機械人形"妖精姫"、"氷の王子"に溺愛される

ノンルン

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第4話 氷の王子と妖精姫Ⅰ

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 メリッサが初めてクロヴィスに会ったのは、メリッサが覚えている限り4歳の頃。その時はまだ、母もいて父だって優しかった。
 メリッサが王宮に面白いものがある――幼かった故に父の職場が面白いものだと思っていたのだ。だから、行きたいと行った時快く連れて行ってはくれなかったが、おねだりにおねだりを重ねると連れて行ってくれるようになった。

「パパ、あっち行っていい?」

 メリッサは一緒に王宮に来ていた父にに聞こうとして――父がいないことに気がついた。

「パパ、いない。ママもいない。どうしよう……」

 その時メリッサの母は決して王宮に行こうとはしなかった。

『メリッサ。わたくしが行っていい場所では無いのです』

 と頑なに断った。メリッサが理由を聞いても答えてくれることは結局無かった。

 メリッサは父を探しに歩いていると、綺麗な庭園と、そこにある噴水を見つけて走る。

(噴水がキラキラしている!すごい)

 メリッサはキラキラしている噴水が気になって気になって仕方が無かった。そう、メリッサは噴水に流れているものが分かったのだ。
 水の妖精フェードゥルーの泉。それが噴水の名前である。
 メリッサは噴水に走って近づいた。

「きれい……。ママみたい」

 メリッサの母は虹色に光り輝く、まさにみんなを照らす光のようだった。
 誰にも公平で、ライトを当てる。メリッサはそんな母が嬉しくて、誇らしい。
 メリッサはその噴水をしばらく眺めていた。メリッサの頭の中には妖精が浮かんでいた。
 しかし、それは誰かメリッサの知らない声によって断ち切られることになる。

「おい。誰だ。ここは王族の庭園だぞ」

 メリッサはビクッとした。そして恐る恐る振り返った。
 その瞬間、メリッサは神を見たと思った。

 その男の子があまりにも綺麗で、美しかったから。

 シルバーブラウンの綺麗な髪。作り物のように整った顔はまさに人形さんみたいな、人じゃないみたいだった。そしてその無表情の顔が、陶器人形のように整っている。
 そして、深い碧の瞳が透き通るように綺麗でびっくりした。

 その身なりと口調から、王族だってことはメリッサにも理解できた。

「ご、ごめんなさい。殿下ですか?」
「クロヴィスでいい」

 男の子――クロヴィスは不機嫌な声でメリッサを叱りつけた。
 が、次の瞬間驚いたような声を出した。

「――その目、妖精姫?どうしてここにいる?」

 メリッサはびっくりしてクロヴィスを見た。クロヴィスもびっくりしたようにジーッとメリッサを見ている。
 メリッサは固まった。目の前の男の子がじっと見つめてきて怖かったからだ。
 でもそれ以上にメリッサに母がいつも言っている"妖精姫"という言葉を聞いてびっくりした。
 母しか知らないと思っていたのだ。

(それにこの瞳って意味があるものなの?)

「どうして知っている、のですか?」
「そう言われているからな」

 そう言うとクロヴィスは微笑んだ。

「えっと、氷の王子殿下?ですっけ」

 メリッサはオンボロの不確かな記憶を元にその名前を言った。合っているかな、などと考えながら。

「そうだな。妖精姫。何故こちらに来た?」
「パパと来たのに――パパがいなくなちゃって……」

 それを思い出すとメリッサは悲しくなって翡翠色の瞳にブワッとを浮かべる。
 
(どこいちゃったのかなぁ)

「クラヴェル公爵か。宮廷に行ったのでは無いのか?」

 クラヴィルがその名前を言うとメリッサは顔を輝かせ、笑った。
 知っている人がいて嬉しかったし、クラヴィスが父を知っているのが嬉しかったのだ。

「パパのこと、知っているんですか?あのね、パパを探していた、のですけど、どっか行っちゃって……。そうしたらこの泉があったの。あのね、この泉すごいんだよ!」
「この泉を知っているのか?」

 クロヴィスは驚いたように声を上げた。
 そんなクロヴィスを見てメリッサはびっくりした。
 メリッサにとって、驚くようなことでもないし、見れば分かることなのだから。

「あのね、この泉祝福なの!妖精の!水の妖精の、えっと……フェードゥルーでしょ!」
「何故分かった?よく知っているな」

 クラヴィスの褒め言葉に更に顔を輝かせる。
 知っている人がいるのは楽しいことだな、と心から思ったときである。

「だってね、水が輝いている!虹色だけど、水色でしょう?幸せな感じがするの!」

 メリッサは嬉しくなってついつい喋りこんだ。

「水の妖精はね、いい人なの。でもね、怒らせたらここに水がなくなっちゃうの」
「妖精に会ったことがあるのか?」
「う~ん、どうかなぁ。あるって言ったらあるのかも……。でも、なんで殿下は詳しいのですか?」
「……好きだからだ」
「魔法が?」

 メリッサは更に顔を輝かせる。
 話が合う人と会ったのはこれが初めて。同年代なんてそんな事を話せるような知識を持ち合わせていなかった。
 男の子はすごいんだなぁ、などと結構他人事に考えているメリッサだったが、四歳児にしてメリッサのがいかにすごいのかは知らない。
 そもそもメリッサはクロヴィスを同年代だと思っているが、結構な年上である。

「そうだ。俺の場合は魔法具だが」
「魔法具って……映像石とか?」
「なぜ、そのようなものになる……合っているんだが」

 クロヴィスはメリッサを見て溜息をつく。
 メリッサは溜息をつかれて首をかしげた。
 彼に溜息を疲れるような話を下覚えはなかった。 

「あれはね、光の魔石でしょう?」
「そうだ。それに魔術式を加えたものだ」
「でね、妖精の祝福があると、人間にはわからない効果があったりするの……。例えば、火の魔石を使ったもの――火力式調理道具とかは妖精が気に入ったの!」

 それはメリッサが母から聞いた話。メリッサがもっと小さかった頃、母は妖精を見せながら話してくれた。メリッサは母の話してくれる話が好きでもっと聞きたいとせがむと、母はちょっとずつ話してくれた。
 それが、男の子の会話に役に立つなんて。
 メリッサは母の話してくれる話を思い浮かべて笑った。 

「それはまだ浸透していないようなものだろう。あれは画期的な発明だったな」
「そうなの!でね、火の魔石とかは扱いにくいでしょう?」
「そうだな。自然の中でも安定しているのが水や土だろう。火や風は扱いにくい」
「そうなの。でも、妖精が気に入ったから扱いやすくしてくれたのですって!」
「本当によく知っているな」

 クロヴィスはメリッサに向かって微笑んだ。
 そんなクロヴィスを見て、メリッサは心から嬉しくって、笑顔を向けた。

 そんなメリッサを見て、クラヴィスの頬に朱色がさしたのはメリッサの知らないところである。


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