アクアリネアへようこそ

みるくてぃー

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終章 未来への道筋

第93話 襲われるリネア

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 それは突然起こった。

「だっ!? んむぐっ!!!」
 暗闇の中、眠るベットに違和感を感じ慌てて起き上がろうとするも、声を発する前に口元を押さえつけられながら、柔らかなベットへ押し付けられる。

 何!? これはどういう状況?
 辛うじて部屋に差し込む月の光で、見知らぬ男性にベットへ押さえつけられている事は理解できるが、何故この様な状況になっているかがまるで分からない。
 私が今いる場所、それはこの国で最も安全で警備が厳重にされていると言ってもいい、トワイライト公国の公城。しかも公妃様と第一公子様が暮らしている東棟。そんな場所に族など侵入できないだろう。
 するとこれは第一公子様との見合いを望んでいない、いわゆる反対派の刺客!?

「むぐっ! むむぐっ!!」
 身の危険を感じ必死に抵抗しようとするも、どうやら眠る私に男が馬乗りになっているらしく、動かせるのは足を上下にバタバタさせられるだけ。両腕もすっぽり男の両足で挟まれているし、口も強い力で押さえつけられているので声を出すことすら出来ない。

「暴れるんじゃねぇ」
「むぐっ! むぐむぐっ!!」
 見知らぬ男に馬乗りにされて、暴れるなという方がおかしいだろう。
 だけど成人の男性に乗られては、女性の私ではどうすることも出来ないうえ、柔らかなベットのせいでい力が流されてしまい、押し返すどころかピクリとも動かせない。
 よくドラマなんかで女性が寝込みを襲われる、なんてシーンを見かけるが、実際自分がその犠牲者になると、いかに恐怖とパニックで何も出来ないかが分かってしまう。
 っていうか、何とかしなくちゃ!

「だから動くんじゃねぇって!」
「むぐっ!!!」
 男は暴れる私を押さえつけようと、より強い力で私を押さえつける。
 私はそれでも必死に対抗し、何とか押さえつけられている手から無理やり口を開き、そのまま不安定な状態から力任せにガブリ。
 少々気持ち悪い歯ごたえを感じるが、この際私の命がかかっているので致し方ないだろう。

「イダッ、この女!!」
 一瞬緩んだ隙を突き、近くで寝ているであろう精霊達の名前を呼ぶ。
「アクっむぐっ!!」
「てめぇ、大声を出すんじゃねぇ!」
 この状況で大声を出すなと言う方が無茶である。
 今の私は辛うじて足をジタバタするしか出来ないわけだし、声を出して助けを呼ぶのがもっとも安全で、一番助かる可能性があるというもの。
 それに部屋の外には常に私の見張り件、お世話役のメイドさんがいるわけなので、部屋に異変を感じればノックぐらいはしてくれるだろう。

「無駄だぜ、ちょっとぐらい声を出したって誰も来ねぇぜ」
 えっ、誰も来ない? ……そういえばこの男、何処から入って来た?
 私がいる部屋は東棟の3階部分。当然窓からなんて入って来れず、入り口と言えばたった一つの扉か、セレスがやってきた秘密の隠し通路のみ。
 だけどそこは綺麗に片付けられ、再び通路を通ろうとすれば積まれた石壁を崩さなければいけない。流石に寝付けずモゴモゴしていた私なら、石壁が崩れる音で気づけるだろう。
 すると残る可能性は堂々と扉から入って来るしかないのだが、そこには当然見張り役のメイドさんがいた筈だ。という事はまさか……。

「諦めな、どうせ遅かれ早かれオレの女になるんだからな」
「むっ!?」
 この男、信じたくはないけれど、もしかして第一公子なの!?
 徐々に目が暗闇に慣れきたお陰で、男の顔立ちが薄っすらと浮かび上がってきたが、確かに何処となく公妃様やアレクに似てなくともない。
 もしこの男が本当に第一公子ならば、部屋の外にいる筈のメイドは当てにならないし、最悪公妃様がこの状況を作ったとも考えられる。
 するとやはり私が助かるにはアクア達を起こさなければいけないのだが、アクア元々寝坊助なうえ、ノームは何処から持ってきたのかわからないお酒で眠りこけてしまっている。ならば残る希望はドリィだけなのだが、残念なことにあの子は部屋の一番隅にある観葉植物の根元でお休み中。先ほど僅かにでた声に気付いてくれればいいのだが、今のところ何かが動いたという気配は感じない。

「大人しくしろよ、直ぐに気持ち良くしてやるからならな」
 何とも下品で不潔極まりないセリフを放ちながら、男は空いている方の手を使い、私が着ている服を無理やり剥ぎ取ろうとしてくる。
嫌よ、ふざけないで!むぐっ、むぐぐむぐむんぐっ!
 嫌悪感と悔しさで、今まさに涙が溢れ出そうなその時。
「何しているのよ、この変態!!」
「ご、ごめんなさい!」
「何!? ぐはっ!」
 アクアが放った氷の礫が男の顔に見事にクリーンヒット。そこへすかさずドリィが操る緑の蔦が、男の体をグルグルと拘束していく。

「た、助かったわアクア、ドリィ」
「ちょっとコレどういう状況? っていうかこいつ誰よ」
 正直それは私も聞きたいところなのだが、情けない事に膝がガクガクとしていてまともに立っている事すらままならない。今は辛うじてベットの角を支えに立ち上がれたが、徐々に時間が経つにつれ恐怖の感情が湧き上がってくる。
「と、とにかくリネアさんの服を……」
「服? あっ……」
 ドリィに言われるまで気づかなかったが、着ていた服の一部が破られ、私の素肌が見え隠れしている。

 これ、本当に危なかった。
 破れた箇所は私の胸元あたりに集中している。するともう少しアクアの攻撃が遅ければ、私の胸はこの男の手で鷲掴みにされていたことだろう。

「てめぇ何だコレは! 離しやがれ!」
 勝手に人の部屋に乗り込んだ挙句、か弱い女性の寝込みを襲っておいて、挙句は拘束を解けと吐く。誰がこんな危険な男の拘束を解くと言うのか。
「ドリィ、五月蝿いからからこの変態の口を塞いで。アクア、念のためにノームを起こして頂戴」
 私は二人に指示を出し、このあと何が起こってもいいように鉄壁の体制を取るようにする。

 さて、この状況をどうしたものか。
 依然目の前の男は暴れているわ、私の服装は破れたままだわ、何一つ状況が改善してはいないのだが、頼もしい3人の精霊達が勢揃いしたところで、私の心もようやく心も落ち着いてくる。
 そういえば私って魔法が使えるんだっけ?
 別に口を塞がれたり体を拘束されたりしても、私や精霊が操る魔法には長ったらしい詠唱なんて必要ないのだし、反撃しようとその気になれば幾らでも逃げ出す事は出来たであろう。
 (余りのパニック状態ですっかり忘れていたわね。)
 我ながらなんとも情けなく思うが、そこは争いごとには無縁のか弱い美少女として見逃して欲しい。よくニュースなどで、なんでそこでそんな行動にでるかなぁ、なんて思う時があるが、実際当事者になれば今の私の気持ちの半分ぐらいはご理解いただけるだろう。

 冷静になってくると、今度は逆に怒りが込み上げてくるわね。
「ちょっとリネア、近づくと危ないわよ」
「あ、あの……、その前に服を……」
「リネアはん、アクアの言う通り、近づくのは危険でっせ」
 精霊達が私の身の危険を促してくるが、ドリィの拘束は私の魔力でパワーアップされているので、ちょっとやそっとでは逃れる事など出来ないだろう。
 ならば私がやるべき行動はただ一つ。

「むぐっ、むぐっ……かぁ! クソっ、早く解きやがれ。俺を誰だと思ってやがる! 俺は……」
「知らないわよ、この変態!!」
 ドガッ、ボンッ!!
「がはっ!!」
 未だ逃れようと戯言をほざく変態に向けて、私の怒りの聖拳突き(魔力ちょっぴりプラス)が炸裂するのだった。
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