こっそりと仕返してから、公認で愛人持ちますね。

しゃーりん

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戻ってきた侍従のレナードによると、酒場に向かった2人はまだ開店していない酒場の2階で関係を持っていたという。
夜の酒場で気に入った女性と2階で数時間過ごせるという場所らしい。

チャールズは独身時代にその店に通い、その女性と親しくなっていた。
今は夜ではなく、昼に利用しているということだ。
その女性は、夜は別の男を連れ込んでいるのだろう。

 
ゴリゴリゴリゴリ………


「キアラ様、それは?」

「仕返しのお薬。アレに飲ませたら相手の女性が性病になるの。」

「それは……チャールズ様への仕返しになりますか?」

「時間が経てばね。その前に種無しにした方がいいかなぁ?」

「……離婚はなさらないのですか?」

「このお腹の子供を取られちゃうかもしれないし。
 妻として居座ってあげるの。
 この子はアレの子だから、侯爵家の跡継ぎでしょ。
 アレを種無しにしたら、他に子供は作れなくなるし。
 この私を裏切って怒らせたら怖いってことを教えないと。」

「……やりすぎると魔女だってバレますよ?」

「誰も信じないわ。お母様もカイラも依頼は受けてないから何十年も流通していないもの。」


祖母の時代までは、依頼を受けていたらしい。
そのために『魔女の秘薬』の何種類かは、出回ることになってしまった。
依頼人が契約を破り、他の人に渡してしまったからである。

祖母は強い薬を作れる魔女だった。
契約を破った男が、薬の入手先を話せないように用心はしていた。

だが、しばらくは捜索が続いたために依頼を受けることをやめてしまった。

魔女と依頼人が直接話すわけではない。
間に仲介人がいる。
レナードの祖先が代々ソレにあたる。

レナードの祖父が、依頼人を見誤ったということだ。

それからは元々秘匿された存在だった魔女が噂されることもなくなり、自分たちの世代では物語なのではないかと魔女の存在を信じる人などほとんどいない。


「やっぱり強力な惚れ薬を最初に使うべきだったわ。」

「ですが、キアラ様に惚れていてもチャールズ様なら性欲は別だと浮気しそうです。」

「……そうね。」
 

惚れ薬は確かに好きになってはくれる。
他の女性に好意を持つことはない。
だけど、性欲にまで効くかといえば、そうではない。
元々、愛と性欲は別だという考えの男に使っても浮気しないというわけではないのだ。


「婚約前に調査した時は問題のない男だったのですが……婚約後も監視を続けるべきでした。」

「婚約をきっかけに色欲にハマってしまったのね。
 私も気づかなかったし、あなたは私の側にいることが仕事だもの。あなたのせいじゃないわ。」

「キアラ様を裏切るなんて、許せることではありません。」


レナードの忠誠心は厚い。
キアラの初恋の人だけど、それ故に融通が利かない男でもあった。
なので、私は婚約者になったチャールズを愛していると自分に暗示をかけて愛した。
裏切りによって、すっかりその暗示は解けてしまったけど。

解けてしまったからには、遠慮する必要はないわよね?
私が求めるのはあなた唯一人なんだもの。


「……ねえ。作ってほしい契約書があるの。」

「どんな内容でしょうか?」

「妊娠しなければ浮気しても構わないと言った内容で。」

「構わないのですか?」

「誰が、とは決めなくていいじゃない。」

「……なるほど。かしこまりました。少し内容を変えて何パターンかご用意します。」

「お願いね。」


レナードは私の言いたいこととチャールズの言いそうなことを予想して作成してくれるのだろう。

浮気を知ってしまったからには、私はチャールズに問い質す権利がある。

自白剤を使わなくても、彼が言いそうなことは想像できる。
逆に自白剤を使ってしまっては記憶に残らないので、契約書にサインをもらったとしても覚えがないと言われては意味がないのだ。 


魔女の愛を裏切った代償は、あなたのこの先の人生の一部をもらうわ。

 


 
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