復讐を果たした騎士は破滅の魔女の生まれ変わりと呼ばれる令嬢に出会う

紙條雪平

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 俺がここに来てから2週間ほど経過した。もっと前に出ていくつもりだったのだが、ミシェルとクリスティン様に引き留められたので出ていかなかった。まあ出ていったとしても、どこへと行くかもまだ決め切れていないからであるのものあるが。
 
 しかし、ここを出た後、俺はどうすればいいのだろうか。この疑問に対する答えはでなかった。いや出そうとしていないようにも感じる。俺はここでの生活に慣れ始めている、ずっといたいと思えるほどに。

 そんなことはできないとわかってはいるのだが。俺にはこの今の特に何かに追われることなく、日常を過ごしたいと思っている。今までこのような生活をしてこなかったわけではない。父親が殺される前はずっとそうだったのだから。

 だからこそ、そう感じてしまうのだろう。俺は復讐を果たす前、いや復讐をすると思う前に戻りたいのだろう。それがどれだけ愚かで今更のことであるとわかっていても。

「俺は最低だな」

 俺はミシェルに命じらえた作業をしながらそうつぶやく。今更何を考えているのだろうか。

 俺は毎日夢を見る。父親が死んだと聞いた時のことと俺がキリングに剣を突き立てた時が混ざったような夢を。俺はその夢のの中、やめろ、と何度も叫んでいる。なんでそう思うのかは見当がつく。その復讐の先には、何もないことを知ったからだ。

 俺にとっては復讐は無意味だった。もっと違う生き方が俺にはあったのだろう。決して復讐などせずに、穏やかに毎日を過ごすという生き方が。

 だが、俺は望んだ。望んでしまった。復讐をすることを。復讐の先に何もないと知らなかったから。

 だからこそ、俺はクリスティン様を引き留めなければならないと思っている。彼女は復讐を望んでいる、それは誰にも分るものだ。ミシェルも知っている、ロドリグさんも知っている。だが、彼らはそのことについて何も言わない、いや言えないのだろう。

 ミシェルもロドリグさんも彼女が望むのであれば、それに従おうと思っている。その選択も正しいのだと思う。いや彼女のことを思えばそれが一番正しいのではないか、とも思う。

 クリスティン様は復讐をしないという選択をとった時、彼女は何を糧に生きるのだろうか。

「そうか、そういうことか」

 俺はそう言って笑いだす。笑いが止まらなかった。だって、気づいたからだ。

 俺に違う生き方などなかった。俺は復讐がなければ生きられなかったのだとうの昔に、父親が死んだときからずっと。俺には復讐しか生きる道がなかったのだ。

 そうなると、今まで俺が考えてきたことは馬鹿らしいことだと感じる。今後どうすべきか、どう生きるか、など考える必要はないのだ。

 なぜなら、とうの昔に俺に未来はないのだから。

 そういう答えが出ると、俺の気持ちはぐっと楽になった。レインと言う人間は一度死んだことにされた。だが、それこそが正しかったのだ。レインと言う人間はあの復讐を果たした瞬間に死んでいたのだから。

 そう思えばこそ、俺には新たな疑問が生まれる。

 今の俺カーヒルは何なのか?どのような選択をとるべきなのだろうか?

 カーヒルはレインではない。今も生きている存在だ。クリスティン様に与えられた新たな命だ。ある種俺は生まれ変わっているのだ。決してレインの時の罪が消えているわけではないが。カーヒルはレインとは違う新たな命だ。

 では、この俺の命は何に使うべきか?何のために使うべきか?
 
「答えは決まっているか」

 俺は小さくつぶやく。俺の答えはもう出ていた。

 カーヒルとしての命はクリスティン様のために使う。きっと彼女もそれを望んでいる。それに今の俺がしたいことなのだ。彼女のために何かをすることが。
 
 彼女のおかげで俺は自分の愚かさに気づけ、そしてレインとしての自分がやったことが正しいことだと気づけたのだから。その機会をくれた彼女に俺はすべてを捧げる。

 それがカーヒルとしての俺の道だ。
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