学園のアイドルが突然「猫の後ろ宙返り、見ない?」って聞いてきた!?

赤青

文字の大きさ
26 / 30

昼休み修羅場注意報!学食の座席は誰のもの?

しおりを挟む
林浅月の声が響いた瞬間、ざわ……と食堂の空気が揺れた。

周囲の生徒たち、つまり――「食堂民」が一斉に振り向く。

「えっ……今、林浅月って言った!?」

「うそだろ、葉洲が言ってた“誰か”って、林校花のことだったの!?」

「え、待って……これ、まさかの校花対決!?小王VS大王じゃん……」

「ってか、林校花が食堂に来たのも初めてレベルじゃない?なのに葉洲と一緒って、どういうこと……」

「同じクラスってのは知ってるけどさ、それにしたって親しすぎない?」

ヒソヒソと騒がしい声が飛び交う。

学食に林浅月が現れること自体が、すでにちょっとした事件だ。

だがそれ以上に、今日この瞬間が“前代未聞”だった。

──林浅月 vs 陳汐

二人の校花が、まさか同じ席を巡って鉢合わせするなんて……!

まさに、神回。

陳汐は呆然とした顔で林浅月を見つめる。

(……どういうことよ?あんたが、この席の持ち主?)

自分でも信じられなかった。

彼女が想像したあらゆる可能性の中に、“林浅月”という答えはなかった。

──あの子は、基本的に食堂に来ない。

──あの子が、男と一緒に食べるなんて、絶対にあり得ない。

──なのに、なんで今ここにいるの?葉洲と?

「……あなたが、この席の人?」

「うん。」

林浅月は落ち着き払った態度で、無表情のまま肯定した。

トレイを手に、淡々と陳汐を見下ろす。

その瞬間、陳汐の心に走ったのは――

(やっぱり……あんた、全部持ってる)

美貌、学力、家柄、清楚な雰囲気。自分が持ってないものを、全部。

だからこそ陳汐は、林浅月と同じ舞台に立ちたくなかった。

比べられたくなかった。

(でも、今……目の前に立たれて、逃げられなくなった)

負けたくないという意地だけで、強がりの声を出す。

「は?この席って名前書いてあった?物で場所取りしてた?してないでしょ。だったら早い者勝ちでしょ」

「そうだよね!」

蘇妙妙がすぐさまフォロー。さすが“親友代表”。

だが──

その瞬間、葉洲の目に冷たい光が宿った。

「陳汐、お前が来たとき、俺らが“ここは人が来る”って言ったよな?なのに勝手に座ったの、お前だろ」

「は?学校ってあんたの私有地なの?言えば誰でもどかせるとでも?」

蘇妙妙が食ってかかる。陳汐は笑っている。勝ったと思って。

だがその時、林浅月が口を開いた。

「……いいよ。どうしてもそこに座りたいなら、譲ってあげる」

静かに、けれど鋭く。

その一言は、破壊力抜群だった。

「譲ってあげる」

──精神的クリティカルヒット。

陳汐の心に、暴風が吹き荒れる。

(は?なにそれ……今の、なにそれ!!)

“譲ってあげる”なんて、まるで自分が哀れな子みたいじゃないか。

しかも、林浅月は表情ひとつ変えずに言ってのけた。

(……悔しい、なんで、なんであんたが……っ)

「……譲る?は、ふざけないで!私はそんな施し、必要ないっ!」

ガタッと音を立てて席を立ち、トレイすら持たずにその場を離れた。

蘇妙妙は怒りに震えながら、葉洲を睨む。

「もういい!葉洲、あんたなんか、絶対に陳汐には釣り合わない!」

そのまま追いかけて去っていく。

「……オレ、別に追ってねぇし……」

葉洲がぽつりとつぶやいたその声は、見事に陳汐の背後に突き刺さった。

彼女はバランスを崩しかけ、あわや食堂内で転倒するところだった。



騒ぎが終わり、ギャラリーたちも一人、また一人と散っていく。

熊凱は、腹を抱えて笑った。

「はははは!林校花、マジで最高だったわ!たった一言で、陳汐をノックアウトだなんて!」

「別に、わざとじゃないけど」

林浅月は、落ち着いた様子でご飯を食べ始める。

【わざとだし!】

【ふんっ、あんな悪女、ぶちギレて当然。この席は小葉洲が取ってくれたのよ、渡すわけないじゃん】

【次また挑発してきたら……李叔に頼んで調査させるから】

葉洲:……その“調査”って、多分“暗殺”って意味だよね……?

まじで危うく、陳汐が林家のブラックリストに入るところだった。

葉洲は軽く口をすぼめて、ぼそっと呟いた。

「……あんまり本気で虐めると、命に関わるぞ?」

「うん」

【わかってるって~反省してるよぉ……でも次はもっと上手くやるもん】

【ふふっ】



一方、学食の隅では……

「あの林校花が、男子とご飯……だと?」

「しかも学年一の成績男、葉洲と!?」

「てか、アレ……この前の夜市で並んでた男じゃね?」

「うわ、マジかよ!?あの噂、ホントだったん!?」

ざわ……ざわ……と、謎のオーラが学食中を包み込んだ。

そして午後。

地獄の時間――数学の授業。

教壇の前に立つ老班(担任)は、教室内の様子にため息をつく。

「ふぅ……よし、雑談しようか」

『雑談』

その二文字だけで、生徒たちは即座に覚醒。

【授業中:寝ててOK】

【噂話:寝てたら損】

老班は、生徒たちの様子を見て、ゆっくりと話し始めた。

「最近、夜遅くまで勉強してる生徒が多い。しかも暑さのせいで、午後は集中力が切れやすい」

「そこで、次の模擬試験(第2模)後に、座席を再編成することにした」

教室、ざわつく。

「……ただし、座席は自由選択制。ただし、条件がある」

老班はにっこり笑って、こう続けた。

「条件は、二つのどちらかを満たすこと――1、クラス内の成績トップ20。2、前回の模試から+30点以上の伸び」

「――以上!」

その瞬間、教室内の空気が変わった。

寝ていた生徒も起き上がり、みな真剣な表情に。

【憧れのあの子と、同じ席で残りの学期を過ごせる……!?】

【そのために、たった一度の努力……アリだろ!!!】

葉洲は、口元をわずかにゆるめた。

「さすが老班、卒業生の心理、完全に掌握してやがる……」

と、そのとき。

ふわりと、またあの声が頭に響く。

【小葉洲、この選択……逃げられないよ?】

【私と隣同士か、それとも林浅月ちゃんか……】

【あるいは……お隣さん同士っていうのもアリよね?】

「……ど、どれ選んでも地獄じゃねぇか」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

え、恩返しが結婚!?エルフの掟では普通なんですか!?

小野
恋愛
うっかり怪我をしたエルフを助けたら恩返しとしてエルフに誘拐されてめちゃくちゃ大事(意味深)されちゃう女の話。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...