねースタイルだな……
「ざわざわ!」
首が180度後ろ向いたまんま四つんばいになってクネクネし始めたぞ……
クネクネしろなんてひとことも言ってねーんだがなあ。
「ざわ!? ざわーっ!」
へ?
何かカサカサと音がしそーな四足歩法《ほほう》で移動し始めたぞ!
しかも速ぇ!
うお、フツーに壁を登り始めた!?
『あ゛ー、わ゛だじの゛がら゛た゛ぁぁぁ゛』
うるせぇ、自分が悪ィんだろーが……
って自分?
そーいやさっき、コイツ自分でアレやってたよな……
アレか? アレが出来るんか?
『理゛不゛尽゛だぁぁぁぁ…』
あーあ、どっか行っちまったぜ。
* ◇ ◇ ◇
しかし変だな。
あのワードって効力を発揮すると場面転換するモンなんだと思ってたけど違うんかね。
そーいや最初にコトが起きたもマシン室だったよな。
それが今はゾンビ祭りかー。
ん? てことはあそこから持ち帰ったアレやソレに付いてたのはやっぱホンモノの血だったってことか?
……まあ今さらアッチとコッチがホントに同じ場所だったなんてあるわきゃねーか。
それよかこのクネクネする木の方が変だしな!
……反応なしか。
『じぐじぐ……』
アンタは反応せんでえーから……ってメソメソしとるだけか。
しかしこのアリサマはそのゾンビとやらにも中の人がいる可能性を示唆しておるな、多分だけど!
ぶつかる度に中身が入れ替わるとかメッチャありそーだもんな、フツーはねーけど!
そのキッカケがあのワードってんなら
しかし俺が今どこにいてどっからこのアリサマを眺めてんのかくれーは分からんもんかねぇ。
少なくとも今ここがどーなってんのかくれーは見ときてーしなぁ。
別に見てどーなるっつー訳でもねーんだけど。
『だれ゛がだずげでえ゛』
いちいちうるせーなあ。
泣き叫んだってどーせ誰も来ねーだろ。
「さわわーっ!」
『ぬ゛ぉ゛ーぃ゛!?』
ぬお!? ビックリしたぞオイ!
そして何だよそのワケワカな叫び声はよ!
しかしこのカサカサっぷり、中の人は木じゃなくてGのつく黒い奴だったりしそーだな。
そのうちカサカサーとか喋り始めたりして!
「カサカ……さわわー!」
あ、コイツ今俺に釣られそーになったぞ。
慌てて言い直そーとしてるし何か怪しくね?
『あ゛ーっ゛、ゾン゛ビづれ゛でぎでぼじい゛な゛ん゛でだれ゛も゛い゛っ゛でな゛い゛ん゛でずげどぉ゛ぉ゛ぉ゛』
って何ゾンビ軍団連れて来てんだコイツは!
そして「ん」に濁点てどーやっても発音出来ねーだろ!
てかみんなヨタヨタしてんのに良くすっ転ばねーな!
……じゃなくてぇ!
何なんだこのカオスはよォ!
『あ゛ばばばばばばば』
あーナマ首さん(仮名)がサッカーボールの如く転がされとるなー。
しかしこんだけぶつかってて今度は入れ替わりはゼロ件(当社比)かー。
ん?
今何か見たことある奴がいたよーな……
アレ? 今のアホ毛は見覚えあるぞ?
えー、コレガチのホラーじゃんか。
ホラーッスよーとか言いまくって自分がホラーになってたら世話ねーじゃねーかよー。
あ、あの集団はアレか? 俺ん家に大挙して侵入しようとしてきた奴ら……って先頭は八百屋のおかみさんかよ!
えー、マジでどーなってんだコレ。
まさかとは思うが息子家族もいたりすんのか?
嫁サンの方は前科があるからなー。
まさか孫までいたりしねーだろーな……
メッチャ怖くなって来たぞオイ!
『ズ、ズ、ズ……』
うおっと……まだ足蹴にされ続けとったんかアノ人……人でえーんか?
『ズイ゛ッ゛ヂィ゛……』
ん? 今アレをやろーとしてたんか?
でも何も起きねーよな。
滑舌の問題か?
あ、コレG……じゃなかったお姫様の方に言ってもらったら行けんじゃね?
それスイッチスイッチ!
「さわさわー?」
だーっ! 何で釣られねーんだよコンチクショーめぇ!
「さわわー」
何言ってんのか分かんねーよムカつくなーオイ!
チキショーさわわーさわわー!
「さわわーさわわー」
もひとつオマケにさわスイッチさわスイッチ!
「さわス……さわわー」
おっと、今惜しかったんじゃね?
あ、そーれ。
『スイッチ』
へ? 誰だ今の?
『ふう。誰だか分かりませんが助かりました』
誰だかって誰なんだよ。
そして……今どっからしゃべってた?
もしかして声だけ聞こえてるパターン?
何なんだよオ……って今度はヤツかよ!
アレは確か先生さんが妹とか言ってたヤツか?
あー、ゾンビ共はアレに追っかけられてコッチに来たんか?
もしかしてさっきお姫様(?)が入り口を開けたせいで一気に出て来たとかか?
……あ、入り口で引っ掛かっとる。
『あ、あれ? 私?』
な、何だってぇ!?
* ◇ ◇ ◇
……メッチャ目つきの怪しい女が入り口に引っかかってジタバタしとる……
つーかアレ下半身はどーなってんだろーな?
上半身は人間だけど良く分からんナニカっぽいんだってのは分かるんだよな。
入り口に引っかかってる時点で何つーかやべーやつなんだろーなってのは分かるけど。
「センセーイ、センセェーイ」
『はいぃ!? って何で返事してんのワタシぃ』
間違ぇねえ!
コレSAN値がガリガリ削られそーなヤツだ!
「オディーサーン」
はい?
「オディーサーン、センセーイ」
『えぇ……?』
な、何だあ?
「デナイデナイ」
『はい?』
「デル、デル」
『えぇと……』
うむ、全く意味が分からん!
「ハイル、ハヤク」
どっからどこに入るんだよ!
「コッチ、コッチ」
ジタバタしながらコッチとか言われても分かんねーっつーの!
それ以前にゾンビ軍団を何とかせーや!
『お姉ちゃん?』
へ?
『お姉ちゃんだよね?』
アレ?
「コッチコッチ」
『ねえ』
思ってたのと逆だった?
どーなってんだ?
中の人、まさかの別人説!?
だーっ、全く分からん!
元からサッパリ分からんかったけどな!
『ねえってば!』
そしてメッチャシリアスなシーンの筈なのに何かコミカルに感じちまうのはダミ声っつーかどら声のせいか。
何でかどこからしゃべってるのか分からん状態になってるけど声色はさっきのまんまなんだよな。
ゆっさゆっさ……
ん? あー、ゾンビが木に群がっとる……
何でかみんなで木登りし始めとるな……そんなに高いとこに行きてーのか……
木の中の人(?)は元に戻ってんのか?
「ハ、ハヤグゥ……」
『ねえ、聞こえてないの? ねえ!』
ゆっさゆっさ……
ゾンビがたかった状態で右に左にゆっさゆっさしとる……
コレ良く折れねーな……
てかしがみついとるゾンビ共も良くくっついとんなあ。
みんながんばれぇー、なんちてなんちてー。
ゆっさゆっさゆっさ……
おっと失礼(笑)。
「ハヤグ……ハヤグタベタイ」
『えっ』
そしてアッチはアッチでまた訳の分かんねーコトを言い始めたぞ。
地味にナマっとるけど何弁なんだべか?
『どうにかならないのぉ、女神様ァ!』
おっと、久々に出たぜ神サマコール。
しかしどこにいんのか分かんねー時点でアンタも神サマみてーなモンなんじゃねーのか?
んでアンタのお姉ちゃんもパッと見邪神ぽくねーか?
って何かしよーとしとるぞ?
「セエノ……」
ゆっさゆっ……
「エイ!」
『えぇっ!?』
ミシミシ……
う、腕がびろーんと伸びてゾンビが取り付いてる木の枝に巻き付いたぞ。
まさか木ごと引っこ抜こーってんじゃねーだろーな……ってオイ、壁がミシミシ言い始めたぞ!?
どんなバカぢからなんだよ!
あとあの木ってそんなに頑丈だったんか!?
『ああっ、お姉ちゃん!?』
「アーッ!」
うおっとぉ! 木が勝ったぞオイ、マジかよ!
んでナゾの怪女が入り口のまわりの壁をブチ破って飛んでったぞ!
そしてその怪女をお姉ちゃん呼びするナゾの声!
こりゃまさかの三姉妹か? いや、そっちはどーでもいーんだけど。
ってメッチャバウンドしとる!
そしてこの見た目、やっぱSAN値削られそーなヤツだったか。
まあ俺は一個も減ってねーんだけどな!
むしろ赤黒くてブヨブヨしてて吸盤付きの足があるからわさび醤油欲しいまであるぞ。
おっと、でもって想定通りUターンして来たぜ!
さわわーさわわー。
「オディーサーン、イタダキマース」
ここでまた謎ワード……イヤ、オディーサーンってオジサンってコトか?
いや待てよ?
そーいやこのボヨヨン感、やっぱアレか。
落っこちてからのマシン室っぽいとこのアレだ。
えー、てことは……
「バリバリボリボリ」
『えぇー!? な、何やってんのぉお姉ちゃぁん……』
あー、やっぱゾンビ共は食用かー。
オディーサン、マルカジリされなくてえがったえがった……ってあのアホ毛ってあのアホ毛か!?
オイ待てよ、待てってば! オイ!
……食われちまったか。
待てよ、八百屋のおばちゃんもいた筈だよな?
……どこにもいねーな。
どっかから出てったか?
「オディーサン、ハコ、ハイル、ニク、タリナイ、ゼンブタベタイ。
バリバリボリボリ」
おえぇ……何つーか……木に生えてるゾンビをむさぼり食ってるカンジ?
結構なスプラッタだぞコレ……
一体何なんだ? オジサン肉足りねえだと?
『ねえ、何なの? 何なのよこれ! もう嫌、もう嫌ァ!』
おっと、正気度をガリガリと減らされてるヤツがココにいたか……
くねくね、くねくね。
えーと……コレ元々正気とか関係あんのか?
* ◇ ◇ ◇
『いやああああああ』
うるせーなあ、せっかくナマ首ゾンビからお姫様に戻れたってのによ。
『ああああああーっ!』
ドカッ!
へ?
「ボベッ」
くねくね、ぐにょーん。
ズガーン!
へ?
『わああああああっ!』
バリバリバリバリ……
おいおいおいおいちっと待てーぃ、何なんじゃコレはァ!
つーコトで解説するぜ!
お姫様がわーわー泣き叫びながら怪女をグーパンでぶん殴って、怪女が壁に向かって一直線にふっ飛んでったんだぜ。
ついでにゆーと、ゾンビ肉まみれの木にぶつかりそーになったんだけどクニャってなって軽くかわしたんだぜ!
このお姫様、実はものスゲーバカヂカラなんじゃね?
つーかぶん殴っちまってえーんか。お姉ちゃんだろ。
んで今バリバリ言ってんのは塩ビ製の杖なんだぜ!
自分でも言ってて毎度毎度良く飽きねーなって思うけど敢えて言わせてもらうぜ。
もー全くもって訳が分からんわ!
で、この状況だよ。
『だあああああーっ!』
ドゴォォォォーン!
「ギャアアアアア!」
『ひぎゃああぁぁぁぁ……』
うおーやっぱ出たよ極太ビーム。
マジで魔法少女みてーだわー。
ぶっぱした本人も一緒にふっ飛んでったけど。
お姉ちゃん討伐しちまっていーのか知らんけど……って壁にでけー風穴が空いちまったぞ。
うげ……壁の向こう側はマジでゾンビ祭りだな。
どっから湧いて出たんだよアレ。
……てか何だあの部屋? マシン室じゃねーな?
『あ痛たたた……あ、あれ? お姉ちゃんは!?』
お姉ちゃんタコ殴りにしてビームぶっぱ直撃させた自覚あんのかよ。
ひでーヤツだなァおい。
あんだけスゲー攻撃食らったら跡形もなく消滅してたっておかしかねーだろーによ。
まああらかじめ分かっててやってた訳じゃねーってのは分かるがよ。
『お、お姉ちゃん!? どこにもいないの!?
そんな……いやああああ!!』
復活したのはいーけどテメーは錯乱すんのかお姉ちゃんに会いてーのか一体どっちなんだよ。
テメーでテメーを曇らすヤツとか初めて見たぞ。
んでもってこっから見えるあの部屋は何なんだ?
少なくともここが親父の会社の中庭じゃねーってコトが分かっただけでも収穫っちゃ収穫なんだけどな。
あー、アッチに走って行っちまったぜ。
走るっつーか弾丸みてーにぶっ飛んでった感じだけど。
ありゃさすがに人間じゃねーよな?
しばらく前からそーだったけど首チョンパされたあの時から俺も一緒にいたセンセーさんもメカメカしい切り口だったしな。
もしかして本気出してたら割とムチャも出来たりしたんかね。
しかしコレ、どー見ても現代文明の産物じゃねーよな。
こんなリアルなアンドロイド作ったなんて話は聞いたこともねーし……いや待てよ? 親父が掘っ立て小屋に隠し持ってたとかいうヤツ、何か関係あるんじゃねーか?
うーむ……
てゆーか……それ以前にあのクネクネしてる木は何なんだ?
精霊だーとか言ってた気がするが……さすがに冗談だよな?
さわさわー。
ナルホド、分からん!
* ◇ ◇ ◇
さわさわ、さわさわさわさわ……
ナルホド、分からん!
さわさわ。
だから分からんちゅーの。
さわさわー。
あー、ゾンビだらけだしメッチャ怖えシチュだけどあっちこっち見て回りてーぞチキショー。
ゾンビー。ゾンビゾンビー。
何なんだろーなー、ゾンビー。
だってヤツらってここぞって時に突然出て来たりすんじゃん?
中にゃあ知った顔なんかもあったりして、どこぞで生産されたモンなんじゃ? とか妄想しちまったりする訳だ。
ゆーて結局今の俺は何をどーすることも出来ねーからなー。
ホント、俺って今どこにいてどこからモノを見てんだろ。
視点がここ限定ってのもナゾナゾのナゾだし。
さわわー。
だから分からんて。
シャキーン。
へ? な、何だ?
急にモミの木みてーな直立姿勢になったぞ?
『おい、何だここは!』
『分からん、分からんが明らかに人工的な構造物だ』
『んなこたぁ見りゃ分かんだよ。問題はコイツを建造した文明はどこに行っちまったのかってコトだろ』
誰だ?
どっから来た?
『そうじゃねえ。このゾンビ共、明らかに材料は地球人じゃねーか。ソイツがどーゆーコトなんだって話だろ』
『周辺をうろついている個体の外観で照会をかけたが、件の行方不明者の特徴と一致する点が複数認められた。先程の部屋で発見した設備の情報とあわせて考えると、何者かに連れて来られた後この施設で何らかの実験の被験者となった結果である可能性が極めて高いといえるだろう。
そして最大の謎は、この構造物が二十世紀の地球で極めてありふれた建築様式に基づいて建造されたものであるということだ。
偶然発見したこの惑星が重力、大気の組成、気候・気温どれをとっても地球にそっくりなのだ。
見つけたときから疑問に思っていたが、これはいささか話が出来過ぎているとは思わないかね?』
『先生よォ、ご高説垂れんのもいーがどーすんだよ、この状況』
コイツらどっからか飛ばされて来たんか?
いや、会話からしてどっかから来た探検隊ってトコか?
どっかってどこだ?
つーか今、偉そーなオヤジがこの惑星は地球に似てるとか何とか口走ってなかったか?
『そうだな、この有り様では調査を継続するのは難しかろう。隊長殿、一度指揮車輌に戻ることを提案するが』
『そうですね、小官もこのまま進むのは危険と愚考いたします』
『そうと決まりゃ——』
「アー、オディーサーンデキルー」
『な、何だ!』
『待て、今言葉をしゃべったぞ。コミュニケーションを——』
「カイシュウ」
『ま、待て……話を……ぎゃああああ』
『クソ……発砲を許可す……ぐわああああ!』
「バリバリボリボリ」
『隊長ォ!』
『た、た、助けてくれぇ』
「シンセン、ナ、オニク、タリナイ、ハコ……アッチ」
『クッソォ……よくもやりやがったなァ!』
ズビュン、ズビュン!
「キレイ、キレイ。ソレホシイナー」
『効いてねえだと!?』
オイ待て、まさかのレーザーガンだと!?
SFかよオイ、世界観バグり過ぎだろ!
『逃げろ! 急げ! 今指揮車を呼ん——ぐぇ』
「バリバリボリボリ」
『ひ、ひぇっ』
どーにか助けてやりてーが今の俺にゃどーすることも出来ねえ……今の俺じゃなくても無理か。
『こうなりゃ航宙艦隊の艦砲射撃でェ!』
『バカヤロウ、それじゃ俺らまで消し飛んじまうだろ!
機甲兵装を投入するしかねえ! 早く指揮車両を呼べ!』
航宙艦隊? 艦砲射撃? 機甲兵装?
待て待て待て待て、ナニ? コイツらやっぱ宇宙から来たエイリアンなの?
もー頭が追いつかん、今無いけど。
『ちょっと待ったあ!』
ズガン!
「ホェェェェェェ……」
『あああぁぁぁぁ………』
『な!?』
『た、助かったああ……ってどこに行くんだ? おーいお嬢さーん』
えー、再び解説するぜ!
今お姫様がイキナリ乱入して探検隊(?)にむさぼりつく怪女にドロップキックをかましたんだぜ!
全く、お姉ちゃんに容赦ねーな!
んでお姉ちゃんもとい怪女はバビョーンとふっ飛んでったけど、キックした本人もまたもや勢いでどっかに飛んでっちまったんだぜ!
モチロン壁をブチ抜いてだぜ!
器物損壊常習犯だぜ!
『オイ、見たかよ今の!』
『“ちょっと待ったあ”とか言ってたぞ』
『クソ、やっと話通じそーなのが出て来たと思ったんだが』
『てか何かスゲーカッコしてなかったか』
『隊長は?』
『隊長は死んだぞ。さっきのホラー女に食われてな』
『マジかよ……来週ウチの息子が職場体験で会えるって楽しみにしてたのによォ……』
『マジできっついなぁ』
『しかし隊長がいつの間にかやられてたとかどんだけやべーやつだったんだよ』
えー、情報量が多過ぎてオジサンはキャパオーバーだぜ!
『先生、大変だ!』
『今度は何だよ……先生は笑顔で友好的に第六種接近遭遇しただろ』
『何だそれ』
『ハローハローと無防備に近づいて食われたんだよ』
『マジかよ』
『で、何が大変なんだ?』
『軌道上にシャトルがいねえ』
『は?』
『ヤツら俺らを置いて逃げやがった』
『何だと!?』
さぁて、盛り上がって参りましたぁ(棒)。
シャキーン!
いやだから分からんて。
あとコイツら気付いてねーけどひとり部外者っぽいのがいたよな?
誰なんだろーな?
何か見たよーなシチュだぜ。
* ◇ ◇ ◇
『逃げたってどういうことだ!?』
『知るか、とにかくいなくなったんだよ』
『知るかじゃねえ、連中が何から逃げたってんだ。今襲われてんのは俺らの方だぞ』
『じゃあ逃げたのは俺らの方だな!』
『何言ってんだこいつ』
『そりゃこっちのセリフだぜ。
シャトルがいなくなったからって何でそれがすぐにヤツらが逃げたって話につながるんだよ』
『何だと? お前は一体どっちの味方なんだ?』
『味方もクソもあるかよ。何だ? お前おかしいぞ?』
シャキーン!
うわビックリした。
何なんだよそのシャキーンてのは。
つーかアイツらは気にならんのか。
ヒュルルルルゥ……
『うわあああぁぁぁ……』
何だあれ?
何か流れ星みてーなのが落ちて……ってこっちに向かって来んぞオイ!
んで今の叫び声、あのお姫様だよな?
何やってんだアイツ?
『な、何だ?』
『へ?』
『ごまかすなよ?』
『いや今の気にすんなって方がおかしいだろう』
『今のって何だよ』
『何だよ、訳が分からんぞ。一体どうしちまったんだ——』
ドッゴオォォォォーン!
ひょおぉぉぉ!? 何ぞぉ!?
『おゎーっ!?』
『ぬおおおーっ!?』
『何だ、どうした? 風もないのに吹き飛ばされただと?』
いやあるから!
メッチャあるから! 爆風が!
つーか今ので完全にぶっ壊れたなー、この建物。
ゾンビ共もさすがに全滅……してねーな。
相変わらずそこらじゅうにいるぜ。
『おい、大丈夫か、おい!
何だよこれ……誰か! おいっ!』
ありゃ、こんな状況じゃ無理もねーけど完全にイッちゃってるよ。
目つきも何だか怪しーぞ。焦点も合ってねーしな。
『何なんだよ……パントマイムみてーなカッコのまま固まって死んでるとか何のホラーだよ。
頼むからゾンビにだけはなってくれるなよ……』
……コレもしかして人以外のモノが見えてねーってアレか?
てことはこのおっさんの目ににゃーココが違う場所に見えてるんかね。
前に俺ん家が廃墟だって言ってるヤツがいたけどそれと似た様なヤツか?
まさか俺ん家の中にいたりしねーよな?
それにこのゾンビ共、一体どっから湧いて来んだろーな?
待てよ?
前に俺ん家に息子の嫁ソックリなゾンビが出現したときがあったよな。
考えたくねーけどマジで俺ん家だったりして。
もしかして俺って今、双眼鏡覗いたまんまで固まってたりすんのか?
うげー、やだなあ。
しかし何つーか俺って今、完全に傍観者だよなー。
ここはもうさっきの爆発みてーなやつの衝撃でガレキだらけになってるけど俺は相変わらず見てるだけって感じで何の影響も感じねーし。
マジで自分が今どこにいてどーやって見てんのか分かんねーんだよ。
どーすんだコレがこんだけ立て続けに起きんのって初だよなー。
おっさんもさっきまでのお姫様よろしくしくしくメソメソしてるしよー。
マジどーすんだよ、コレよー。
まあそんな中ビシッと立ってるあの木もメッチャ不思議なんだけど!
みょみょーん。
ん? ……今みょみょーん、て言ったか?
効果音じゃなかったよな?
何? 探検隊(?)の生存者は現在何人でしょうかだと?
そんなん知るかこの不謹慎ツリーめ!
……ん?
* ◇ ◇ ◇
アレ? 何か知らんがまた何言ってんのか分かるよーになったな?
まあ丁度良いや。ちっとばかし暇つぶしに付き合ってもらうとすっか。
さわさわー。
あ? オメーが不謹慎だろだと?
うるせーなあ。こちとら傍観者なんだよ。他人ごとなんだよ、他人ごと。
今さっき急に出てきたばっかの探検隊(?)の生存者なんてどーでもいーだろーがよ。
さわさわー。
何? ところがぎっちょんだと?
さわさわー。
ぎっちょんなんて言ってねえ、そもそもぎっちょんて何だ、だあ?
テメェ自分で言っといて何だはねぇだろーがよ。
さわさわー。
あ? ほんとに言ってねぇだと?
じゃあ誰が言ったってんだ?
さわさわー。
ひとり多いよなって自分で言ってただろって?
そりゃーさっきのドゴーンの前のハナシだっちゅーの。
何? だっちゅーのなら知ってるだと?
オメー、トシはいくつだ? 俺よか年上なんじゃね?
……じゃなくてえ!
探検隊(?)の生存者が何だってんだ?
さわさわー。
あ? 俺の知ってる奴がいるだぁ?
まさかそこでメソメソしてるおっさんじゃねーだろーな?
見覚えはねーが……つーかレーザーガン持って宇宙船で降りて来る奴が知り合いな訳ねーだろ。
だいいち何なんだよここは。親父の会社かと思ったらそうじゃねーみてーだし。
さわさわー。
あ? 答えは俺の心の中にあるだァ?
話振っといて何だよそりゃあ。
そもそも俺って今どこにいんのよ。
さわさわー。
あん? 元からそこにいるだと?
ソコってドコだよ。まさかとは思うが穴の底ってことじゃねーよな?
さわさわー。
カートリッジ? 何だそれ?
えー加減謎掛けみてーなこと言うのやめにしねーか?
さわさわー。
定食屋だって? あいつがか?
さわさわー。
え? 違う? 定食屋で話した奴?
それじゃ分かんねーよ。
さわさわー。
直接は会ってねえ?
何だそりゃ?
『おい』
おわっ!?
さわさわー。
分かってるよ、どーせ俺に向かって言ったんじゃねーんだろ。
……じゃあ誰だ?
さわさわー。
まあ見てろって?
分かったけど後で続きを聞かせろよな。
さわさわー。
それも見てりゃ分かる? ほーん。
んじゃまあ黙って見ててやるとすっか。
『どうやら俺たちは見捨てられたらしい』
『そうか。ところでお前は誰だ?』
『お前こそ誰だ』
『……そこに転がってる仲間を助けたい。出来るか?』
『がれきの下敷きになってる奴か。手遅れだと思うがな』
『そうか、そこにはがれきがあるのか』
『なるほど、分かった。協力しよう』
『助かる』
何勝手に納得してんのコイツら。
さっぱり分からんわ!
見てても分かんねーじゃねーか、このウソつ木め!
さわさわー。
あん? 寒いだと?
そーいやさっきまで雪ん中にいたんだったな。
温度感覚とか無かったから忘れとったわ。
さわさわー。
あ? 違う? 今度は何だよ。
さわさわー。
寒いのは俺のギャグだと?
うるせえ、ほっとけや!
* ◇ ◇ ◇
『これをどければ良いのだな?』
『ああ、そこに仲間がいる。どうだ? 動かせそうか?』
『待ってくれ……何かテコのようなものがあれば良いのだが』
『この木はどうだ?』
『ああ——』
何かお寒い(寒くない)やり取りをしとった間に勝手に話が進んどるな。
それにしても誰なんだろーな、あのおっさん。
『——だめだな、柔らか過ぎる』
『柳か何かか』
『何だろうな、良く分からん』
さわさわー。
何? 柳じゃねえ、サルスベリだ、だと?
アホか。んなクネクネしとる時点でどっちでもねーだろ。
このモンスターツリーめ。
さわさわー。
あん? 何を失礼なー、だと? 客観的感想を述べただけじゃんかよ。
『これは木ではなく植物系のモンスターか何かだ。うかつに刺激を加えるのは良くない』
『モンスターだと?』
ほらみろ、あのおっさんも言ってんだろ。
『何を言っているか分からんが現地のクリーチャーということか』
がははは、言われてんの。クリーチャーだとよ。
がははがははのは。
さわさわー。
ペシッ!
『な!?』
『こ、攻撃して来ただと!? クッ……そんな場合ではないがやむを得ん!』
ズビューン……
さわさわー。
ズビュンズビュン。
さわさわさわさわ。
『バカな……あ、当たらん』
『先程から見ていれば……一体何をやっている?』
『見れば分かるだろう』
『分からんが』
『分からんか』
『ああ、分からん』
さわさわー。
分かる、分かるぜそのキモチ!
見てりゃ分かるとか何なんだよマジで。
むしろイミフ感マシマシになったわ。
でも最後のは余計だろ。
何だよ、“で、何やってんの?”ってよー。
言うんなら“それどころじゃねーだろ”とかだろ。
通じんのか分かんねーけど。
ところで何なん? さっきペシッてやってたのはよ。
さわさわー。
あん? 自分はクリーチャーじゃねぇだ?
どこがだよ。
さわさわー。
あん? 見れば分かるだろって?
あー。それだよ、それ。さっきからよー。
さわさわ。
それってどれだだと?
全部だよ、全部。
さっきから随分ともったいぶったモノ言いしてるけど実は単に説明スキルが足りねーだけなんじゃね?
さわさわー。さわさわー、くねくね。
『おわっ!? 今度は何だ!?』
『この非常時に何をやっているんだ?』
くねくねじゃねーよ。
ギャラリーの皆さん(?)がビックリしてんじゃねーか。
かわいそーに、探検隊(?)のおっさんなんてかの有名なあのポーズのまんま固まってんぞ。
仲間がガレキの下敷きになってて早く助けてぇって言ってんのにこの有り様はあかんわー。
あ、オマケにお手々がアレじゃねーか。
俺がんばってやってみよーとしたけど結局出来んかったんだよなー。
器用なもんだなー。
てかはよテコみてーなの用意してやれよ。かわいそーだろーがよ。
『まあその……なんだ、そのパントマイムには何か意味があるんだろう』
『真面目にやれ』
『やっとるわい!』
……何も言えねー。
* ◇ ◇ ◇
『ったく……コレのどこがパントマイムだと言うんだ』
『違うと言うなら何なんだ? 宗教的な儀式か何かなのか?』
『もっと違うわ!』
『お前こそ真面目にやれよな』
『やっとるわ!』
何だ何だ、早くも仲間割れかよ。
しかしコイツら、宇宙人なのにパントマイムなんて良く知っとるなぁ。
侵略する星の文化をマジメに研究しとるんかねぇ、感心感心。
『……とまあ冗談はこの位にしてだ』
『そうだな、こんな時に何やっとるんだこいつはと思わなくもないが』
冗談だったんかーい!
さわさわー!
『本当にキモいな、何なんだこの木は』
くねくね、くねくね。
『俺には分からんがまあ先程からその木が何かしてるということだな』
『だからそう言っている。ちなみに今はクネクネしている』
クネクネ、クネクネ。
うーむ……コイツらマジメなのかフザケてんのかさっぱり分からんな。
そもそもが目の前で仲間が不自然なポーズになって生き(?)埋め(?)になってるのを何とかするって話だろ。
ツッコむならまずそこじゃねーか。
大丈夫なんかコイツら。
てかそこの木(?)も面白がって煽んなよな。
さわさわー。
あ? 大丈夫かどうかは俺次第だ?
何でそーなるワケ?
たとえば俺が代わりにツッコミ入れるとか?
どーやって?
さわさわー。
『ふむ。何かに反応して動いているのか』
何? お姫様を探せってどーやってだよ。
さっきから出来ねーことばっか言ってねーか?
それそこのオッサンは結局何なんだよ、宇宙から来たっぽい探検隊(?)も何なのか分かんねーけど。
『……それはそうと良いのか?』
『何がだ?』
『そこのがれきの下に仲間が生き埋めにされているんだろう、それを助けるという話だった筈だが』
おっ良いね良いね、ナイスツッコミ。
多分お互いに見えてるモノが違うんだろ。さっきもそれが分かってる風な口ぶりだったじゃんかね。
だからまずそれを確認しねーとなんだぜ。
『そうか、そういえばそこにがれきの山があるという話だったか……だが生き埋めにされているというのは違うな』
『ん? 俺にはがれき以外何も見えんが』
『多分そのがれきをどければ俺の様に目視出来る様になるんだろう』
そういや俺がいんのは正体不明のオッサン側のなのか?
何せ今はがれきしか見えてねーからな。
つーかさっき何かがお姫様(?)と一緒に落っこちて来るまでは探検隊(?)の連中と同じモンが見えてたよな?
『なるほど……では生き埋めとは違う、と言ったのは?』
『何、簡単な話だよ。もう生きちゃいないってことだ。
何しろもうペシャンコになっちまってるからな。
長年同じ釜の飯を食って苦楽を共にした仲だ。
遺族のためにも遺品は回収してやらなきゃならねぇし……それにせめてちゃんと埋葬してやろうと、まあそう思ってな』
『長年……同じ釜の飯、か。そうだな、友はかけがえのない宝だ』
共感するとこはあるって感じか。
しかしこのオッサン、いつからここにいたんだっけか?
一緒に落っこちて来たエイリアンとかだったりしてな、知らんけど。
さわさわー。
へ? もう少し待てだ?
何なんだよ一体よォ。
さわさわー。
へ?
『何だ?』
『ちょっと待て……いま母船を呼ぶ』
『母船? 俺たちは見捨てられたんじゃないのか?』
『お前は、な。俺はお前たちとは異なる星系からやって来た存在だ。
……事故の責任は取らせてもらう』
『は? 何だと? 話が急すぎて理解が追い付かん』
『俺は宇宙人だと言っている。実を言うと……俺の仲間が不幸な交通事故でお前たちの母船を大破させてしまったのだ』
『な、何だって!?』
な、何だってぇ!?
さわさわー。
いや、“いかがでしたか?”じゃねーよ!
どーすんだよコレ!
* ◇ ◇ ◇
さわさわー。
だからお姫様を探せって言っただろ、だと?
お姫様っつったってガワだけだろ。
さわさわー。
ガワが何だか分からんだとぅ?
ゆっさゆっさ。
あ? 言葉の意味が分からんだあ?
若者ぶってんじゃねーぞオイ。
『この動きは一体……何に反応している?』
はい、俺でぇーす!
さわさわー。
……じゃなくてぇー。
ツッコむのはそこじゃねーだろーよー。さっきも言っただろーがよー。
だいいちオメーの相方(?)がたった今とんでもねーカミングアウトしたとこじゃねーか。
せっかくの一大イベントがオメーのすっとぼけで台無しじゃねーかよー。
ホレ、予想外の反応にどーしていーか分からんて顔しとるぞ。
どー責任とんだよー。
そこの木(?)が怪電波を発する宇宙生物かもしれねーから見てたとか言い訳しといた方がえーんとちゃうかねー。
そこんとこどーなんかねー。
ってさすがに煽り過ぎか。
『待て、何を見ている?』
『すまん、その木が頻繁にクネクネと動くので今の状況に何か関係しているのかと思ってな』
『木……さっきのクリーチャーという奴か』
『先ほどの怪女といい、ここは何なんだ?』
『ああ、仲間の船がコントロールを失ったのも何か関係があるのかもしれん』
『すまん』
『謝ることはない。ここは互いに協力が必要な場面だ』
『分かった。改めてよろしく頼むよ』
あー、えがったえがった。
しかしあんたら誰か忘れてませんかねぇ。
さわさわー。
そーだな、お姫様を探せ、だろ。
『む。まただ』
『クリーチャーがまた何か動きを見せたか』
おい、分かってると思うがクリーチャー呼ばわりされたからってペチペチすんのはやめろよ。
ぐりん、ぐりん。
『な、なななな何だッ!?』
『ど、どうしたッ!?』
オイオイオイオイちょっと待てーい!
ペチペチすんなとしか言ってねーのは確かだが突飛な行動はもっとダメなのが分からんのかーい!
『クッ……やはりこの木が怪しい……!』
ほーらみろ。またズビュンズビュンビーム撃たれっぞ。
さわさわー。
え? まあその通りなんだけどねー、だと?
ノリ軽っ!
てかまさかのマジだった!?
さわさわー。
だからいかがでしたかって言っただろだと?
ざけんなよ、だったら今までのバカ話は何だったってんだ。
さわさわー。
あんたのためでしょだと?
ならさわさわ言ってねーでキチンと説明しろってんだよ。
さわさわー。
は? そのためのお姫様だぁ? 何だそれ?
だからこんな状態じゃ探し様がねーじゃねーか。
『……何だこいつは……さっきから何をしている?』
『先ほどから立て続けに何か動きがあるのか?
こちらからは何も分からないが……』
『ああ、意味があるのか無いのか、さわさわと幹をしきりに動かしている……そういえばさっきも妙な動きをしていたが……』
『妙な動き?』
『ああ、ぐるぐると怪しい動きをしていた。思えば俺たちのシャトルが墜落して来る前にも突然直立姿勢になったりと怪しい動きをしていた』
『その違いは一体……何が起きようとしている……?』
さわさわー。
え? 適当?
そーなんか……
さわさわー。
良くある匂わせだからって何だよ。意味分かんねーよ。
さわさわー。
いかがでしたかはもうえーからマジメにやれや!
* ◇ ◇ ◇
『動きが激しくなって来たぞ』
『いよいよ何かが起きるというのか?』
いやだから俺のせいだって。
て言っても分かんねーんだよなあ。
つーかこのオッサン状況を楽しんでねーか?
さわさわー。
まあ見てろだ?
何回目だよそれ。
えー加減メタい会話も飽きて来たんだぜ。
シャキーン!
『む!?』
『どうした、また何か動きがあったか』
『ああ、例の怪しい木がまた直立姿勢になった』
『確かさっきも……』
『そうだ、シャトルが落ちてくる直前に同じ状況になった』
何だ? 何かしちゃうカンジ?
ゆっさゆっさ。
オメーこそ楽しんでんだろってか。
いやここじゃ俺は第三者だからな、アタマも至って冷静ってワケよ。
『今度は一体何が……?』
”ピピピピピピピピ♪ ピピピピピピピピ♪”
は? 俺の携帯の着信音? どゆこと?
『な、何だ、何の音だ』
『誰かからの通信ではないのか』
『違う。なぜなら俺のレシーバーの着信音は森のくまさんだからな』
『な、ナルホド』
『しかし一体——』
ゴスッ!
『あ痛ッ!?』
『何か空から降って来たぞ。大丈夫か?』
『あー、あ? ああ、大丈夫だァ?』
ホントかよ。
てか何だ? 今落っこちて来たのは。
結構大き目のカタマリに見えたけど頭に当たってイテテて済むもんなのかね。
”ピピピピピピピピ♪ ピピピピピピピピ♪”
『な!?』
『まただ。今のと何か関係があるのか』
『俺の頭に何かがぶつかったのとほぼ同じタイミングだったな?』
上見てても避けられんのかね。
どっから湧いて出たのか分からんかったし直撃しても平気なくらいの勢いしかついてなかったよな。
『気を付けろよ。また何か落ちてくるかもしれん』
『ああ、分かって——』
ズバァーン!
へ? 今のお姫様(?)か?
『おわぁー!?』
『呼ばれて飛び出て大復っ活だよー……ってアレ?』
地面の下から飛び出すとかどっからどーやって来たんだ?
しかも結構な勢いだったぞ。
探す手間が省けたけど……探してどーすんだっけ?
『な……お嬢さん無事だったのか』
『俺は無事じゃないんだが』
『ああ、ゴメンゴメン』
『オイ、大丈夫か。大分破損しているが』
”ピピピピピピピピ♪ ピピピピピピピピ♪”
『む?』
ピッ。
『あっ私だ。ハイもしもし。ああ、お姉ちゃん?』
オメーが持ってたんかーい! てか出るんかーい!
イヤそもそも相手誰やねん、てお姉ちゃんだとォ!?
リ○ちゃん電話じゃねーんだぞボゲェ!
『え? 帰りに八百屋さんで長ネギ買って来てほしい?
しょうがないなあ』
『は? 帰り? 八百屋? 長ネギ?』
何言ってんだこいつ的な反応、分かるわー。
だって俺も同じこと考えてたもんな。
しかも長ネギ買ってこいって何か既視感あるお使いだな。
……じゃなくてえ!
お姉ちゃんてあの怪女だろ。それが電話かけて来て八百屋で長ネギ買って来いだと?
意味分からんわ!
つーかその電話俺のなんじゃねーのか?
何か当たり前に出て話しとるしどーなってんだ?
だいいちお姫様(?)を探せって言われて実際見つかってみたらこのテン末ってどんなギャグだよ。
『え? 双眼鏡? 定食屋さんの? 何で? え? その辺に落っこちてないかって?』
はい?
あー、さっきのアレか。
イヤしかし誰と話してんのコレ。
誰やねんお姉ちゃんて。
『なあ、コイツはもしかして……』
もしかして?
『ああ、壊れてるな』
『やはりそうか』
えー、何でそーなるの……って見た目がボロボロになったロボ子だもんなあ。
『やむを得ん。暴走する前に破壊するしかあるまい』
『しかしどうやって……』
『あちこちガタが来ているんだ、メーザーガンで行けるだろう』
メーザーガンてまたベタなやつ出して来たな!
しかし何とかして止めれねーもんか。
『あ、あったあった。それでどうするの? え? この木?』
『ムッ!? あの妙な木に触れようとしているぞ』
『何だと!? いや、壁を通り抜けた!?』
さわさわー。
『! 消えた!?』
おろろ? どゆこと?
『何をしている! 追——』
さわさわー。
何? ここはここまで?
だからどゆことだって聞いてんだけど!
さわさわー……
ふたつとも回収したから削除するだと?
待てよ、そのふたつってのは……アレ?
……おっさんらも消えた? 何で?
もう“まあ見てろ”詐欺は通じねーからな。
『あっ、ハイ』
何だ!?
『いえいえ、ではまた』
あー、声だけが聞こえとるんか。
どーゆー状態だコレ。
てゆーかぶっちゃけ気になってんのは携帯の待ち受けの時計が何年何月何日何曜日になってるのかって方なんだがなあ。
* ◇ ◇ ◇
しかし電話で誰と何話してたんだろーな。
気になるわー。
『さてと、じゃあ行きますか』
『待て、どこへ行く……いや、今どこから話している?』
『えーと……一緒に行きますか? 無いんですよね、帰るところ』
『この星のどこに帰る場所があるというんだ。それにお嬢さんだって同じだろう。
それだけ義体が損傷していては動くこともままならないだろう』
『義体? まあ平気なんですけど。一緒に行きたいならお手を拝借……あー、反対の手はもげちゃってるので適当なとこをつかんどいてもらえれば。はい』
『なっ……!?』
あ、何もねーとこから腕だけにょきっと出て来たぞ。
どーなってんだコレ。
『話は分かったがそれに何の意味があるんだ?』
『待て、安易に応じるな。どんな危険があるか分からない。
状況を見るに超空間航行の類ではないのか?』
『馬鹿な、相手は人間サイズだぞ。そんなエンジンはシャトルサイズの機体でも搭載できないだろう』
やっぱ気になるわー。
誰と何を話してたんだっぺなあ。
聞いてた感じだとふさがってる方の手に持ってんのは携帯か。
アレ? じゃあ双眼鏡はどーなったんだ?
さわさわー。
え? そこにある?
『あれ? 誰かと何かをお話してる感じです?』
おろ? 何か聞こえてた?
さわさわー。
へ? そもそもの話何だって?
『え? そもそもはじめからその場所にある? 何が?』
双眼鏡だろ?
はじめからっていつからだ?
さわさわー。
あの後ゾンビたちがどこに行ったのか気になるだろって?
何で——
『何でゾンビの話になるの? さっきのゾンビは爆発でみんな吹っ飛んじゃったでしょ?』
この反応、やっぱ同じ声が聞こえてんのか。
てことはそこの木は中の人がいるってことになんのか?
実際は誰と話してんだコレ?
てか“その場所”と来て今度は“あの後”か。
いつかのゾンビパニックの再現だってか。
知らんわ、いつだよソレ。
さわさわー。
『双眼鏡? あ、忘れてた……って何でここにもあるの?』
さわさわー。
『え? 嫌ですよ。だってほら、ホコリだらけじゃないですか。使うにしてもまずキレイにしないと』
『……先ほどから誰と話しているんだ?』
『さあな。まあ聞いておいて損は無いだろう』
双眼鏡がアッチにもある?
んでホコリだらけ?
さらにゾンビパニック絡みだ?
さわさわー。
『えー、“いつもあなたを見ています”って何!? 怖いんですけど!』
あー、何だっけ……アレだ……えーと……
さわさわー。
『もうひと息?
何が……え? “しまったぁ”? 何それ?』
ああ、アレか!
さわさわー。
『今度は“えっまさか!?”』
いや違うな……えーと……
さわさわー。
『はい? “ズコー”って何よ。良い加減マジメにやんなさいよ』
てか話に全くついて行けん。
てかコレ相手さんもたいがい置いてけぼりだろ。
それにしても分からんな。うーむ。
* ◇ ◇ ◇
さっきのさわさわーはズコーって反応だったんか。
アッチ側がどんな感じになってるのかは分からんけどそこの木(?)と何か話してるよな、絶対。
……じゃなくてだ、さっきの“しまったぁ”ってのは何がしまったなんかね?
その意味じゃズコーが何に対するズコーなのかも分からんから一応関係はあった感じか。
そこんとこどーなの?
……アレ?
おーい。
おーいおーい。
えー、終わり?
またこのパターンかよ。
これじゃ尻切れトンボじゃねーか。
こっからだろ、こっから。
どーすんだよコレよぉ。
おーい。おーいおーい……ってやるだけムダか。
えー。
『先ほどから誰と話しているんだ?』
『そうだ、そちらに誰かいるのか?』
おろ? あー。そーいやいたな、おっさんたちが。
すっかり忘れとったわー。
さっき何かモメてなかったっけか?
そっちは大丈夫なんかね。
『おい見ろ!』
『なっ!?』
何が起きたかといえば、何もないとこからニョキッと出てたお姫様(?)の手首がポロリと落っこちたんだぜ。
むむーぅ? うーむ……
えーと、俺の理解と目(?)の前で起きてることの整合性がバグっとるんだが。
俺の理解じゃこことあっちはIFで違う方面に分岐した同じ場所みてーなのだと思ってたんだがな。
んでそんな場所に同じ人物が同時にふたり存在することはねー筈、と。
つまりは……どーゆーことだ?
うむ、分からん!
『つまりはこういうことだよ』
『ッ誰だ!?』
へ? 俺?
『だがオメーは俺じゃねえだろ、俺がオメーじゃねえのと同じでな』
『誰だッ! 誰かそこにいるのかッ!?』
その話はえーんだけどさっきのしまったぁとかズコーはどーなったんだ?
『そこかーい!』
『えぇい、さっきから聞いていれば……俺を無視するなッ!』
もーカオスやー。
『そこ、楽しむなや!』
『だから何なんだよジジイ!』
『ジジイじゃねえ! おじ様と呼べぃ!』
『良し、やっと聞いたなジジイ』
『だからジジイじゃねえっちゅーに!』
む……間髪入れずにツッコミかまくさるあたり、確かに俺じゃねーな。
俺はもーちっとインテリジェンスにあふれたダンディなオトナだからな!
『どこがや!』
『む……誰だッ! 俺にもツッコませろ!』
『そこかーい!』
『コンビ芸人か』
イヤほんとコレカオスだわー。
てゆーか俺ってゆー割に俺と結構キャラが違うくね?
『だから俺であって俺でないと言っとるだろうによォ』
『その“俺”とは誰だ?』
『少なくとも俺ではないな』
『そこ、突っ込まんでくれる? 話がややこしくなるからよ』
むむぅ……このオッサンたちのエンジンも暖まって来たみてーだな!
ここは一発……
『おっとモノボケはNGだ、オメーはコイツらには見えてねーんだからな』
誰もお笑いグランプリやるとか言ってねーから!
……じゃねえ。いや待て。
つーことはだ、コイツには俺が見えてるってことなのか?
* ◇ ◇ ◇
おい、誰がモノボケをやるっつったよ。
つーかボケること自体は否定しねーんだな?
『悪ノリして話をややこしくすんなよこのウンコ野郎め』
『待て、まだ何も言ってないぞ』
『ホレ見たことか』
ふっ、ウンコが漏れそうになってお隣のトイレに駆け込んだのは良い思い出だぜ。
思い出っつーほど昔の出来事じゃねーけどな!
『おい、さっきのは一体何なんだ』
『はぁ……めんどくせぇな。さっきって何だよ』
『やっと相手をする気になったか。まあ良い……そこにさっきまでここにいたお嬢さんの腕が転がっているだろう』
『お嬢さんだぁ? あれがか?』
『やはり何か知っているのか。人間サイズの機体でゲートを開けるなど聞いたことがない』
『げぇと?』
『フン……そもそもこんなへんぴな星系に人知れず、しかも何の痕跡も残さずにこうしていること自体が異常なんだ』
『まあ山ん中だしなあ』
『ふざけるな! 軍のレーダー網にもかからずどうやって地球から来たのかと聞いているんだ!』
へ? どゆこと?
ここ地球じゃなかったん?
俺たちウチュージン、ミンナトモダチ?
『来たっつうか、ここ地球なんだけど……大丈夫? おたくら』
『な、何だってぇ!?』
あ……コラ、そこのオッサン共、俺の専売特許を取るんじゃねえ!
『おい、オッサン共、俺の専売特許を取るんじゃねえ!』
あ、かぶったぜ。こっ恥ずー!
てゆーかこのオッサン共はどう処するつもりだ?
『処するってまた物騒なこと言うなあ』
『言ってねえから!』
『あ、言ってんのはアンタらじゃないんで』
『そうだ、さっきから誰と通信していた?』
『通信? うーんまあある意味通信なんかねぇ。霊界通信、的なヤツ?』
えぇ!?
『さっきからふざけるなと言っているだろうが』
『ここがどこかって話はもう良いのか』
『ぐ……順を追って確認させろ』
『それが人にモノを頼む態度なワケ?』
『ぐぬぬ……』
おいおい、他人に悪ノリすんなとか言っといて自分がやってたら説得力ねーぞ。
そんなコトしてっと俺も悪ノリしちゃうからな?
ほれほれ、オバケだゾ?
ゴトッ。
『おろ?』
『!? 今度は何だッ!』
お、俺じゃねーぞ?
『アホか! どう考えてもお前だろ!』
『今のはくだんの会話の相手のしわざなのか?』
『ったく……悪ノリしやがって』
だから俺じゃねえって言ってんだろーがよ、冗談は顔だけにしろっちゅーに。
『それそのまんまブーメランだわ』
『何? ブーメランとは何だ?』
あー、もしかしてこのオッサン話がとっちらかって会話が出来ねータイプのやつ?
くだらん話はどーでもいーから順に話してこーぜ?
『ったく……そうだな。いつまでもくだらんコントを続けてる訳にも行かねぇしな』
おう、頼むぜ。
『じゃあ行くぜ。“タァミナアァル……オゥプンヌ”!』
へ?
『は?』
『あ、あれ?』
冗談は顔だけにしとけっつっただろーがこんにゃろめぇ!
『お、おかしいなぁ?』
つーか大丈夫かコイツ……
* ◇ ◇ ◇
あー、取り敢えず今のでこのオッサンは俺っぽいってことは分かった。
ゆーて俺と同じノリってワケでもなさそーだし……特に今のスベったとこな!
まあ良くて俺(?)だな。
だってよ、俺(?)って今さっき急に出て来たワケじゃん?
てことはどっかから飛ばされて来たってことになるよな。
俺だったらまず冷静に考察して仮説を立てるくらいするぞ。
たとえゾンビパニックの真っただ中にイキナリ放り込まれたってそんくれーは出来んだろ。
それにこんなとこに放り込まれたらまず何じゃこりゃーとか叫ぶのが鉄板だろ。
そもそもの話、そこのSFおじさん共が何なんだって突っ込まねーのが不自然極まりねーんだよな。
ん? 何かキョロキョロし始めたぞ?
あ、モチロンだけど俺(?)が、なんだぜ。
……残りのSFおじさん共もつられてキョロキョロし始めたな……
何だろーな、このそこはかとねー残念感。
『い、今のが何だったのかは良く分からんが何かの装置を起動するキーワードだったり……するのか?』
まあウソついてもしょーがねーし、失敗しちったてへへで一件落着だよな、常考。
『い、いや……どうだ?』
『その奥歯に食べカスがはさまってる感じの言い方、やはり何かあるのか?』
ん? どー見ても失敗なんじゃね?
それとも今ので似て非なる場所にチェンジしちまったとでも思ってんのか?
うーむ……そんなことあったっけか?
まあ少なくともさっきのしまったぁ、は多分だけどフラグだったと思うんだけどな!
『おい、いるんだろ。返事くらいしやがれ』
『!? ああ、さっきの会話の相手か』
あー、コレ俺が黙ってたらビミョーな空気感になっちまうヤツか?
ナルホド分かった、黙ってよーっと。
『むむう、返事なしか。本当にいなくなったのか?』
『その相手は……いや、その前にお前が誰なのかを聞いていない訳だが』
『俺だってアンタらが誰なのか知らんのだけど?』
ほほう……じゃあどっかから飛ばされて来た系というワケだな?
『じゃあお互いに自己紹介と行こうじゃないか』
おうおう、何か建設的なムードが漂ってきやがったぞ。
それじゃあちっとも面白くねーじゃねーかよ。
それよかおたくら、お姫様(?)はどーしたよ。
行くんだろ、どこだか知らんけど。
忘れてっと俺が呼び出しちまうぞ。
それ、召喚ーん、とな!
なんちてなんちてー。
『う、うわっ、ビックリした!』
『今度は何……おお、さ、さっきのお嬢さんか』
は?
何がどーなった?
『えぇっ!? 何で? どうして?』
ちょっとそこの木(?)、これに関して何かコメントはねーのか?
……アレ? だんまり?
そっちはねー感じか。それか眺めて楽しんでやがるな?
性格悪ィなオイ、正直者の俺とは大違いだぜ!
ん? 今度はビームガンぶっぱしてた方のおっさんがキョロキョロし始めたぞ?
『おい、どこだ! なぜ急にいなくなった!
おい、返事をしろ、おい!』
『さっきは急にゲートが閉じたから驚いたぞ。しかしどこから出て来た?
さっきよりも更に損傷がひどくなってるが……?』
『こっちもだけど私も訳が分からなくて』
『おい、誰かいないのか! おーい!』
『はいよ』
『な……さっきの不良ジジイ……』
『こんなナイスなミドルを捕まえてジジイだなんてひでぇ奴だなオイ』
『さっきのシャトルの乗組員の男はどうなった?』
『誰それ? ハナっから知らねぇわ』
『何だと!?』
『うぅ……眠い……ビビービビーって耳鳴りがうるさいですぅ……』
『何だと……そいつは何かのアラートだろう。というか見るからにやばそうだし動いてるのが不思議なくらい壊れてるが』
うげー。更なるカオスだわー。
俺(?)チームとお姫様(?)チームに分かれてっけどお互いが見えてねーのか。
しかもお姫様(?)チームの方は完全にSFおじさんの片割れの存在忘れてんだろ、コレ。
かわいそーになぁ。
しかしお姫様(?)の方は大丈夫か?
何かビビービビーとか不穏なワードが飛び出してるが……
いや、もーワケワカも極まって来たし後は野となれ山となれだぜ。
来たれ、更なるカオス!
『はあ……少し休むか……』
ドガーン!
「オディーサーン」
『え……お姉ちゃん?』
『は? さっきシャトルと一緒に落ちて来た奴か』
『何だと!? 一体どこから』
『おお、やっと見付けたぜ』
えーと……コレは全員から見えてるってことでえーんかな。
俺もうキャパオーバーなんだけどー。
「オディーサーン、ニク、タリナイー」
ん? アイツこっち見てね?
てかこっちってどっちだ?
* ◇ ◇ ◇
『何だ? 奴は何を見ている?』
『何だ? 奴は何を見ている?』
『知らんがな』
おっと、アッチとソッチでハモったと思ったら一人だけ空気読めてねー奴がいたぜ! 誰とは言わねーけど!
『おい、お嬢さん……っておい、大丈夫かおい、しっかりしろ!』
『あ……あ……ァ……【ビビービビービビービビー】』
『何かの警告音!? システムに異常をきたしているのか!?』
えー、白目むいたお姫様(?)から何か不吉なエフェクト音が……
これってアレの音だよな?
お姫様(?)を探せってもしかしなくてもそーゆーことなワケなんかね?
「……?」
うおっと……ここでお姉ちゃん(?)がお姫様(?)の存在に気付いたぞ。
『くそッ、最悪だ。どうする……?』
『今度は何を見ている?』
『知らんがな』
相変わらず約1名空気読めてねーのがいんなあオイ。
ってそーいやさっき電話でお姉ちゃんとか口走ってなかったか?
このオバケが電話の相手か? いやまさかなぁ。
”ピピピピピピピピ♪ ピピピピピピピピ♪”
へ? 今の着信音、どっから鳴った?
ピッ。
「ハ、ハイ、モシモシ……」
えぇ……コイツが取っちゃうのォ?
んでハイモシモシとかフツーに受け答えしちゃうんかいな……
てかさっきホントにお姫様(?)と話してたのかよ。
いや、それよか今度の相手は誰だ?
さっき話してたお姫様(?)はあんなんなっちまってるし……
『オイ、ありゃあ何だ? トランシーバーか?』
『トランシーバー? 何だそりゃ? それこそ知らんがな、だろうが』
『トランシーバーを知らないだとォ?』
そこはどーでもいーだろ。
「……ハイ、ワカリマシタ」
『……急に静かになった? 何か不穏——』
ガブリ。
「バリバリボリボリ」
『何だアイツ? 今何か喰ったな?』
……えー、お姫様(?)チームのSFおじさんがマルカジリされちまったんだけど。
あまりにも急で反応する暇もなかったんだぜ。
俺(?)チームは完全にギャラリーだな。
しかしそんなにのんきに構えててえーんかね。
フツーに考えたら次はお前らの番なんじゃねーの?
んで一方のお姫様(?)は相変わらず白目むいてるし……ってそっちも食っちまうのかよオイ!
「ガリッ!」
おっと、固くて食えねーってか?
歯が立たねーとはこのことだな!
『お、お姉ちゃん……まるかじりしちゃうの?』
お? んでもって逆に今ので正気に戻った感じか?
しかしまるかじりしちゃうってアンタねぇ……
あ、あー。まさかとは思うがそういうプレイが好きだったりすんのか?
『ゴメンね、お姉ちゃん』
「ア、アあああっ! ク、クルシイ……ヤメテ……【やメてくだサい】……」
……ビチャ。
『なっ!?』
『あー、やっちゃったな』
な……コイツは……思い出したかねーがどこぞの廃墟ん中で見たアレだな、胸クソ悪いな。
急に苦しみ出したと思ったら赤黒い液体になってそのまんまビチャっと地面のシミになっちまった。
あ、ビックリしてんのはSFおじさんの食われてねー方ね。
んで問題はお姫様(?)と俺(?)の方だな。
コイツら明らかに確信犯みてーなムーブしてたぞ?
あ、俺(?)氏、携帯はちゃっかり確保してやがんな。
『おーい、見てるんなら何とかしろー』
えー、そして俺(?)さんが俺をご指名だ?
どゆこと?
* ◇ ◇ ◇
オイ、やっちゃったな、だと? どーゆーコトだよ、説明しろよ。
んで何とかしろってどうしろってんだよ、それも説明ナシなのかよ。
つーか状況が分かってんなら自分で何とかしろっちゅーに。
ワケ知り顔ムーヴがムカつくんだよ。
オイ、聞いとんのかワリゃあ。
……コレ、やっぱ聞こえてねーな。
さっきまで俺(?)とだけはやり取り出来てた筈だがまた何か変わってるな?
まずお姫様(?)サイドはお姫様(?)以外誰もいねーだろ。
んでそのお姫様(?)が何かやらかしたと。
本人は何か停止しちゃってるしこっちは終戦モード? なのか?
俺(?)サイドは特に何も無し、SFおじさんは相変わらず存在感ゼロな感じで変わってねーか。
問題は“お姉ちゃん”か。
“お姉ちゃん”はどっちからも見えてた、んでお姫様(?)が何かしたら急に苦しみ出してビチャっとなった、か。
ここだけ切り取って見るとアホ毛がビチャアってなったときと同じなんだよな。
あの時と場所も同じってことか?
じゃあこの辺は実はお隣さんのリビング付近だったりすんのか?
いや、それか“この光景を忘れるな”とか書いてあった紙切れの場所?
だけど的に考えると山奥の廃墟のど真ん中なんだよなあ。
うーむ……分からん!
説明しろ!
『なあおい』
うぇっ!? ああ、SFおじさんか。あまりの急展開にビックリして腰でも抜かしとったんかね。
『うるせぇ、お前なんざお呼びじゃねえんだよ』
『酷い!』
いや、ひでーよそりゃ。
もう俺(?)じゃなくて俺(??)にしてやろーか?
『しかし俺はめげずに話しかける! オイっ!』
おっと、今さら妙なキャラ作りし始めたぞ?
『何だよ、今さら妙なキャラ作りし始めんじゃねぇよ』
ズコー!!!
何でソコでカブんだよォ!
クッソ面白くねーなあ!
ンなこと言ってるヒマがあるんなら何がやっちまったのか説明してほしーんだけど!
説明!
……お姫様(?)を探せってのはコレのことだったとか……?
『あんたは知らんと言ったが、ここにはさっきまで俺の他に所属不明艦艇の乗組員がいた筈だ。
それに正体不明の義体のお嬢さん、そしてさっきのクリーチャー。
こりゃ一体何なんだ?
それにお嬢さんは誰と話していた?
初心者の俺にも何が起きたのか分かる様に説明してはもらえないだろうか』
『そこに俺は含まれねぇのか?』
『もちろん含むさ、正体を明かしてくれるのならな』
おっ、良いね良いね!
何か急にハードボイルドな感じになって来たぜ!
『なるほどな、そういう趣向かよ』
えー、それってどういう趣向?
『なるほどと言う位なのだから全てを分かったうえでの話なんだろう?』
『何も分かっちゃいねぇがひとつだけ言うとな、俺がやってんのは神頼みって奴になるんかね』
『神頼みだ? どこかで待機している母船への司令だったりするのか?』
『いや、そのまんまだよ。純粋に神様にお願いしてんの』
『神頼みでもしてるってか?』
おろ? 俺、神なの?
その願い、叶えて遣わすぞゴルァ!
なんちてなんちてー。
『じゃあ聞くがな、お前さんらが言うクリーチャーって奴、アレは何で突然“崩壊”したと思う?』
『おおかた制御コアに何かがあってナノマシンの集合体を維持出来なくなった、あたりじゃないのか?』
『お? 惜しいぜ。制御コアってとこを神様に置き換えてだな——』
『待て待て、その実……この良く分からん施設の制御装置の暴走とかそんな事象と受け取って良いのか?』
『またまた惜しいな。
多分お前さんは“その施設”の実体を測り違えてるんじゃねぇかと思うぜ』
ありゃ? 神ってのは何かの比喩的表現が正解なワケ?
俺様のことなんじゃねーのか?
『軌道上から俯瞰した限りではこの施設は何の変哲もない建築物に見えたんだがな』
『それが勘違いだって言ってるんだよ。それに俺がどっかに隠れてる母船から転移でもして来たみてぇに思ってるみてぇだがそれも違うぞ』
『何? 急に湧いて出たとでも言うのか?』
『そうだな、客観的に見るとそう言うことも出来るな』
『そしてあのクリーチャーとあんたが無関係ではないと?』
『まあ、そうだな。んで俺は初めからここにいたがお前らからしたら突然現れた様に見えた訳だな』
『あんたの話を信じるにしても肝心な部分が抜けてるぞ。
初めからいたのに突然現れるとは何だ?
さっきまでそこにいた二人が突然消えたのも関係があるのか?』
長ぇ! 質問おじさんの襲名をオススメするぜ!
『質問ばっかだな。質問おじさんて呼んで良い?』
おっとまたカブっちまったぜぃ!
『おじさんでも何でも良い、この状況を打破出来るのならな』
『あー、うん。端的に言うとだな、神様の仕業なんだわ』
『またそれか!』
『さっきお前さんの予想に対して惜しいって言っただろ、それについて説明すりゃ大体分かるだろうな』
『……よろしく頼む』
『あのな、落ち着いて聞けよ。軌道上からここを眺めてたお前さんと今のお前さんは連続的な存在じゃねえんだ』
『別人だとでも言うのか?』
『別人て訳じゃねえ。俺らはこの施設を駆動する存在が再現した幻、しかも生きて動く幻なんだよ』
『つまりコピーだと……? じゃあ本物の俺はどうなった?』
『さあな、俺には分からん』
『今の俺は過去の記憶の再生なのだろう?』
『それは違うぜ。だから生きた幻だって言い方を選んだんだが』
『VR……電脳化とは違うのか?』
『別にここが仮想世界だって訳じゃねぇ。こうして今ここにいること、そいつは現実の出来事なんだぜ』
『理解が追い付かん……過去の事象の具現化か? それをこの施設が駆動していると?』
……うーむ。
俺も理解が追い付かねーんだけど。
てか結局俺って今どーなってんの?
『まあギリギリ科学的な言い方をすっと神様的な装置って奴? そんな感じだな』
『むぅ……信じられん……それでアンタはそれをどうやって知ったんだ?』
『そりゃ、俺が作ったモンだからな』
へ……?
どゆこと?(2回目)
* ◇ ◇ ◇
待て待て、じゃあ今までの場面転換てそんな仕掛けだったんか!?
マジかよ。
そこんとこ、時空連続俺様って仮説を立ててたんだけど思いっきしハズレなのか?
マップの外側が再現出来てねーのとか破壊不能オブジェクトの存在とかそんなんで説明付かねーモンがいくらでもあんだろ。
『お前さんらがお嬢さんて呼んでたアレはな』
へ? そーなの?
ちと予想外の答えだったぜ。
あのお姫様(?)……つーかあの筐体? を作ったのがこのおっさんだと?
いやいやいやいや、出だしの状況を考えたらそれはねーだろ。
『あんたはサイバネティクス系の技術者なのか』
『いんや? だって俺1989年のリーマンだぜ?』
『1989年? 何だ? 聞いた感じ年代を表す単位か?』
『面倒臭えな……まあそんなとこだよ』
『仕組みは良く分かってねえんだ、もとからあった奴で作ったコピーみてぇなモンだからな』
『コピー?』
『あんたと同じ生きた幻ってことだよ』
『どういうことだ? その神様と仮称したもののオリジナルがあるのか』
『そうだぜ』
『にわかには信じられんな……それにあのお嬢さん自身が何かした様には見えなかったが』
『ああ、アレはな——』
えー、89年?
じゃあ俺じゃねーの確定じゃん。
でも俺にソックリか。
うーむ……親父?
有り得るな? いや、いつだっけ?
1989年ていったら5月4日? 何の日だっけ?
俺がアレをやらかしたのはもっと後だったしなあ。
あー、マシン室のカレンダーか。
5月4日のところにマル印が付いてたんだよな。
てか日にちのことは一個も言ってねーよな。
何でんなコト思い出したんだべ。
『まわりにあるものから何かを吸い上げてミックスしてペッて出す感じ?』
『何だそれは』
『何つうか表現が難しいな……関係のあるもの出来事をズルっと引きずり出してだな……』
『もっと分からんぞ』
『つまりそのせいで俺が急に出現したって訳だな』
『あんたが作ったとかいうそのコピーの神様があのお嬢さんで、この状況はそのせいだと』
『んでここにいる奴全部がどっかから湧いて出た幻でな、いっちゃん最初にポンと現れたのがその“お嬢さん”て訳なんだな』
『じゃあ本当の神様ってのはその“どっか”にいる存在だとでも言うのか?』
『やっと分かったか』
『なるほどな』
えー、何だそれぇ……
納得すんなよおっさんよォ……
『それでその神様のオリジナル的な……ええい、もう神様って呼び名で良いか……その存在に先程“見てるんなら何とかしろ”、と声を掛けていたんだな?
つまりはその仮想神様とはある程度コミュニケーションが可能で、更にある程度のお願いも聞いてもらえる、ということに繋がると言うことか』
『ある程度はな。こちらで何をアウトプットするか具体的にイメージしてインプットを与えてやらないと難しいぞ』
『すまん、また分からなくなった』
『だよな』
『件のお嬢さん……もとい、コピーの神様もオリジナルの神様も俺にはどこにいるか分からん。
あんたにはそれが分かるのか?』
『分からん、どっかだ』
『ズコー!!!』
ズコー!!! だよ俺もよォ!
んでやっちゃったなってのは結局何だったん?
俺はそれが知りてーんだぜ。
『あのなあ……分かったが話は振り出しに戻っちまったじゃないか。期待して損したぞ』
『いや、どっかにはいるっつっただろ。この違いはデカいぜ』
『どっかというのは声の届く範囲なのか?』
『多分な。さっきからおかしなことばかり起きてるだろ、ここでよ』
『状況証拠か。そう判断するに足る根拠があるのか?』
『ああ。経験的にだがな』
『ならここで独り言のごとく願いごとをブツブツとつぶやいてりゃ良いのか? そんな筈ないだろう?』
『まあやれるコトはそれしかないんだがな』
『ここから動いちゃダメなのか? さっきまでゾンビの群れで埋め尽くされていたが、今は何もいないから自由に移動出来るぞ?』
『まあひとつだけ確認してみてぇことがあるっちゃあるがな』
『じゃあ早速それを確かめてみようじゃないか』
『ま、良いか。分かったよ。行こうぜ、こっちだ』
おい待て、さっきコッソリ確保した携帯を出しやがれ。
やっぱ怪しーんだよこのおっさん。
何でノコノコくっ付いてくんだよSFおじさんはよ。
行くんなら俺も連れて行きやがれってんだ。
って出て行っちまったぜ……
——ガコン。
『!』
『何だ!?』
『今の音は今向かっている先から聞こえたな?』
『取り敢えず行ってみっか』
『警戒は怠るなよ』
『してもしなくても同じだろ』
アレ?
何か出てった先も見えてるし聞こえてる?
何で?
* ◇ ◇ ◇
何か知らんけど今コイツらと一緒に移動してる感じ?
……何でだ?
そこを歩いてる俺(?)が持ってる携帯に引っ張られてるとか?
いや違うか。どっから出て来たのか知らんけど携帯はさっきいきなり出現したから関係ねーか。
てゆーか……目線がいつもの高さに戻っとるな。
右手左手両足……うむ、まごうことなきおっさんだぜ。
うむ、くたびれた上着もそのまんまだし完全復活だぜ。
……イヤ何でだ?
だって何もしてねーぞ、俺。
やろーとしても出来んかっただけだけど。
状況としてナマ首状態は防げたかもだがその前後は完全に成り行きだったからな。
それにどーやって見てんだ? コレ。
『お? ここだ』
とか考えてるうちにすぐそこまで来ちまったぜ。
ヨシ、早速俺(?)とご対面と行くか!
『む……やっぱりか』
『やっぱり? 何がだ?』
『この装置のフタが開いてるだろ、お前がお嬢さんと呼んでたアレはこっから出て来たっぽいな』
へ? 違ぇだろ?
アレは最初何もねー真っ白な空間でガラスの箱に納まってた筈だぞ?
つーかコレ、俺のこと見えてねーな?
そこは相変わらずか。
『なるほど。で、コレは何なんだ?』
『さっき言ってたオリジナルの神様ってヤツの一部だな。
正式名称は知らんけどこの周りのモノもひっくるめて俺らは特殊機構って呼んでた。
まあ便宜上の呼び名みてーなもんだけどな』
おっと、ここで重要ワードが出て来たぜ。
だけどコイツもホンモノと違うんじゃねーのか?
『俺“ら”? 他にもあんたみたいのがいるのか』
『ここってさ、研究施設っぽいだろ?』
『ああ、ここの職員だったとか』
『まあそんなとこだ』
マジで?
てゆーかここって見た感じ親父の会社のマシン室あたりの場所だよな?
このオッサン、やっぱ俺の親父だったりすんのか?
『で、ちっとばかし個人的な趣味でな、コイツでゲームみてーなのが出来ねーかと思ってな』
『ゲームだと? ふざけているのか?』
『ああ、全く不真面目な職員だったな。だがな……この特殊機構ってヤツの秘密にちっとばかし気付いちまってな』
『その秘密とやらに関係するってことか』
『ああ。コイツにはな、特定の対象の存在そのものを書き換えるっておっかねぇ特性があってな』
え? マジで!?
俺ってガキの頃そんな怖ぇモンのまわりを駆けずり回っとったんか。
まあガキって怖いモン無しだもんなー。
ゆーて自分のことだけどな!
『存在を書き換える、とは? 別なものに変質させるのとは異なるのか』
『何つうのかな、過去にさかのぼってな、初めからそうだった様に現実を書き換えちまうって感じだな』
『この際細かいことは聞かないが……そんな事象、どうやったら観測出来るのか想像も付かないな。
初めからそうだったことになるのなら、それは改変として認知出来ないんじゃないか?』
『と思うだろ? ところが出来ちまったんだよな』
『一体どうやって……?』
『仕組みは分からんけど、どういう訳かその改変の影響を受けねぇアイテムがいくつか見付かってな』
『見付かった? その装置も含めて超古代文明の遺構か何かから出土したとか、そんな存在なのか?』
『まあそんなとこだ』
『じゃあ複製も何も出来ない、正に一品もののオーパーツなのか』
『そうだな。常識的にはな』
『実は複製品がある、みたいな言いっぷりだな……いや、まさかあるのか?』
『ああ、存在するぜ』
『で、それがあんたの言うゲームの様なものと関わってくるという訳か。
あのお嬢さんはあんたが作った神様のコピーなんだったな?』
『前置きが長くなったが、その通りなんだぜ』
えー、あのお姫様(?)が特殊機構のコピー品だあ?
似ても似つかねーじゃんかよ。
適当なこと言ってんじゃねーぞ?
『しかしなぜにゲーム?』
『ああ、それはだな——』
………
…
……ん?
ぷちん。
………
…
【再構築が完了いたしました。ゲームはいかがでしたか?】
へ?
【いかがでしたか?】
ちょっと待てーい!
いかがでしたかじゃねーよ!
何いーとこでぶった切ってんだよ!
受信料返せよ!
【当システム上、受信料などという概念は存在いたしませんが】
知らんわ!
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