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しおりを挟むバシュッ
近くからそんな音が聞こえ、パッと音の方を向いた。
そこにはベルが剣に付いたのか何かを振り払っている姿があった。
「にゃう?(もしかして、魔物がいた?)」
「ワウウォン
(ああ、雑魚だがな
俺らがいるとはいえ、油断するな)」
「にゃ(わかった)」
そっか・・・
ここは命の危険がある場所なんだ
少しでも気を抜くと死ぬ可能性だってある
ベルの剣を見て、そう思った。
「リュン、大丈夫か?」
アンバーの上で、強張っている俺を見て優しく声をかけてきた。
「にゃあ(うん、なんとか)」
初めて晒される命の危険に現実味がなくても、鋭い剣を見て体が震えた。
カタカタと震える俺の体を止めようと力をいれても止まることはなく、先に心を静めようと深呼吸をした。
スー、ハー
落ち着け、俺・・
まだ魔物も見てないぞ
今から怖がっていてどうする
ベルもアンバーもいるんだ、怪我をすることはあっても死ぬことはないはずだ
心のなかで暗示をしているとふわっと体を持ち上げられた。
「うにゃっ(うわあっ)」
急に体が浮いたことに無意識の内に爪を出し、必死に何かに捕まった。
「すまない、驚かしてしまったな」
そう言って、優しく落ち着かせるように撫でた。
「にゃ(ベル)」
ベルの近くから聞こえる声と匂いに、強張って震えていた体は安心したように力が抜け、震えも止まった。
ほーっと息をついた。
ベルの首筋にすり寄り、安心を求めた。
「落ち着いたか?」
「にゃ(うん)」
「ワウ(やはり子どもだな)」
ムッ
仕方がないじゃん
こっちは何もかも初めてなんだよ!
日本じゃこんな命のやり取りなんて滅多に起こらないし、ましてや敵意なんて向けられたこともねーもん
アンバーの言葉に反論しようと心のなかで文句を言っても、口に出す気力はなかった。
「リュン、見えるか?
あれが先ほど襲ってきた魔物のトゥリーランプだ」
ベルがポンポンと優しく俺の体を叩いて、見るように促した。
まだ、見る勇気はなかったが、促されるままにベルが指差している方向を見た。
「にゃう・・・(あれが魔物・・・)」
プカプカ浮かんでいて、どう見ても強そうに見えない
「そうだ
ランプは初級の魔物、Fランクで1番弱いと言われ、初心者の冒険者の最初の依頼になっている
だが、Fランクだからと油断し、痛い目をみる冒険者を何人も見てきた
ランクは冒険者ギルドが分かりやすくするためにつけたものでしかない
だから、どの魔物でも油断しないように心に留めといてくれ」
ベルは誰かを思い出しているのか、どこか悲しそうな表情で話した後、真剣な目で俺を見た。
「・・にゃ(・・わかった)」
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