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しおりを挟む魔力というものは、誰もが持っている。
しかし、実際に火を出現させたり、水を出したり、風をおこしたり、土を耕したり、と顕現できるほど魔力が多い者というのは貴族に多く、平民にはほとんどいない。
しかし、貴族が平民と結婚して平民として暮らすことはある。
すると、生まれた子供に稀に顕現できるほどの魔力を持つ者が現れたり、隔世遺伝で孫やひ孫に発現する場合もあるらしい。
平民の中にそうした者が現れると、便利に扱おうとする者がいたり、子作りを強制して魔力の多い子供を手に入れようと企む者がいたりする。
そこで、各領地の領主が保護するという役割を負うことになった。
もちろん、強制ではないため魔力の多い全ての平民を把握しているわけではない。
だが、保護した平民が行方不明になると、方法は知らないが大体の居場所が把握できるようになるという。
監視されるのと引き換えに身の安全を守ってもらうようなものなのかもしれない。
まだ12歳のナターシャは、母の願い通りに保護される道を選んだ。
「ナターシャ、父は今、王都にいてここにはいない。だから、正式な保護は少し先になる。
後で魔力の顕現は確認させてもらうが、君はここで働きたいということでいいのかな?年齢的には、まだ孤児院で過ごすという手段もあるが。」
15歳までは親がいなければ孤児院で暮らすこともできる。
伯爵に保護された上で、住まいは孤児院ということになるのだ。
しかし、12歳という歳は、平民の子供だと働ける歳という感覚でもある。
使い走りや下働きのメイドの子供などは、もっと子供の時からお駄賃目的で働くのだから。
「いえ、孤児院ではなく働きたいと思います。下働きで構いませんので雇っていただけますか?」
「それは問題ないが。君は受け答えがしっかりしていて言葉遣いも丁寧だな。身内に貴族が?」
「……詳しく聞いたことはありません。」
母の口から貴族だったと聞いたことはない。
でも、文字や計算、マナー、言葉遣いなどを教えてくれたのは母で、父ではなかった。
母が魔力が多かったかどうかも知らない。ただ、普通の平民よりかは多かったのは確かなのだ。
一度だけ、顕現した火を見せてくれたから。ナターシャが、顕現できた時に、一度だけ。
母は、この領地で保護されてはいなかったのに。
保護されるつもりがなければ、誰にも見せてはいけないと教えてくれたのに。
「調べれば、親戚が見つかるかもしれないよ?」
「いえ、いいです。母が頼らなかったということは、親戚がいたとしても迷惑になると思うので。」
実際には迷惑ではなく、利用されるかもしれないから親戚など探したくない。
親戚が平民か貴族かは知らないけれど、ナターシャの魔力量を知られたら売られるかもしれない。
ルーズベルト様は、それもそうか、と頷いていた。
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