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しおりを挟むヴィクトル様との婚約と隣国への留学の手続きが急ピッチで進められていた。
正式な婚約は両家が顔を合わせた時に行われることになり、領地から出てくる両親と隣国からやってくる伯爵夫妻の中間地点が王都にある母の実家でもある公爵家。
ドーソンの仲介でもある婚約なので、両家は公爵家でもてなされることになった。
伯爵様にお会いした第一印象は、親犬…
間違いなく子犬のヴィクトル様のお父様って感じでホンワカする。
伯爵夫人はケンドル様の叔母様と言われれば、やっぱりそうなのねって思える方。
ケンドル様はお母様似ってことね。印象は大分違うけど似ているわ。
大らかそうなお二人とニコニコ顔のヴィクトル様。あぁ、裏の顔がありませんように。
ホリー自身は男爵令嬢なのに、母親から高位貴族の裏の顔の怖さを聞いて育ったので笑顔の裏をどうしても想像してしまう変な癖がついてしまった。
というより学園に入ってから、まともに話した貴族がこの方々だったわけで…
そんなホリーの心を見透かしたのか、母親が耳打ちした。
(ホリー、心配しなくても良い方々よ。あなたが幸せな縁組に恵まれてよかった。)
思わずホッとした。裏を読めない自分にはやっぱり公爵令嬢なんて向いていないわ。
そう思った直後に気づいた。
あれ?ヴィクトル様は伯爵令息だから、私は将来伯爵夫人ってことよね。
しかも、伯爵位の中でも高位にいそうだし、ケンドル様が従兄なんだから高位貴族と交流するの?
高位貴族の中の下っ端ってこと?男爵家出身だし。
結局、愛想笑いで無難なお付き合いしか無理かもしれない。
友人が欲しかった。母みたいに結婚してからも爵位を気にせずに誘ってくれる友人が……
落ち込みかけたその時、ヴィクトル様の一言で少し復活した。
「ケンドルの婚約者がホリー嬢と同じ学年にいるよ。
優しい令嬢だから学園でも仲良くしてくれると思う。事前に紹介してもらうといいよ。」
伯爵夫妻も頷いているということは期待できるかも!と嬉しくなった時、聖堂に移動して婚約証明書にサインをすることになった。
そのために集まっているのに思考があちこちに飛びすぎて忘れていたわ…
無事に婚約が認められ、ホリーはヴィクトル様の婚約者になった。
結婚式は3年後。ホリーが学園を卒業してからに決まった。
今まで婚約者なんて話が出たことがなかったのに、あっという間に婚約してしまった。
そう思った時、あれ?と思った。
私って政略の駒として使われる可能性が高かったってこと?
公爵家の養女の話も決して冗談ではなかったのかも。
養女でも血縁なんだから赤の他人よりも相手に受け入れられるものね。
だから婚約者がいなかったのか。
弟は男爵家の跡継ぎ。薬草を育てていく大事な存在。
私は適齢期まで相手を厳選されていたのかもしれない。
そこで今回の伯爵家。
男爵令嬢のままで構わないと言ってくれているし、次代を担うドーソンの友人でもあるから結婚が認められた。
…遠い国や学園での嫌がらせ事件で国内貴族は無理だと判断されたかな?
うわー。だから教育のレベルが高かったのかもしれない。嫁ぎ先が伯爵家でまだよかったかも。
所詮は男爵家って思っちゃってるからね。自分自身が。
伯爵夫妻やヴィクトル様のためにも、舐められないように頑張ろう。そう決めた。
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